美しい水を湛えたスイスの湖水地方を駆け巡る photo:Tour de Romandie 2024年9月6〜8日までの日程で開催された「ツール・ド・ロマンディ・フェミナン」は、今年で開催3回目を迎えたUCIウィメンズワールドツアー最終戦のステージレース。4月下旬の男子ツール・ド・ロマンディ(6日間)の半分となる3日間スケジュールだが、山頂フィニッシュも含まれる本格的な内容だ。毎年グランツールのリーダージャージを争うオールラウンダーが総合成績争いを繰り広げることで知られ、昨年はデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)が総合優勝を果たしている。
UCIフェミニンツアーのリーダージャージを着るデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) photo:Tour de Romandie 今年もフォレリングは世界女王ロッタ・コペッキー(ベルギー)やニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド)といった屈強なメンバーを揃えて参戦。女子プロトンでSDワークスと対等に渡り合うリドル・トレックはクライマーのガイア・レアリーニ(イタリア)と元世界女王エリーザ・バルサモ(イタリア)という2枚看板をこのロマンディに揃えてきた。
9月6日(金)第1ステージ:ラ・グランド・ブローシュ〜ローザンヌ(133.8km)
エリーザ・バルサモ(イタリア、リドル・トレック)が開幕ステージを制す photo:Tour de Romandie レマン湖の北岸に位置する都市ローザンヌを目指す開幕ステージは、ヌーシャテル湖との間に横たわる山岳区間を超え、最後は緩斜面の登りフィニッシュ。SDワークスは逃げにメンバーを送り込み、終盤に吸収されてからはリードアウトトレインをコントロール。個人TTの五輪覇者グレース・ブラウン(オーストラリア、FDJスエズ)も引き戻され、残り400mでアタックしたコペッキーがそのままスプリントを開始した。
1級山岳ヴェルコランを駆け上がる第2ステージ photo:Tour de Romandie 1級山岳ヴェルコランでペースメイクするマビ・ガルシア(スペイン、ジェイコ・アルウラー) photo:Tour de Romandie そのバルサモが黄色いリーダージャージを着て臨んだ2日目は、標高1,319mのスキーリゾート地ヴェルコラン(1級山岳/登坂距離9.6km/平均勾配8.2%)にフィニッシュする難関ステージ。この日はSDワークスが圧倒的なチーム力で他チームを蹴散らした。
チームメイト同士の1級山岳頂上スプリント勝負を制したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス・プロタイム) photo:Tour de Romandie チームメイト2人が練習のように争いながら頂上に到達。ハンドルを投げ込む全開スプリントでフォレリングが勝利した。「ヒルクライムはまだ私にとって未知の領域。長い登りのたびに自分自身のテストをしているけれど、今日はずっと良い感じで登れたという発見があった」と、敗れながらも総合首位に立ち、オールラウンダーとして台頭するコペッキーは話している。
9月8日(日)第3ステージ:モルジュ〜モルジュ(144.2km)
逃げ切りで最終ステージを制したリーアンヌ・マルクス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) photo:Tour de Romandie 雨に濡れた最終第3ステージは激しいアタック合戦で逃げが決まらないまま進行。中盤に入ってフィッシャーブラックとリーアンヌ・マルクス(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)がモビスターやジェイコ・アルウラーが必死に追うメイン集団を21秒差で振り切った。スプリントに長けるマルクスが勝利し、メイン集団の頭で3位フィニッシュしたコペッキーが総合優勝。フォレリングは6秒遅れの2位、さらに逃げ切ったフィッシャーブラックが総合4位まで上げる、まさにSDワークス勢の独壇場で第3回ロマンディ・フェミナンが閉幕した。
ステージ3位に入ったロッタ・コペッキー(ベルギー、SDワークス・プロタイム)が総合優勝達成 photo:Tour de Romandie ロッタ・コペッキー(ベルギー)とデミ・フォレリング(オランダ)でSDワークスが総合ワンツー優勝 「ステージ優勝を逃したことが残念かって?全然そんなことはなくって、デミが昨日チームのために優勝してくれたし、私自身も2位が2回と3位が1回。自分のコンディションの確認という当初の目標よりもずっと良い結果になったので満足している。ヨーロッパ選手権のトレーニングをこなして、3週間後にはチューリッヒで世界選手権。この良い感触のまま選手権に臨みたい」とコペッキーは話している。