アルプスが舞台となったジロ第14ステージで、ヴィスマ・リースアバイクがレースを完全に支配。1級山岳ピラでヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク)が独走し、今大会3勝目を挙げるとともに、自身初のマリアローザに袖を通した。



5月23日(土)第14ステージ アオスタ〜ピラ
133km(山岳/山頂フィニッシュ)


アルプス山脈を望むアオスタが出発地点となったジロ第14ステージ photo:CorVos

ジロ・デ・イタリア第14ステージ image:RCS Sport
ジロ・デ・イタリア第14ステージは133kmという比較的短い距離に、4,350mの獲得標高が詰め込まれた。アルプスが舞台の山岳ステージはスタート直後から1級山岳サン・バルテレミーを登り、その後下って11.3kmのこの日唯一とも言える平坦区間を経て、3級、1級、2級と登っていく。最高難易度である5つ星ステージを締めくくるのは、1級山岳ピラ(距離16.5km/平均7.1%)。最大勾配は11%と極端な急坂ではないものの、その長さといくつものつづら折りが山岳バトルを演出した。

160名まで人数が減った選手たちは、この日も30度に迫る高い気温のなかスタートする。1級山岳サン・バルテレミーでは予想通り、逃げ切りを目指す選手たちによる仕掛け合いが勃発。ヤルディ・ファンデルリー(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)とヤン・クリステン(スイス、UAEチームエミレーツXRG)が先行し、2名が1級山岳を先頭通過する。その後大きな追走集団が追いつき、23名の逃げ集団が形成された。

その中でも最も勝利への意欲を見せたのはモビスターで、第11ステージで2位と勝利に迫ったエンリク・マス(スペイン)をはじめ4名を送り込む。また今大会ここまで区間3勝しているジョナタン・ナルバエス(エクアドル)のUAEチームエミレーツXRGも3名を入れ、強力な逃げグループがリードを徐々に広げていく。短い平坦路を経て再び登りはじめ、次なる3級山岳を前に設定された中間スプリントをナルバエスが先頭通過。その結果、ナルバエスは初日のスプリント勝利以来、ポイント賞首位を守っていたポール・マニエ(フランス、スーダル・クイックステップ)を僅か1ポイントで逆転した。

ジョナタン・ナルバエス(エクアドル)も乗った23名による逃げグループ photo:CorVos

1級、そして2級山岳と連続でトップ通過したジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) photo:CorVos

直後の3級山岳ではイゴール・アリエタ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)が逃げ集団を飛び出し、頂上を先頭通過する。しかし独走は長くは続かず、続く1級山岳の前に逃げ集団に戻ることを選択。その1級山岳、そして2級山岳をジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック)がトップで通過する頃に、逃げ集団は13名までその人数を減らしていた。

一方のメイン集団は、終始ヴィスマ・リースアバイクが牽引を担当した。マリアローザを死守したいバーレーン・ヴィクトリアスも時折ペースメイクに力を貸しながら、2級山岳ではこれがグランツールデビューとなる22歳、ティム・レックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が苦悶の表情を浮かべながら先頭で引く。そして頂上まで残り4.1km地点で役割を終えると、うなだれるように遅れていくレックスの背中を、チームメイトが労うように叩いた。

15kmに及ぶ長い下り坂を経て、いよいよ逃げ集団は1級山岳ピラ(距離16.5km/平均7.1%)に脚を踏み入れる。この時点でプロトンとのタイム差は2分15秒。逃げ切りには十分とは決して言えないタイム差だった。

高速牽引で集団に人数を絞っていくティム・レックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

同じくプロトンも1級山岳に突入し、登り口で牽引していたヴィクトル・カンペナールツ(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が役割を終える。代わってセップ・クス(アメリカ)が引き続くと、早くもマリアローザを着るアフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス)が遅れていく。しかしここからエウラリオは、総合上位に残るためにチームメイトであるダミアーノ・カルーゾ(イタリア)とともに驚異的な粘りを見せることとなった。

ハイペースに持ち込んだクスから、23歳にして最終アシストを任されたダヴィデ・ピガンゾーリ(イタリア)が引き継ぎ、次々に逃げから遅れた選手たちを吸収していく。先頭ではチッコーネのアタックにエイネル・ルビオ(コロンビア、モビスター)が唯一食らいついたものの、残り5.2km地点でピガンゾーリの高速牽引が先頭2名をキャッチ。その瞬間、この日のステージ優勝は総合上位勢のものとなった。

