2016/06/17(金) - 09:00
約8,000名のクライマーたちが集まる日本最大級のヒルクライムイベント「Mt.富士ヒルクライム」が6月11~12日にかけて行われた。レースに加え、多くのイベントや出展ブースが集まり、年に一度のヒルクライムの祭典にふさわしい活気に満ちた大会の様子をお届けしよう。
富士山を目指して登っていく 第13回Mt.富士ヒルクライム
世界遺産に登録され、日本のみならず世界中から熱い視線を浴びる富士山。富士山を上る3つの道路の中でも最も整備されたルートである、山梨県側のスバルラインを全面規制して行われる自転車レースが富士ヒルクライムだ。今年で13年目を迎える老舗大会であり、現在のヒルクライムブームの火付け役ともいえるイベントでもある。
初回大会から参加者は順調に増え続けており、8,500名という定員数は国内のワンデイレースイベントとして、最大の規模を誇っている。しかし、それだけの定員を設けているにも関わらず、毎年エントリーは非常に短時間で終わってしまうということからもこの大会の人気ぶりが窺えるだろう。
受付時間が長いので、行列ができることもない
多くの出展ブースが軒を連ねたサイクルエキスポ
キャノンデールはメルセデスベンツとコラボしたメンテナンスブースを出展
トレックブースで新型ドマーネの機構を説明してもらう
メイン会場となるのは中央道河口湖ICから南へ車で10分ほど、富士急行線富士山駅からなら自転車で25分ほどの場所にある富士北麓公園。関東圏からのアクセス至便な立地であるが、この日は北は北海道、南は沖縄、さらには海を越えて台湾からもサイクリストが集まった。
大会は2日間にわたって行われる。初日は受付日となり、レース本番は2日目というスケジュールとなる。サイクリングイベントとしては一般的なスケジュールであるが、この大会の受付日は単体で一つのイベントとして成立するほど充実した出展ブースやステージイベントなどが行われることが大きな特徴だ。
大会前日 富士山は雲に包まれていたが北麓公園には多くの参加者と協賛社が集まった
記念撮影パネルの前でスタッフによって撮影してもらう事ができる
Livブースでは富士ヒルクライムでの目標をボードに書いて記念撮影!
「サイクルエキスポ」と名付けられた土曜日は、ちょっとした自転車展示会といっても過言ではない。富士北麓公園陸上競技場の400mトラックを外側と内側からぐるりと囲むように自転車やパーツ、アクセサリーブランドのブースが軒を連ねているのだ。
国内最大の自転車展示会であるサイクルモードが3日間の開催で3万人弱を動員することを考えると、1日の動員数で見れば互角の規模となる。展示や試乗、販売を行うブースに加え、メンテナンスサービスを行っていたキャノンデールや呉工業、軽量バイクコンテストを実施していたスコット、VR体験ができるJスポーツブースなどユニークな取り組みを行うブースも盛りだくさんで、一つ一つ見ているとあっという間に時間が過ぎてしまう。
大抽選会も大盛り上がり
ピークストレーニンググループの中田さんによるパワートレーニングセミナーが行われた
ステージでは様々な催しが行われ、多くの人が集まった。
ステージでは、ピークストレーニンググループの中田さんによるパワートレーニング講座や、シャ乱Qのまことさんらによるライブ、今中大介さんや日向涼子さん、片山右京さんらによるヒルクライムトークショーなど、さまざまな催しが行われ、会場に更なる熱気をもたらした。
大盛況のうちに幕を下ろしたサイクルエキスポだが、あくまでレース本番は明日。天気予報は晴れ。最高のヒルクライム日和となりそうな予感を胸に、それぞれの宿へと参加者たちは戻っていった。
あくる朝、まだ太陽が昇らない4時ごろに駐車場がオープン。駐車場で準備を済ませた参加者たちは、自転車やシャトルバスでメイン会場へと向かっていく。8,000名分の車をスムーズに駐車させ、参加者を会場へ輸送する手際は、東京マラソンを始め、大規模なスポーツイベントに携わるアールビーズの運営力の高さが如実に表れる部分でもある。
駐車場から大会会場までのバスも運行されていた
サイクリストで北麓公園は一杯だ
富士山を前に沢山のバイクが並べられた
選抜クラスの高岡選手、筧選手、才田選手
しばらくすると太陽も顔を出し、晴れ渡った空が明らかになる。昨日は見えづらかった富士山も、その稜線をくっきりと際立たせている。最高の富士ヒル日和だ。下山用の荷物をトラックに預ければ、事前申告タイムによって15個に振り分けられたそれぞれの待機列にてスタートを待つだけ。開会式が終わったら、いよいよ「主催者選抜クラス」のスタートだ。
