2018/10/20(土) - 12:03
昆布ナイトで満腹になった翌日、駒ヶ岳を一周へ旅立った300名のサイクリストたち。美しい函館のパノラマ、大迫力の間歇泉、走るごとに表情を変える駒ヶ岳。飽きることない115kmのレポートをお届け。
鏡のような湖面に駒ヶ岳を映す大沼を一周したのち、南へ向かう私たち。小沼沿いの函館本線と併走しつつ、大沼国道へ。長めのトンネルを抜けると爽快なストレートダウンヒル区間が登場する。
下り切った先にあるのは第一エイドとなる道の駅なないろ・ななえ。こちらは今年の3月にオープンしたばかりのまっさらな道の駅で、七飯町の新たなランドマークになるのだとか。モダンでアーティスティックな建物には、道の駅らしい農産物の直売所やお洒落なレストランなどが入っている。
こちらのエイドで振る舞われたのは、一口サイズのクレープと揚げたてのかまぼこ、そしてソフトクリーム。ソフトクリームにはミルクとりんご、ガラナという3つのフレーバーが用意され、好みの味を選ぶことが!
ミルクはもちろん七飯町産の牛乳を使っているというし、りんごはここ、七飯町の名産品。もともと西洋式農業の発祥の地であり、西洋りんごを国内で初めて栽培したという歴史もある。
ガラナとは北海道で人気のある炭酸飲料。独特の味わいで、他の飲み物で例えるとコーラとドクターペッパーを足して2で割ったようなイメージ。ここ七飯町に本社を置く小原のコアップガラナ味のソフトクリームは道内でもこの道の駅でしか食べられない限定フレーバーなのだとか。確かに大学時代、道内を自転車で駆け回り100回以上ソフトクリームを食べてきた筆者もガラナ味というのは初めて目にする、気がする。(何分遠い記憶なもので……)
悩み抜いた結果、ここはガラナソフトをチョイス。色も特徴的だし、何よりここでしか食べられないというのだから、ここで食べておくべきだろう。一口掬って口に運ぶと、口に広がるのはガラナならではのちょっと薬っぽい独特の風味。でもソフトクリームになっているので、オリジナルとなったコアップガラナよりマイルドでガラナ初挑戦にもおすすめかもしれない。
第1エイドを出発し、向かうは今大会最高標高地点となる城岱牧場。海側から見える函館山からの夜景を表とするなら、山側から望むということで、「函館裏夜景」なんて呼ばれている展望スポットでもある。そして、つまりはそれだけ登るということでも。
距離9km、平均斜度5%となかなかの登り区間。かなり走り応えのあるセクションだけれど、半分くらい登ったところから眼下に素晴らしい景色が見え始める。ご褒美を前借りしつつ、くるくるくるくるペダルを回す。
登り切ったところに第2エイドの城岱高原牧場はある。函館の町、そして津軽海峡までをも視野に入れる展望は、ここまで登ってきた苦労に報いて余りある絶景。更にこちらでは、山川牧場の牛乳ととうもろこし、そしてエネ餅が待っている。
道南で初めてジャージー種を導入した山川牧場の特濃牛乳を引き立てるホットミルクでいただきつつ、あまーいゆでとうもろこしを頂く。そうそう、函館周辺では、とうもろこしのことを「とうきみ」と呼ぶのだとか。
さて、ここからは一路海へ向けて走っていくことになる。まずは城岱牧場からダウンヒル。結構テクニカルなコースなので気を付けて。途中、とうきみを収穫する巨大なコンバインも登場、そのスケールに圧倒されてみたり。ちなみに高級スポーツカーブランドのランボルギーニのトラクターなんかもあるらしいですよ。
道道43号線(どうどうです。みちみち、ではありません、念のため)を走っていき、突き当るまで下り基調の道を行く。T字路を右折すると、3つ目のエイドステーション、道の駅しかべ間歇泉公園はすぐそこだ。
ちょうどコースも折り返しのあたりということもあり、このエイドステーションはランチエイドのような位置づけに。鹿部町名産のたらこをたっぷり載せたたらこごはんと、ちょうどシーズンを迎えるシャケを贅沢に使ったお味噌汁を地元のお母さんたちから受けとる。
しかも2種類のたらこが用意されていて、食べ比べることが出来るのだ。違うブランドのたらこを半分づつ載せて、微妙な違いを味わうなんてそんな機会は他ではなかなかない。汗を流した身体には、たらこのしょっぱさがうれしいことこの上ない。ぷちぷちした食感を楽しんでいると、お茶碗一杯のご飯はあっというまに無くなってしまう。
満腹感に浸っていると、いきなり背後からしゅわーー!!という水音が。何事かと振り返れば、地面から大量の水が噴き出しているではないか。あまりにも非現実的な光景に、「は?」と思わず声が漏れてしまう。噴水?それにしてはやたら湯気が出ているような。そこまで考えて、この道の駅の名前をやっと思い出した。そう、間歇泉。オールドでフェイスフルなあれである。
