2024/09/07(土) - 08:42
1級山岳モンカルビリョにフィニッシュしたブエルタ・ア・エスパーニャ第19ステージで、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)がラスト5kmを独走。チームメイトの高速牽引を今大会3勝目に繋げると共に、総合首位に返り咲いた。
9月6日(金) 第19ステージ
ログローニョ〜アルト・デ・モンカルビリョ 173.5km(丘陵/山頂フィニッシュ)
第79回ブエルタ・ア・エスパーニャのラスト3日間はいずれも総合順位が変動するであろうステージ。その初日はログローニョを出発後、円を描くように平坦路を進んで1級山岳アルト・デ・モンカルビリョ(距離8.6km/平均8.9%)を駆け上がる168kmの丘陵ステージだ。
コース中央にはボーナスタイムが付与される3級山岳を登るが、距離5.2km/平均4.8%の登りはクライマーにとって足慣らしにもならないはず。フィニッシュ手前14.2km地点にある中間スプリントを経て、臨む1級山岳アルト・デ・モンカルビリョのラスト4kmは平均10%前後の勾配が続いていく。
逃げ切り勝利した第6ステージから総合首位を守り続けているベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)と、総合2位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)の差は僅か5秒。総合4位リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)も1分46秒遅れの僅差と言える状況のなか、139名まで絞られた選手たちが出発地点のログローニョを走り出した。
現役最後のグランツールを走るトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・デスティニー)も逃げを試みるなか、アタックと吸収を繰り返した末に5名の逃げ集団が形成される。その中にアンテルマルシェ・ワンティは2名を送り、2週目&3週目はほぼ毎日逃げに選手を入れるUAEチームエミレーツからは20歳のイサーク・デルトロ(メキシコ)が乗った。
ブエルタ第19ステージで逃げた5名
イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ)
エドワルト・プランカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
フラン・ミホリェヴィッチ(クロアチア、バーレーン・ヴィクトリアス)
フィト・ブラーツ(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ)
シモーネ・ペティッリ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ)
残り125km地点で出来上がった逃げグループは一気に4分のリードを奪い、落ち着きを取り戻したメイン集団ではジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)が落車する。左半身を地面に打ちつけたヴァインはドクターカーによる治療を受けながら集団へと戻り、無事フィニッシュまでたどり着いている。
3級山岳はこれがグランツールデビューである22歳のミホリェヴィッチが先頭通過する。デカトロンではなくレッドブルが先頭に人数を固めるプロトンは2分42秒差で頂上に達し、下りでレッドブルとモビスターが加速。それにより集団は分裂し、総合7位につけるマティアス・スケルモース(デンマーク)が遅れたためリドル・トレックが後方集団で追走した。
その後の平坦区間でメイン集団はひと塊に戻り、緊張感のある展開によって逃げとのタイム差は2分まで縮まる。残り50km地点では第17ステージの集団スプリントで3位に入ったブラーツが遅れ、逃げ集団は4名に。引き続きレッドブルが力強い牽引を見せたプロトンは、その視界に最終1級山岳アルト・デ・モンカルビリョ(距離8.6km/平均8.9%)の姿を捉えた。
麓(残り14.2km)に設定された中間スプリントをプランカールトがトップ通過し、山岳手前でプランカールトのアタックに反応したミホリェヴィッチが単独先頭に立つ。しかしレッドブルの高速牽引により、ミホリェヴィッチは1級山岳に入った直後に飲み込まれた。
平均勾配8.9%の登りで集団の牽引を担当したのは、今年6月にエースであるログリッチの母国レース(ツアー・オブ・スロベニア)で総合優勝したジョヴァンニ・アレオッティ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)。その後今年のジロ・デ・イタリア総合2位ダニエル・マルティネス(コロンビア)に引き継がれると、アレクサンドル・ウラソフ(ロシア)とログリッチ以外を引き離す高速牽引を披露。後続ではオコーナーのアシストが先頭でペースを作り、そこから飛び出したダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)が単独で追いかけた。
ウラソフが役割を終え、残り5.1kmからログリッチが単独先頭に立つ。2020年にも同じ登りで勝利し、自身2度目の総合優勝に繋げた相性の良い登りでログリッチは、シッティングのまま着実に残り距離を縮めていった。
ゴデュを捉え、32秒差まで拡げられた追走集団からは残り3.6kmでエンリク・マス(スペイン、モビスター)が飛び出す。一気にログリッチとの差を20秒まで詰めたものの、平均10%の登りでもハイケイデンスで脚を回すログリッチのスピードは落ちなかった。
落車によりリタイアしたツール・ド・フランスから約1ヶ月、ログリッチが4年前と同じ1級山岳アルト・デ・モンカルビリョの頂上に到着。第4、8ステージに続く今大会3勝目を手に入れた。
オコーナーが1分49秒遅れの区間12位でフィニッシュしたため、1分54秒のリードで総合首位に返り咲いたログリッチ。「ステージ優勝を狙ってはいなかった。名前は明かさないが、あるチームメイトに”君の意見は無視しても僕らは集団牽引をする”と言われたんだ。”僕らは他にやることもないから”とね。だから僕は了承し、心を一つにしないといけないから攻めたんだ」と、ログリッチは勝利の舞台裏を明かした。
