日本初のUCIグランフォンドシリーズとして開催されたニセコクラシック。前回のレポートに続く後編をお届けします。ニセコクラシックのヴィジョン、”最強”店長が見たニセコクラシックの魅力、そしてニセコのホスピタリティについて。



北海道らしい自然の中を走るニセコクラシック北海道らしい自然の中を走るニセコクラシック
国際化を果たしたニセコクラシックに込められた思い

世界的なイベントへの一歩目を踏み出したニセコクラシックだが、その仕掛け人となったのはニセコ地域でラフティングやキャニオニングなど、さまざまなアウトドアアクティビティガイドを事業とするNAC(ニセコアドベンチャーセンター)の代表であるロス・フィンドレー氏だ。

冬場はスノースポーツで賑わうニセコエリアも、夏場は閑散となる。そこで、白羽の矢が立ったのがスポーツサイクルだった。そのような状況下で、ツール・ド・おきなわ140kmで2位に入賞した経験もあるほどの強豪サイクリストであるフィンドレー氏が「おきなわのような自転車レースをニセコでも開催したい」という思いを抱き、地元の人々に働きかけたことがニセコクラシックへと繋がった。

「大会を立ち上げた時から、UCIシリーズ戦のことは意識していた」と語るロス・フィンドレー氏「大会を立ち上げた時から、UCIシリーズ戦のことは意識していた」と語るロス・フィンドレー氏 photo:Shu.Kato国際色豊かな大会となったニセコクラシック国際色豊かな大会となったニセコクラシック 当時、フィンドレー氏の話を聞いた地域の人はいわゆるロングライドイベントを思い描いていたというが、あくまで「ロードレース」の開催を望んでいたというフィンドレー氏。結果として、「ニセコネイチャーライド」というロングライドイベントと、この「ニセコクラシック」という二つの自転車イベントがこのエリアに誕生することとなった。

フィンドレー氏はニセコクラシックを世界中からサイクリストを集めるレースにするという構想を初期から抱いていた。当時「UCIワールドサイクリングツアー」(UWCT)として開催されていたシリーズ戦への加入は、初回大会開催時より視野に入っていたという。

開会のあいさつをする木村実行委員長開会のあいさつをする木村実行委員長 国際大会らしくライダーミーティングは2ヶ国語で行われた国際大会らしくライダーミーティングは2ヶ国語で行われた 「大会を立ち上げた時から、UCIシリーズ戦のことは意識していたんだ。僕はこのイベントをミニツール・ド・フランスのような、とても壮大でスケールの大きい、魅力的な大会にしたかったから。私が実行委員だった昨年、JCFの国際審判員である松倉さんに視察してもらい、アドバイスをもらうことで本格的にUCIグランフォンドとしての開催に向けて動きだしたんだ。」と語るフィンドレー氏。

その熱い思いを受け継ぎ、3回目にして晴れて世界への扉を叩くこととなったニセコクラシック。倶知安町議員であり大会実行委員長を務めた木村聖子さんは大会について「ぜひ夏のニセコの魅力を知っていただける機会になれば」と意気込む。

「UCIグランフォンドとして認定されるにあたり、最も評価されたのはやはりコース設定でした。本格的な山岳から海へと至る平坦区間など変化に溢れるダイナミックなコースが評価されたと思います。そして、過去2年間の運営実績も評価いただけました。冬場には公用語が英語だと言われるほど、海外から多くの方がいらっしゃるニセコエリアはインターナショナルな大会を受けいれるにあたり、理想的な環境を備えているので、海外からの参加者もどんどん増えていくと思います。」と続けた。

UCI公認というステップを上がったニセコクラシックだが、その目標はまだまだ高い所にある。「いずれは2,000人規模の大会にしたい。」と木村さん。「いくいくは世界選手権をこのニセコで開催し、世界中から脚自慢のサイクリストが集まる光景を見たいですね。」と大きな目標を語ってくれた。



”最強”店長が語るニセコクラシックの魅力

数々の国内レースを走ってきたベテランの目にも、この日本初のUCIアマチュアレースは新鮮でエキサイティングなレースとして映っていた。今大会でも総合4位、年代別1位となり、ツール・ド・おきなわや実業団レースで活躍する”最強”店長としても名高い西谷雅史(オーベスト)に今大会の印象をインタビューした。

先頭集団で積極的なレース展開を見せる西谷雅史(オーベスト)先頭集団で積極的なレース展開を見せる西谷雅史(オーベスト) photo:Hideaki TAKAGI
ー日本で初めてのUCI公認グランフォンドとして注目を浴びるイベントでしたが、実際走ってみた印象は?

