2011/06/18(土) - 10:01
超級山岳を含む223kmの難関山岳コースで行なわれたツール・ド・スイス第7ステージで、トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)が独走逃げ切り。アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)の追撃を振り切る価値ある勝利を掴んだ。
3つのカテゴリー山岳を越える第7ステージは今大会最難関の「クイーンステージ」。標高2383mの超級山岳フリュエラ峠と2級山岳ノルベルツホーフを越え、最後はオーストリアの1級山岳セルファウスにゴールする。
コース全長は今大会最長の223kmで、クライマー系選手にとってはこの第7ステージが攻撃を仕掛ける最後のチャンスとなる。特に個人タイムトライアルでタイムを失うと目されるダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)にとっては、総合リードを広げる重要な局面だ。
レースは序盤からアタックの応酬。Aシュレクを含む逃げグループが早速形成されたが、総合16位(7分51秒遅れ)のブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、モビスター)が入っていたため、ランプレ・ISDはこれを封じ込める。
すでに総合で遅れ、ステージ優勝を狙う選手たちが挙ってアタック。続いて超級山岳フリュエラ峠でAシュレクを含む17名の逃げグループが形成された。
逃げメンバーは実に豪華。Aシュレクの他、総合17位(9分53秒遅れ)のヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)やジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)、クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)が入る。ヴァカンソレイユ・DCMはデヘント、ラグティン、マルカートの3名を送り込んだ。
17名の大きな先頭グループは最大7分のリードを得て、曇り空の山岳地帯を逃げる。一方のメイン集団は、総合2位と3位を擁するラボバンクが積極的にコントロール。同じく総合逆転を狙うレディオシャックもこれに加わった。
超級山岳フリュエラ峠と2級山岳ノルベルツホーフはいずれもAシュレクが先頭通過。やがて2級山岳の下り区間では逃げグループ内のアタックが続発し、人数を揃えるヴァカンソレイユ・DCMが波状攻撃でデヘントの独走に繋げる。ゴールまで25kmを残してデヘントが独走を開始した。メイン集団とのタイム差が一向に6分を切らない。
デヘントは追走グループから1分のリードを築き、最後の1級山岳セルファウスに突入する。登坂距離7.2km・平均勾配7%の登りを、デヘントはリズミカルなペダリングで進んでいく。後方では、ゴールまで9kmを残してAシュレクの単独追走が始まった。
しかしデヘントのペースは落ちない。デヘントは登り始めでの1分リードを有効に使い、ペースを崩さずに1級山岳セルファウスを登頂成功。最終的にAシュレクを35秒振り切り、余裕のガッツポーズでゴールに飛び込んだ。
デヘントはベルギー生まれの24歳。今年トップスポート・フラーンデレンからヴァカンソレイユ・DCMに移籍し、初戦のツアー・ダウンアンダー第4ステージで逃げ切って2位。パリ〜ニースではステージ優勝を飾るとともに、リーダージャージを3日間着用した。
この半シーズンで、山をこなせる逃げのスペシャリストとしての名声を得たデヘント。「ゴールまで25kmを残してアタックした。最後の登りに入る時点で1分のリードがあったけど、逃げ切れたことに驚いている。パリ〜ニースでのステージ優勝と並ぶ大きな勝利だ」。ワールドツアーレース2勝目に本人も驚いている。
一方、総合成績が懸かったメイン集団の闘いは、総合12位のトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)のアタックを切っ掛けに活発化する。一時的に総合3位のステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)ら3名が飛び出すも、イエロージャージを含むメイン集団はこれを封じる。
ライバルたちのアタックを、ライバルたちの動きを有効に利用して封じ込めるクネゴ。バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)やフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)のアタックも功を奏さず、クネゴはライバルたちをスプリントで下してゴールした。
近年にないほど絞れているクネゴは、モレマから1分23秒、クルイスウィックから1分36秒のリードを守り、イエロージャージをキープした。Fシュレクとのタイム差は1分41秒、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)とのタイム差は1分59秒。
総合リーダーとして安定感ある走りを見せたクネゴは「チームメイトのおかげで力を温存しながら最後の登りへ。ライバルたちのアタックに反応することに集中し、状況をコントロールした。ゴールラインでは全力でスプリント。ライバルたちを引き離せず、タイム差を広げることができなくて残念だ」とコメント。最終個人タイムトライアルでは、イエロージャージを懸けた熱い闘いが繰り広げられることになりそうだ。
選手コメントはレース公式サイト、ならびにランプレ・ISD公式サイトより。
ツール・ド・スイス2011第7ステージ結果
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) 5h38'42"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) +35"
3位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター) +48"
4位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) +51"
5位 アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ) +54"
6位 セルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ・DCM) +1'33"
7位 ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +1'34"
8位 マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM) +2'30"
9位 ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
10位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソバンク・サンガード)
個人総合成績
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) 27h09'49"
2位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +1'23"
3位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク) +1'36"
4位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) +1'41"
5位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック) +1'59"
6位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック) +2'38"
7位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +3'10"
8位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ) +3'11"
9位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム) +3'20"
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード) +3'22"
ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
山岳賞
アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)
中間スプリント賞
ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
