2013/04/02(火) - 14:59
いよいよやってきた自転車のオンシーズン。これからロングライドイベントが多く開催されるが、特に女性ライダーにとってはハードルが高いのも事実。そんな女性サイクリストに向け、スペシャライズドが開催した講習会を取材した。
春は最も自転車と出かけたくなる季節だ。そして今年は「新しいことに挑戦したい!」という気持ちでこの清々しい季節を迎えた人も多いはず。各地では様々な自転車のイベントが催され、特にロングライドイベントの人気は高い。
その中でも人気が高いのが、毎年5月に行われる「アルプスあづみのセンチュリーライド(外部リンク)」。素晴らしい景観と、走り応えのあるコースが魅力のイベントだ。しかし一日を通して走るセンチュリーライドはビギナーライダーにとっては不安も大きいもの。
そこでスペシャライズドが用意するのが、女性のためにノウハウを教える講習会。MTB XCで9度の全日本選手権制覇、そして2度のオリンピック代表を経験した小田島梨絵(旧姓:片山)さんを講師に迎え、3月17日に開催された講習会を取材した。
ステップを踏んで複数回シリーズ開催のこの講習会は、とくに「アルプスあづみの」を完走したいという人向けに企画された。参加者には早期に定員一杯で締め切られるアルプスあづみのの参加権利がプレゼントされるという嬉しいものだ。
小田島さんが語る “3つのこまめ” と、集団走行の確認
今回の講習会では、ビギナー、エキスパートの2クラスで走行会を開催。その前には小田島さんからの簡単なブリーフィングを受けた。
「ロングライドを上手に楽しみながら走るためには、“3つのこまめ”が大切です。1つ目は水分補給。涼しくそれほど汗をかいていなくても、こまめに水分を補給しましょう。
2つ目は変速。長距離では、小さな疲労の積み重ねが後半効いてしまいます。少しの上りにもギヤを調節して脚への負担を軽減して走りましょう。
3つ目は温度調節です。早朝スタートのセンチュリーライドで、長丁場ですから気温の変化に合わせて、着ているものもこまめに調節します。脱ぎ着しやすく、コンパクトになるウインドブレーカーがあれば、日の高い時間には背中のポケットにしまえるので便利です」
走りに出る前には、集団走行で必要なハンドサインの確認と、バイクチェック、そしてストレッチを行う。イベントでは、ペースの合う参加者同士でグループになって協力して走ることも多いので、前の状況を後ろのライダーに伝えるハンドサインは覚えておくのがベターだ。
グループライド時に覚えておきたいハンドサイン
小田島さん曰く、「グループによってサインが少し違うこともありますが、減速、停止、方向指示、障害物の注意などは、ハンドサインで後方にしっかり伝えましょう。声を出すことも大切です。ブレーキを掛けるときに、ハンドサインを出す間がなければ『ブレーキ!』と、声で知らせます。また、後ろからも大型トラックが迫って来る場合や仲間が遅れているときなどには、声で前方に伝えます」
また、走行前にはタイヤの空気圧、注油、ブレーキの効き、ガタつく部位がないかを確認。車載や輪行での輸送で不具合が出ていないかどうか、イベント前日や当日の朝にしっかりと確認しておきたい。そして、運動前のストレッチは伸ばしすぎないように気をつけ、“動”を入れながら、上半身と、とくに股関節周りを入念に行った。
83kmのアップダウンを含んだコースへ
この日の走行コースは神奈川県厚木市の「ザ・スペシャライズド・ラウンジ」をスタートして小田原城に寄り、サイクリングロードやアップダウンのあるルートを通って戻る83km。ルートの途中には、小田島さんがこの日のためにリサーチしてくれたスイーツ休憩もあった。
「休憩ポイントはイベント本番にもありますが、それだけに頼ろうとせず、各自補給食は必ず持ちましょう。休日のサイクリングもそうですが、センチュリーライドを走るときの装備は、必要な物をスッキリとまとめます。私も引退してからですが、トップチューブに付ける小さいバッグが便利なので使っていますよ」。
スマートにまとめたいセンチュリーライド完走に必要な装備たち
サドルバッグには携帯工具、パンク修理用のパッチ、タイヤレバー、チューブが2本を収納して携行します。チューブは1本でも良いが、応急パッチは繰り返しパンクしたときのために念のため持ったほうがいいそうだ。トップチューブにマウントするバッグには携帯電話と補給食、リップスティックを収納。汚れや防水のため、携帯電話はジッパー付きの袋に入れておくといい。
