2024/07/15(月) - 08:15
名峰プラトー・ド・ベイユを駆け上がるツール・ド・フランス第15ステージで、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が2連勝。攻勢に出たヴィンゲゴーを退け、総合リードを3分9秒まで拡げた。
7月14日(日)第15ステージ
ルーダンヴィエル〜プラトー・ド・ベイユ 197.7km(山岳/山頂フィニッシュ)
フランス革命記念日である7月14日(日)に行われたツール・ド・フランス第15ステージは、前日に続きピレネー山脈を舞台にした山岳フィニッシュ。距離はパレード走行を合わせるとレース距離は200kmを超え、4つの1級山岳を越えたのち、超級山岳にフィニッシュする獲得標高差4,800mの過酷なステージだ。
ルーダンヴィエルでのアクチュアルスタート直後から1級山岳ペイルスルド(距離6.9km/平均7.8%)が始まり、その後登場する2連続の1級山岳はいずれも高難易度(距離9.3km/平均9.1%、距離4.3km/平均9.6%)。本格的な争いは残り70kmから始まると予想され、まずは1級アニェス(距離10km/平均8.2%)とカテゴリーのつかないポール・ド・レルスを連続して登坂。下ってからアンドラ公国にほど近い超級山岳プラトー・ド・ベイユ(距離15.8km/平均7.9%)に臨む。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、レース主催者は運営スタッフやメディアなどにマスクの着用を指示。幸いこの日未出走となった選手はおらず、陽性になりながらもウイルス量が微量のため出場するゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)を含む154名が、気温30度に迫る暑さのなかスタートを切った。
スタート直後から登坂する1級山岳ペイルスルド(距離6.9km/平均7.8%)では、革命記念日のフランス人勝利を目指すロマン・バルデ(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)とダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)が飛び出す。そこにオイエル・ラスカノ(スペイン、モビスター)も追従し、頂上はゴデュが先頭通過。しかし下りで早くも約70名まで絞られたメイン集団に捉まり、総合エースを失ったボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)を中心とした21名の逃げ集団が形成された。
160.7km地点に設定された中間スプリントでは、逃げに乗ったマイヨヴェールのビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)とマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)が争う。先頭通過したのはギルマイだったが、ライン直前での斜行により3位通過への降格処分が下される。続く1級山岳ではリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)が仕掛けるシーンもありながら、15名まで人数を減らした逃げ集団は2つの1級山岳を越え、谷間の平坦路に入っていった。
それを2分半後方で追うメイン集団ではヴィスマ・リースアバイクが先頭でペースを作る。逃げ集団では特にジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)を擁するレッドブル・ボーラ・ハンスグローエが積極的で、ユンゲルスとマッテオ・ソブレロ(イタリア)を中心にペースを上げる。そのため逃げグループは2つに分裂し、カラパスやサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)が遅れていった。
登坂距離の長い1級アニェス(距離10km/平均8.2%)に入り、更に逃げ集団はバラバラになる。先頭はヒンドレーとエンリク・マス(スペイン、モビスター)、ローレンス・デプルス(ベルギー、イネオス・グレナディアーズ)、そして集団復帰したカラパスの4名に絞られ、遅れてトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が追いつく。しかし続く長い下りでプロトンがペースメイクに本腰を入れたため、逃げとの距離は一気に縮まった。
最終山岳である超級プラトー・ド・ベイユ(距離15.8km/平均7.9%)に先頭5名が脚を踏み入れた時点で、メイン集団との差は2分33秒。ステージ優勝が委ねられたとは言い難いタイム差の逃げは、散発的なアタック繰り返したためスピードが上がらない。そしてフィニッシュまで11kmを残した地点で、カラパスが仕掛けた。
それにマスらはついていけず、カラパスは単独先頭でフィニッシュを目指す。しかしプロトンはこの時点で20秒後方まで迫っており、長時間に渡り牽引したマッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)がダンシングで最後の力を振り絞る。そして役目を終えると同時に、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)がアタックした。
繰り下げでマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着るヴィンゲゴーのペースにはタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)しか反応できず、遅れたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)はマイペース走法に切り替える。総合トップツーは逃げを次々に捉え、最後まで粘ったマスとカラパスもかわしていく。その後も今大会初めて攻勢に出たヴィンゲゴーはハイペースで踏み続けたものの、ポガチャルを引き離すことできない。そして頂上まで5.4kmを残した地点で、今度はポガチャルがダンシングで加速した。
表情を変えることなく踏み続けるポガチャルにヴィンゲゴーはついていけず、両者の距離は拡がっていく。何度も後ろを振り返るポガチャルはシッティングのままハイケイデンスで脚を回し続け、相性の良いピレネーで2日連続勝利を掴み取った。
