2011/08/27(土) - 14:18
スキル・シマノの新星マルセル・キッテル(ドイツ)が、パワフルなスプリントでブエルタ・ア・エスパーニャ第7ステージを制した。前日に逃げた土井雪広も集団コントロールに加わる活躍で、チームとしてキッテルの勝利をお膳立て。念願のグランツール初勝利を手にした。
アルマデンからタラベラ・デラ・レイナまでの182.9kmで行なわれたブエルタ第7ステージ。ここまでのステージでことごとく逃げによってチャンスが潰されていたスプリンターたちにとって、山岳入り前に与えられた最後のチャンスだ。
この日はカスティーリャ・ラ・マンチャ州のタラベラ・デラ・レイナに向かって、緩やかなアップダウンを繰り返す。
レースは序盤からコフィディスの2人、ルイスアンヘル・マテ(スペイン)とジュリアン・フシャール(フランス)、そしてアントニオ・カベーリョ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)、ストゥヴ・ウアナール(フランス、アージェードゥーゼル)の合計4名が逃げた。
逃げは最大8分のリードを築いたものの、クイックステップに代わって集団コントロールに加わったスプリンターチームによってタイム差は削り取られる。前日に逃げた土井雪広もアシストとしてローテーションに加わり、タイム差の縮小に貢献する。同地方特有の横風によって集団が分裂するシーンも見られた。
タイム差が1分を切ると逃げグループの均衡が崩れ、アタックの末にフシャールが独走開始。しかし、昨年のジロ・デ・イタリア第5ステージで新城幸也(当時Bboxブイグテレコム)とともに逃げ、ステージ2位に入った25歳の努力も、ラスト7kmのアーチを目前にして終了する。
最後の逃げを飲み込んだ集団は、HTC・ハイロード(エースはデゲンコルブ)やチームスカイ(サットン)、ラボバンク(フレイレ)、スキル・シマノ(キッテル)、そしてレオパード・トレック(ベンナーティ)に率いられてゴールへ。
ラスト1kmアーチから主導権を握ったのはスキル・シマノ。一時はガーミン・サーヴェロに被せられるも、トム・フィーラース(オランダ)が強力な牽きでキッテルを先頭に引き上げる。
後方でタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)とミカル・ゴラス(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)の接触に端を発した大規模な落車が発生する中、ラスト200mでフィーラースに発射されたキッテルがパワフルなスプリントを披露。キッテルがペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)らを寄せ付けない走りでガッツポーズを繰り出した。
キッテルが初出場のグランツールで初勝利。今年スキル・シマノでプロ入りしたばかりの23歳が、グランツールという大舞台でその才能を証明した。今シーズンの勝利数は13勝。これはフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)に次いで世界2位の勝利数だ。
「この勝利を上手く表現できない。ワンダフルだ。チームを招待してくれた主催者の期待に応えることができて良かった。自分にとってもチームにとっても、グランツールのステージ優勝は夢だった」。
2009年のツール・ド・フランスに続く2度目のグランツールを果たしたスキル・シマノにとっても、これが念願のグランツール初勝利。
集団コントロールで勝利に貢献した土井雪広も「何とも言えない喜びに浸った瞬間です。初めてグランツール参戦で、集団をコントロールし、逃げにのり、チームタイムトライアルは7位入賞。そして今日のステージ優勝。なんて言ったらいいかわからない1週間になりました!この一週間、膝の怪我から復帰し、グランツールのメンバーに入り、そしてテレビで感動を届けられた事にもとても満足しています」と喜ぶ。
キッテルは直前のツール・ド・ポローニュでスプリントで負け無しのステージ4勝を飾っている。身長188cm・体重80kgという大柄なスプリンターであり、同時にタイムトライアルも得意とする。昨年ロード世界選手権U23タイムトライアルでは銅メダルを獲得している。
「最後はチームのおかげで自分のスピードに持ち込めた。チームの働きがなければ、自分の力を上手く発揮できなかったと思う。120%の力でサポートしてくれたチームメイトを誇りに思う。彼らの仕事ぶりはパーフェクトだった」とキッテルはチームメイトを誉め讃えた。
喜びに沸くスキル・シマノに対し、落車したファラーは失意の表情でゴールラインを切った。他にも総合狙いのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)が落車に巻き込まれている。X線検査の結果、幸いファラーは骨折無し。チームの発表によると、臀部を激しく打ち付けたため、翌日の発走可否はドクターが判断する。
選手コメントは公式リリース、ならびに選手ブログより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第7ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ) 4h47'59"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
3位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
4位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)
5位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
6位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク・サンガード)
7位 トム・フィーラース(オランダ、スキル・シマノ)
8位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)
9位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)
10位 リー・ハワード(オーストラリア、HTC・ハイロード)
149位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ) 27h29'12"
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +15"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +16"
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +23"
5位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック) +25"
6位 フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ) +41"
7位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック) +44"
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +49"
9位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)
10位 マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター) +52"
13位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +57"
18位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック) +1'13"
22位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) +1'26"
24位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ) +1'50"
25位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +1'53"
26位 カルロス・サストレ(スペイン、ジェオックス・TMC) +1'58"
31位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC) +2'41"
37位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +3'16"
183位 土井雪広(日本、スキル・シマノ) +1h30'18"
ポイント賞(プントス)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) 50pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 48pts
3位 パブロ・ラストラス(スペイン、モビスター) 48pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 20pts
2位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク) 15pts
3位 クーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ) 13pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 7pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 12pts
3位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ) 21pts
チーム総合成績
