2012/05/21(月) - 17:13
失礼ながら、スタート地点ブスト・アルシツィオは特に何も特徴の無いミラノの典型的な近郊都市。イタリアの玄関口ミラノ・マルペンサ空港から10kmほどの距離にある。大都市近郊で、しかも日曜日なだけに、大勢の観客がスタート地点に詰めかけた。
雨が降り出したため、ベストを着込む別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji朝4時、まだまだ静かに寝静まっている街がユサユサ揺れた。目を覚ますと、立て付けの悪いホテルの建物全体が奇妙な音を立ててきしんでいる。駐車場にとまっている自動車の警報アラームがけたたましく鳴る。
第15ステージの朝、ボローニャ近郊でマグニチュード6.0の地震が発生し、7名の死傷者が出た。
地元が近いため、自然と笑顔がこぼれるイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsujiプレートの境に近く、火山があり、地震が起こるという点で日本とイタリアは共通しているが、イタリアに来て初めて本格的な地震を経験した。表記が異なるため正式な震度は分からないが、体感的にスタート地点ブスト・アルシツィオの震度は3程度あった。
朝テレビを付けると、そんな地震のニュース後回しで、プーリア州の学校前で不審物が爆発し、女生徒1名が犠牲になったニュースというを報じている。仮にそれらのニュースがなくても、番組の主軸となるのはユーロ圏の経済不安。あまり思わしくない日曜日の始まり。しかも空にはどんよりとした重い雲が立ち込めている。
アレッサンドロ・バッラン(イタリア、BMCレーシングチーム)のフィジークシューズはジロのスペシャルデザイン photo:Kei Tsujiスタート直前に雨が降り始め、どの選手も急いで背中ポケットから取り出したジャケットにせっせと袖を通す。
テレビの天気予報によると一日雨は降り続く。「イタリアの天気予報はあまり当たらない」という予測は見事に外れ、結局一日中ずっと冷たい雨が降り続けた。
雨の中を逃げるマッテーオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)とギヨーム・ボナフォン(フランス、アージェードゥーゼル) photo:Kei Tsujiイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)の故郷ガッララーテは近い。レースは現在バッソが住んでいるカッサーノマニャーゴを通過する。雨の中でもやはり地元の英雄を迎える声は暖かい。少しナーバスになっているバッソの表情が自然と柔らかくなる。
第15ステージのコースは、秋のジロ・ディ・ロンバルディアと似た地域を通る。前半はロンバルディア平原の北限をなめるように東進。大都市ミラノに近いため、途絶えることの無い街をいくつも抜けて行く。わざわざ主催者がややこしいコースを作ったんじゃないかと思うほど、ロータリーや工事区間、街中のコーナーが多く、前半から全く気が抜けない。
独走でピアン・デイ・レジネッリを駆け上がるマッテーオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ) photo:Kei Tsuji後半はアルプスともドロミテとも言えない山岳地帯を走る。ゴール地点はレッコ/ピアン・デイ・レジネッリ。
レッコと言えば昨年からジロ・ディ・ロンバルディアのゴールを迎えている。でも実際のところこの日のゴール地点はレッコではない。コモ湖の畔に位置するレッコを素通りし、ジロは3つのカテゴリー山岳を越えて、ジロ初登場のピアン・デイ・レジネッリに向かう。前が見えにくくなるほど深い霧を抜け、危険なダウンヒルをこなす選手たち。後半も全く気が抜けない。
雨のピアン・デイ・レジネッリを登る選手たち photo:Kei Tsujiレッコを見下ろすピアン・デイ・レジネッリ。雨の影響により、日曜日だと言うのに、大都市が近いと言うのに、観客が少ない。朝から一般車の通行を規制したことも影響している。気温8度ほどの雨の中、わざわざ徒歩で観戦に向かうのは、ストイックなファンだけ。
ここ数年でレース観戦の風景は劇的に変化している。iPadやiPhone、PCでレースの公式ストリーミングを見ながら、観客の間であーだこーだ言いながら、レースを待つ。山の中で綺麗なストリーミング映像を眺めている姿にテクノロジーの進化を感じる。