積極的な走りを見せながらもポガチャルに敗したヴィンゲゴーは1分8秒遅れでフィニッシュし、3位は2分51秒遅れのエヴェネプール。そのためポガチャルはヴィンゲゴーとの総合タイムを、1分57秒から3分9秒まで拡げることに成功した。
「いつもは暑さに苦しめられるのだが、チームが僕の身体を冷やすために協力してくれた。そのおかげで素晴らしい結果が得られた。僕はピレネーが好きで、ピレネーもまた僕のことが好きみたい。ヨナス(ヴィンゲゴー)が仕掛けた瞬間は、限界に達したのだがなんとかついていけた。その後は彼も苦しみ始めたので仕掛けた。最後は本当に苦しかったよ」と、ポガチャルは今大会3勝目をそう振り返った。
これまでマルコ・パンターニ(イタリア)が持っていたプラトー・ド・ベイユの登坂記録(43分28秒)を3分半更新(39分58秒)したポガチャル。「これほどのリードを得て2週目を終えるなんて思っていなかった」と語る大差でマイヨジョーヌを保持したまま、グリュイッサンにて2度目の休息日を迎える。
7月14日(日)第15ステージ
ルーダンヴィエル〜プラトー・ド・ベイユ 197.7km(山岳/山頂フィニッシュ)
フランス革命記念日である7月14日(日)に行われたツール・ド・フランス第15ステージは、前日に続きピレネー山脈を舞台にした山岳フィニッシュ。距離はパレード走行を合わせるとレース距離は200kmを超え、4つの1級山岳を越えたのち、超級山岳にフィニッシュする獲得標高差4,800mの過酷なステージだ。
ルーダンヴィエルでのアクチュアルスタート直後から1級山岳ペイルスルド(距離6.9km/平均7.8%)が始まり、その後登場する2連続の1級山岳はいずれも高難易度(距離9.3km/平均9.1%、距離4.3km/平均9.6%)。本格的な争いは残り70kmから始まると予想され、まずは1級アニェス(距離10km/平均8.2%)とカテゴリーのつかないポール・ド・レルスを連続して登坂。下ってからアンドラ公国にほど近い超級山岳プラトー・ド・ベイユ(距離15.8km/平均7.9%)に臨む。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、レース主催者は運営スタッフやメディアなどにマスクの着用を指示。幸いこの日未出走となった選手はおらず、陽性になりながらもウイルス量が微量のため出場するゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)を含む154名が、気温30度に迫る暑さのなかスタートを切った。
スタート直後から登坂する1級山岳ペイルスルド(距離6.9km/平均7.8%)では、革命記念日のフランス人勝利を目指すロマン・バルデ(DSMフィルメニッヒ・ポストNL)とダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)が飛び出す。そこにオイエル・ラスカノ(スペイン、モビスター)も追従し、頂上はゴデュが先頭通過。しかし下りで早くも約70名まで絞られたメイン集団に捉まり、総合エースを失ったボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)を中心とした21名の逃げ集団が形成された。
160.7km地点に設定された中間スプリントでは、逃げに乗ったマイヨヴェールのビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)とマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)が争う。先頭通過したのはギルマイだったが、ライン直前での斜行により3位通過への降格処分が下される。続く1級山岳ではリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)が仕掛けるシーンもありながら、15名まで人数を減らした逃げ集団は2つの1級山岳を越え、谷間の平坦路に入っていった。
それを2分半後方で追うメイン集団ではヴィスマ・リースアバイクが先頭でペースを作る。逃げ集団では特にジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)を擁するレッドブル・ボーラ・ハンスグローエが積極的で、ユンゲルスとマッテオ・ソブレロ(イタリア)を中心にペースを上げる。そのため逃げグループは2つに分裂し、カラパスやサイモン・イェーツ(イギリス、ジェイコ・アルウラー)が遅れていった。
登坂距離の長い1級アニェス(距離10km/平均8.2%)に入り、更に逃げ集団はバラバラになる。先頭はヒンドレーとエンリク・マス(スペイン、モビスター)、ローレンス・デプルス(ベルギー、イネオス・グレナディアーズ)、そして集団復帰したカラパスの4名に絞られ、遅れてトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が追いつく。しかし続く長い下りでプロトンがペースメイクに本腰を入れたため、逃げとの距離は一気に縮まった。
最終山岳である超級プラトー・ド・ベイユ(距離15.8km/平均7.9%)に先頭5名が脚を踏み入れた時点で、メイン集団との差は2分33秒。ステージ優勝が委ねられたとは言い難いタイム差の逃げは、散発的なアタック繰り返したためスピードが上がらない。そしてフィニッシュまで11kmを残した地点で、カラパスが仕掛けた。
それにマスらはついていけず、カラパスは単独先頭でフィニッシュを目指す。しかしプロトンはこの時点で20秒後方まで迫っており、長時間に渡り牽引したマッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク)がダンシングで最後の力を振り絞る。そして役目を終えると同時に、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)がアタックした。
繰り下げでマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着るヴィンゲゴーのペースにはタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)しか反応できず、遅れたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)はマイペース走法に切り替える。総合トップツーは逃げを次々に捉え、最後まで粘ったマスとカラパスもかわしていく。その後も今大会初めて攻勢に出たヴィンゲゴーはハイペースで踏み続けたものの、ポガチャルを引き離すことできない。そして頂上まで5.4kmを残した地点で、今度はポガチャルがダンシングで加速した。