区間2位に入ったのはマスを追い抜いたゴデュ。3位のスケルモースは総合順位でカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)を抜いたため、今大会初のマイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)に袖を通している。
9月6日(金) 第19ステージ
ログローニョ〜アルト・デ・モンカルビリョ 173.5km(丘陵/山頂フィニッシュ)
第79回ブエルタ・ア・エスパーニャのラスト3日間はいずれも総合順位が変動するであろうステージ。その初日はログローニョを出発後、円を描くように平坦路を進んで1級山岳アルト・デ・モンカルビリョ(距離8.6km/平均8.9%)を駆け上がる168kmの丘陵ステージだ。
コース中央にはボーナスタイムが付与される3級山岳を登るが、距離5.2km/平均4.8%の登りはクライマーにとって足慣らしにもならないはず。フィニッシュ手前14.2km地点にある中間スプリントを経て、臨む1級山岳アルト・デ・モンカルビリョのラスト4kmは平均10%前後の勾配が続いていく。
逃げ切り勝利した第6ステージから総合首位を守り続けているベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)と、総合2位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)の差は僅か5秒。総合4位リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)も1分46秒遅れの僅差と言える状況のなか、139名まで絞られた選手たちが出発地点のログローニョを走り出した。
現役最後のグランツールを走るトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・デスティニー)も逃げを試みるなか、アタックと吸収を繰り返した末に5名の逃げ集団が形成される。その中にアンテルマルシェ・ワンティは2名を送り、2週目&3週目はほぼ毎日逃げに選手を入れるUAEチームエミレーツからは20歳のイサーク・デルトロ(メキシコ)が乗った。
ブエルタ第19ステージで逃げた5名
イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツ)
エドワルト・プランカールト(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)
フラン・ミホリェヴィッチ(クロアチア、バーレーン・ヴィクトリアス)
フィト・ブラーツ(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ)
シモーネ・ペティッリ(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ)
残り125km地点で出来上がった逃げグループは一気に4分のリードを奪い、落ち着きを取り戻したメイン集団ではジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)が落車する。左半身を地面に打ちつけたヴァインはドクターカーによる治療を受けながら集団へと戻り、無事フィニッシュまでたどり着いている。
3級山岳はこれがグランツールデビューである22歳のミホリェヴィッチが先頭通過する。デカトロンではなくレッドブルが先頭に人数を固めるプロトンは2分42秒差で頂上に達し、下りでレッドブルとモビスターが加速。それにより集団は分裂し、総合7位につけるマティアス・スケルモース(デンマーク)が遅れたためリドル・トレックが後方集団で追走した。
その後の平坦区間でメイン集団はひと塊に戻り、緊張感のある展開によって逃げとのタイム差は2分まで縮まる。残り50km地点では第17ステージの集団スプリントで3位に入ったブラーツが遅れ、逃げ集団は4名に。引き続きレッドブルが力強い牽引を見せたプロトンは、その視界に最終1級山岳アルト・デ・モンカルビリョ(距離8.6km/平均8.9%)の姿を捉えた。
麓(残り14.2km)に設定された中間スプリントをプランカールトがトップ通過し、山岳手前でプランカールトのアタックに反応したミホリェヴィッチが単独先頭に立つ。しかしレッドブルの高速牽引により、ミホリェヴィッチは1級山岳に入った直後に飲み込まれた。
平均勾配8.9%の登りで集団の牽引を担当したのは、今年6月にエースであるログリッチの母国レース(ツアー・オブ・スロベニア)で総合優勝したジョヴァンニ・アレオッティ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)。その後今年のジロ・デ・イタリア総合2位ダニエル・マルティネス(コロンビア)に引き継がれると、アレクサンドル・ウラソフ(ロシア)とログリッチ以外を引き離す高速牽引を披露。後続ではオコーナーのアシストが先頭でペースを作り、そこから飛び出したダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)が単独で追いかけた。
ウラソフが役割を終え、残り5.1kmからログリッチが単独先頭に立つ。2020年にも同じ登りで勝利し、自身2度目の総合優勝に繋げた相性の良い登りでログリッチは、シッティングのまま着実に残り距離を縮めていった。
ゴデュを捉え、32秒差まで拡げられた追走集団からは残り3.6kmでエンリク・マス(スペイン、モビスター)が飛び出す。一気にログリッチとの差を20秒まで詰めたものの、平均10%の登りでもハイケイデンスで脚を回すログリッチのスピードは落ちなかった。
落車によりリタイアしたツール・ド・フランスから約1ヶ月、ログリッチが4年前と同じ1級山岳アルト・デ・モンカルビリョの頂上に到着。第4、8ステージに続く今大会3勝目を手に入れた。