グルペットでゴールを目指す別府史之(オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsujiマッテーオ・ラボッティーニ(イタリア、ファルネーゼヴィーニ)は驚くほど血色の良い爽やかな表情でピアン・デイ・レジネッリを登って行った。それ以外の選手は、プロトンのトップ選手を含めてみな、ゾンビのような青みがかった顔で頂上を目指す。休息日無しで11日間を闘い続けた選手たちの疲労は、精神的にも身体的にも、ピークに達している。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)は、山岳ステージでほぼいつも最後の最後にゴールする。逃げグループを計算通りゴール前で吸収するのと同じように、グルペットは時間通りにタイムリミット内でゴールする。タイムリミット内であればどれだけ遅れようが関係ない。ステージレースなので次のステージが待っている。リミットぎりぎりでゴールしたほうが体力を温存出来る。
翌日は待ちに待った休息日。ジロは残り6ステージ。まだマリアローザの本命が見えて来ない。アルベルト・コンタドール(スペイン)が1週目のエトナ火山であっさりと総合優勝を決めた(ように見えた)昨年とは大違い。最終的にかなりタイトな争いになるのではないかと予想している。
text&photo:Kei Tsuji in Lecco, Italy
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第15ステージの朝、ボローニャ近郊でマグニチュード6.0の地震が発生し、7名の死傷者が出た。
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朝テレビを付けると、そんな地震のニュース後回しで、プーリア州の学校前で不審物が爆発し、女生徒1名が犠牲になったニュースというを報じている。仮にそれらのニュースがなくても、番組の主軸となるのはユーロ圏の経済不安。あまり思わしくない日曜日の始まり。しかも空にはどんよりとした重い雲が立ち込めている。
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テレビの天気予報によると一日雨は降り続く。「イタリアの天気予報はあまり当たらない」という予測は見事に外れ、結局一日中ずっと冷たい雨が降り続けた。
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第15ステージのコースは、秋のジロ・ディ・ロンバルディアと似た地域を通る。前半はロンバルディア平原の北限をなめるように東進。大都市ミラノに近いため、途絶えることの無い街をいくつも抜けて行く。わざわざ主催者がややこしいコースを作ったんじゃないかと思うほど、ロータリーや工事区間、街中のコーナーが多く、前半から全く気が抜けない。
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レッコと言えば昨年からジロ・ディ・ロンバルディアのゴールを迎えている。でも実際のところこの日のゴール地点はレッコではない。コモ湖の畔に位置するレッコを素通りし、ジロは3つのカテゴリー山岳を越えて、ジロ初登場のピアン・デイ・レジネッリに向かう。前が見えにくくなるほど深い霧を抜け、危険なダウンヒルをこなす選手たち。後半も全く気が抜けない。
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ここ数年でレース観戦の風景は劇的に変化している。iPadやiPhone、PCでレースの公式ストリーミングを見ながら、観客の間であーだこーだ言いながら、レースを待つ。山の中で綺麗なストリーミング映像を眺めている姿にテクノロジーの進化を感じる。
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マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームスカイ)は、山岳ステージでほぼいつも最後の最後にゴールする。逃げグループを計算通りゴール前で吸収するのと同じように、グルペットは時間通りにタイムリミット内でゴールする。タイムリミット内であればどれだけ遅れようが関係ない。ステージレースなので次のステージが待っている。リミットぎりぎりでゴールしたほうが体力を温存出来る。
翌日は待ちに待った休息日。ジロは残り6ステージ。まだマリアローザの本命が見えて来ない。アルベルト・コンタドール(スペイン)が1週目のエトナ火山であっさりと総合優勝を決めた(ように見えた)昨年とは大違い。最終的にかなりタイトな争いになるのではないかと予想している。
text&photo:Kei Tsuji in Lecco, Italy
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