2016/07/21(木) - 09:00
北海道、そして日本を代表するスノーリゾート、ニセコ。積雪期には極上のパウダースノーに世界中から多くの人が集まる彼の地で開催されたニセコクラシックのレポートを2編にわたってお届けしよう。
ツール・ド・フランスが開幕し、日本中のサイクリストの睡眠時間が削られていく7月初旬。北海道の国際的リゾート地、ニセコエリアにて開催された「ニセコクラシック」に世界中から多くのサイクリストが集結した。
アジア地域初の「UCIグランフォンドワールドシリーズ」
ニセコの街を色とりどりのサイクリストが駆け抜けた ニセコクラシック2016
世界各地からサイクリストが集まった背景には、この第3回大会からUCIの公認グランフォンドとしてアジアで初めて認定を受ける大会となったことが大きな要因となっている。世界各国で行われる多くの市民レースのなかでも、UCIが定める一定の基準を満たしていると認められた大会のみが加入することができる「UCIグランフォンドワールドシリーズ」へニセコクラシックは名を連ねることとなった。
UCIグランフォンドワールドシリーズとは9月に行われる「グランフォンド世界選手権」を頂点に、世界各国で開かれる14の予選レースによって構成される、アマチュアライダーのためのワールドツアーのようなサーキット。予選レースでカテゴリー別の上位25%へと入ることができれば、世界選手権の出場権を手に入れることができる。ニセコクラシックは国内のレースながら、世界へのチケットを手に入れることができるイベントとして生まれ変わったのだ。
ゼッケンプレートにもUCIの文字が躍る
140kmに挑む3人の女傑たち
その効果は参加者数にも如実に表れている。昨年大会に比べて、参加者数はほぼ倍の約600名に。海外からの参加者も40名程度と全体の約7%を占めることとなった。これは国内の市民レースイベントとしては、極めて高い数字である。
世界基準のグランフォンドイベントとしてのニセコクラシック
さて、グランフォンドというと、日本のサイクリストにとってはロングライドの別称だという認識の方が多いのではないだろうか。制限時間はあるものの、交通規制もなく、タイム計測もなく、何箇所かに用意されたエイドステーションで振る舞われる地域のグルメに舌鼓を打つ、ゆったりとしたライドイベントがグランフォンドとして多く開催されている。
優勝、世界選手権出場、完走。 それぞれの目標を胸に挑む
霧の中を走り抜ける
雨に打たれつつもゴールを目指す
岩島啓太(MIVRO)をはじめとして強豪ホビーライダーが多く集まった しかし、世界的に見るとその認識は少し異端だということに気づかされる。世界最高峰のグランフォンドイベントの一つであるエタップ・ド・ツールを例にとると、元プロやトップアマチュア達が鎬を削りあう先頭集団はロードレースそのものだという。
もちろん、一方でプロ選手たちが走るコースを走り切るという事を目標にするサイクリスト達も大勢いる。完走率は70~80%ということで、完走が目標となり得るだけの難易度のコースや関門時刻が設定されているということである。
完走率90%以上、大会によっては99%など、メカトラや落車といったトラブルが起きない限りほぼ確実に完走できる日本のロングライドイベントとは一線を画するハードなライドイベントこそが、世界標準の「グランフォンド」である。
この意味において、今回のニセコクラシックは完全に世界水準のグランフォンドイベントとして胸を張ることができるイベントとして開催されていたことは、参加された全てのサイクリストが納得するのではないだろうか。
本格的な山岳と北海道らしい起伏に富んだコースはとても走り応えのある設定となっていたし、集まった参加者も「ホビーレーサーの甲子園」たるツール・ド・おきなわ210kmで優勝経験のある西谷雅史(オーベスト)や岩島啓太(MIVRO)らをはじめとする、国内のトップホビーライダー達がエントリーリストに名を連ねた。
彼らが繰り広げた闘いの様子はレースレポートに譲るが、JCFに登録せずとも気軽に参加できる(※)公道型の自転車イベントとして「北のニセコクラシック」「南のツール・ド・おきなわ」と並び称される未来はそう遠くないだろう。
(※厳密にはワンデイライセンスが発行されるため登録自体は必要となる)
しかもその先には、「グランフォンド世界選手権」が待っている。上位25%に入った参加者たちに贈られるUCIのゴールドメダルは世界への切符。実際に世界選手権へ参加するとなると、確かにハードルは高いだろう。しかし、その権利を獲得した参加者たちの反応は総じて前向きだった。
「あと20秒で関門閉鎖!」
前日の受付ではライセンスコントロールも行われる
25%に入れているかは、大きな関心を集めていた
世界選手権へのキップを手に入れた事を示すメダルが胸元で輝く photo:Hideaki TAKAGI
「休みを取ってでも、走りに行ってみたい」「世界のレベルを体験したい」という意見もあれば、「そこまで長期の休暇は取れるかわからないが、興味はある」といった方まで。濃淡はあるものの、ほぼ全員ができることならば、世界選に出てみたいと思っていることが伝わってきた。
一方で、完走を目指して走るライダー達にとっては、チャレンジングなコースと絶妙な関門時間だったようだ。完走率は140kmで84%。関門で足切りの対象となったライダー達は、疲れきった中にどこか安堵したような、それでいて悔しそうな表情が印象的だった。
日本においてはこれまでになかった世界標準のフォーマットで行われるニセコクラシック。これはレースなのか、ロングライドなのか。そういった疑問を持つ人も多かったが、どちらの要素も兼ね備えていることがグランフォンドたる所以なのだろう。
雨上がりに立ちこめる草いきれのなかを駆け抜ける
