3月6日、東京都八王子市の浅川河川敷で東京シクロクロスが開催された。シクロクロス熱が高まる関東圏において、東京車連と八王子車連の共催となる初の大会に、97人の参加者が集まった。最上級のクラスAでは向山浩司(GRUPPO AQUATAMA)が優勝した。

河川敷ので手で観戦。クラスAの先頭列車が猛スピードで走る河川敷ので手で観戦。クラスAの先頭列車が猛スピードで走る (c)Makoto.AYANO

浅川の河川敷に造成されたクロス会場浅川の河川敷に造成されたクロス会場 (c)Makoto.AYANO土手に座ってレースを観戦土手に座ってレースを観戦 (c)Makoto.AYANO


東京シクロクロス Springは、「兼 八王子市民体育大会自転車競技クロスカントリー競走」の副題がつくとおり東京都自転車競技連盟と八王子自転車競技連盟の共催大会だ。
八王子は1964年(昭和39年)に日本で開かれた第18回夏季オリンピックの、自転車ロードレースの舞台となった土地だ。「ふたたびオリンピックを東京に」の五輪招致活動もあって、しかも東京は2013年は東京国体の開催地とある。「東京都と八王子市で、何か自転車の大会を開催したい」ということが開催のきっかけになった(東京車連 中村賢ニさん談)とのことだ。

土手から観戦できるシクロクロスだ土手から観戦できるシクロクロスだ (c)Makoto.AYANOコースは河原の草地に造成されたコースは河原の草地に造成された (c)Makoto.AYANO

コースは八王子市の中心部に近い、八王子市役所の目の前の浅川の河川敷に設定された。鶴巻橋のたもとにある野球やサッカーが出来る広場を拠点に、河原に広がる草地を切り開いでコースが造成された。ロードレースのように道路使用許可をとる必要がなく、手作りで大会を開催できるのもシクロクロスの手軽なところだ。
コース状況は概ねフラットだが、河原特有の石がごろごろした区間もあり、サスペンションなしのクロス車ではつらいガレ場もあった。しかし平坦区間も長く、機材選択は悩ましいところ。完全ドライで、泥区間は無かった。

コースのすぐ横を多摩川の支流、浅川が流れるコースのすぐ横を多摩川の支流、浅川が流れる (c)Makoto.AYANO今回の参加カテゴリーは以下のように分けられた。

競技種別
クラスA 50分 男子登録者
クラスB 35分 中級・上級未登録競技者(女子登録者参加可)
クラスC 20分 ビギナー男子
クラスF 15分 女子 登録者・未登録者を問わず
クラスK 15分 3月6日現在で13歳未満~7歳以上の男女

全国の大会の統一基準をつくっている、国内のシクロクロス競技を主催するオルガナイザーの連合協議組織であるAJOCC(日本シクロクロス競技主催者協会)の定めるカテゴリー分けにはならっておらず、八王子クロス独自のクラス分けとなっている。シクロクロスバイクまたはMTBでの参加が可能で、タイヤ幅規定もとくにないため、MTBでの参加者も多かった。その点はシクロクロス車を所有していない人でも参加しやすかったようだ。


各クラスのレースダイジェスト

クラスF・K
女子と7~13歳の選手が同時スタート。8人が出走する女子はGPミストラルでも活躍した菅澤隆美(W.V.OTA)が先行するが、中盤まで後方につけて様子を伺っていた吉田千春子がスパートし、独走で優勝を飾った。吉田はかつてインラインホッケーの日本代表チームの選手として世界選手権で優勝した経験のある逸材で、シクロクロスを始めたばかり。ロードレースではLEGONで走り、富士チャレンジ200のチーム女子3位などを経験。「今後はクロスで頑張りたい」と頼もしく語る。

GPミストラルでの経験がある菅澤隆美(W.V.OTA)が先行GPミストラルでの経験がある菅澤隆美(W.V.OTA)が先行 (c)Makoto.AYANO吉田千春子がスパートし、独走に入る吉田千春子がスパートし、独走に入る (c)Makoto.AYANO

クラスK(キッズ) 15分のレースクラスK(キッズ) 15分のレース (c)Makoto.AYANO女子に混じって勢い良く走るキッズのトップ女子に混じって勢い良く走るキッズのトップ (c)Makoto.AYANO

クラスC
「ビギナー男子」にあたるクラスで20分のレース。間野友輔が飛び出し、後半は内池裕治(八ヶ岳シクロクロスクラブ)とテール・トゥ・ノーズのバトルに。クロス初経験の内池が最終周回の最終コーナーまでリードするが、転倒のミス。落ち着いた走りで追っていた間野友輔が交わして優勝した。

浅川河川敷でスタートを待つクラスC浅川河川敷でスタートを待つクラスC (c)Makoto.AYANOデッドヒートを繰り広げるクラスCの中位集団デッドヒートを繰り広げるクラスCの中位集団 (c)Makoto.AYANO