年代別で優勝した西谷雅史(オーベスト)年代別で優勝した西谷雅史(オーベスト) photo:Hideaki TAKAGI海外選手は背積極的な走りを展開していたという海外選手は背積極的な走りを展開していたという photo:Hideaki TAKAGIイベントとしては、普通にロードレースでしたね。特に先頭は完全にロードレースとして走っていましたし、展開もまるで実業団のレースのようでした。でも、そこが良いですね。年代問わずにいくつになっても一生懸命頑張るというスタイルがとても良い。とにかくロケーションがすごいですね。

これだけ良いコースはなかなか無いですよ。ずーっと直線が続くアップダウンがあったり、かと思えば山もあって、とにかく日本の他のレースでは見た事が無いようなダイナミックなコースでした。北海道をレースで走ったのは初めてだったのですが、とても新鮮でした。レース展開も全国から強豪選手が集まって、とても面白かったのですが、このコースを楽しむという面でも満足できました。雨で景色が見えないのは残念でしたが、雰囲気は最高でしたね。

ー海外選手、とくに欧米系の選手が多かったと思いますが、日本のレースとは違う点もありますか?

外国人の方は、日本人に比べて圧倒的に積極的です。レースへのスタイルが全然違いますね。「海外の人はこんなに積極的なんだな」と思って、反省させられるほどです。どんな状況でも必ず前に出ようとするんですよね。ずっと後ろについているということは絶対になくて、力尽きるまで前で走ろうとする。国民性から違うんだなと思うし、こういった積極的に走る選手が沢山いるからこそ、海外のレースシーンが出来上がるんだなと思いました。

ーニセコクラシックの魅力とはどこにあると感じましたか?

日本にいながらにして、海外レースの雰囲気を楽しめます。コースも日本のレースばなれしていますし、参加者もそう。「グランフォンド」というと日本ではサイクリングやロングライドといった受け止められ方をされることが多いですが、ニセコクラシックは完走を目標にすることもできるけど、レースとして真剣に走ることもできる。いくつになっても真剣になれる場として、こういった形のイベントがもっと広がって欲しいと思えるくらい、素敵なレースでした。



走るだけではない、世界からのビジターをもてなすニセコエリアのホスピタリティ

ライドイベントとして、大きな成功を収めたニセコクラシック。その成功の要因として、もちろんUCIグランフォンドシリーズへの加入ということが大きく影響していることは間違いないが、一方で地元ニセコエリアのホスピタリティもかなり大きなウェイトを占めている。

アウトドアショップ「リズム」アウトドアショップ「リズム」 様々なレンタルバイクも用意されている様々なレンタルバイクも用意されている

スープカレーの名店「つばらつばら」スープカレーの名店「つばらつばら」 スープカレースープカレー

メイン会場で行われた前夜祭メイン会場で行われた前夜祭 地元のイタリアンレストランが出店していた地元のイタリアンレストランが出店していた photo:Hideaki TAKAGI


国内屈指のスノーリゾートとして多くのビジターを受け入れてきたニセコエリア。もちろん夏季には、ウィンタースポーツ以外のアクティビティも盛んであり、それらのツアーなども行われている。ニセコクラシックでも、大会前日にはガイドツアー付きのサイクリングを催行する予定だった。

ニセコでも屈指のホスピタリティを持つ木ニセコニセコでも屈指のホスピタリティを持つ木ニセコ 会場にほど近い木ニセコでは、マッサージサービスも受けられた会場にほど近い木ニセコでは、マッサージサービスも受けられた 残念ながら、天候不順のためサイクリングは中止となってしまったが、ガイドをしてくれるアウトドアショップRYTHMでは、普段からロードバイクやMTBなどのスポーツサイクルのレンタルやツアーガイドを行っているという。他にも、NISEKO NATURE SCHOOLや、前述のNACなどもレンタルバイクやガイドツアーを行っているというから、大会の前後で家族などとニセコ周辺のサイクリングを楽しんでもいいだろう。

大会前日のメイン会場では、ニセコの人気レストランなどが出展する前夜祭も行われ、地元グルメを堪能しながら、ステージイベントを楽しめた。子供たちによるダンスパフォーマンスや、アーティストたちによる演奏など、さまざまなステージが用意された前夜祭のトリを締めくくったのは打ち上げ花火。参加者のみなさんは、夜空を彩る花火を見上げながら翌日のレースへの期待を膨らませていたのではないだろうか。

周辺のホテルのレベルが高いのもニセコならでは。今回、お邪魔させていただいた「木ニセコ」を例に挙げると、広々とした部屋に充実した設備が整えられており、自分の家より居心地が良いほど。自転車を部屋に持ち込むことができるほか、大会当日には、朝早くから朝食が用意されたり、レース後にはマッサージサービスを割安で受ける事ができたりと、レース参加者たちが最大のパフォーマンスを発揮できるような環境を用意してくれていた。もし、また別の機会にニセコを訪れることがあっても、ぜひここを利用したいと思わせてくれるようなホスピタリティを体験できた。



ダイナミックなコースレイアウトと世界へのキップを求めて集まるハイレベルな選手たち。そしてレース開催を支える地元の方々の熱い想いと、リゾート地ならではのホスピタリティ。人気イベントに欠かせない4つの要素を併せ持つニセコクラシックは、これからもっとその魅力を高めていくだろう。

text&photo:Naoki.YASUOKA
ロス・フィンドレー氏インタビュー:Shu.KATO

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