2010/09/02(木) - 06:41
2010年9月2日、ブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIヒストリカル)の第5ステージが行なわれ、混戦のスプリント勝負でタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)が勝利。ロングスプリントを仕掛けながらも失速したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)は3位に終わった。
2日間に渡って激しい上りスプリントが繰り広げられたブエルタ前半戦。3日ぶりに主役の座がスプリンターたちの手に戻ってきた。アンダルシア州からムルシア州に移行する第5ステージはカテゴリー山岳が皆無の平坦ステージ。スプリンターたちがこのチャンスを逃すわけがない。
前日に亡くなった2度のツールチャンピオン、ローラン・フィニョン(フランス)に捧げる1分間の黙祷で一日はスタート。4日連続で地元アンダルシアの勇士がスタート直後にアタックを仕掛け、まるでそれが義務であるかのように長い逃げを試みた。
逃げグループを形成したホセビセンテ・トリビオ(スペイン、アンダルシア・カハスール)、ピエール・ロラン(フランス、Bboxブイグテレコム)、アルノー・ラブ(フランス、コフィディス)、ダビド・グティエレス(スペイン、フットオン・セルヴェット)の4名は、ゴールまで135kmを残して最大6分30秒のアドバンテージ。マイヨロホは暫定でロラン(総合で5分18秒遅れ)の手に渡った。
風吹きすさぶ荒涼とした大地。直線基調で難易度の低いコースは決して逃げ向きではない。4名はペースをコントロールしながら協力して逃げ続けたが、背後から大集団がタイム差を詰めながら迫ってくる。
メイン集団をコントロールしたのはマイヨロホ擁するオメガファーマ・ロットの他、スプリント狙いのランプレとフランセーズデジュー。ゴールまで50kmを切った辺りからメイン集団のペースが急激に上がり、ゴールまで40kmを残してタイム差は2分を切ってしまう。
平野を逃げ続けた4名と、スプリンターチームが束になって牽引するメイン集団の力の差は圧倒的。余計なカウンターアタックを防ぐためにメイン集団は出来るだけ長く4名を逃がし続け、ゴール12km手前で遂に全ての逃げメンバーを飲み込んだ。
ゴールに向かってチームHTC・コロンビア、リクイガス、アスタナ、ランプレ、ガーミン・トランジションズがトレインを組んで集団先頭に。
カヴェンディッシュで勝利を狙うチームHTC・コロンビアがラスト9kmから先頭に立ったが、ツール・ド・フランスで見せたような圧倒的なパワーを感じさせず、ラスト2kmでランプレに主導権を奪われてしまう。
それもそのはず、ツールで発射台を勤め上げたマーク・レンショー(オーストラリア)はブエルタを欠場。スピードのあるベルンハルト・アイゼル(オーストリア)は体調不良でレースを離れ、発射台役のマシュー・ゴス(オーストラリア)はラスト5kmでパンク。チームHTC・コロンビアのトレインはポテンシャルを発揮出来ないままポジションを失い、カヴェンディッシュに自力でのポジションキープを強いた。
いくつものチームが集団先頭で競り合う中、最もチームとして機能したのはランプレ。ラスト1kmを切ってから発射台役のダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ)が先頭に立ち、最終ストレートでペタッキのスプリントに繋げた。しかしその横から一歩先にカヴェンディッシュが飛び立った。
短距離加速力に秀でたカヴェンディッシュが、ゴールまで300mを残してのロングスプリントを敢行。不意をつかれたライバルたちを引き離したカヴェンディッシュだったが、一瞬にして跳ね上がったトップスピードが徐々に勢いを失って行く。
その一方で、伸びのあるスプリントを見せたファラーがカヴェンディッシュを追撃。ファラーは失速するカヴェンディッシュをゴール50m手前で抜き去り、コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)の追い上げを振り切って先着した。
今年ジロ・デ・イタリアでステージ2勝を飾りながらも、ツールでは骨折の影響で0勝に終わったファラー。シーズン後半にかけて再び勢いを増しており、ヴァッテンフォール・サイクラシックスで連覇を達成すると、GPウエストフランス・プルエーで2位。そしてこのブエルタで2年連続ステージ優勝を果たした。これは今シーズン7勝目だ。
カヴェンディッシュが精彩を欠く一方で、ファラーは現在最も波に乗っているスプリンターであると言える。ファラーはレース後のインタビューで「昨日までずっと体調不良で苦しんでいたんだ。今朝ようやく回復して早速ステージ優勝。少し驚いている。スプリントで勝利するのはいつでも最高だけど、ブエルタなので喜びは倍増。自信に繋がるよ」と、喜びのコメントを残している。
もちろん注目が集まるのは10月3日にオーストラリアで開催されるロード世界選手権での活躍。アメリカ代表チームの一員として出場予定のファラーは「世界選は大きな目標。でも今はこのブエルタのスプリントステージに集中したい。とにかく今日は目標だったステージ優勝を掴むことが出来た。これからの活躍はボーナスだ」と、これからのステージでも勝利を狙うことをアピール。ポイント賞ランキングではトップのイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)と同ポイントの2位につけている。
個人総合成績に変動は無く、ジルベールがマイヨロホを堅守。ポイント賞、山岳賞、複合賞ともに持ち主を変えていない。
翌第6ステージも引き続きスプリンターたちにスポットライトが当てられる。しかしラスト18km地点に設定された2級山岳クレスタ・デル・ガジョ峠(登坂距離7km・平均勾配4.4%)がスプリンターたちの前に立ちはだかる。上り&下りで飛び出す選手とスプリンターチームの対決に注目したい。
選手コメントはレース公式リリースより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2010第5ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)5h03'29"
2位 コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)
