2011/06/15(水) - 11:06
ステージ2連勝を果敢に狙ったペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)の背中から、アルカンシェルが飛び出した。登りスプリントを制したトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)が、昨年ロード世界選手権以来の勝利。大きく両手を広げる風格あるガッツポーズが決まった。
3日間に渡って、TTスペシャリストやクライマー向きのステージが続いたツール・ド・スイス。4日目の第4ステージはスプリンターお待ちかねの平坦ステージだ。
とは言っても完全にフラットなコースではなく、前半に2級山岳、後半に2つの3級山岳が設定されている。最後はゴール地点フットヴィルを中心とした25kmの周回コースが登場。合計2回登場する3級山岳ピスヴィルがスプリンターにとって厄介な存在だ。
序盤から逃げたのは3名。青基調のチームジャージを着るシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)とカザーレ・ベネデッティ(イタリア、チームネットアップ)、そして青いスプリントジャージを着るロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)。太陽に照らし出された緑豊かな丘陵地帯を、青いエスケープが駆け抜ける。
この日はチームスカイ、HTC・ハイロード、オメガファーマ・ロットが集団コントロールを分担。中でもベン・スウィフト(イギリス)、グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)、クリストファー・サットン(オーストラリア)を揃えるチームスカイが最も積極的で、後半にかけて集団牽引を一手に担う。
最大5分まで広がったタイム差は、ゴールまで32kmを残して早くも1分を切る。ツールに向けてまだ調子が整っていないシャヴァネルは無駄な抵抗を見せないままラスト18kmで吸収。モンドリーとベネデッティもしばらくして吸収された。
この日最後のカテゴリー山岳、ゴールの12km手前に位置する最後の3級山岳ルピスヴィルに入ると、ピーターとマーティンのベリトス双子兄弟(スロバキア、HTC・ハイロード)が集団牽引。マシュー・ゴス(オーストラリア)でのスプリント勝利を狙うHTC・ハイロードによるハイペースが、ライバルスプリンターを苦しめる。
やがて3級山岳ルピスヴィルの頂上が近づくとセルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ・DCM)が強烈なアタックを仕掛け、ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)とダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が合流して3名先行。しかし協調体制が築けず、ゴール8km手前で吸収される。
アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)、サットン、ヘンダーソンといったスプリンターがすでに集団から脱落していたため、スプリンターチームの支配力は低下。その隙を突いて、ラスト4.5kmでイェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)がアタック。
ハンドルを鷲掴みにし、鬼の形相で独走したフォイクトだったが、ラスト1.8kmで引き戻される。スプリンターを欠くレオパード・トレックはアタックによる突破を継続。ラスト1kmを切って飛び出したスチュアート・オグレディ(オーストラリア)もラスト400mで吸収された。
スプリンターたちが互いの動きに目を配りながらラスト200mで、ポイント賞ジャージを着るサガンが勢い良く飛び出した。登り勾配を物ともしない加速力で抜け出すサガン。すかさず反応したアルカンシェルのフースホフトを引き連れて、サガンがゴールラインに向かう。
しかしゴール間際になってフースホフトが一枚上手のスプリント力を披露。サガンをかわした虹色のアルカンシェルが、両手を広げてゴールした。
昨年のロード世界選手権で優勝し、世界チャンピオンに輝いたフースホフトにとって、これがシーズン初勝利。“アルカンシェルの呪い”を体現するかのごとく、今シーズンは勝利から見放されていた。「今年は何度もチャレンジしていたけど、勝利のチャンスが回って来なかった。このアルカンシェルを着てツール・ド・スイスで初優勝を飾ることができたので、ゴールの瞬間は本当に嬉しかったよ」。
フースホフトは2005年と2009年のツール・ド・フランスでポイント賞を獲得している。近年は山岳力を身につけており、ツールのポイント賞争いでは今年も有利に闘いを進めることができるだろう。
33歳でベテランの域に達しつつある世界チャンピオンは、ステージ2連勝を狙った21歳のサガンを賞賛する。「彼はビッグエンジンを搭載しており、なおかつ才能に溢れている。今後もロードレース界は彼の活躍を目の当たりにすることになると思うよ」。
総合上位陣は集団内でゴール。ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)が54秒のリードを保ってイエロージャージを守っている。
選手コメントはレース公式サイトより。
ツール・ド・スイス2011第4ステージ結果
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ) 4h46'05"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
3位 マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM) +02"
4位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
5位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
6位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)
7位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
8位 ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップ)
9位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)
10位 ダリル・インペイ(南アフリカ、チームネットアップ)
個人総合成績
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) 12h29'23"
2位 マウリシオ・ソレール(コロンビア、モビスター) +54"
3位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +1'16"
4位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +1'19"
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード) +1'21"
6位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) +1'25"
7位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック) +1'32"
8位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ) +1'53"
9位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク) +2'00"
10位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック) +2'10"
ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
山岳賞
ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)