1位 レディオシャック 81h56'06"
2位 ラボバンク +47"
3位 カチューシャ +2'22"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
アルマデンからタラベラ・デラ・レイナまでの182.9kmで行なわれたブエルタ第7ステージ。ここまでのステージでことごとく逃げによってチャンスが潰されていたスプリンターたちにとって、山岳入り前に与えられた最後のチャンスだ。
この日はカスティーリャ・ラ・マンチャ州のタラベラ・デラ・レイナに向かって、緩やかなアップダウンを繰り返す。
レースは序盤からコフィディスの2人、ルイスアンヘル・マテ(スペイン)とジュリアン・フシャール(フランス)、そしてアントニオ・カベーリョ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)、ストゥヴ・ウアナール(フランス、アージェードゥーゼル)の合計4名が逃げた。
逃げは最大8分のリードを築いたものの、クイックステップに代わって集団コントロールに加わったスプリンターチームによってタイム差は削り取られる。前日に逃げた土井雪広もアシストとしてローテーションに加わり、タイム差の縮小に貢献する。同地方特有の横風によって集団が分裂するシーンも見られた。
タイム差が1分を切ると逃げグループの均衡が崩れ、アタックの末にフシャールが独走開始。しかし、昨年のジロ・デ・イタリア第5ステージで新城幸也(当時Bboxブイグテレコム)とともに逃げ、ステージ2位に入った25歳の努力も、ラスト7kmのアーチを目前にして終了する。
最後の逃げを飲み込んだ集団は、HTC・ハイロード(エースはデゲンコルブ)やチームスカイ(サットン)、ラボバンク(フレイレ)、スキル・シマノ(キッテル)、そしてレオパード・トレック(ベンナーティ)に率いられてゴールへ。
ラスト1kmアーチから主導権を握ったのはスキル・シマノ。一時はガーミン・サーヴェロに被せられるも、トム・フィーラース(オランダ)が強力な牽きでキッテルを先頭に引き上げる。
後方でタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)とミカル・ゴラス(ポーランド、ヴァカンソレイユ・DCM)の接触に端を発した大規模な落車が発生する中、ラスト200mでフィーラースに発射されたキッテルがパワフルなスプリントを披露。キッテルがペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)らを寄せ付けない走りでガッツポーズを繰り出した。
キッテルが初出場のグランツールで初勝利。今年スキル・シマノでプロ入りしたばかりの23歳が、グランツールという大舞台でその才能を証明した。今シーズンの勝利数は13勝。これはフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)に次いで世界2位の勝利数だ。
「この勝利を上手く表現できない。ワンダフルだ。チームを招待してくれた主催者の期待に応えることができて良かった。自分にとってもチームにとっても、グランツールのステージ優勝は夢だった」。
2009年のツール・ド・フランスに続く2度目のグランツールを果たしたスキル・シマノにとっても、これが念願のグランツール初勝利。
集団コントロールで勝利に貢献した土井雪広も「何とも言えない喜びに浸った瞬間です。初めてグランツール参戦で、集団をコントロールし、逃げにのり、チームタイムトライアルは7位入賞。そして今日のステージ優勝。なんて言ったらいいかわからない1週間になりました!この一週間、膝の怪我から復帰し、グランツールのメンバーに入り、そしてテレビで感動を届けられた事にもとても満足しています」と喜ぶ。
キッテルは直前のツール・ド・ポローニュでスプリントで負け無しのステージ4勝を飾っている。身長188cm・体重80kgという大柄なスプリンターであり、同時にタイムトライアルも得意とする。昨年ロード世界選手権U23タイムトライアルでは銅メダルを獲得している。
「最後はチームのおかげで自分のスピードに持ち込めた。チームの働きがなければ、自分の力を上手く発揮できなかったと思う。120%の力でサポートしてくれたチームメイトを誇りに思う。彼らの仕事ぶりはパーフェクトだった」とキッテルはチームメイトを誉め讃えた。
喜びに沸くスキル・シマノに対し、落車したファラーは失意の表情でゴールラインを切った。他にも総合狙いのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)が落車に巻き込まれている。X線検査の結果、幸いファラーは骨折無し。チームの発表によると、臀部を激しく打ち付けたため、翌日の発走可否はドクターが判断する。
選手コメントは公式リリース、ならびに選手ブログより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第7ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、スキル・シマノ) 4h47'59"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
3位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
4位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)
5位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
6位 フアンホセ・アエド(アルゼンチン、サクソバンク・サンガード)
7位 トム・フィーラース(オランダ、スキル・シマノ)
8位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)
9位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)
10位 リー・ハワード(オーストラリア、HTC・ハイロード)
149位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ) 27h29'12"
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) +15"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +16"
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +23"
5位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック) +25"
6位 フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ) +41"
7位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック) +44"
8位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +49"
9位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)
10位 マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター) +52"
13位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD) +57"
18位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック) +1'13"
22位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) +1'26"
24位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ) +1'50"
25位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル) +1'53"
26位 カルロス・サストレ(スペイン、ジェオックス・TMC) +1'58"
31位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC) +2'41"
37位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +3'16"
183位 土井雪広(日本、スキル・シマノ) +1h30'18"
ポイント賞(プントス)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) 50pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 48pts
3位 パブロ・ラストラス(スペイン、モビスター) 48pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 20pts
2位 クリスアンケル・セレンセン(デンマーク、サクソバンク) 15pts
3位 クーン・デコルト(オランダ、スキル・シマノ) 13pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 7pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 12pts
3位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ) 21pts
チーム総合成績
1位 レディオシャック 81h56'06"
2位 ラボバンク +47"
3位 カチューシャ +2'22"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
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