2025/04/14(月) - 08:15
新旧世界王者による一騎打ちとなった第122回パリ〜ルーベ。38kmの独走決めたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が、終盤の石畳コーナーで落車したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)を下し、史上3人目となる3連覇を達成した。

3連覇目指すマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

初出場となったポガチャル photo:CorVos 
2年ぶりの出場となったファンアールト photo:CorVos
4月13日(日)に行われた第122回パリ〜ルーベの舞台は、パリ北部の街コンピエーニュからベルギー国境近くの街ルーベに向かう259.2km。最初の95.8kmはフラットな舗装路で、「No.30 トロワヴィル〜アンシー」から合計30箇所/総距離55.3kmのパヴェ区間を駆け抜ける。最高難易度である5つ星が与えられているのは「No.19 アランベール」を含む3区間で、いずれも全長は2kmを超え、握りこぶし大の石が不規則に敷き詰められた「悪路」がレースの行方を左右する。
心配された雨は当日朝に上がり、コース一部を濡らす程度に収まった。現地時間午前11時25分にスタートが切られると、ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)のファーストアタックからレースはスタート。最初の1時間が平均時速51kmと高速で進むと、逃げを目指したアタック合戦の末、ノルウェー王者であるマルクス・フールゴー(ウノエックス・モビリティ)ら8名が逃げ集団を形成した。

激しいアタック合戦から形成された8名の逃げ集団 photo:CorVos
2分半のリードを許したメイン集団は、史上3人目の3連覇目指すマチュー・ファンデルプール(オランダ)のアルペシン・ドゥクーニンクが先導する。その背後では初出場タデイ・ポガチャル(スロベニア)を擁するUAEチームエミレーツXRGが隊列を組み、イネオス・グレナディアーズも常に集団前方で走行。最初の石畳区間に入る前、残り172km地点でプロトンでは落車が発生し、それにマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が巻き込まれた。
幸い2名に大きな怪我はなく、チームメイトの力を借りながら集団へと復帰する。そして逃げの8名がこの日1つ目の石畳「No.30 トロワヴィル〜アンシー」に突入。「北の地獄」が本格的に幕を開けた。

合計30箇所の石畳が始まった photo:CorVos
するとプロトンでは落車やメカトラが多発する。ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)は舗装路のコーナーでタイヤを滑らせ落車し、フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)はメカトラで遅れを喫する。有力選手たちが力を使い集団復帰を果たす一方で、チームメイトに守られながら走るファンデルプールはもちろん、初出場のポガチャルも冷静に石畳区間をクリアしていった。
アランベールの直前に設定された「No.20 アヴルイ〜ワレー」に逃げから48秒遅れでプロトンが入ると、マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)が早くも仕掛ける。それに呼応するようにポガチャルが飛び出し、当然ファンデルプールも反応。そして今年から導入されたシケイン(減速帯)のコーナーを抜け、逃げとプロトンは22秒差で「No.19 アランベール」に突入した。

アランベールで集団先頭を行くマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

追走を強いられる苦しいレースとなったワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos
コース両端から大歓声を受けるアランベールではプロトン先頭にポガチャルが立ち、途中からファンデルプールがジワリとペースを上げる。そのペースアップにより逃げを捉えた先頭は、15名の精鋭集団が形成される。この動きにファンアールトが遅れを取る中、ファンデルプールが残り87km地点の舗装路でアタックした。
その狙いはライバルたちの脚を削り、チームメイトでありスプリンターのヤスペル・フィリプセン(ベルギー)を有利にするため。これにポガチャルとピーダスン、シュテファン・ビッセガー(スイス、デカトロンAG2Rラモンディアール)が反応し、フィリプセンを含む5名が先頭集団を形成。1分後方ではファンアールト自ら先頭に立って追いかけた。
先頭は5名のまま「No.15 ティヨワ〜サール・エ・ロジエール」に入ると、直前に苦しい表情を見せていたポガチャルが仕掛けた。真っ先に反応したピーダスンがパンクで遅れ、ビッセガーも引き離される。そのため残り68km地点で、先頭はアルカンシエルを着るポガチャルとファンデルプール、そしてフィリプセンの3名に絞られた。
数的有利な状況を作り出したアルペシンに対し、孤軍奮闘するポガチャルという状況。そのまま3名は順調にパヴェセクターを越えていき、この日2つ目の5つ星「No.11 モンサン・ぺヴェル」に突入する。その石畳が終わる直前の残り46.1km地点でファンデルプールが加速し、反応したポガチャルがカウンターアタックを仕掛ける。そのスピードアップにフィリプセンはついていけず、ここから新旧世界王者2名のよるバトルが繰り広げられるかと思われた。
しかしこの勝負は、パリ〜ルーベらしい1つのミスで決着した。