ウエアの背中のポケットにはコインケース、鍵、ジッパー付きの袋に入れたバンダナを持った。また、サコッシュを持っていると買い物をした時や荷物が増えたときに便利だそうだ。この日も休憩ポイントの和菓子屋さんで買った大福などを入れて、ベンチのある広場に移動するときに役だっていた。これは豆知識として。
スピードメーターは、どのくらい走り終え、ゴールまで何kmなのか把握できるのでつけよう。普段から使用していれば、距離やスピードに対してのキツさや、自分のパフォーマンスの感覚も知ることができる。
そして前後のライトはマストアイテム。日中だけの予定が、何らかのトラブルで帰りが遅れることもある。小田島さんはコンパクトなライトをデイリーで装備し、夜走る予定の時は、あらかじめ大きめの光量の多いライトを装備するそうだ。
「基本はダブルボトル。私はスポーツドリンクと、もう一本を真水にしています。口の中が甘いモノに飽きてスッキリしたいときに水があるといいし、真夏は頭や首にかけてクーリングにも使えます。また、転んで擦過傷を負ったときに水があれば傷口をすぐに洗うこともできます」とのこと。
少量の荷物も入れることのできるハイドレーションパックは、補給の心配のある山中でのライドなどでは大きな安心材料になる。ただしスペースに余裕があるからといって重いモノの持ちすぎ、荷物の入れ過ぎに注意だ。
ボトルケージの横には小さめの携帯ポンプを装着。CO2カートリッジは素早くエアを充填できるので良いが、備えで確実なハンドポンプも合わせて持っておくように、とアドバイスがあった。慣れていないと失敗することがあるのだ。
ラクに長い距離を走るために
「車間を詰めて前のライダーに付いて走るのは、風の抵抗が少なくなるのでラクです。そのときにあまり近くに視点を集中しすぎないように注意しましょう。常に集団の後ろに位置しているのは、減速と加速が前のほうのライダーよりも間隔が短く、急なので疲れやすいです。仲間同士で走るときは信号で停まるタイミングなどで位置を入れ替えましょう」
クルマのないサイクリングロードでは、前を引く役割を順に変わる先頭交代の練習をした。一番前を引く人はしっかりペダルを踏まなければならないが、慣れるまでは気負い過ぎて、ペースが上がりすぎてしまいがち。前に出る人が変わるたびにペースが乱れることがないように、全員が余裕を持って一定のペースで走れるよう心掛けたい。
また、参加者それぞれからも機材、持ち物などからロングライドへの工夫が感じられた。巡航に優れる40mm程度のディープリムホイールや、手の小さな女性でもスムーズな変速操作ができる電動コンポーネント、振動を和らげ乗り心地の良いカーボンリムや手組のホイールを使う女性ライダーがいた。
アップダウンをクリアして、行程の3分の2を消化した頃のコンビニ休憩では、「疲れたね〜、後半(ボトルの中身を)クエン酸にしておいてよかった」「私も!」なんて声も聞こえた。
なかなか手ごわかった上りでは、「胸を開いて、呼吸をラクにして」と小田島さんのアドバイスとゲキが飛ぶ。
走り終えてラウンジに戻ってからのミーティングでは、カラダが小さく固まっている人が多かったので、「全身をまんべんなく動かして乗れると良いですよ」と、上りに向けたアドバイスがあった。
『アルプスあづみのセンチュリーライド2013』に向けての今後の練習では、「呼吸がラクなフォームを意識して、上りの斜度に合わせて、楽に踏めるカラダの位置を探るように」とのこと。ただ距離を重ねるのではなく、フォームの工夫と改善をしながら本番に向けて準備する。そして、本番では景色を楽しみ、笑顔でリラックスしながら完走を目指して走ると良いそうだ。
この講習会、少人数でこじんまりと開催されたが、「アルプスあづみの」だけでなく、様々なロングライドイベント参加を目標にしている方はもちろんのこと、普段のライドにも役だつ有効なアドバイスをたくさん受けることができ、非常に身になる講習会だった。4月7日にもエキスパート向け第2回講座が開催される予定。そして大会日までいくつかの企画がある。興味を持った人は問い合わせてみてほしい。