4位 マッテーオ・トザット(イタリア、クイックステップ)
5位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)
6位 セバスティアン・シャヴァネル(フランス、フランセーズデジュー)
7位 ロベルト・フェルスター(ドイツ、チームミルラム)
8位 デニス・ガリムジャノフ(ロシア、カチューシャ)
9位 テオ・ボス(オランダ、サーヴェロ・テストチーム)
10位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) 19h00'06"
2位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +10"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) +12"
5位 ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア) +16"
6位 タジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、チームHTC・コロンビア) +29"
7位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +49"
8位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) +50"
9位 ルーベン・プラサ(スペイン、ケースデパーニュ) +54"
10位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア) +55"
ポイント賞(プントス)
1位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) 41pts
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) 41pts
3位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) 37pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)13pts
2位 ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ) 8pts
3位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス) 6pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)23pts
2位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)42pts
3位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)103pts
チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 56h34'12"
2位 カチューシャ +1'05"
3位 オメガファーマ・ロット +1'18"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
2日間に渡って激しい上りスプリントが繰り広げられたブエルタ前半戦。3日ぶりに主役の座がスプリンターたちの手に戻ってきた。アンダルシア州からムルシア州に移行する第5ステージはカテゴリー山岳が皆無の平坦ステージ。スプリンターたちがこのチャンスを逃すわけがない。
前日に亡くなった2度のツールチャンピオン、ローラン・フィニョン(フランス)に捧げる1分間の黙祷で一日はスタート。4日連続で地元アンダルシアの勇士がスタート直後にアタックを仕掛け、まるでそれが義務であるかのように長い逃げを試みた。
逃げグループを形成したホセビセンテ・トリビオ(スペイン、アンダルシア・カハスール)、ピエール・ロラン(フランス、Bboxブイグテレコム)、アルノー・ラブ(フランス、コフィディス)、ダビド・グティエレス(スペイン、フットオン・セルヴェット)の4名は、ゴールまで135kmを残して最大6分30秒のアドバンテージ。マイヨロホは暫定でロラン(総合で5分18秒遅れ)の手に渡った。
風吹きすさぶ荒涼とした大地。直線基調で難易度の低いコースは決して逃げ向きではない。4名はペースをコントロールしながら協力して逃げ続けたが、背後から大集団がタイム差を詰めながら迫ってくる。
メイン集団をコントロールしたのはマイヨロホ擁するオメガファーマ・ロットの他、スプリント狙いのランプレとフランセーズデジュー。ゴールまで50kmを切った辺りからメイン集団のペースが急激に上がり、ゴールまで40kmを残してタイム差は2分を切ってしまう。
平野を逃げ続けた4名と、スプリンターチームが束になって牽引するメイン集団の力の差は圧倒的。余計なカウンターアタックを防ぐためにメイン集団は出来るだけ長く4名を逃がし続け、ゴール12km手前で遂に全ての逃げメンバーを飲み込んだ。
ゴールに向かってチームHTC・コロンビア、リクイガス、アスタナ、ランプレ、ガーミン・トランジションズがトレインを組んで集団先頭に。
カヴェンディッシュで勝利を狙うチームHTC・コロンビアがラスト9kmから先頭に立ったが、ツール・ド・フランスで見せたような圧倒的なパワーを感じさせず、ラスト2kmでランプレに主導権を奪われてしまう。
それもそのはず、ツールで発射台を勤め上げたマーク・レンショー(オーストラリア)はブエルタを欠場。スピードのあるベルンハルト・アイゼル(オーストリア)は体調不良でレースを離れ、発射台役のマシュー・ゴス(オーストラリア)はラスト5kmでパンク。チームHTC・コロンビアのトレインはポテンシャルを発揮出来ないままポジションを失い、カヴェンディッシュに自力でのポジションキープを強いた。
いくつものチームが集団先頭で競り合う中、最もチームとして機能したのはランプレ。ラスト1kmを切ってから発射台役のダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ)が先頭に立ち、最終ストレートでペタッキのスプリントに繋げた。しかしその横から一歩先にカヴェンディッシュが飛び立った。