クラスC優勝の間野友輔クラスC優勝の間野友輔 (c)Makoto.AYANO2位につける内池裕治(八ヶ岳シクロクロスクラブ)2位につける内池裕治(八ヶ岳シクロクロスクラブ) (c)Makoto.AYANO


クラスB 優勝は16歳の前田公平(エンドレス・プロライド)クラスB 優勝は16歳の前田公平(エンドレス・プロライド) (c)Makoto.AYANOクラスB
JCF未登録者による35分のレース。スタートから飛び出したのは沢田時のチームメイトである16歳の前田公平(エンドレス・プロライド)。前田は河原の悪路区間を重視してMTBを選択。追うのはシクロワイアード編集部の綾野 真(チバポンズ)。しかし綾野は中盤以降スピードが落ち、筋野俊昭(日野自動車レーシングチーム)と伊藤博彦(桜高競輪部)の2人に交わされる。前田のリードは2人の追走を寄せ付けず、最後は大きく差を広げて余裕の独走ゴールを飾った。
16歳の前田は、2010年のマウンテンバイクJシリーズのエキスパートランキングで20位の選手(1位は沢田時)沢田と揃って2人は今年エリートに昇格して走る。

クラスA 向山浩司(GRUPPO AQUATAMA)が独走勝利

位置取り闘いを繰り広げるクラスA位置取り闘いを繰り広げるクラスA (c)Makoto.AYANO

最上級となるクラスAはJCF登録者のレースで、レース時間は50分。スタートからスピードが上がり、一列棒状の展開に。鈴木祐一率いるライズライド勢と向山浩司(GRUPPO AQUATAMA)らが先頭で激しく競り合うが、ほどなく向山の独走が始まる。2位で追うのは、かつて本場のスーパープレスティージュでも完走経験をもつ足立晴信(Gruppo Chicorissimo)。

トレインを組んでスピードをあげるライズライド勢トレインを組んでスピードをあげるライズライド勢 (c)Makoto.AYANO2位のアダチモフこと足立晴信(Gruppo Chicorissimo) 2位のアダチモフこと足立晴信(Gruppo Chicorissimo)  (c)Makoto.AYANO

圧勝した向山浩司(GRUPPO AQUATAMA)圧勝した向山浩司(GRUPPO AQUATAMA) (c)Makoto.AYANO

しかし向山の勢いは衰えること無くハイペースを刻み、足立を大きく引き離してゴール。第1回大会Aクラスの覇者となった。
向山はGPミストラルシリーズなどでは優勝経験がなかったが、春からのロードシーズンをJプロツアーレベルで走るための練習を積んでおり、その下地が優勝につながったという。

クラスA優勝は向山浩司(GRUPPO AQUATAMA)、2位足立晴信(Gruppo Chicorissimo)、3位代田和明(VOLCA)クラスA優勝は向山浩司(GRUPPO AQUATAMA)、2位足立晴信(Gruppo Chicorissimo)、3位代田和明(VOLCA) (c)Makoto.AYANO優勝の吉田千春子(右)と2位の菅澤隆美(W.V.OTA)優勝の吉田千春子(右)と2位の菅澤隆美(W.V.OTA) (c)Makoto.AYANO


来年の開催は未定 関東でのシリーズ戦の布石となるか?

東京車連 中村賢ニさん東京車連 中村賢ニさん (c)Makoto.AYANO3月とあってすでに全国のシクロクロスはシーズンを終えている時期の開催。そして突然できた大会だった。大会告知はホームページだけで行われたが、熱心なシクロクロスファンがTwitterなどで知らせ合い、参加者はすぐに定員に達して申し込みは非常に早く締め切られたようだ。
「初めての大会なのに反応が良くて驚きました。第1回目ということもあって、あまり多くの参加者が集まると主催者側に対応するキャパがないため、やむなく小規模な大会としました。来年も開催するかどうかはまだわかりませんが、シクロクロス熱の高まりを感じた非常に良い大会にすることができました」と中村賢ニさんは言う。

今回の大会にはGPミストラルシリーズのオーガナイザーの大山智さん、関東シクロクロス主催者の須藤むつみさんも参加チームあるいはスタッフとして顔を揃えた。
「盛り上がる関西クロスを見習って、関東でもシクロクロスをシリーズ戦として大きくしていこう」という希望の声はたくさん挙がっているが、オルガナイザー同士が話しあってシリーズ戦として共通のものをつくれるかどうかは今後の課題になりそうだ。いずれにせよ日を追う毎にホットになるシクロクロスシーン、「今冬から始まる来シーズン」の展開が楽しみだ。

各クラスのリザルトは追って東京都自転車競技連盟のホームページにアップされる予定だ。

すべてのクラスを詳細に写真でお届けするフォトギャラリー(picasa)はこちら

photo&text:Makoto.AYANO