2016/03/05(土) - 09:18
昨年度に発足した日本サイクリングガイド協会。第3回目となる認定ガイド講習会および認定試験が沖縄にて開催され、青森、富山、大阪、沖縄の4エリアから全11名の受講者が参加した。
沖縄で開催されたJCGAのサイクリングガイド講習・検定会
スポーツサイクリングの広まりに伴って、日本各地でもサイクルツーリズムを掲げる地域が多く増えてきた。モデルコースを設定して、周辺の施設にバイクスタンドや工具を設置することで、自転車での観光を呼び込もうという試みは日本各地で見られるようになってきた。
会場となった糸満市西崎陸上競技場
まずは座学で基礎を学ぶことに
真剣に聞き入る受講者たち しかし、やはり見知らぬ土地を一人で巡るというのは何かと心細いもの。何かトラブルが起こってもセルフレスキューとなるし、道にだって迷ってしまうかもしれない。隠れた絶景スポットも知らないまま帰ってしまうことだってあるかも。
そんな時、地元に精通したサイクリングガイドがいれば、どれほど心強いだろうか。安全で、脚力にあったルートや、知ることもできなかった魅力的なスポットへと連れ出してくれるし、自分では対応できないメカトラブルが起こっても、ガイドなら解決してくれて再び走り出すことができるかもしれない。
ただ、それもガイドが一定の知識と技術を持っていることが前提となる。特にサイクリングは公共交通の中で走るものであり、事故などの可能性も高いアクティビティであるので、引率のための技術は安全に直結する重要スキルとなる。しかし、今の日本で活動するサイクリングガイドの間では基準となる指標がなく、個々人のスキルと努力に委ねられているため、レベルのばらつきがあることも事実である。
日本サイクリングガイド協会(以下、JCGA)は、そのような現状に対して、ある一定の水準を満たしたガイドを認定・標準化するために活動を始めた組織である。そして標準化の基軸をなす「サイクリングガイド検定」については、JCGAの働き掛けに即応した日本サイクリング協会(JCA)が主管となり、サイクリングガイドに必要なスキルを体系化する「ガイド教程」の編纂と、それらを身に付けたガイドを公認する検定を統括するという枠組みとなった。
つまり、JCGAは「JCA公認サイクリングガイド」の検定会を実施するかたちでサイクリングガイドの標準化を進めていき、「JCA公認サイクリングガイドによるツアーなら安全・安心なサイクリングが楽しめる」というお墨付きが与えられるということである。
今回の沖縄サイクリングガイド検定講習会は、4日間の日程で行われ、3日間の講義日程ののち、最終日にJCA公認サイクリングガイド検定が行われた。地元の沖縄から6名、県外から5名、計11名の受講者が集まった。
パンク修理の実技はすでに資格を持つ田代 恭崇 さん(リンケージサイクル)が講師を務めた
ロードだけではなく、MTBの注意点にも触れていく
出発前ブリーフィングも本番同様に練習する
自転車がきちんと整備されているかのチェックもブリーフィングの一環だ
座学では、基本的な交通法規から実際のツアー中に遭遇する様々なシチュエーションにおける判断のケーススタディーまで、基礎から実践までみっちりと学習することに。そして、実技では、パンク修理の対応や、コース上での引率の手法を学ぶこととなる。
パンク修理への対応も自分の自転車を直すのとはわけが異なり、あくまで「お客さま」の自転車を修理するという視点に立っての作業が求められる。出来るだけ自転車にキズをつけないようにしながらも、確実かつ迅速に修理を行うための注意点がレクチャーされた。
リムやチューブ、タイヤは地面になるべく触れないように。タイヤに刺さった異物は手で触って、目で見て、ダブルチェックを行うように。リムテープのめくれやほつれがないかもチェックして、バルブキャップやナットなどももともとあった通りの状態に戻すように。自分の自転車を修理する時の何倍もの細やかな気配りとチェックが必要となる。
交通量の多い幹線道路も検定コースに含まれる
車道だけではなく、歩道に出る時も注意を払う必要がある
手信号もしっかりと。後続まで伝わるように大きく出すことが求められる
歩行者がいたら出来る限り大きく避ける
特に念入りに行われるのは、実走時の引率方法である。道交法に従うのはもちろんのこと、周りの交通への影響なども考えながら、歩道を利用したり、車を先に行かせたりと、その都度状況を判断して臨機応変に対処することがガイドには求められるからだ。