ここ鹿部間歇泉公園の間歇泉は5分ほどの間隔で15mほどの高さまで熱湯が吹き上げられるのだという。国内でも諏訪湖や熱海などが有名だけれども、墳出力が弱まって人工的に噴出させているところもあるのだとか。その点この鹿部の間歇泉は天然物。公園内には間歇泉の仕組みを学べる展示や、噴出孔の近くまで寄ることのできる観察窓なども用意されている。また、湧き出す温泉を利用した足湯もあり、リフレッシュしている参加者の方々も。
まるで大地がくしゃみをしているような光景に、グレイトアースの抱えるテーマ「地球を遊びつくす」というフレーズが自然と頭をよぎる。本当に、この地球に生かされているのだな、とちょっぴりセンチな気分に浸りつつ、再スタートだ。
ここからは駒ヶ岳をぐるり反時計周りに1周するコース。前半は大沼を、後半は駒ヶ岳を周回する、二重丸のようなユニークなルートなのだ。南側から見ていると、左側に剣ヶ峰が突出し、まるで魚の背びれのようなユニークな形だったのだけれど、北上していくうちに、まったく異なる姿を見せる。
東側から見ると、なだらかな稜線で穏やかそうな印象に。現役の活火山であることを忘れそうになる優美なイメージだ。そんなことを考えつつ、北海道らしいアップダウンをこなしつつ4つ目のエイドステーション、つどーるプラザ・さわらへと到着だ。
駒ヶ岳の北方に広がる噴火湾は、全国的にも有名な帆立の産地。なかでも海中につるす「耳つり帆立」の養殖が盛んで、噴火湾の沿岸を結ぶ道路には「ほたて街道」の看板が。そんな名物を贅沢に使ったホタテカレーパン、そしてジューシーなソーセージがこの第4エイドでは振る舞われたのだ。
森町の人気ベーカーリーたむらさんのホタテカレーパンは、サクサクの生地に噴火湾産のベビーホタテがたっぷりと入ったカレールーが入っている贅沢な一品。自分の中のカレーパンランキングを塗り替える美味しさでございました。
このエイドはちょうど駒ヶ岳の真北に位置する。つまり、残り半周でフィニッシュする計算だ。今度は駒ヶ岳の西側を南へ。途中、最後のエイドステーションとなる駒ヶ嶺温泉ちゃっぷ林館までは緩やかな登り。最終エイドでは、ひんやりとしたミルクプリン「ちゃっプリン」をいただき、ラストスパートの準備は完了。
ここからはほぼ下りと平坦のみ。気になる雨雲もまだ津軽海峡を越えては来ていないようで、安心してフィニッシュへと向かう。最後は再び大沼の景観を楽しみつつ、フィニッシュゲートをくぐると、片岡さんがハイタッチをして迎えてくれた。
フィニッシュ地点でもグルメが待っている。こちらでは鹿肉ごぼうサンドのほか、とうきみや牛乳が用意され、1日走り切った分のエネルギーを少しでも補給できるように。脂質少な目の鹿肉が、疲れ目の身体に染み渡っていくようだ。
115㎞という距離だけ聞けば、少し短めと感じる人もいるかもしれないが、走った距離以上に"旅"をした実感があるのは、それぞれのエリアの雰囲気が全く異なるから。大沼を周回する序盤、城岱高原からの絶景、鹿部の海沿いコース、走っていくごとに表情を変える駒ヶ岳。供給過多では?と思うほど見どころがたっぷりで、更に北海道ならではの絶品グルメが待っているのだから、満足できないわけがない。
そんな魅力いっぱいの駒ヶ岳一帯は、「環駒」と名付けられ、七飯町、鹿部町、森町の三町が連携して盛り上げていこうと頑張っているのだとか。駒ヶ岳が角度によって見え方が異なるように、それぞれ違った魅力を持つ三町が一体となって盛り上げている「環駒」、サイクリストにとっても目を離せない地域となりそうだ。
text&photo:Naoki.YASUOKA
鏡のような湖面に駒ヶ岳を映す大沼を一周したのち、南へ向かう私たち。小沼沿いの函館本線と併走しつつ、大沼国道へ。長めのトンネルを抜けると爽快なストレートダウンヒル区間が登場する。
下り切った先にあるのは第一エイドとなる道の駅なないろ・ななえ。こちらは今年の3月にオープンしたばかりのまっさらな道の駅で、七飯町の新たなランドマークになるのだとか。モダンでアーティスティックな建物には、道の駅らしい農産物の直売所やお洒落なレストランなどが入っている。
こちらのエイドで振る舞われたのは、一口サイズのクレープと揚げたてのかまぼこ、そしてソフトクリーム。ソフトクリームにはミルクとりんご、ガラナという3つのフレーバーが用意され、好みの味を選ぶことが!