チーム総合成績
レオパード・トレック
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
3つのカテゴリー山岳を越える第7ステージは今大会最難関の「クイーンステージ」。標高2383mの超級山岳フリュエラ峠と2級山岳ノルベルツホーフを越え、最後はオーストリアの1級山岳セルファウスにゴールする。
コース全長は今大会最長の223kmで、クライマー系選手にとってはこの第7ステージが攻撃を仕掛ける最後のチャンスとなる。特に個人タイムトライアルでタイムを失うと目されるダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)にとっては、総合リードを広げる重要な局面だ。
レースは序盤からアタックの応酬。Aシュレクを含む逃げグループが早速形成されたが、総合16位(7分51秒遅れ)のブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、モビスター)が入っていたため、ランプレ・ISDはこれを封じ込める。
すでに総合で遅れ、ステージ優勝を狙う選手たちが挙ってアタック。続いて超級山岳フリュエラ峠でAシュレクを含む17名の逃げグループが形成された。
逃げメンバーは実に豪華。Aシュレクの他、総合17位(9分53秒遅れ)のヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)やジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)、クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)が入る。ヴァカンソレイユ・DCMはデヘント、ラグティン、マルカートの3名を送り込んだ。
17名の大きな先頭グループは最大7分のリードを得て、曇り空の山岳地帯を逃げる。一方のメイン集団は、総合2位と3位を擁するラボバンクが積極的にコントロール。同じく総合逆転を狙うレディオシャックもこれに加わった。
超級山岳フリュエラ峠と2級山岳ノルベルツホーフはいずれもAシュレクが先頭通過。やがて2級山岳の下り区間では逃げグループ内のアタックが続発し、人数を揃えるヴァカンソレイユ・DCMが波状攻撃でデヘントの独走に繋げる。ゴールまで25kmを残してデヘントが独走を開始した。メイン集団とのタイム差が一向に6分を切らない。
デヘントは追走グループから1分のリードを築き、最後の1級山岳セルファウスに突入する。登坂距離7.2km・平均勾配7%の登りを、デヘントはリズミカルなペダリングで進んでいく。後方では、ゴールまで9kmを残してAシュレクの単独追走が始まった。
しかしデヘントのペースは落ちない。デヘントは登り始めでの1分リードを有効に使い、ペースを崩さずに1級山岳セルファウスを登頂成功。最終的にAシュレクを35秒振り切り、余裕のガッツポーズでゴールに飛び込んだ。
デヘントはベルギー生まれの24歳。今年トップスポート・フラーンデレンからヴァカンソレイユ・DCMに移籍し、初戦のツアー・ダウンアンダー第4ステージで逃げ切って2位。パリ〜ニースではステージ優勝を飾るとともに、リーダージャージを3日間着用した。
この半シーズンで、山をこなせる逃げのスペシャリストとしての名声を得たデヘント。「ゴールまで25kmを残してアタックした。最後の登りに入る時点で1分のリードがあったけど、逃げ切れたことに驚いている。パリ〜ニースでのステージ優勝と並ぶ大きな勝利だ」。ワールドツアーレース2勝目に本人も驚いている。
一方、総合成績が懸かったメイン集団の闘いは、総合12位のトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)のアタックを切っ掛けに活発化する。一時的に総合3位のステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)ら3名が飛び出すも、イエロージャージを含むメイン集団はこれを封じる。
ライバルたちのアタックを、ライバルたちの動きを有効に利用して封じ込めるクネゴ。バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)やフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)のアタックも功を奏さず、クネゴはライバルたちをスプリントで下してゴールした。
近年にないほど絞れているクネゴは、モレマから1分23秒、クルイスウィックから1分36秒のリードを守り、イエロージャージをキープした。Fシュレクとのタイム差は1分41秒、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)とのタイム差は1分59秒。
総合リーダーとして安定感ある走りを見せたクネゴは「チームメイトのおかげで力を温存しながら最後の登りへ。ライバルたちのアタックに反応することに集中し、状況をコントロールした。ゴールラインでは全力でスプリント。ライバルたちを引き離せず、タイム差を広げることができなくて残念だ」とコメント。最終個人タイムトライアルでは、イエロージャージを懸けた熱い闘いが繰り広げられることになりそうだ。
選手コメントはレース公式サイト、ならびにランプレ・ISD公式サイトより。
ツール・ド・スイス2011第7ステージ結果
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) 5h38'42"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) +35"
3位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター) +48"
4位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) +51"
5位 アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ) +54"
6位 セルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ・DCM) +1'33"
7位 ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット) +1'34"
8位 マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM) +2'30"
9位 ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
10位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソバンク・サンガード)
個人総合成績
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) 27h09'49"
2位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +1'23"
3位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク) +1'36"
4位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) +1'41"
5位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック) +1'59"
6位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック) +2'38"
7位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +3'10"
8位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ) +3'11"
9位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム) +3'20"
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード) +3'22"
ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
山岳賞
アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)
中間スプリント賞
ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
チーム総合成績
レオパード・トレック
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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