昨シーズンUCIアジアツアーでチームランキング6位という成績を残した愛三工業レーシングチームは、来る2012年シーズン開幕戦のツール・ド・ランカウイの出場に向け、沖縄県名護市近辺で2週間にわたるトレーニングキャンプを行なった。別府匠監督体制2年目を迎えた今年、ヨーロッパレース参戦も視野に入れ、チームは更なるステップアップを目指す。

沖縄県名護市を中心にトレーニングキャンプを行なう愛三工業レーシングチーム沖縄県名護市を中心にトレーニングキャンプを行なう愛三工業レーシングチーム photo:Kei Tsuji2006年にUCIコンチネンタル登録を行ない、日本の枠に留まらずにアジアを舞台に闘う愛三工業レーシングチーム。特にここ数年にかけてアジアのUCIレースでコンスタントな成績を収めており、アジアを代表するチームへとステップアップした感がある。

その証拠として、2011年シーズンはUCIアジアツアーのチームランキングで6位(日本チーム最高位)をマーク。

青い海を駆け抜ける真っ青なジャージ青い海を駆け抜ける真っ青なジャージ photo:Kei Tsujiアジア最高峰のステージレースであるツール・ド・ランカウイとツアー・オブ・ハイナンで、チームキャプテンの綾部勇成と中島康晴がそれぞれステージ優勝。さらにジャパンカップでは西谷泰治が2位という成績を残した。大学上がりの伊藤雅和と木守望をのぞく全員がUCIポイントを獲得している。

毎年10月から起算されるUCIアジアツアーランキングにおいて、愛三工業レーシングチームは185ポイント獲得で現在暫定トップ。しかしUCI登録の関係で正式なランキングには入っていない。1月25日付けの同個人ランキングでは、西谷泰治が2位、盛一大が4位。「アジアナンバー1」を目指すチームは、着実な成長を遂げている。

今年、愛三工業レーシングチームはASO(アモリー・スポール・オルガニザシヨン)が主催するツアー・オブ・カタールとツアー・オブ・オマーンへの招待を受けた。しかし、世界トップスプリンターが集うビッグレースへの招待は、アジア選手権と日程が重なるため、エースの西谷泰治と盛一大が欠場しなければならず、辞退したという経緯がある。

「チームにはランキング1位という明確な目標がある。成績を出してチームランキングで上位に入れば入るほど、チームのステータスはあがり、招待されるレースが増え、スポンサー獲得にもメリットとなり、自分たちの活動の場が豊かになっていく。今回のカタールとオマーンの招待で、そのことを実感できた」。そう話すのは、チームを指揮する立場として2シーズン目を迎える別府匠監督。

「2011年は一時的にチームランキング3位につけていたものの、震災の影響もあってレースがキャンセルになったり、レース出場をキャンセルしたので、シーズン後半にポイントを伸ばせなかった。2012年はアジアのUCIレースにもっと出場できる可能性もある。実績を残しているので、レースのオーガナイザーにとっても愛三を招待しやすい状況になっている」。

青い海を駆け抜ける真っ青なジャージ青い海を駆け抜ける真っ青なジャージ photo:Kei Tsuji

数年前からチームの主戦場を日本を含めたUCIアジアツアーとしている愛三工業レーシングチーム。今年から実業団(Jプロツアー)登録を行なわない。暫定的ながら、9月までのレーススケジュールにはUCIアジアツアーレースが12レースも入っている。これほど多くのレース出場を予定している日本チームは他にない。

西谷泰治西谷泰治 photo:Kei Tsuji「僕たちのレベルのチームが、プロとして走るためにどのような環境が必要か、どこで走るべきかと考えた時に、UCIアジアツアーは最良のサーキットだと思っています。結果的に、アジアで展開している自動車関連メーカーである愛三工業の見せ方的にも適している。ヨーロッパからトップチームが招待されているレースも多く、活躍した選手がUCIプロチームに入るという実状がある。世界に直結している舞台になっているんです」。

中島康晴中島康晴 photo:Kei Tsujiさらに、今年は、チーム初の試みとして、ヨーロッパレースへの参戦を計画している。具体的には、8月7日から8月11日までフランスで開催されるツール・ド・ラン(UCI2.1)の出場を狙っている。