コーナーで曲がりきれず、落車したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

ポガチャルの落車とパンクで十分なリードを得たマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

懸命に追走するタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos
「No.9 ポン・ティボ〜エンヌヴラン」に入り、右コーナーを先頭で入ったポガチャルがオーバースピードによってコースアウト。チェーンが外れたため遅れてやってきたチームカーからのバイク交換を強いられ、ファンデルプールから20秒の遅れを取る。その後タイム差は30秒まで拡がり、さらにポガチャルに前輪パンクという不運が襲いかかる。
これによりファンデルプールのリードは一気に50秒と、決定的なものとなった。無線が故障していたため、ポガチャルとのタイム差が把握できないファンデルプールだったが、最後の5つ星である「No.4 カルフール・ド・ラルブル」でパンクのトラブルがありながらも、素早いバイク交換でクリア。そして大観衆の待つルーベのヴェロドロームに到着した。

3連覇を達成したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

バイクを掲げ、雄叫び上げるマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos
2023年はスプリントから、そして昨年は60km独走で優勝したファンデルプール。今年は38.1kmの独走から右手で3本指を立て、最後はバイクを掲げながらフィニッシュ。史上3人目となる3連覇を達成した。
「とても厳しいレースで、ずっと苦しかった。タデイ(ポガチャル)のコーナーでのミスは残念に思うが、フィニッシュまで距離もあったのでそのまま突き進むしかなかった。これもレースの一部だからね。(敗れた)ロンドのリベンジは意識していなかった。タデイは初めてのルーベで素晴らしい走りを見せた。だから来年、僕が彼のリベンジを受ける番だ」と、ファンデルプールは語った。
そして落車やパンクに見舞われながらも、1分18秒遅れの2位で初出場のレースを終えたポガチャル。「各パヴェセクターに多くの観客が詰めかけた雰囲気は素晴らしく、風よけにもなってくれた。落車の原因は追い風に加え、単純にオーバースピードだったからだ」とコメント。達成すればベルナール・イノー以来となるツール・ド・フランスとパリ〜ルーベ制覇はお預けとなったものの、世界王者に相応しい見事な走りを披露した。

健闘を称え合うポガチャルとファンデルプール photo:CorVos

パリ〜ルーベ2025表彰台:2位ポガチャル、1位ファンデルプール、3位ピーダスン photo:CorVos
3位にはピーダスンがファンアールトをスプリントで退け、2年連続の表彰台に上がっている。
選手たちのコメントは別記事にてお伝えします。



4月13日(日)に行われた第122回パリ〜ルーベの舞台は、パリ北部の街コンピエーニュからベルギー国境近くの街ルーベに向かう259.2km。最初の95.8kmはフラットな舗装路で、「No.30 トロワヴィル〜アンシー」から合計30箇所/総距離55.3kmのパヴェ区間を駆け抜ける。最高難易度である5つ星が与えられているのは「No.19 アランベール」を含む3区間で、いずれも全長は2kmを超え、握りこぶし大の石が不規則に敷き詰められた「悪路」がレースの行方を左右する。
心配された雨は当日朝に上がり、コース一部を濡らす程度に収まった。現地時間午前11時25分にスタートが切られると、ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)のファーストアタックからレースはスタート。最初の1時間が平均時速51kmと高速で進むと、逃げを目指したアタック合戦の末、ノルウェー王者であるマルクス・フールゴー(ウノエックス・モビリティ)ら8名が逃げ集団を形成した。

2分半のリードを許したメイン集団は、史上3人目の3連覇目指すマチュー・ファンデルプール(オランダ)のアルペシン・ドゥクーニンクが先導する。その背後では初出場タデイ・ポガチャル(スロベニア)を擁するUAEチームエミレーツXRGが隊列を組み、イネオス・グレナディアーズも常に集団前方で走行。最初の石畳区間に入る前、残り172km地点でプロトンでは落車が発生し、それにマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が巻き込まれた。
幸い2名に大きな怪我はなく、チームメイトの力を借りながら集団へと復帰する。そして逃げの8名がこの日1つ目の石畳「No.30 トロワヴィル〜アンシー」に突入。「北の地獄」が本格的に幕を開けた。

するとプロトンでは落車やメカトラが多発する。ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)は舗装路のコーナーでタイヤを滑らせ落車し、フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)はメカトラで遅れを喫する。有力選手たちが力を使い集団復帰を果たす一方で、チームメイトに守られながら走るファンデルプールはもちろん、初出場のポガチャルも冷静に石畳区間をクリアしていった。
アランベールの直前に設定された「No.20 アヴルイ〜ワレー」に逃げから48秒遅れでプロトンが入ると、マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)が早くも仕掛ける。それに呼応するようにポガチャルが飛び出し、当然ファンデルプールも反応。そして今年から導入されたシケイン(減速帯)のコーナーを抜け、逃げとプロトンは22秒差で「No.19 アランベール」に突入した。


