2010/08/31(火) - 10:27
2010年8月30日、ブエルタ・ア・エスパーニャ(UCIヒストリカル)第3ステージが行なわれ、ゴール手前の上りで強烈なアタックを成功させたフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)が優勝。自身初となるグランツールのリーダージャージ着用を果たした。
逃げグループを形成するニキ・テルプストラ(オランダ、チームミルラム)やイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Unipublicジルベールが得意のアタックで魅せた。マルベーリャからマラガまでの157.3kmで行なわれたブエルタ第3ステージ。ゴール37km手前の1級山岳レオン峠を乗り切った選手たちによる上りバトルでジルベールはアタックを炸裂させることになる。
この日も気温は40度近くまで上昇。アンダルシアらしい暑さが選手たちを苦しめた。スタート直後に始まる2級山岳オヘン峠でアタック合戦が繰り広げられ、ペースの上がった集団からは早速マイヨロホのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)が脱落してしまう。
上りでメイン集団から脱落したマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) photo:Unipublic1時間に及ぶアタック合戦をかいくぐり、44km地点で逃げグループ形成に成功したのは7名。オランダチャンピオンジャージを着るニキ・テルプストラ(オランダ、チームミルラム)の他、イェーレ・ファネンデルト(ベルギー、オメガファーマ・ロット)ら4カ国の選手がこの中に。
スペインのプロコンチネンタルチームに所属するセラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)とハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア・カハスール)も逃げに乗った。
ペースが緩んだメイン集団にはカヴェンディッシュが復帰し、ここからはチームHTC・コロンビアが集団コントロール開始。レース後半にかけてサクソバンクやリクイガス、カチューシャも集団牽引に加わり、最大9分15秒まで広がった先頭7名のリードを削り取った。
白壁作りの美しいを抜け、マラガを目指す photo:Unipublic
落車に巻き込まれたユベール・デュポン(フランス、アージェードゥーゼル)やクリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・トランジションズ) photo:Unipublicこの日最後の1級山岳レオン峠の上りが始まる頃にはタイム差は4分に。登坂距離15.8km・平均勾配5.4%というこの本格的な上りでマルティネスがアタックを成功させ、先頭で独走態勢に入る。一方、メイン集団からは3年連続山岳賞を狙うダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)が飛び立った。
このレオン峠ではスプリンターの他、ツール・ド・フランス総合2位のアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)がメイン集団から脱落。アンディはこの日だけで14分10秒遅れ、早々に総合争いから脱落してしまう。
集団内で走るアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Unipublicやがて、独走のままレオン峠をクリアしたマルティネスはマラガの街に向かってダウンヒル。マルティネスに先行を許した他の逃げメンバーにはモンクティエが追いつき、3人でグループを形成して追走。メイン集団は1分50秒遅れでこのレオン峠を通過した。
モンクティエら3名は先頭マルティネスに追いつくことなくメイン集団に吸収。快調にレオン峠を下り切ったマルティネスは1分15秒のリードでラスト10kmのアーチを通過して行く。しかしカチューシャやリクイガス、アスタナ、オメガファーマ・ロットが猛烈にペースを上げたメイン集団には対抗出来なかった。
ラスト2kmでアタックを仕掛けるアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ) photo:Unipublicこの日のゴール地点はマラガの街を見下ろすヒブラルファロ城。ラスト1.8km地点から上りが始まり、標高差100mを一気に駆け上がる。ハイスピードでこの上りに突入したメイン集団からはアレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)がアタック。この動きを切っ掛けに集団は更に活性化し、ラスト1km地点で先頭マルティネスを飲み込んで行く。
ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がアタックを仕掛けたがパンチ力に欠け、続いて強烈なアタックでジルベールが先頭へ。上りで苦しむ選手たちを背に、ダンシングで加速して行くジルベール。遅れてホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が追撃したが届かず、ジルベールが余裕をもってゴールに飛び込んだ。
単独で逃げ続けるセラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア) photo:Unipublic
先頭マルティネスを追うダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)、ミカエル・シュレル(フランス、フランセーズデジュー)、エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル) photo:Unipublic
ラスト1kmの上りで強烈なアタックを仕掛けるフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Cor Vos
ワンデークラシックのスペシャリストとして名を馳せるジルベール。昨シーズン終盤のパリ〜トゥールとジロ・ディ・ロンバルディアで連勝したことが記憶に新しい。起伏のあるコースからフラットコースまで、クラシックレースなら何でも得意。今年アムステル・ゴールドレースで優勝。フレーシュ・ワロンヌ6位、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ3位、ロンド・ファン・フラーンデレン3位、ヘント〜ウェベルヘム3位、ミラノ〜サンレモ9位という成績を残している。
ロドリゲスを振り切ってゴールするフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Cor Vosこれまでグランツールには合計11回出場しており、2009年のジロ・デ・イタリアでステージ初優勝を飾っている。4度目のブエルタ出場でステージ初優勝を掴み取った。