主催者選抜クラスとは、2014年から始まったクラスで、全参加者の中から富士ヒルクライムの過去の戦績や他の主要市民レースなどの成績によって、主催者が約100名を選抜するカテゴリーだ。他の大会でよくみられる自己申告制によるチャンピオンクラスなどとは異なり、一定の脚力を持ったレーサーのみが走ることが許されるのだ。
ちなみに今年は昨年覇者であり、全日本TT王者である中村龍太郎選手、LEOMOベルマーレの才田直人選手、乗鞍王者である森本誠選手、昨年の富士ヒルクライムと乗鞍で2位に入った兼松大和選手らを始めとして錚々たるメンツがエントリーリストに名を連ねていた。
メルセデスの新型オープンカーSLCを先頭に出発する選抜クラス
パレード区間の終わりとなる胎内交差点
料金所を通過し、五合目へと向かっていく
メインスポンサーであるメルセデスベンツの新型オープンカー「SLC」の先導のもと、7時10分に選抜クラスがスタートを切る。次にジュニア&女子クラスがスタートし、その後5分間隔で男子の一般クラスが五合目を目指して走り出していく。
全長24km標高差1,255mのコースは平均斜度5.2%、最大でも7.8%とかなり緩やかなコースプロファイル。計測が始まるのはスバルライン料金所手前の胎内交差点からを左折した先。そこまでは各スタートブロックごとに先導車が付き、ニュートラル走行となる。
遠くに見える頂を目指して走っていく
平野由香里さんも参加してました!
なんとチアリーダーが登場して応援してくれます
富士山を被った地元の人たちの応援も
こまめな斜度の変化が続くスバルライン
チェリストでサイクリストの四家卯大さんの演奏を聞きながら登ることができる区間も
料金所を過ぎ、しばらく行くと名物である地元の方の応援が待ち受けている。富士山の被り物をして一生懸命応援してくれる姿に参加者は皆元気をもらうのだが、今年は更なるサプライズが待っていた。なんと、チアリーダー達までもが姿を見せてくれたのだ。この応援区間では無様な姿は見せられないとばかりに、もう一段速度が上がっていたような。
10.5km地点の樹海台駐車場と、17.2km地点の大沢駐車場の2つの関門が設けられているが、制限時間にはかなりの余裕があるので、パンクなどのトラブルが無い限りは完走することができるはずだ。給水所も兼ねているので、水が足りなくなった人は補給してもらえる。
太鼓の音に押されるようにして登っていく
「ここからもがけ!!」山岳スプリット賞の開始地点
ヘアピンを抜けてどんどん高度を上げていく
奥庭自然公園前の直登区間
タイムを稼ぎやすい平坦区間
大沢駐車場では、和太鼓による応援が疲れが見え始めた参加者たちの背中を押してくれる。ここまでくれば、もう一息だ。「ここからもがけ!」の看板が立つ山岳スプリット区間を過ぎ、奥庭山荘の直登をこなせば、森林限界を越え一気に視界が広がると共に、気持ちの良い平坦区間に入る。いくつかのスノーシェッドをくぐり、最後のゴール前の坂をもがき切ればフィニッシュだ。
普段は登山客で賑わう五合目だが、この日ばかりは地面が見えないほどのサイクリスト達で埋め尽くされる。下山用荷物を受け取った後は、名物「富士山メロンパン」や昼食を食べて一息つくもよし、くっきりと見える富士山をバックに記念撮影するもよし。登り切った達成感を噛みしめたら、後は下山するだけだ。
富士山に見守られながら登り切ったサイクリストたちで埋め尽くされた五合目
五合目で最後のひと踏ん張りを応援!
24kmを走り切った参加者たち
下山グループには、先導車と一般参加者から公募した「下山パトロール隊」が各グループについて安全に注意しながら下っていく。下山誘導は、ずっとブレーキを握ってないといけないようなノロノロとした速度ではなく、ある程度のスピードで下っていくため、非力な女性や初心者でもブレーキを握りっぱなしで握力がなくなるということもなく、スムーズかつ安全な下山誘導となっている。
無事にメイン会場まで下り終えた参加者たちを待っているのは、富士吉田の名物「吉田うどん」。コシの強い独特の麺が根強い人気で、参加者の中には「このうどんのために来てます!」という人がいるくらいなのだ。そして、メインステージでは表彰式が行われ、各部門の入賞者にチャンピオンジャージや地元産のフルーツなど多くの副賞が贈られた。
男子の総合優勝者である森本誠さんと女子の総合優勝者である近藤民子さん
男女の総合優勝者がシャンパンファイト!