ミルクはもちろん七飯町産の牛乳を使っているというし、りんごはここ、七飯町の名産品。もともと西洋式農業の発祥の地であり、西洋りんごを国内で初めて栽培したという歴史もある。
ガラナとは北海道で人気のある炭酸飲料。独特の味わいで、他の飲み物で例えるとコーラとドクターペッパーを足して2で割ったようなイメージ。ここ七飯町に本社を置く小原のコアップガラナ味のソフトクリームは道内でもこの道の駅でしか食べられない限定フレーバーなのだとか。確かに大学時代、道内を自転車で駆け回り100回以上ソフトクリームを食べてきた筆者もガラナ味というのは初めて目にする、気がする。(何分遠い記憶なもので……)
悩み抜いた結果、ここはガラナソフトをチョイス。色も特徴的だし、何よりここでしか食べられないというのだから、ここで食べておくべきだろう。一口掬って口に運ぶと、口に広がるのはガラナならではのちょっと薬っぽい独特の風味。でもソフトクリームになっているので、オリジナルとなったコアップガラナよりマイルドでガラナ初挑戦にもおすすめかもしれない。
第1エイドを出発し、向かうは今大会最高標高地点となる城岱牧場。海側から見える函館山からの夜景を表とするなら、山側から望むということで、「函館裏夜景」なんて呼ばれている展望スポットでもある。そして、つまりはそれだけ登るということでも。
距離9km、平均斜度5%となかなかの登り区間。かなり走り応えのあるセクションだけれど、半分くらい登ったところから眼下に素晴らしい景色が見え始める。ご褒美を前借りしつつ、くるくるくるくるペダルを回す。
登り切ったところに第2エイドの城岱高原牧場はある。函館の町、そして津軽海峡までをも視野に入れる展望は、ここまで登ってきた苦労に報いて余りある絶景。更にこちらでは、山川牧場の牛乳ととうもろこし、そしてエネ餅が待っている。
道南で初めてジャージー種を導入した山川牧場の特濃牛乳を引き立てるホットミルクでいただきつつ、あまーいゆでとうもろこしを頂く。そうそう、函館周辺では、とうもろこしのことを「とうきみ」と呼ぶのだとか。
さて、ここからは一路海へ向けて走っていくことになる。まずは城岱牧場からダウンヒル。結構テクニカルなコースなので気を付けて。途中、とうきみを収穫する巨大なコンバインも登場、そのスケールに圧倒されてみたり。ちなみに高級スポーツカーブランドのランボルギーニのトラクターなんかもあるらしいですよ。
道道43号線(どうどうです。みちみち、ではありません、念のため)を走っていき、突き当るまで下り基調の道を行く。T字路を右折すると、3つ目のエイドステーション、道の駅しかべ間歇泉公園はすぐそこだ。
ちょうどコースも折り返しのあたりということもあり、このエイドステーションはランチエイドのような位置づけに。鹿部町名産のたらこをたっぷり載せたたらこごはんと、ちょうどシーズンを迎えるシャケを贅沢に使ったお味噌汁を地元のお母さんたちから受けとる。
しかも2種類のたらこが用意されていて、食べ比べることが出来るのだ。違うブランドのたらこを半分づつ載せて、微妙な違いを味わうなんてそんな機会は他ではなかなかない。汗を流した身体には、たらこのしょっぱさがうれしいことこの上ない。ぷちぷちした食感を楽しんでいると、お茶碗一杯のご飯はあっというまに無くなってしまう。
満腹感に浸っていると、いきなり背後からしゅわーー!!という水音が。何事かと振り返れば、地面から大量の水が噴き出しているではないか。あまりにも非現実的な光景に、「は?」と思わず声が漏れてしまう。噴水?それにしてはやたら湯気が出ているような。そこまで考えて、この道の駅の名前をやっと思い出した。そう、間歇泉。オールドでフェイスフルなあれである。