それはグループライドに慣れている人にとっても、未知の世界である。脚力や性格をよく知る仲間たちとのライドとは全く違うのだ。走力はもちろん、自転車の整備状況もばらつきがあるし、手信号の出し方なども微妙に異なる可能性がある。
そのために欠かせないのが、事前のブリーフィングである。出発前に目的地を確認し、参加者の紹介を行い、コース上の注意ポイントを伝え、装備を確認し、このライドでのルールを共有するためのブリーフィングは非常に大切なものであり、検定の中でも大きな割合を占めている。
試験当日。筆記試験ももちろん真剣勝負だ。
パンク修理の実技試験は試験官の監督のもとおこなわれる
歩道では、歩行者や他の自転車がいた場合は下車して進行する。
社会実験中のラウンドアバウトもコースに組み込まれた
そうして、3日間で学んだ内容の総決算が4日目の検定となる。さまざまなシチュエーションを想定した問題が出された学科試験を終えた後には、パンク修理の実技試験。各受験者に採点官がつき、必要な工程をこなしているかを確認していく。
目安となる時間は10分間とされ、オーバーすると減点されていく仕組みだ。空気圧も規定の値が定められており、それより低いと減点される。それも、できるだけお客さんを待たせない、そして修理後も安心して走りだすために必要な採点項目である。そのためには、出来るだけ空気を素早く入れやすい携帯ポンプもガイドにとっては重要なアイテムとなる。
そして、お昼を挟んだら最後の走行試験に移る。約10kmのコースを実際にガイドしていくという形式で行われる。事前のブリーフィングから始まり、ペースセッティングや合図の出し方など、様々な要素がチェックされた。
途中でメカトラブルを起こした人への対応を求められる回も
きちんとグループの状況を確認できるかを把握するため、後方を確認し試験官の出す指の数を答えるという科目。
段差やグレーチングに対しての警告も怠らない
上り坂では、遅れる人がいないかを常に気に掛ける
検定コースには登りや下りはもちろん、交通量の多い幹線道路や子供が飛び出してくるような住宅地の裏道、社会実験中のラウンドアバウトまでさまざまな状況が詰め込まれており、どんな交通状況にも適切に対応できるかどうかを見極めるためにピッタリだ。各受講者は、そんなコースでも講習会で学んだことを活かして最後の検定に挑んだ。
検定終了後、「今まで、みなさんは普通自動車免許を持っているようなものでした。しかし、5人も6人ものお客さんをアテンドしながら走るというのは、30mのトレーラーを引っ張りながら運転するようなものです。つまり、大型2種けん引免許の検定を受けたようなものです。」とはJCGA理事長を務める渋井さんだ。学科試験の採点もあるので合否は後ほどの発表となるが、実走試験に関して言えば、全ての受講者が高く評価されていたのは、現役のツアーガイド中心の参加者達だったからだろう。
このサイクリングガイド資格の発足、そしてJCGAの活動について理事長の渋井さんは以下の様に語った。
― まず、このガイド資格というものについて簡単に説明くださいますか?
JCGA理事長を務める渋井さん このJCA公認サイクリングガイドというのは、国家資格ではないのですがJCAが認定する民間の資格の一つとなります。例えると、ソムリエ協会のソムリエ認定みたいなものでしょうか。できれば、将来的には通訳案内士のような権威あるものへと持っていければ良いのですが。
― なぜこういった活動を始められたのですか?
きっかけは、既存のイベントやツアーにおけるサポートスタッフのクオリティの資質が本来の存在理由に適っていなかったというところにあります。例えばボランティアで地元のライダーが一生懸命サポートしてくれている。それでも参加者から見ればやっぱり、スタッフジャージを着て仲間同士固まって走っていて、なんだか怖いし、いろいろとお願いしづらいという印象はある。そういった声を、しまなみや沖縄をはじめ、全国のイベントで聞くことがありました。
主催者によって考え方は違うとは思いますが少なくとも自転車業界にとっては、せっかく走りに来てくれたお客さんに対して十分なアテンドが出来ないというのは、やはり問題がありますし、安全面でもよろしくない。でも、やはり人を引き連れて走るというのは、ただ自転車に乗れるというのとは全く別の次元の能力です。そこで、そのための基本的な知識や技術をしっかりと身につける機会が必要だと思い、活動を始めました。
― イベントのスタッフの養成が主な目的なのでしょうか?
