初日のチームTTは固い結束でキャノンデール・スペースゼロポイントが、2日目のクリテリウムはチーム右京のエース・辻善光が勝利。ライバル2チームはここまでで五分五分の成績だ。

チーム一丸でクリテリウムに勝利したチーム右京チーム一丸でクリテリウムに勝利したチーム右京 photo:Hideaki.TAKAGI
必勝体制で臨んだチーム右京

今シーズンから活動を開始したUCIコンチネンタルチームのキャノンデール・スペースゼロポイントとチーム右京。
開幕戦のしもふさクリテリウムではそれぞれ2位3位といわば引き分け。
そして迎えた白浜での連戦。初日のチームタイムトライアルでは強風区間を鈴木真理が引き倒したキャノンデール・スペースゼロポイントがトップタイム。
選手実績の総和では勝っていたチーム右京は、まさかの2秒差で2位に。片山右京監督が「とても悔しい2秒差」と何度もコメントしたほど、チームの全員から笑顔が消えていた。

翌日の4月8日は、いよいよクリテリウム。同時期に始動した2チームはライバル。キャノンデール・スペースゼロポイントはすでに1勝した。しかしチーム右京はこのままでは終われない。昨年大会優勝者の辻を擁していてもレース、特に集団ゴールは水物。絶対に勝てるものではない。

ラスト1km、各チームのスプリンターたちが集結するラスト1km、各チームのスプリンターたちが集結する photo:Hideaki.TAKAGI辻善光(チーム右京)が優勝辻善光(チーム右京)が優勝 photo:Hideaki.TAKAGIチームメイトと喜びを分かち合う辻善光(チーム右京)チームメイトと喜びを分かち合う辻善光(チーム右京) photo:Hideaki.TAKAGI「完璧な勝利」と片山右京監督「完璧な勝利」と片山右京監督 photo:Hideaki.TAKAGI鈴木真理と若杉厚仁はかつての師弟関係。いつか師匠を越える日がくる鈴木真理と若杉厚仁はかつての師弟関係。いつか師匠を越える日がくる photo:Hideaki.TAKAGIチーム総合をキープしたキャノンデール・スペースゼロポイントの雰囲気はいいチーム総合をキープしたキャノンデール・スペースゼロポイントの雰囲気はいい photo:Hideaki.TAKAGI
チーム右京の勝利

決勝のスタートライン最前列に並んだのはルビーレッドジャージを着る鈴木真理と、ピュアホワイトジャージを着る原川浩介。2人ともキャノンデール・スペースゼロポイント。緊張感の中にも笑顔が見える。
対するチーム右京は必勝体制でぴりぴりとした緊張感が伝わってくる。でもアドバンテージはある。それは最多の7人が出走すること。宇都宮ブリッツェンは6人、キャノンデール・スペースゼロポイントは5人なのだ。

スタートからマトリックスパワータグを加えたコンチネンタルチーム勢がアタックを仕掛ける。各チームとも持ち駒を使った応酬で終盤へ向かう。
ラスト1周(1.5km)の時点で先頭付近には鈴木、辻、マリウス・ヴィジアック(マトリックスパワータグ)、若杉厚仁(宇都宮ブリッツェン)らがまとまる。ここからゴールへ向けてハイスピードで進む。このときチーム右京は嶌田義明、太田貴明、清水良行らが辻善光をリードする。他チームのエースは裸に近い状態に。最終ターンを抜けてほどなく辻は、コースのど真ん中を先頭切ってスプリントを開始する。
ストレスなくスプリントできた辻が、最後は余裕の勝利。勝因は間違いなく最終局面にメンバーを揃えていたことだ。

優勝した辻善光のコメント

じつは昨日に腰を痛めていて動けない状態になってしまっていた。今日も昼の時間帯に診てもらったりで。真理さんが凄く動いていたので、自分も気持ちで負けたくないので自分から動いた場面もあった。ゴールは真理さんよりも先に仕掛けて、絶対にいけると自分に言い聞かせてスプリントした。

片山右京監督のコメント

今日は完璧でした。みんなが一つにまとまって機能した。若い選手が逃げて突破口を開き、ベテランがコントロールして、最後はスプリンターが仕事をして。こんなにうまくいっていいのかなと思うくらい。辻君が前夜のミーティングで、3番手で最終コーナーを回れば大丈夫と言っていたのでそのとおりに。いいスプリントでした。

3位の若杉厚仁(宇都宮ブリッツェン)

JPTでは自身で最上位の3位に入賞した若杉。クラブチームのspacebikes.com所属時には、今で言うところのEクラスで特にスプリントでは無敵を誇った。10年からのブリッツェン加入後はアシストの場面が多く、自身の結果を求めるものではなかった。
だがこの日は違った。チームのエーススプリンターとして臨んだのだ。レースではチームメイトが動き回り、ゴールは見事3位に。

その若杉はこう語る。
「今日はスプリントになったらお前で行くからと、言ってもらえたのでそれに応えたかった。チームメイトが動いたので、自分は真理さん辻さんをマークすることに専念できた」
「スプリント開始時には6番手ほどだったが追い込んで3位に入れた。だが優勝を目指していたので悔しい気持ちがある。リザルトとしての3位は、自分にとってこの3年余りで一番いいので少しほっとしている。次に繋がるレースだったと思う」

新規チームだからこそ欲しい勝利

会場には多くのファンやサポーターに加え、チームのスポンサー関係者も顔を出すのがJプロツアー。スポンサー関係者が見ている目の前でいい結果を出すことは最大の恩返し。もちろん選手や監督にとってはプレッシャーはあるし、それを力に変えることが必要だ。
初日のチームTTでは、勝利したキャノンデール・スペースゼロポイントの佐藤成彦監督が、スポンサー関係者に声をかけられ涙を流すシーンも。2日目のクリテリウムではチーム右京全員が嬉し涙を流した。
理想を求めて私財を投じ、時には不眠不休で調整ごとにあたる。要したエネルギーが大きいほど、監督らにとって勝利は格別のもの。
Jプロツアーでの1勝の価値は、新規チームにとっては想像以上に大きなものだ。次の戦いの場は4月21日の群馬CSC。全日本選手権の1週間前、熱戦を期待したい。

photo&text:高木秀彰