富士吉田の名物吉田うどんが振る舞われる
今年の選抜クラスを制したのは森本誠選手。2007年に愛三工業の別府匠選手が記録した58分35秒というコースレコードを塗り替える58分31秒という記録を叩き出し、堂々の優勝を飾った。2位には序盤でアタックを成功させ、森本選手と二人で逃げ切った兼松選手が入ることとなった。今後、シクロワイアードでは選抜クラス入賞者の愛車を紹介する予定なのでお楽しみに。
text&photo:Naoki.YASUOKA
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初回大会から参加者は順調に増え続けており、8,500名という定員数は国内のワンデイレースイベントとして、最大の規模を誇っている。しかし、それだけの定員を設けているにも関わらず、毎年エントリーは非常に短時間で終わってしまうということからもこの大会の人気ぶりが窺えるだろう。
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大会は2日間にわたって行われる。初日は受付日となり、レース本番は2日目というスケジュールとなる。サイクリングイベントとしては一般的なスケジュールであるが、この大会の受付日は単体で一つのイベントとして成立するほど充実した出展ブースやステージイベントなどが行われることが大きな特徴だ。
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「サイクルエキスポ」と名付けられた土曜日は、ちょっとした自転車展示会といっても過言ではない。富士北麓公園陸上競技場の400mトラックを外側と内側からぐるりと囲むように自転車やパーツ、アクセサリーブランドのブースが軒を連ねているのだ。
国内最大の自転車展示会であるサイクルモードが3日間の開催で3万人弱を動員することを考えると、1日の動員数で見れば互角の規模となる。展示や試乗、販売を行うブースに加え、メンテナンスサービスを行っていたキャノンデールや呉工業、軽量バイクコンテストを実施していたスコット、VR体験ができるJスポーツブースなどユニークな取り組みを行うブースも盛りだくさんで、一つ一つ見ているとあっという間に時間が過ぎてしまう。
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大盛況のうちに幕を下ろしたサイクルエキスポだが、あくまでレース本番は明日。天気予報は晴れ。最高のヒルクライム日和となりそうな予感を胸に、それぞれの宿へと参加者たちは戻っていった。
あくる朝、まだ太陽が昇らない4時ごろに駐車場がオープン。駐車場で準備を済ませた参加者たちは、自転車やシャトルバスでメイン会場へと向かっていく。8,000名分の車をスムーズに駐車させ、参加者を会場へ輸送する手際は、東京マラソンを始め、大規模なスポーツイベントに携わるアールビーズの運営力の高さが如実に表れる部分でもある。
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全長24km標高差1,255mのコースは平均斜度5.2%、最大でも7.8%とかなり緩やかなコースプロファイル。計測が始まるのはスバルライン料金所手前の胎内交差点からを左折した先。そこまでは各スタートブロックごとに先導車が付き、ニュートラル走行となる。
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10.5km地点の樹海台駐車場と、17.2km地点の大沢駐車場の2つの関門が設けられているが、制限時間にはかなりの余裕があるので、パンクなどのトラブルが無い限りは完走することができるはずだ。給水所も兼ねているので、水が足りなくなった人は補給してもらえる。
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下山グループには、先導車と一般参加者から公募した「下山パトロール隊」が各グループについて安全に注意しながら下っていく。下山誘導は、ずっとブレーキを握ってないといけないようなノロノロとした速度ではなく、ある程度のスピードで下っていくため、非力な女性や初心者でもブレーキを握りっぱなしで握力がなくなるということもなく、スムーズかつ安全な下山誘導となっている。
無事にメイン会場まで下り終えた参加者たちを待っているのは、富士吉田の名物「吉田うどん」。コシの強い独特の麺が根強い人気で、参加者の中には「このうどんのために来てます!」という人がいるくらいなのだ。そして、メインステージでは表彰式が行われ、各部門の入賞者にチャンピオンジャージや地元産のフルーツなど多くの副賞が贈られた。
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今年の選抜クラスを制したのは森本誠選手。2007年に愛三工業の別府匠選手が記録した58分35秒というコースレコードを塗り替える58分31秒という記録を叩き出し、堂々の優勝を飾った。2位には序盤でアタックを成功させ、森本選手と二人で逃げ切った兼松選手が入ることとなった。今後、シクロワイアードでは選抜クラス入賞者の愛車を紹介する予定なのでお楽しみに。
text&photo:Naoki.YASUOKA
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