渋井さんの講評は、かなり踏み込んだ部分にまで言及する。情熱の表れだ
4日間の講習を終えた受講者と講師陣全員でハイタッチ! いえ、それはあくまできっかけですね。自転車を楽しむための一つの入り口がイベントで、ある意味もっともハードルが低いものだと思っているんです。コースが用意されて、補給も用意されて、走ることに集中できるので。その時の体験をより素晴らしいものにしてほしいということがまず一つ。
でも、現状では人気のイベントは参加するためのハードルが非常に高くなってしまっている。人気の大会、例えばアルプスあづみのセンチュリーライドやツール・ド・東北なんかでは定員の何倍もの人が申し込もうとしているわけです。そうなると、出られなかった人はやっぱり気持ちが下がってしまう。せっかく、新しく自転車を始めようとしても走る場所がないわけですから。
そんな時に、走り方や道を教えてくれながらサポートしてくれる人がいれば、イベントに頼らずとも自転車を楽しむことができるようになります。自転車の世界の一番楽しいところをもっと世間に近づけるために、楽しむためのノウハウを教えてくれる人と機会、つまりサイクリングガイドとガイドツアーが増やせればよいと思っています。
― 現在、サイクリングガイドというマーケットはそこまで大きくないと感じますが。
確かに、今の日本においてあまりガイドにお金を払うという文化自体が根付いていないという部分はあります。特にこれまでの自転車業界は、どうしてもソフトは置き去りになってしまって、ハード面ばかりにお金が流れがちでした。でも、そのままでは頭打ちになってしまうし、スポーツサイクリングが市民権を得る日は来ないでしょう。
でも、ガイドツアーが根付くことができれば、もっと横への広がりが生まれてきます。自転車を売るだけではなくて、旅行先のホテルやレストラン、お土産屋さんなども、単に走るだけじゃないサイクリストが増えれば潤います。海外からの旅行客を呼び込む国家レベルでのインバウンド政策も時代背景にありますし。
そういったものを広げていくためのマスターピースとなるのがサイクリングガイドなんだと思っています。そして、そこから一歩進めば、ツアーの企画をしたり、インストラクターとして働いたりすることもできると思っています。いわば、自転車関連の第3次産業を支える人材でもあると思っているんです。
― サイクリングガイドが自転車業界が広がるか否かのカギになると?
そうなんです。今は、専門性が高すぎて横に広げられない。しかも、求められるスキルに対して給料も低すぎる。技術ではないところで入ってくるお客さんが増えないと、やっぱり大きくは広がっていかないです。今の自転車業界に入っていくのではなく、業界そのものの枠を広げたい。だからこそ、今はマーケットとして成熟していない、観光サイクリングという分野が今後のカギになると思っています。そこで、この資格が核になっていければいいですね。
text&photo:Naoki.YASUOKA
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スポーツサイクリングの広まりに伴って、日本各地でもサイクルツーリズムを掲げる地域が多く増えてきた。モデルコースを設定して、周辺の施設にバイクスタンドや工具を設置することで、自転車での観光を呼び込もうという試みは日本各地で見られるようになってきた。
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ただ、それもガイドが一定の知識と技術を持っていることが前提となる。特にサイクリングは公共交通の中で走るものであり、事故などの可能性も高いアクティビティであるので、引率のための技術は安全に直結する重要スキルとなる。しかし、今の日本で活動するサイクリングガイドの間では基準となる指標がなく、個々人のスキルと努力に委ねられているため、レベルのばらつきがあることも事実である。
日本サイクリングガイド協会(以下、JCGA)は、そのような現状に対して、ある一定の水準を満たしたガイドを認定・標準化するために活動を始めた組織である。そして標準化の基軸をなす「サイクリングガイド検定」については、JCGAの働き掛けに即応した日本サイクリング協会(JCA)が主管となり、サイクリングガイドに必要なスキルを体系化する「ガイド教程」の編纂と、それらを身に付けたガイドを公認する検定を統括するという枠組みとなった。
つまり、JCGAは「JCA公認サイクリングガイド」の検定会を実施するかたちでサイクリングガイドの標準化を進めていき、「JCA公認サイクリングガイドによるツアーなら安全・安心なサイクリングが楽しめる」というお墨付きが与えられるということである。
今回の沖縄サイクリングガイド検定講習会は、4日間の日程で行われ、3日間の講義日程ののち、最終日にJCA公認サイクリングガイド検定が行われた。地元の沖縄から6名、県外から5名、計11名の受講者が集まった。