オコーナーが1分49秒遅れの区間12位でフィニッシュしたため、1分54秒のリードで総合首位に返り咲いたログリッチ。「ステージ優勝を狙ってはいなかった。名前は明かさないが、あるチームメイトに”君の意見は無視しても僕らは集団牽引をする”と言われたんだ。”僕らは他にやることもないから”とね。だから僕は了承し、心を一つにしないといけないから攻めたんだ」と、ログリッチは勝利の舞台裏を明かした。
区間2位に入ったのはマスを追い抜いたゴデュ。3位のスケルモースは総合順位でカルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)を抜いたため、今大会初のマイヨブランコ(ヤングライダー賞ジャージ)に袖を通している。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2024第19ステージ
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | 3:54:55 |
2位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | +0:46 |
3位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) | |
4位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +0:50 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、Tレックス・クイックステップ) | +0:57 |
6位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | |
7位 | エディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー) | +1:01 |
8位 | セップ・クス(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | |
9位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | +1:03 |
10位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +1:23 |
11位 | マシュー・リッチテッロ(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) | +1:30 |
12位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +1:49 |
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | 76:43:36 |
2位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +1:54 |
3位 | エンリク・マス(スペイン、モビスター) | +2:20 |
4位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | +2:54 |
5位 | ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | +4:33 |
6位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) | +4:47 |
7位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +4:55 |
8位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +5:55 |
9位 | ミケル・ランダ(スペイン、Tレックス・クイックステップ) | +6:40 |
10位 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア、UAEチームエミレーツ) | +7:39 |
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 226pts |
2位 | マックス・プール(イギリス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | 118pts |
3位 | パブロ・カストリーリョ(スペイン、エキポ・ケルンファルマ) | 117pts |
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 | マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) | 57pts |
2位 | ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) | 56pts |
3位 | パブロ・カストリーリョ(スペイン、エキポ・ケルンファルマ) | 37pts |
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 | マティアス・スケルモース(デンマーク、リドル・トレック) | 76:48:23 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +0:08 |
3位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +1:08 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 229:44:30 |
2位 | レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ | +37:44 |
3位 | デカトロンAG2Rラモンディアル | +1:25:43 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos
photo:Unipublic, CorVos
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