ここ鹿部間歇泉公園の間歇泉は5分ほどの間隔で15mほどの高さまで熱湯が吹き上げられるのだという。国内でも諏訪湖や熱海などが有名だけれども、墳出力が弱まって人工的に噴出させているところもあるのだとか。その点この鹿部の間歇泉は天然物。公園内には間歇泉の仕組みを学べる展示や、噴出孔の近くまで寄ることのできる観察窓なども用意されている。また、湧き出す温泉を利用した足湯もあり、リフレッシュしている参加者の方々も。
まるで大地がくしゃみをしているような光景に、グレイトアースの抱えるテーマ「地球を遊びつくす」というフレーズが自然と頭をよぎる。本当に、この地球に生かされているのだな、とちょっぴりセンチな気分に浸りつつ、再スタートだ。
ここからは駒ヶ岳をぐるり反時計周りに1周するコース。前半は大沼を、後半は駒ヶ岳を周回する、二重丸のようなユニークなルートなのだ。南側から見ていると、左側に剣ヶ峰が突出し、まるで魚の背びれのようなユニークな形だったのだけれど、北上していくうちに、まったく異なる姿を見せる。
東側から見ると、なだらかな稜線で穏やかそうな印象に。現役の活火山であることを忘れそうになる優美なイメージだ。そんなことを考えつつ、北海道らしいアップダウンをこなしつつ4つ目のエイドステーション、つどーるプラザ・さわらへと到着だ。
駒ヶ岳の北方に広がる噴火湾は、全国的にも有名な帆立の産地。なかでも海中につるす「耳つり帆立」の養殖が盛んで、噴火湾の沿岸を結ぶ道路には「ほたて街道」の看板が。そんな名物を贅沢に使ったホタテカレーパン、そしてジューシーなソーセージがこの第4エイドでは振る舞われたのだ。
森町の人気ベーカーリーたむらさんのホタテカレーパンは、サクサクの生地に噴火湾産のベビーホタテがたっぷりと入ったカレールーが入っている贅沢な一品。自分の中のカレーパンランキングを塗り替える美味しさでございました。
このエイドはちょうど駒ヶ岳の真北に位置する。つまり、残り半周でフィニッシュする計算だ。今度は駒ヶ岳の西側を南へ。途中、最後のエイドステーションとなる駒ヶ嶺温泉ちゃっぷ林館までは緩やかな登り。最終エイドでは、ひんやりとしたミルクプリン「ちゃっプリン」をいただき、ラストスパートの準備は完了。
ここからはほぼ下りと平坦のみ。気になる雨雲もまだ津軽海峡を越えては来ていないようで、安心してフィニッシュへと向かう。最後は再び大沼の景観を楽しみつつ、フィニッシュゲートをくぐると、片岡さんがハイタッチをして迎えてくれた。
フィニッシュ地点でもグルメが待っている。こちらでは鹿肉ごぼうサンドのほか、とうきみや牛乳が用意され、1日走り切った分のエネルギーを少しでも補給できるように。脂質少な目の鹿肉が、疲れ目の身体に染み渡っていくようだ。
115㎞という距離だけ聞けば、少し短めと感じる人もいるかもしれないが、走った距離以上に"旅"をした実感があるのは、それぞれのエリアの雰囲気が全く異なるから。大沼を周回する序盤、城岱高原からの絶景、鹿部の海沿いコース、走っていくごとに表情を変える駒ヶ岳。供給過多では?と思うほど見どころがたっぷりで、更に北海道ならではの絶品グルメが待っているのだから、満足できないわけがない。
そんな魅力いっぱいの駒ヶ岳一帯は、「環駒」と名付けられ、七飯町、鹿部町、森町の三町が連携して盛り上げていこうと頑張っているのだとか。駒ヶ岳が角度によって見え方が異なるように、それぞれ違った魅力を持つ三町が一体となって盛り上げている「環駒」、サイクリストにとっても目を離せない地域となりそうだ。
text&photo:Naoki.YASUOKA