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パンク修理への対応も自分の自転車を直すのとはわけが異なり、あくまで「お客さま」の自転車を修理するという視点に立っての作業が求められる。出来るだけ自転車にキズをつけないようにしながらも、確実かつ迅速に修理を行うための注意点がレクチャーされた。
リムやチューブ、タイヤは地面になるべく触れないように。タイヤに刺さった異物は手で触って、目で見て、ダブルチェックを行うように。リムテープのめくれやほつれがないかもチェックして、バルブキャップやナットなどももともとあった通りの状態に戻すように。自分の自転車を修理する時の何倍もの細やかな気配りとチェックが必要となる。
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目安となる時間は10分間とされ、オーバーすると減点されていく仕組みだ。空気圧も規定の値が定められており、それより低いと減点される。それも、できるだけお客さんを待たせない、そして修理後も安心して走りだすために必要な採点項目である。そのためには、出来るだけ空気を素早く入れやすい携帯ポンプもガイドにとっては重要なアイテムとなる。
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検定終了後、「今まで、みなさんは普通自動車免許を持っているようなものでした。しかし、5人も6人ものお客さんをアテンドしながら走るというのは、30mのトレーラーを引っ張りながら運転するようなものです。つまり、大型2種けん引免許の検定を受けたようなものです。」とはJCGA理事長を務める渋井さんだ。学科試験の採点もあるので合否は後ほどの発表となるが、実走試験に関して言えば、全ての受講者が高く評価されていたのは、現役のツアーガイド中心の参加者達だったからだろう。
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― まず、このガイド資格というものについて簡単に説明くださいますか?
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主催者によって考え方は違うとは思いますが少なくとも自転車業界にとっては、せっかく走りに来てくれたお客さんに対して十分なアテンドが出来ないというのは、やはり問題がありますし、安全面でもよろしくない。でも、やはり人を引き連れて走るというのは、ただ自転車に乗れるというのとは全く別の次元の能力です。そこで、そのための基本的な知識や技術をしっかりと身につける機会が必要だと思い、活動を始めました。
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そんな時に、走り方や道を教えてくれながらサポートしてくれる人がいれば、イベントに頼らずとも自転車を楽しむことができるようになります。自転車の世界の一番楽しいところをもっと世間に近づけるために、楽しむためのノウハウを教えてくれる人と機会、つまりサイクリングガイドとガイドツアーが増やせればよいと思っています。
― 現在、サイクリングガイドというマーケットはそこまで大きくないと感じますが。
確かに、今の日本においてあまりガイドにお金を払うという文化自体が根付いていないという部分はあります。特にこれまでの自転車業界は、どうしてもソフトは置き去りになってしまって、ハード面ばかりにお金が流れがちでした。でも、そのままでは頭打ちになってしまうし、スポーツサイクリングが市民権を得る日は来ないでしょう。
でも、ガイドツアーが根付くことができれば、もっと横への広がりが生まれてきます。自転車を売るだけではなくて、旅行先のホテルやレストラン、お土産屋さんなども、単に走るだけじゃないサイクリストが増えれば潤います。海外からの旅行客を呼び込む国家レベルでのインバウンド政策も時代背景にありますし。
そういったものを広げていくためのマスターピースとなるのがサイクリングガイドなんだと思っています。そして、そこから一歩進めば、ツアーの企画をしたり、インストラクターとして働いたりすることもできると思っています。いわば、自転車関連の第3次産業を支える人材でもあると思っているんです。
― サイクリングガイドが自転車業界が広がるか否かのカギになると?
そうなんです。今は、専門性が高すぎて横に広げられない。しかも、求められるスキルに対して給料も低すぎる。技術ではないところで入ってくるお客さんが増えないと、やっぱり大きくは広がっていかないです。今の自転車業界に入っていくのではなく、業界そのものの枠を広げたい。だからこそ、今はマーケットとして成熟していない、観光サイクリングという分野が今後のカギになると思っています。そこで、この資格が核になっていければいいですね。
text&photo:Naoki.YASUOKA
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