沖縄県名護市を中心にトレーニングキャンプを行なう愛三工業レーシングチーム沖縄県名護市を中心にトレーニングキャンプを行なう愛三工業レーシングチーム photo:Kei Tsuji別府匠監督は「その時期は他のレースが無く、そしてレースの開催期間が長い。UCIプロチームも多く出場し、レースのレベルも高いけれど、だからこそ価値がある。アジアのHCレースでUCIプロチームと闘うにあたって、ヨーロッパレースでの実戦経験を生かして、チームのレベルもあげたい。選手にとっても、本場で走ることは、大きなモチベーションにもなってくれるはず。アジアをメインに活動といっていても、やはりロードレースの本場はヨーロッパであって、アジアのレベルアップもまだまだ必要。だからこそ、アジアで戦うチームが、ヨーロッパで戦う機会を作り、経験してくることで、アジアのレースをより世界レベルに近づけることにもなると考えています。もちろん、それは日本と世界の距離を近づけることにもなるはずです」と話す。

そして、今シーズンの大きなトピックとして、ロンドン五輪がある。愛三工業レーシングチームの成り立ちを考えても外せない。愛三の中でロードレース出場の可能性があるのは西谷。

別府匠監督はロードレースの代表選考についてこう語る。「JCFが定めるポイント制度はヨーロッパレースが重視される傾向にあるけど、出場の可能性はゼロではない。実際、西谷は五輪代表選考に欠かせないアジア選手権(TTが2/15、ロードが2/18に開催)のメンバーに選ばれている。(出場権争いでライバルとなる選手たちと一緒に走る)アジア選手権と全日本選手権で優勝、そしてツール・ド・ランカウイでポイントを加算すればランキング1位になることもできる。僅かなチャンスだけれど、オリンピック代表になるということはそういうことだと思う」。

「そして、盛と西谷の2人にはトラックの代表のチャンスもある。いまは2人はロンドン五輪から採用されるオムニアム(6種競技)で日本の代表枠獲得をかけて、ナショナルチームとして走っている。特に盛に関しては、ここ数年ロードとトラックを両立させてきただけに、オリンピック出場を果たして欲しいと思っている。チームの活動とは別になるけれど、全面的にバックアップしています」。

2011年からメンバーの入れ替えは無し。昨年ジャパンカップ2位の西谷泰治、チームキャプテンの綾部勇成、山岳スペシャリスト鈴木謙一、ヨーロッパ経験の豊富なベテラン品川真寛、2009年全日本タイムトライアルチャンピオン盛一大、昨年UCIアジアツアーで2勝を飾った中島康晴、昨年のツールド熊野第1ステージで優勝した福田真平、そして若手として2年目を迎える伊藤雅和と木守望の9名。

2011年に引き続き、メンバー9名で闘う愛三工業レーシングチーム2011年に引き続き、メンバー9名で闘う愛三工業レーシングチーム photo:Kei Tsuji

「チームとしては、トラックレースにも出場する西谷と盛を応援しつつ、2人がいない時にどう闘えるかを考える必要がある。監督として2年目を迎える今シーズンは、同じ体制でさらに上を目指したい。経験を積んだ若手を含め、メンバー全員に期待している」。

今年からチームはバイクサプライヤーとして新たにスペシャライズドを迎えた。同社からは、バイク、シューズ、ヘルメットの他、定評のあるバイクフィッティング「BG Fit」が提供される。沖縄でのトレーニングキャンプ中、「BG Fit」のスペシャリスト3名がアメリカから来日し、愛三工業レーシングチームのメンバー9名にフィッティングを行なった。その模様はまた別ページにてお伝えする。

スペシャライズド S-WORKS TARMAC SL4スペシャライズド S-WORKS TARMAC SL4 photo:Kei Tsujiスペシャライズド S-WORKS VENGEスペシャライズド S-WORKS VENGE photo:Kei Tsuji