山頂フィニッシュだった第9ステージではヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)をアシストしながら、自ら区間3位に入ったピガンゾーリの作るペースには、エウラリオの繰り下げでマリアビアンカ(ヤングライダー賞ジャージ)を着るジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)も遅れていく。そして大観衆が詰めかけた残り4.6km地点で満を持してヴィンゲゴーが加速。レースの先頭に立った。

残り4.6kmから飛び出し、単独先頭に立ったヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:RCS Sport

ピガンゾーリのマークを受けながらも、懸命に追いかけるフェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンCMA CGM) photo:CorVos
遅れながらも粘りを見せるアフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos


このペースアップに反応できたのはフェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンCMA CGM)だけ。しかしヴィンゲゴーの背後にはつけず、距離をあけて離されないように踏み続けるしかなく、またその動きは牽引を終えたピガンゾーリのマークを受ける状態に置かれた。しかしシッティングのまま静かに加速するヴィンゲゴーは徐々にガルとの差を広げ、淡々とフィニッシュまでの距離を刻んでいった。

そしてハンドルに貼った家族の写真、そして右手の指輪にキスをするルーティンを終え、アルプスの山々を望むフィニッシュラインを通過。今大会3度目となる区間優勝を手に入れた。

今大会3度目の区間優勝を飾ったヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

念願のマリアローザに袖を通したヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

マリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)を着用したジョナタン・ナルバエス(エクアドル、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

「これは長く記憶に残る勝利の1つとなるだろう。いつアタックするか、具体的なプランがあったわけではなく、より急勾配になる終盤に違いを作りたかった。今日は調子が良く、明日、マリアローザを着て走り出せるのは素晴らしいことだ。ステージ全体をコントロールし、素晴らしい走りをしてくれたチームを心から誇りに思う」と、初めてマリアローザに袖を通したヴィンゲゴーは、レースを振り返るとともにチームメイトへの感謝を述べた。

2位のガルは49秒遅れでフィニッシュし、3位は58秒遅れのジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)。そして早々とプロトンから遅れたエウラリオは2分49秒遅れの15位でフィニッシュ。その結果、マリアローザは失ったものの、総合2位につける健闘を見せた。
ジロ・デ・イタリア2026第14ステージ結果
1位 ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 3:53:01
2位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンCMA CGM) +0:49
3位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:58
4位 ダヴィデ・ピガンゾーリ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) +1:03
5位 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
6位 テイメン・アレンスマン(オランダ、ネットカンパニー・イネオス) +1:23
7位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダープロサイクリング) +1:35
8位 ワウト・プールス(オランダ、ユニベット・ローズ・ロケッツ) +2:08
9位 ヤン・ヒルト(チェコ、NSNサイクリングチーム)
10位 エガン・ベルナル(コロンビア、ネットカンパニー・イネオス)
15位 アフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス) +2:49
マリアローザ(個人総合成績)
1位 ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 56:08:41
2位 アフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス) +2:26
3位 フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンCMA CGM) +2:50
4位 テイメン・アレンスマン(オランダ、ネットカンパニー・イネオス) +3:03
5位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +3:43
6位 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +4:22
7位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダープロサイクリング) +4:46
8位 ベン・オコーナー(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) +5:22
9位 デレク・ジーウェスト(カナダ、リドル・トレック) +5:41
10位 ダヴィデ・ピガンゾーリ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) +6:13
マリアチクラミーノ(ポイント賞)
1位 ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、UAEチームエミレーツXRG) 131pts
2位 ポール・マニエ(フランス、スーダル・クイックステップ) 130pts
3位 ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) 76pts
マリアアッズーラ(山岳賞)
1位 ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) 161pts
2位 ヤルディ・ファンデルリー(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト) 77pts
3位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) 75pts
マリアビアンカ(ヤングライダー賞)
1位 アフォンソ・エウラリオ(ポルトガル、バーレーン・ヴィクトリアス) 56:11:07
2位 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +1:56
3位 ダヴィデ・ピガンゾーリ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) +3:47
チーム総合成績
1位 ヴィスマ・リースアバイク 168:44:12
2位 レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ +0:24
3位 チューダープロサイクリング +22:05
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, RCS Sport

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