表彰台の頂点を争うために参加する人も、ニセコの雄大な自然とダイナミックなコースを楽しむために参加する人もいる。世界選手権へのチケットを目指して参加するという、UCI公認グランフォンドならではの目標もある。
「速く、遠くまで走る」。ロードレーサーの本質にそれぞれが向き合う事ができるニセコクラシック。ヨーロッパを思わせる雄大なロケーションも相まって、日本にいることを忘れそうになる140kmだった。
text:Naoki.YASUOKA
photo:Hideaki.TAKAGI
ツール・ド・フランスが開幕し、日本中のサイクリストの睡眠時間が削られていく7月初旬。北海道の国際的リゾート地、ニセコエリアにて開催された「ニセコクラシック」に世界中から多くのサイクリストが集結した。
アジア地域初の「UCIグランフォンドワールドシリーズ」
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世界各地からサイクリストが集まった背景には、この第3回大会からUCIの公認グランフォンドとしてアジアで初めて認定を受ける大会となったことが大きな要因となっている。世界各国で行われる多くの市民レースのなかでも、UCIが定める一定の基準を満たしていると認められた大会のみが加入することができる「UCIグランフォンドワールドシリーズ」へニセコクラシックは名を連ねることとなった。
UCIグランフォンドワールドシリーズとは9月に行われる「グランフォンド世界選手権」を頂点に、世界各国で開かれる14の予選レースによって構成される、アマチュアライダーのためのワールドツアーのようなサーキット。予選レースでカテゴリー別の上位25%へと入ることができれば、世界選手権の出場権を手に入れることができる。ニセコクラシックは国内のレースながら、世界へのチケットを手に入れることができるイベントとして生まれ変わったのだ。
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世界基準のグランフォンドイベントとしてのニセコクラシック
さて、グランフォンドというと、日本のサイクリストにとってはロングライドの別称だという認識の方が多いのではないだろうか。制限時間はあるものの、交通規制もなく、タイム計測もなく、何箇所かに用意されたエイドステーションで振る舞われる地域のグルメに舌鼓を打つ、ゆったりとしたライドイベントがグランフォンドとして多く開催されている。
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もちろん、一方でプロ選手たちが走るコースを走り切るという事を目標にするサイクリスト達も大勢いる。完走率は70~80%ということで、完走が目標となり得るだけの難易度のコースや関門時刻が設定されているということである。
完走率90%以上、大会によっては99%など、メカトラや落車といったトラブルが起きない限りほぼ確実に完走できる日本のロングライドイベントとは一線を画するハードなライドイベントこそが、世界標準の「グランフォンド」である。
この意味において、今回のニセコクラシックは完全に世界水準のグランフォンドイベントとして胸を張ることができるイベントとして開催されていたことは、参加された全てのサイクリストが納得するのではないだろうか。
本格的な山岳と北海道らしい起伏に富んだコースはとても走り応えのある設定となっていたし、集まった参加者も「ホビーレーサーの甲子園」たるツール・ド・おきなわ210kmで優勝経験のある西谷雅史(オーベスト)や岩島啓太(MIVRO)らをはじめとする、国内のトップホビーライダー達がエントリーリストに名を連ねた。
彼らが繰り広げた闘いの様子はレースレポートに譲るが、JCFに登録せずとも気軽に参加できる(※)公道型の自転車イベントとして「北のニセコクラシック」「南のツール・ド・おきなわ」と並び称される未来はそう遠くないだろう。
(※厳密にはワンデイライセンスが発行されるため登録自体は必要となる)
しかもその先には、「グランフォンド世界選手権」が待っている。上位25%に入った参加者たちに贈られるUCIのゴールドメダルは世界への切符。実際に世界選手権へ参加するとなると、確かにハードルは高いだろう。しかし、その権利を獲得した参加者たちの反応は総じて前向きだった。
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一方で、完走を目指して走るライダー達にとっては、チャレンジングなコースと絶妙な関門時間だったようだ。完走率は140kmで84%。関門で足切りの対象となったライダー達は、疲れきった中にどこか安堵したような、それでいて悔しそうな表情が印象的だった。
日本においてはこれまでになかった世界標準のフォーマットで行われるニセコクラシック。これはレースなのか、ロングライドなのか。そういった疑問を持つ人も多かったが、どちらの要素も兼ね備えていることがグランフォンドたる所以なのだろう。
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表彰台の頂点を争うために参加する人も、ニセコの雄大な自然とダイナミックなコースを楽しむために参加する人もいる。世界選手権へのチケットを目指して参加するという、UCI公認グランフォンドならではの目標もある。
「速く、遠くまで走る」。ロードレーサーの本質にそれぞれが向き合う事ができるニセコクラシック。ヨーロッパを思わせる雄大なロケーションも相まって、日本にいることを忘れそうになる140kmだった。
text:Naoki.YASUOKA
photo:Hideaki.TAKAGI
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