実走取材 写真と文:齋藤むつみ
photo&text : Mutsumi.SAITO
春は最も自転車と出かけたくなる季節だ。そして今年は「新しいことに挑戦したい!」という気持ちでこの清々しい季節を迎えた人も多いはず。各地では様々な自転車のイベントが催され、特にロングライドイベントの人気は高い。
その中でも人気が高いのが、毎年5月に行われる「アルプスあづみのセンチュリーライド(外部リンク)」。素晴らしい景観と、走り応えのあるコースが魅力のイベントだ。しかし一日を通して走るセンチュリーライドはビギナーライダーにとっては不安も大きいもの。
そこでスペシャライズドが用意するのが、女性のためにノウハウを教える講習会。MTB XCで9度の全日本選手権制覇、そして2度のオリンピック代表を経験した小田島梨絵(旧姓:片山)さんを講師に迎え、3月17日に開催された講習会を取材した。
ステップを踏んで複数回シリーズ開催のこの講習会は、とくに「アルプスあづみの」を完走したいという人向けに企画された。参加者には早期に定員一杯で締め切られるアルプスあづみのの参加権利がプレゼントされるという嬉しいものだ。
小田島さんが語る “3つのこまめ” と、集団走行の確認
今回の講習会では、ビギナー、エキスパートの2クラスで走行会を開催。その前には小田島さんからの簡単なブリーフィングを受けた。
「ロングライドを上手に楽しみながら走るためには、“3つのこまめ”が大切です。1つ目は水分補給。涼しくそれほど汗をかいていなくても、こまめに水分を補給しましょう。
2つ目は変速。長距離では、小さな疲労の積み重ねが後半効いてしまいます。少しの上りにもギヤを調節して脚への負担を軽減して走りましょう。
3つ目は温度調節です。早朝スタートのセンチュリーライドで、長丁場ですから気温の変化に合わせて、着ているものもこまめに調節します。脱ぎ着しやすく、コンパクトになるウインドブレーカーがあれば、日の高い時間には背中のポケットにしまえるので便利です」
走りに出る前には、集団走行で必要なハンドサインの確認と、バイクチェック、そしてストレッチを行う。イベントでは、ペースの合う参加者同士でグループになって協力して走ることも多いので、前の状況を後ろのライダーに伝えるハンドサインは覚えておくのがベターだ。
グループライド時に覚えておきたいハンドサイン
小田島さん曰く、「グループによってサインが少し違うこともありますが、減速、停止、方向指示、障害物の注意などは、ハンドサインで後方にしっかり伝えましょう。声を出すことも大切です。ブレーキを掛けるときに、ハンドサインを出す間がなければ『ブレーキ!』と、声で知らせます。また、後ろからも大型トラックが迫って来る場合や仲間が遅れているときなどには、声で前方に伝えます」
また、走行前にはタイヤの空気圧、注油、ブレーキの効き、ガタつく部位がないかを確認。車載や輪行での輸送で不具合が出ていないかどうか、イベント前日や当日の朝にしっかりと確認しておきたい。そして、運動前のストレッチは伸ばしすぎないように気をつけ、“動”を入れながら、上半身と、とくに股関節周りを入念に行った。
83kmのアップダウンを含んだコースへ
この日の走行コースは神奈川県厚木市の「ザ・スペシャライズド・ラウンジ」をスタートして小田原城に寄り、サイクリングロードやアップダウンのあるルートを通って戻る83km。ルートの途中には、小田島さんがこの日のためにリサーチしてくれたスイーツ休憩もあった。
「休憩ポイントはイベント本番にもありますが、それだけに頼ろうとせず、各自補給食は必ず持ちましょう。休日のサイクリングもそうですが、センチュリーライドを走るときの装備は、必要な物をスッキリとまとめます。私も引退してからですが、トップチューブに付ける小さいバッグが便利なので使っていますよ」。
スマートにまとめたいセンチュリーライド完走に必要な装備たち
サドルバッグには携帯工具、パンク修理用のパッチ、タイヤレバー、チューブが2本を収納して携行します。チューブは1本でも良いが、応急パッチは繰り返しパンクしたときのために念のため持ったほうがいいそうだ。トップチューブにマウントするバッグには携帯電話と補給食、リップスティックを収納。汚れや防水のため、携帯電話はジッパー付きの袋に入れておくといい。