惜しくも届かず2位に終わったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Cor Vos暑さの中、ジルベールはレオン峠で遅れながらも集団に復帰。見事に勝ちパターンに持ち込んだ。「終盤のレオン峠では集団から30秒ほど遅れてしまった。でもコースは周到に下見していたからパニックになることなく自分のペースで走ったんだ。下り区間ではリスクを負いながら集団に復帰。最後はチームメイトに大きく助けられたよ。そしてラスト600mで一気に加速したんだ。実は今朝チームカーでコースを下見していたので、ゴール前のレイアウトやカーブが頭に入っていた。最後の上りはアムステル・ゴールドレースのカウベルグのようだった。53Tのアウターギアを踏んで、35km/hは出ていた」。ジルベールはレース後のインタビューでそう語っている。
マイヨロホに袖を通したフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Unipublicボーナスタイム20秒を獲得したジルベールは一気に総合首位まで浮上。自身で初めてグランツールのリーダージャージに袖を通した。しかしジルベールの目標はリーダージャージを守ることではない。10月3日にオーストラリアで開催されるロード世界選手権に向けて調子を上げることだ。
「このブエルタにはロード世界選手権を見据えて出場している。ステージ優勝が目標だったんだ。サプライズはリーダージャージを手にしたこと。グランツールで初めてのリーダージャージだから嬉しいよ。ベストを尽くしてこのジャージに敬意を表したい」。
トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)のロード世界選欠場が決まっているため、ジルベールはベルギー代表チームのエースとしてオーストラリアに乗り込む。得意のアタックでレースをかき回してくれることだろう。
最後のヒブラルファロ城の上りで集団はバラけ、ロドリゲスが3秒遅れ、イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)が13秒遅れでゴール。その他、アンディを除く総合優勝候補は順当に上位でゴールしている。
また、この日はチームスカイの選手2名、ジョンリー・オーガスティン(南アフリカ)とベン・スウィフト(イギリス)が体調不良によりレースを去った。ブエルタ開幕前に行なったトレーニングキャンプでチーム内に広がった感染症の影響だと見られている。チームスカイのブレールスフォード代表はチーム公式サイトの中で「ジョンリーとスウィフティーのリタイアは大きな痛手だ。チームメンバーは誰一人として100%の状態ではない。ジェランスとケノーの体調も最悪だが、何とか最後までレースに残った。他にもチームスタッフ3名が体調不良で苦しんでいる。これから数日はサバイバルになる」と語っている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2010第3ステージ結果
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)4h06'12"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+03"
3位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)+13"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+15"
5位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ランプレ)
6位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
7位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)+18"
8位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+19"
9位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ)
10位 アルテュール・ヴィショ(フランス、フランセーズデジュー)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)8h55'56"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+14"
3位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームHTC・コロンビア)+22"
4位 タジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、チームHTC・コロンビア)+26"
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+28"
6位 ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア)
7位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)+35"
8位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)
9位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+36"
10位 シャビエル・フロレンシオ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)+41"
ポイント賞(プントス)
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)25pts
2位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー) 25pts
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 20pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)13pts
2位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)6pts
3位 ニキ・テルプストラ(オランダ、チームミルラム)5pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)97pts
2位 ハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア・カハスール)108pts
3位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)109pts
チーム総合成績
1位 チームHTC・コロンビア 26h20'52"
2位 カチューシャ +05"
3位 オメガファーマ・ロット +08"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic

この日も気温は40度近くまで上昇。アンダルシアらしい暑さが選手たちを苦しめた。スタート直後に始まる2級山岳オヘン峠でアタック合戦が繰り広げられ、ペースの上がった集団からは早速マイヨロホのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)が脱落してしまう。

スペインのプロコンチネンタルチームに所属するセラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)とハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア・カハスール)も逃げに乗った。
ペースが緩んだメイン集団にはカヴェンディッシュが復帰し、ここからはチームHTC・コロンビアが集団コントロール開始。レース後半にかけてサクソバンクやリクイガス、カチューシャも集団牽引に加わり、最大9分15秒まで広がった先頭7名のリードを削り取った。


このレオン峠ではスプリンターの他、ツール・ド・フランス総合2位のアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)がメイン集団から脱落。アンディはこの日だけで14分10秒遅れ、早々に総合争いから脱落してしまう。

モンクティエら3名は先頭マルティネスに追いつくことなくメイン集団に吸収。快調にレオン峠を下り切ったマルティネスは1分15秒のリードでラスト10kmのアーチを通過して行く。しかしカチューシャやリクイガス、アスタナ、オメガファーマ・ロットが猛烈にペースを上げたメイン集団には対抗出来なかった。

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がアタックを仕掛けたがパンチ力に欠け、続いて強烈なアタックでジルベールが先頭へ。上りで苦しむ選手たちを背に、ダンシングで加速して行くジルベール。遅れてホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が追撃したが届かず、ジルベールが余裕をもってゴールに飛び込んだ。



ワンデークラシックのスペシャリストとして名を馳せるジルベール。昨シーズン終盤のパリ〜トゥールとジロ・ディ・ロンバルディアで連勝したことが記憶に新しい。起伏のあるコースからフラットコースまで、クラシックレースなら何でも得意。今年アムステル・ゴールドレースで優勝。フレーシュ・ワロンヌ6位、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ3位、ロンド・ファン・フラーンデレン3位、ヘント〜ウェベルヘム3位、ミラノ〜サンレモ9位という成績を残している。

「このブエルタにはロード世界選手権を見据えて出場している。ステージ優勝が目標だったんだ。サプライズはリーダージャージを手にしたこと。グランツールで初めてのリーダージャージだから嬉しいよ。ベストを尽くしてこのジャージに敬意を表したい」。
トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)のロード世界選欠場が決まっているため、ジルベールはベルギー代表チームのエースとしてオーストラリアに乗り込む。得意のアタックでレースをかき回してくれることだろう。
最後のヒブラルファロ城の上りで集団はバラけ、ロドリゲスが3秒遅れ、イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)が13秒遅れでゴール。その他、アンディを除く総合優勝候補は順当に上位でゴールしている。
また、この日はチームスカイの選手2名、ジョンリー・オーガスティン(南アフリカ)とベン・スウィフト(イギリス)が体調不良によりレースを去った。ブエルタ開幕前に行なったトレーニングキャンプでチーム内に広がった感染症の影響だと見られている。チームスカイのブレールスフォード代表はチーム公式サイトの中で「ジョンリーとスウィフティーのリタイアは大きな痛手だ。チームメンバーは誰一人として100%の状態ではない。ジェランスとケノーの体調も最悪だが、何とか最後までレースに残った。他にもチームスタッフ3名が体調不良で苦しんでいる。これから数日はサバイバルになる」と語っている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2010第3ステージ結果
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)4h06'12"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+03"
3位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)+13"
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+15"
5位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ランプレ)
6位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)
7位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)+18"
8位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)+19"
9位 ダビ・アローヨ(スペイン、ケースデパーニュ)
10位 アルテュール・ヴィショ(フランス、フランセーズデジュー)
個人総合成績(マイヨロホ)
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)8h55'56"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+14"
3位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームHTC・コロンビア)+22"
4位 タジェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、チームHTC・コロンビア)+26"
5位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+28"
6位 ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア)
7位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)+35"
8位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)
9位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+36"
10位 シャビエル・フロレンシオ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)+41"
ポイント賞(プントス)
1位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)25pts
2位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー) 25pts
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) 20pts
山岳賞(モンターニャ)
1位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)13pts
2位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)6pts
3位 ニキ・テルプストラ(オランダ、チームミルラム)5pts
複合賞(コンビナーダ)
1位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)97pts
2位 ハビエル・ラミレス(スペイン、アンダルシア・カハスール)108pts
3位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)109pts
チーム総合成績
1位 チームHTC・コロンビア 26h20'52"
2位 カチューシャ +05"
3位 オメガファーマ・ロット +08"
text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic
フォトギャラリー
Amazon.co.jp