表情を変えることなく踏み続けるポガチャルにヴィンゲゴーはついていけず、両者の距離は拡がっていく。何度も後ろを振り返るポガチャルはシッティングのままハイケイデンスで脚を回し続け、相性の良いピレネーで2日連続勝利を掴み取った。
積極的な走りを見せながらもポガチャルに敗したヴィンゲゴーは1分8秒遅れでフィニッシュし、3位は2分51秒遅れのエヴェネプール。そのためポガチャルはヴィンゲゴーとの総合タイムを、1分57秒から3分9秒まで拡げることに成功した。
「いつもは暑さに苦しめられるのだが、チームが僕の身体を冷やすために協力してくれた。そのおかげで素晴らしい結果が得られた。僕はピレネーが好きで、ピレネーもまた僕のことが好きみたい。ヨナス(ヴィンゲゴー)が仕掛けた瞬間は、限界に達したのだがなんとかついていけた。その後は彼も苦しみ始めたので仕掛けた。最後は本当に苦しかったよ」と、ポガチャルは今大会3勝目をそう振り返った。
これまでマルコ・パンターニ(イタリア)が持っていたプラトー・ド・ベイユの登坂記録(43分28秒)を3分半更新(39分58秒)したポガチャル。「これほどのリードを得て2週目を終えるなんて思っていなかった」と語る大差でマイヨジョーヌを保持したまま、グリュイッサンにて2度目の休息日を迎える。
ツール・ド・フランス2024第15ステージ
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 5:13:55 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +1:08 |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +2:51 |
4位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +3:54 |
5位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +4:43 |
6位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +4:56 |
7位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +5:08 |
8位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | |
9位 | リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) | +5:41 |
10位 | フェリックス・ガル(オーストリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +5:57 |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 61:56:24 |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +3:09 |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +5:19 |
4位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +10:54 |
5位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +11:21 |
6位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +11:27 |
7位 | アダム・イェーツ(イギリス、UAEチームエミレーツ) | +13:38 |
8位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) | +15:48 |
9位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | +16:12 |
10位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +16:32 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 363pts |
2位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 277pts |
3位 | ブライアン・コカール(フランス、コフィディス) | 147pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 77pts |
2位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | 58pts |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 42pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 62:01:43 |
2位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +6:08 |
3位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +11:13 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 186:12:00 |
2位 | ヴィスマ・リースアバイク | +55:03 |
3位 | スーダル・クイックステップ | +58:59 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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