逃げを全て封じ込めた精鋭集団が、丘の上に佇むロモンの登りに突入した。短い登りで爆発的に加速したダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)が、ビッグネームを打ち破る勝利。不本意な結果に終わったアルデンヌ・クラシックの悔しさを、このロマンディで晴らした。

沿道で観戦するパット・マックエイドUCI会長沿道で観戦するパット・マックエイドUCI会長 photo:Kei Tsuji2011年4月28日、ツール・ド・ロマンディ第2ステージが、スイス西部、レマン湖北側の丘陵地帯を舞台に行なわれた。

丘上都市ロモンを起点とする3つの周回コースが用意され、171.8kmに渡って起伏に富んだコースが続く。前日のような標高のある本格山岳は登場しないが、2級山岳と1級山岳を含むアップダウンが断続的に続き、獲得標高差は今大会最大の1855m。ラスト1kmを切ってから、標高差60mを駆け上がってゴールを迎える。

別府史之(日本、レディオシャック)も集団先頭で積極的に動く別府史之(日本、レディオシャック)も集団先頭で積極的に動く photo:Kei Tsujiスタート前に「昨日のステージは(ゴール22km手前の)1級山岳の下りで中切れが起こってしまって、メイン集団から脱落してしまった。でも調子の良さを確認できました」と話すのは、前日のステージを67位で終えた別府史之(レディオシャック)。この日はレース序盤のアタック合戦に加わったが、逃げに乗ることはできなかった。

2時間を超えるアタック合戦の末に、103km地点でようやく逃げが決まる。メイン集団を抜け出したのは、クリストフ・ケルヌ(フランス、ユーロップカー)とマキシム・ブエ(フランス、アージェードゥーゼル)の2人。

タイム差は3分まで広がったが、ゴール16km手前の1級山岳ル・ジブルーでペースの上がった集団に飲み込まれてしまう。ペースが上がったメイン集団からトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)とシルヴェスタ・シュミット(ポーランド、リクイガス・キャノンデール)が飛び出しを図るも、アスタナが率いる集団がこれを封じ込める。

牧草が生い茂る丘陵地帯を進む牧草が生い茂る丘陵地帯を進む photo:Kei Tsuji

丘の上に佇むロモンの街に向かう丘の上に佇むロモンの街に向かう photo:Kei Tsuji1級山岳ル・ジブルー通過後、縮小した集団からデーヴィット・ミラー(イギリス、ガーミン・サーヴェロ)、ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)、ダリオダヴィデ・チオーニ(イタリア、チームスカイ)、ミカエル・シュレル(フランス、アージェードゥーゼル)が飛び出して先行。しかしロモンへの登りが始まるラスト1kmで、先頭4名は精鋭集団に吸収される。

両手を広げてゴールするダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)両手を広げてゴールするダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Kei Tsuji最後は30名弱に絞られた集団によるスプリント勝負に持ち込まれ、最終ストレートで爆発的な加速を見せたクネゴが勝利。後続のカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)やアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)に2秒差をつける圧勝だった。

「スプリント前の位置取りに細心の注意を払って、最終コーナーで力を爆発させた」。クネゴはレース後の記者会見でスプリントの様子を事細かに説明する。クネゴはこれが今シーズン3勝目。シーズン最大の目標に掲げていたアルデンヌ・クラシック直後のこのロマンディで、久々の世界トップレースでの勝利を手にした。

リーダージャージを守ったパヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ)リーダージャージを守ったパヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ) photo:Kei Tsuji「今年最大の目標だったアルデンヌ・クラシックでは、落車やトラブル続きで悔しさだけが残った。難コースでの今日の勝利で報われた気分だ」。

総合タイムを挽回したクネゴは、ブラットから38秒差の総合2位にジャンプアップ。しかし本人は総合優勝に意欲を見せない。「このロマンディには有力選手が多く出場しているし、苦手な個人タイムトライアルがあるから総合優勝は難しい。優勝候補を挙げるならヴィノクロフかな。今はこのステージ優勝に満足しているよ」。

6分39秒遅れでゴールした新城幸也(日本、ユーロップカー)6分39秒遅れでゴールした新城幸也(日本、ユーロップカー) photo:Kei Tsujiこのロマンディ終了とともに短い休養期間に入るクネゴ。6月のツール・ド・スイスで再始動し、ツール・ド・フランスに出場する予定だ。

終盤に崩れた天候とアップダウンの連続によって多くの選手が遅れる中、フミはリーダージャージを含む1分28秒遅れの集団でゴール。フミは「終盤はだいぶ人数が少なくなって、サバイバルな感じだった」と振り返る。

フミはレース序盤のアタック合戦から身を退くと、ボトル運びに従事し、雨降りのレース終盤に備えてレインジャケットを運搬。アシストとしての仕事を全うした。「ここ2日間は雨降りで寒くて、しかもアップダウンを物凄いスピードで走るのでハイレベル。数年前に比べてもよく走れてると思います」と、好感触を得ている様子。レディオシャックは、総合力のあるヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア)を総合17位に送り込んでいる。

「登りの厳しさが分からないので様子を見ながら走ります」と語っていた新城幸也(ユーロップカー)は、レース中盤まで集団前方に姿を見せていたが、チームメイト(ケルヌ)の逃げが決まったことで力を温存。6分39秒遅れの集団内で、小雨がパラつくロモンに辿り着いている。総合上位に選手を送り込めていないユーロップカーは、翌日からもステージ優勝を狙った走りに徹する。

レース中盤、ボトル運びに従事する別府史之(日本、レディオシャック)レース中盤、ボトル運びに従事する別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsuji集団前方で走る新城幸也(日本、ユーロップカー)集団前方で走る新城幸也(日本、ユーロップカー) photo:Kei Tsuji


レースの模様はフォトギャラリーにて!

ツール・ド・ロマンディ2011第2ステージ結果
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)         4h10'53"
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)     +02"
3位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
4位 ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)
5位 ダビ・ロペスガルシア(スペイン、モビスター)
6位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)
7位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)
8位 トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)
9位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC)
10位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)
57位 別府史之(日本、レディオシャック)               +1'28"
100位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                +6'39"

個人総合成績
1位 パヴェル・ブラット(ロシア、カチューシャ)            8h43'39"
2位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)           +38"
3位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)     +42"
4位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)
5位 ゴルカ・ベルドゥーゴ(スペイン、エウスカルテル)          +46"
6位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)       +50"
7位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)          +51"
8位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシングチーム)
9位 ピーター・ウェーニング(オランダ、ラボバンク)
10位 トーマス・ローレッガー(オーストリア、レオパード・トレック)   +52"
57位 別府史之(日本、レディオシャック)               +4'27"
115位 新城幸也(日本、ユーロップカー)               +18'35"

山岳賞
オレクサンドル・クヴァチュク(ウクライナ、ランプレ・ISD)

中間スプリント賞
ジャック・ボブリッジ(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)

新人賞
ピーター・ステティーナ(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)

チーム総合成績
モビスター

text&photo:Kei Tsuji in Romont, Switzerland

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