短距離加速力に秀でたカヴェンディッシュが、ゴールまで300mを残してのロングスプリントを敢行。不意をつかれたライバルたちを引き離したカヴェンディッシュだったが、一瞬にして跳ね上がったトップスピードが徐々に勢いを失って行く。
その一方で、伸びのあるスプリントを見せたファラーがカヴェンディッシュを追撃。ファラーは失速するカヴェンディッシュをゴール50m手前で抜き去り、コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)の追い上げを振り切って先着した。
今年ジロ・デ・イタリアでステージ2勝を飾りながらも、ツールでは骨折の影響で0勝に終わったファラー。シーズン後半にかけて再び勢いを増しており、ヴァッテンフォール・サイクラシックスで連覇を達成すると、GPウエストフランス・プルエーで2位。そしてこのブエルタで2年連続ステージ優勝を果たした。これは今シーズン7勝目だ。
カヴェンディッシュが精彩を欠く一方で、ファラーは現在最も波に乗っているスプリンターであると言える。ファラーはレース後のインタビューで「昨日までずっと体調不良で苦しんでいたんだ。今朝ようやく回復して早速ステージ優勝。少し驚いている。スプリントで勝利するのはいつでも最高だけど、ブエルタなので喜びは倍増。自信に繋がるよ」と、喜びのコメントを残している。
もちろん注目が集まるのは10月3日にオーストラリアで開催されるロード世界選手権での活躍。アメリカ代表チームの一員として出場予定のファラーは「世界選は大きな目標。でも今はこのブエルタのスプリントステージに集中したい。とにかく今日は目標だったステージ優勝を掴むことが出来た。これからの活躍はボーナスだ」と、これからのステージでも勝利を狙うことをアピール。ポイント賞ランキングではトップのイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)と同ポイントの2位につけている。
個人総合成績に変動は無く、ジルベールがマイヨロホを堅守。ポイント賞、山岳賞、複合賞ともに持ち主を変えていない。
翌第6ステージも引き続きスプリンターたちにスポットライトが当てられる。しかしラスト18km地点に設定された2級山岳クレスタ・デル・ガジョ峠(登坂距離7km・平均勾配4.4%)がスプリンターたちの前に立ちはだかる。上り&下りで飛び出す選手とスプリンターチームの対決に注目したい。
選手コメントはレース公式リリースより。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2010第5ステージ結果
1位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)5h03'29"
2位 コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)
3位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)
4位 マッテーオ・トザット(イタリア、クイックステップ)
5位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)
6位 セバスティアン・シャヴァネル(フランス、フランセーズデジュー)
7位 ロベルト・フェルスター(ドイツ、チームミルラム)
8位 デニス・ガリムジャノフ(ロシア、カチューシャ)
9位 テオ・ボス(オランダ、サーヴェロ・テストチーム)
10位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) 19h00'06"
2位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) +10"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) +12"
5位 ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア) +16"
6位 タジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、チームHTC・コロンビア) +29"
7位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム) +49"
8位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) +50"
9位 ルーベン・プラサ(スペイン、ケースデパーニュ) +54"
10位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア) +55"
ポイント賞(プントス)
1位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) 41pts
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) 41pts
3位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) 37pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)13pts
2位 ダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ) 8pts
3位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス) 6pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)23pts
2位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)42pts
3位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)103pts
チーム総合成績
1位 ケースデパーニュ 56h34'12"
2位 カチューシャ +1'05"
3位 オメガファーマ・ロット +1'18"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
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