コース両端から大歓声を受けるアランベールではプロトン先頭にポガチャルが立ち、途中からファンデルプールがジワリとペースを上げる。そのペースアップにより逃げを捉えた先頭は、15名の精鋭集団が形成される。この動きにファンアールトが遅れを取る中、ファンデルプールが残り87km地点の舗装路でアタックした。
その狙いはライバルたちの脚を削り、チームメイトでありスプリンターのヤスペル・フィリプセン(ベルギー)を有利にするため。これにポガチャルとピーダスン、シュテファン・ビッセガー(スイス、デカトロンAG2Rラモンディアール)が反応し、フィリプセンを含む5名が先頭集団を形成。1分後方ではファンアールト自ら先頭に立って追いかけた。
先頭は5名のまま「No.15 ティヨワ〜サール・エ・ロジエール」に入ると、直前に苦しい表情を見せていたポガチャルが仕掛けた。真っ先に反応したピーダスンがパンクで遅れ、ビッセガーも引き離される。そのため残り68km地点で、先頭はアルカンシエルを着るポガチャルとファンデルプール、そしてフィリプセンの3名に絞られた。
数的有利な状況を作り出したアルペシンに対し、孤軍奮闘するポガチャルという状況。そのまま3名は順調にパヴェセクターを越えていき、この日2つ目の5つ星「No.11 モンサン・ぺヴェル」に突入する。その石畳が終わる直前の残り46.1km地点でファンデルプールが加速し、反応したポガチャルがカウンターアタックを仕掛ける。そのスピードアップにフィリプセンはついていけず、ここから新旧世界王者2名のよるバトルが繰り広げられるかと思われた。
しかしこの勝負は、パリ〜ルーベらしい1つのミスで決着した。



「No.9 ポン・ティボ〜エンヌヴラン」に入り、右コーナーを先頭で入ったポガチャルがオーバースピードによってコースアウト。チェーンが外れたため遅れてやってきたチームカーからのバイク交換を強いられ、ファンデルプールから20秒の遅れを取る。その後タイム差は30秒まで拡がり、さらにポガチャルに前輪パンクという不運が襲いかかる。
これによりファンデルプールのリードは一気に50秒と、決定的なものとなった。無線が故障していたため、ポガチャルとのタイム差が把握できないファンデルプールだったが、最後の5つ星である「No.4 カルフール・ド・ラルブル」でパンクのトラブルがありながらも、素早いバイク交換でクリア。そして大観衆の待つルーベのヴェロドロームに到着した。


2023年はスプリントから、そして昨年は60km独走で優勝したファンデルプール。今年は38.1kmの独走から右手で3本指を立て、最後はバイクを掲げながらフィニッシュ。史上3人目となる3連覇を達成した。
「とても厳しいレースで、ずっと苦しかった。タデイ(ポガチャル)のコーナーでのミスは残念に思うが、フィニッシュまで距離もあったのでそのまま突き進むしかなかった。これもレースの一部だからね。(敗れた)ロンドのリベンジは意識していなかった。タデイは初めてのルーベで素晴らしい走りを見せた。だから来年、僕が彼のリベンジを受ける番だ」と、ファンデルプールは語った。
そして落車やパンクに見舞われながらも、1分18秒遅れの2位で初出場のレースを終えたポガチャル。「各パヴェセクターに多くの観客が詰めかけた雰囲気は素晴らしく、風よけにもなってくれた。落車の原因は追い風に加え、単純にオーバースピードだったからだ」とコメント。達成すればベルナール・イノー以来となるツール・ド・フランスとパリ〜ルーベ制覇はお預けとなったものの、世界王者に相応しい見事な走りを披露した。


3位にはピーダスンがファンアールトをスプリントで退け、2年連続の表彰台に上がっている。
選手たちのコメントは別記事にてお伝えします。
パリ〜ルーベ2025結果
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | 5:31:27 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | +1:18 |
3位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) | +2:11 |
4位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | |
5位 | フロリアン・フェルミールス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG) | |
6位 | ヨナス・ルッチ(ドイツ、アンテルマルシェ・ワンティ) | +3:46 |
7位 | シュテファン・ビッセガー(スイス、デカトロンAG2Rラモンディアール) | |
8位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
9位 | ローレンス・レックス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ) | +4:35 |
10位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | +4:36 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
Amazon.co.jp