ウエアの背中のポケットにはコインケース、鍵、ジッパー付きの袋に入れたバンダナを持った。また、サコッシュを持っていると買い物をした時や荷物が増えたときに便利だそうだ。この日も休憩ポイントの和菓子屋さんで買った大福などを入れて、ベンチのある広場に移動するときに役だっていた。これは豆知識として。
スピードメーターは、どのくらい走り終え、ゴールまで何kmなのか把握できるのでつけよう。普段から使用していれば、距離やスピードに対してのキツさや、自分のパフォーマンスの感覚も知ることができる。
そして前後のライトはマストアイテム。日中だけの予定が、何らかのトラブルで帰りが遅れることもある。小田島さんはコンパクトなライトをデイリーで装備し、夜走る予定の時は、あらかじめ大きめの光量の多いライトを装備するそうだ。
「基本はダブルボトル。私はスポーツドリンクと、もう一本を真水にしています。口の中が甘いモノに飽きてスッキリしたいときに水があるといいし、真夏は頭や首にかけてクーリングにも使えます。また、転んで擦過傷を負ったときに水があれば傷口をすぐに洗うこともできます」とのこと。
少量の荷物も入れることのできるハイドレーションパックは、補給の心配のある山中でのライドなどでは大きな安心材料になる。ただしスペースに余裕があるからといって重いモノの持ちすぎ、荷物の入れ過ぎに注意だ。
ボトルケージの横には小さめの携帯ポンプを装着。CO2カートリッジは素早くエアを充填できるので良いが、備えで確実なハンドポンプも合わせて持っておくように、とアドバイスがあった。慣れていないと失敗することがあるのだ。
ラクに長い距離を走るために
「車間を詰めて前のライダーに付いて走るのは、風の抵抗が少なくなるのでラクです。そのときにあまり近くに視点を集中しすぎないように注意しましょう。常に集団の後ろに位置しているのは、減速と加速が前のほうのライダーよりも間隔が短く、急なので疲れやすいです。仲間同士で走るときは信号で停まるタイミングなどで位置を入れ替えましょう」
クルマのないサイクリングロードでは、前を引く役割を順に変わる先頭交代の練習をした。一番前を引く人はしっかりペダルを踏まなければならないが、慣れるまでは気負い過ぎて、ペースが上がりすぎてしまいがち。前に出る人が変わるたびにペースが乱れることがないように、全員が余裕を持って一定のペースで走れるよう心掛けたい。
また、参加者それぞれからも機材、持ち物などからロングライドへの工夫が感じられた。巡航に優れる40mm程度のディープリムホイールや、手の小さな女性でもスムーズな変速操作ができる電動コンポーネント、振動を和らげ乗り心地の良いカーボンリムや手組のホイールを使う女性ライダーがいた。
アップダウンをクリアして、行程の3分の2を消化した頃のコンビニ休憩では、「疲れたね〜、後半(ボトルの中身を)クエン酸にしておいてよかった」「私も!」なんて声も聞こえた。
なかなか手ごわかった上りでは、「胸を開いて、呼吸をラクにして」と小田島さんのアドバイスとゲキが飛ぶ。
走り終えてラウンジに戻ってからのミーティングでは、カラダが小さく固まっている人が多かったので、「全身をまんべんなく動かして乗れると良いですよ」と、上りに向けたアドバイスがあった。
『アルプスあづみのセンチュリーライド2013』に向けての今後の練習では、「呼吸がラクなフォームを意識して、上りの斜度に合わせて、楽に踏めるカラダの位置を探るように」とのこと。ただ距離を重ねるのではなく、フォームの工夫と改善をしながら本番に向けて準備する。そして、本番では景色を楽しみ、笑顔でリラックスしながら完走を目指して走ると良いそうだ。
この講習会、少人数でこじんまりと開催されたが、「アルプスあづみの」だけでなく、様々なロングライドイベント参加を目標にしている方はもちろんのこと、普段のライドにも役だつ有効なアドバイスをたくさん受けることができ、非常に身になる講習会だった。4月7日にもエキスパート向け第2回講座が開催される予定。そして大会日までいくつかの企画がある。興味を持った人は問い合わせてみてほしい。
実走取材 写真と文:齋藤むつみ
photo&text : Mutsumi.SAITO
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