2012年チームメンバー
【選手】
綾部勇成 Takeaki AYABE 1980年9月5日生まれ 神奈川県出身 キャプテン
西谷泰治 Taiji NISHITANI  1981年2月1日生まれ 広島県出身
鈴木謙一 Kenichi SUZUKI 1981年5月7日生まれ 静岡県出身
品川真寛 Masahiro SHINAGAWA 1982年2月15日生まれ 京都府出身
盛一大 Kazuhiro MORI  1982年9月17日生まれ 千葉県出身
中島康晴 Yasuharu NAKAJIMA 1984年12月27日生まれ 福井県出身
福田真平 Shimpei FUKUDA  1987年11月22日生まれ 神奈川県出身
伊藤雅和 Masakazu ITO  1988年6月12日生まれ 神奈川県出身
木守望 Nozomu KIMORI  1989年2月1日生まれ 和歌山県出身

綾部勇成綾部勇成 photo:Kei Tsuji西谷泰治西谷泰治 photo:Kei Tsuji鈴木謙一鈴木謙一 photo:Kei Tsuji
品川真寛品川真寛 photo:Kei Tsuji盛一大盛一大 photo:Kei Tsuji中島康晴中島康晴 photo:Kei Tsuji
福田真平福田真平 photo:Kei Tsuji伊藤雅和伊藤雅和 photo:Kei Tsuji木守望木守望 photo:Kei Tsuji


【2012年 出場予定レース(2月〜9月)】
2月8日〜2月12日 アジア選手権トラック(マレーシア)CC
2月16日     アジア選手権 タイムトライアル(マレーシア)CC
2月18日     アジア選手権 ロード(マレーシア)CC
2月24日〜3月4日 ツール・ド・ランカウイ(マレーシア)UCI 2.HC
4月1日〜4月6日  ツアー・オブ・タイランド(タイ)UCI 2.2
4月4日〜4月8日  トラック世界選手権(オーストラリア)WC
4月14日〜4月17日 ツール・ド・フィリピン(フィリピン)UCI 2.2
4月29日      全日本選手権ロード (日本・岩手県) NC
5月8日〜5月13日  ジュラジャ・マレーシア(マレーシア)UCI 2.2
5月20日〜5月27日 ツアー・オブ・ジャパン(日本)UCI 2.2
5月31日〜6月3日 ツール・ド・熊野(日本・和歌山県)UCI 2.2
6月4日〜6月10日 ツアー・オブ・シンカラ(インドネシア)UCI 2.2
6月17日     全日本選手権タイムトライアル(日本・秋田県)NC
6月17日〜6月19日 ツアー・ド・ジャカルタ(インドネシア)UCI 2.2
7月13日〜7月22日 ツール・ド・チンハイレイク(中国)UCI 2.HC
8月7日〜8月11日 ツール・ド・ラン(フランス)UCI 2.1 ※UCI Europe Tour
9月7日〜9月13日 ツアー・オブ・チャイナ(中国)UCI 2.1
9月14日〜9月17日 ツール・ド・北海道 (日本・北海道)UCI 2.2
9月21日〜9月23日 ツール・ド・イーストジャワ(インドネシア)UCI 2.2
※レーススケジュールは変更の可能性があります。

【スタッフ】
監督  
別府匠 Takumi BEPPU  1979年9月29日生まれ 神奈川県出身
チーフメカニック
中島康仁 Yasuhito NAKAJIMA
マッサー
赤星太朗 Taro AKAHOSHI
アシスタント
渡会菜々 Nana WATARAI
アドバイザー
別府始 Hajime BEPPU
スーパーバイザー
中根賢二 Kenji NAKANE

【サプライヤー】
Specialized(フレーム、ヘルメット、サドル、ボトルなど)2012年より
Campagnolo(コンポーネンツ)
Continental(タイヤ、チューブ)
Pearlizumi(サイクリングウェア)
FSA/フタバ商店(ハンドルバー、ステム)2012年より
LOOK(ペダル)
Power Production/グリコ(CCD、CCDワンセコンド、サプリメント)
Power Bar(パワーバー)
Kappa(アフターウェアー)
Medilast Sports(コンプレッションソックス)
Ostrich(輪行バッグ)
SPIN(自転車ケミカル)※2012年より
ニチバン(トレーナーグッズ)
SEV/SEV名古屋(チームカー用品)
MINOURA(ローラー)

text&photo:Kei Tsuji