「今日のコースは、レースブックを見た時から自分向きだと思っていた。予めコース試走していたから、どの場所でどのポジションに付くべきか把握していた」。プロ1年目の22歳、ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード)がリヨンの登りスプリントで勝利した。その堂々とした走りは、ドイツの復権を感じさせるものだ。

雨の中、レインジャケットを着て走るカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)雨の中、レインジャケットを着て走るカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Cor Vos6月7日に行なわれたクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第2ステージ。前半にかけて雨に降られる生憎の天気の中、4級山岳を4つ含む179kmコースで行なわれた。

ゴール地点は、都市圏の人口がフランス第2の大都市リヨン。街を見下ろす丘の町クロワ・ルースに向かって、平均勾配4.8%の4級山岳を駆け上がる。決してスプリンター向きとは言えないコースレイアウトだが、デゲンコルブは落ち着き払った走りでスプリントに持ち込み、そして勝利した。

序盤から逃げたユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)ら3名序盤から逃げたユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)ら3名 photo:Cor Vosレースはユルゲン・ファンデワール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、マーティン・チャリンギ(オランダ、ラボバンク)、ブリース・フェイユ(フランス、レオパード・トレック)の3名がエスケープ。マイヨジョーヌを擁するアスタナがタイム差を5分以内に抑え込む。

スプリント狙いのコフィディスやガーミン・サーヴェロが集団コントロールを開始すると、タイム差は慌ただしく縮小。今年のパリ〜ルーベで表彰台に登ったチャリンギが独走に持ち込んだが、ラスト15kmで吸収された。

マイヨジョーヌを着て走るアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)マイヨジョーヌを着て走るアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) photo:Cor Vosガーミン・サーヴェロによる横風区間での奇襲ペースアップは集団を破壊する。カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)やブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)が後方に取り残されるシーンも。しかし第2集団の懸命の追撃によって、ゴール8km手前で集団は一つに戻った。

地元のサミュエル・ドゥムラン(フランス)をスプリントに導きたいコフィディスが積極的に集団をリードし、最後の4級山岳クロワ・ルースに突入。ラスト1kmを切ってからマルコ・バンディエラ(イタリア、クイックステップ)がアタックし、続いてトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)がアタックを繰り出す。

パリ〜ルーベ覇者のヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・サーヴェロ)が強烈に集団のペースを上げるパリ〜ルーベ覇者のヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・サーヴェロ)が強烈に集団のペースを上げる photo:Cor Vosしかしコフィディス勢がこれらのアタックを封じ込め、最終ストレートでドゥムランを発射する。地元での勝利に向けて加速するドゥムラン。しかし付き位置を確保していたデゲンコルブの加速力がドゥムランを射落とした。

「僕はプロ1年目の新人だけど、最後の登りで誰をマークすべきかは心得ていた。集団の先頭にはドゥムランのスプリントを狙うコフィディスの選手が3名上がっていたし、ヴォクレールのアタックも予想通り。3番手という最高のポジションで最終コーナーを抜け、最短コースでスプリントしたんだ」。デゲンコルブはネオプロらしからぬ落ち着いた判断でスプリントに持ち込んだ。

スプリントでドゥムランらを破ったジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード)スプリントでドゥムランらを破ったジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード) photo:Cor Vosデゲンコルブは昨年のロード世界選手権U23ロードレースで銀メダルを獲得したネオプロ。今年HTC・ハイロードでプロデビューを果たし、ヴォルタ・アン・アルガルヴェ西フランドル3日間レースでのステージ優勝を含め、今シーズンすでに4勝を飾っていた。特に登りスプリントで強さを発揮するパンチャー系のスプリンターだ。

「これがワールドツアーレースでの初勝利。途方もない嬉しさに包まれている。プロ選手として最高のスタートを切ることができたけど、ツール・ド・フランス出場はまだ先の話。来年、もしくは再来年になると思う」。

マイヨジョーヌはアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)がキープマイヨジョーヌはアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)がキープ photo:Cor Vosデゲンコルブは弱冠22歳。「僕やチームメイトのトニ・マルティンは、ドイツの新しいジェネレーションだ。僕らの活躍が、ジャーマンロードレースのレベルアップに繋がれば」。相次ぐドーピングスキャンダルによってトーンダウンしているドイツを牽引する新たな息吹だ。

総合上位陣はステージ優勝争いに絡まずにゴール。マイヨジョーヌはアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)が守っている。登りで集団が割れ、ステージ15位以下に6秒差がついたため、ヴィノクロフの総合リードは11秒に広がっている。

ドーフィネの総合争いにおいて重要な鍵を握るのが、翌第3ステージの個人タイムトライアルだ。グルノーブルを中心にしたコースは、6週間後に行なわれるツール・ド・フランス最終日前日の個人TTと全く一緒。マイヨジョーヌ狙いの選手にとって良いリハーサルになるのは間違いない。ヴィノクロフは「明日の個人TTは本気のテストになる。最終走者として、良い走りができると思う」と自信を覗かせる。

前日のステージ優勝者で、総合2位についていたユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)はラスト1200mでパンク。1分近く遅れてゴールしたが、救済措置によって集団ゴール扱いに。ファンデンブロックはパニックに陥ったことを打ち明ける。「ラスト3km以内のパンクだったけど、今日は登りゴールだったから、いつも通りの救済措置が適応されるのかどうか自信が無かった。だから少しパニックになりながらゴール。救済されると分かったのはゴール後だった」。

ツール・ド・フランスを狙うファンデンブロックは、まだまだ本調子ではないと言う。「総合2位という成績をキープできている。でもまだ自分のリズムを模索している段階で、脚にスピードが戻ってきていない。明日の個人TTでどのような成績を残せるのか分からないよ。調子の波はあくまでもツール・ド・フランスに合わせている」。

アシストとしてヴォクレールを支えた新城幸也(ユーロップカー)は勝負に絡まず、ステージ96位でゴールしている。

選手コメントはレース公式サイトより。


クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2011第2ステージ結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、HTC・ハイロード)         4h02'39"
2位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)
3位 ポール・マルテンス(ドイツ、ラボバンク)
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
5位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)
6位 イェーレ・ファネンデルト(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
7位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ランプレ・ISD)
8位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
9位 ファビアン・ウェーグマン(ドイツ、レオパード・トレック)
10位 ロブ・ルーグ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)
96位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                  +38"

個人総合成績
1位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)      7h45'48"
2位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)    +11"
3位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)            +11"
4位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)       +13"
5位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)        +17"
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)             +23"
7位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)        +26"
8位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)             +27"
9位 ロブ・ルーグ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)            +29"
10位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)                +34"
84位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                  +3'32"

ポイント賞
ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)

山岳賞
ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)

新人賞
ロブ・ルーグ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)

チーム総合成績
ラボバンク

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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