中間スプリント賞
ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
チーム総合成績
ラボバンク
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
3日間に渡って、TTスペシャリストやクライマー向きのステージが続いたツール・ド・スイス。4日目の第4ステージはスプリンターお待ちかねの平坦ステージだ。
とは言っても完全にフラットなコースではなく、前半に2級山岳、後半に2つの3級山岳が設定されている。最後はゴール地点フットヴィルを中心とした25kmの周回コースが登場。合計2回登場する3級山岳ピスヴィルがスプリンターにとって厄介な存在だ。
序盤から逃げたのは3名。青基調のチームジャージを着るシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)とカザーレ・ベネデッティ(イタリア、チームネットアップ)、そして青いスプリントジャージを着るロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)。太陽に照らし出された緑豊かな丘陵地帯を、青いエスケープが駆け抜ける。
この日はチームスカイ、HTC・ハイロード、オメガファーマ・ロットが集団コントロールを分担。中でもベン・スウィフト(イギリス)、グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)、クリストファー・サットン(オーストラリア)を揃えるチームスカイが最も積極的で、後半にかけて集団牽引を一手に担う。
最大5分まで広がったタイム差は、ゴールまで32kmを残して早くも1分を切る。ツールに向けてまだ調子が整っていないシャヴァネルは無駄な抵抗を見せないままラスト18kmで吸収。モンドリーとベネデッティもしばらくして吸収された。
この日最後のカテゴリー山岳、ゴールの12km手前に位置する最後の3級山岳ルピスヴィルに入ると、ピーターとマーティンのベリトス双子兄弟(スロバキア、HTC・ハイロード)が集団牽引。マシュー・ゴス(オーストラリア)でのスプリント勝利を狙うHTC・ハイロードによるハイペースが、ライバルスプリンターを苦しめる。
やがて3級山岳ルピスヴィルの頂上が近づくとセルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ・DCM)が強烈なアタックを仕掛け、ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)とダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が合流して3名先行。しかし協調体制が築けず、ゴール8km手前で吸収される。
アンドレ・グライペル(ドイツ、オメガファーマ・ロット)、サットン、ヘンダーソンといったスプリンターがすでに集団から脱落していたため、スプリンターチームの支配力は低下。その隙を突いて、ラスト4.5kmでイェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)がアタック。
ハンドルを鷲掴みにし、鬼の形相で独走したフォイクトだったが、ラスト1.8kmで引き戻される。スプリンターを欠くレオパード・トレックはアタックによる突破を継続。ラスト1kmを切って飛び出したスチュアート・オグレディ(オーストラリア)もラスト400mで吸収された。
スプリンターたちが互いの動きに目を配りながらラスト200mで、ポイント賞ジャージを着るサガンが勢い良く飛び出した。登り勾配を物ともしない加速力で抜け出すサガン。すかさず反応したアルカンシェルのフースホフトを引き連れて、サガンがゴールラインに向かう。
しかしゴール間際になってフースホフトが一枚上手のスプリント力を披露。サガンをかわした虹色のアルカンシェルが、両手を広げてゴールした。
昨年のロード世界選手権で優勝し、世界チャンピオンに輝いたフースホフトにとって、これがシーズン初勝利。“アルカンシェルの呪い”を体現するかのごとく、今シーズンは勝利から見放されていた。「今年は何度もチャレンジしていたけど、勝利のチャンスが回って来なかった。このアルカンシェルを着てツール・ド・スイスで初優勝を飾ることができたので、ゴールの瞬間は本当に嬉しかったよ」。
フースホフトは2005年と2009年のツール・ド・フランスでポイント賞を獲得している。近年は山岳力を身につけており、ツールのポイント賞争いでは今年も有利に闘いを進めることができるだろう。
33歳でベテランの域に達しつつある世界チャンピオンは、ステージ2連勝を狙った21歳のサガンを賞賛する。「彼はビッグエンジンを搭載しており、なおかつ才能に溢れている。今後もロードレース界は彼の活躍を目の当たりにすることになると思うよ」。
総合上位陣は集団内でゴール。ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)が54秒のリードを保ってイエロージャージを守っている。
選手コメントはレース公式サイトより。
ツール・ド・スイス2011第4ステージ結果
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ) 4h46'05"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
3位 マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM) +02"
4位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
5位 オスカル・フレイレ(スペイン、ラボバンク)
6位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)
7位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシングチーム)
8位 ゼネク・スティバル(チェコ、クイックステップ)
9位 トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)
10位 ダリル・インペイ(南アフリカ、チームネットアップ)
個人総合成績
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) 12h29'23"
2位 マウリシオ・ソレール(コロンビア、モビスター) +54"
3位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) +1'16"
4位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク) +1'19"
5位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード) +1'21"
6位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) +1'25"
7位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック) +1'32"
8位 ダニーロ・ディルーカ(イタリア、カチューシャ) +1'53"
9位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク) +2'00"
10位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック) +2'10"
ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
山岳賞
ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)
中間スプリント賞
ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
チーム総合成績
ラボバンク
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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