2024/07/10(水) - 08:10
カテゴリー山岳が一つもない平坦路で争われたツール・ド・フランス第10ステージ。ファンデルプールに導かれたヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が圧巻のスプリントを披露し、念願の勝利を手に入れた。
7月9日(火)第10ステージ
オルレアン〜サン・タマン・モンロン 187.3km(平坦)
フランス国土のど真ん中に位置するオルレアンで第1休息日を終えた選手たちは、ここをスタート地点に第2週目に入っていく。サン・タマン・モンロンまでの187.3kmはカテゴリー山岳のない平坦路で、中間スプリントは57.1km地点に登場。獲得標高差が1,000mに満たないステージの勝負所を挙げるとすれば、南から東に進路を変えるイスーダン(残り62km)からの横風だ。
フランスに入国してから控えめだった暑さに加え、嵐の心配もされるなか午後1時25分に172名の選手たちはスタート。その中に第9ステージの未舗装路で落車し、足首を骨折したアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)の姿はなく、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)にとって重要な山岳アシストがレースを去った。
休息日に行う回復ライドかと思えるほどスローペースでレースは始まる。マイヨジョーヌを着るタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)はもちろん、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)も笑顔を見せながら、スプリントステージではお馴染みシルヴァン・ディリエ(スイス、アルペシン・ドゥクーニンク)が中心となり集団を牽引。そしてスタートから46kmを過ぎ、中間スプリントの手前でコーベ・ホーセンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ)が飛び出した。
第4ステージでも逃げたホーセンスのアタックには、誘いの言葉を掛けられた同じベルギー出身でロット・デスティニーのブレント・ファンムールとマキシム・ファンヒルスが付き合う。しかしファンヒルスはすぐに踏むのを止め、先頭はホーセンスとファンムールの2人に。この逃げを容認したプロトンでは、スプリントの前哨戦である中間スプリントに向けて各チームが体制を整えた。
3位通過に与えられる15ポイントを目指し、アルノー・デマール(フランス)のためにアルケアB&Bホテルズがトレインを組む。しかし世界王者のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)がヤスペル・フィリプセン(ベルギー)を引き上げ、右側をフェンスで閉めながらフィリプセンが集団トップで通過。このライン取りにビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)の進路が妨害されたようにも見られたが、問題になることなくフィリプセンが前哨戦を制した。
逃げは最大1分20秒のリードを得たものの、ファンムールが下がり、続いてホーセンスの残り122km地点でプロトンに戻る。この頃から降り始めた小雨も大勢には影響なく、ギルマイがパンクして問題なく集団に戻るシーンなどありながら、選手たちはイスーダン(残り62km)に到着。南だった進路を東に変え、横風による集団分断を警戒したUAEチームエミレーツやヴィスマ・リースアバイクが前方で人数を固めた。
コース両側に遮るものがなく、横から吹きつける風向きとエシュロン(横風分断)に申し分ない状況が整う。そのため一時集団のスピードは70km/hに達したものの風の強さだけが足りず、細長く伸びた集団は再びコース幅いっぱいに拡がる。速度も50km/hに落ち着くと選手たちに笑顔が戻った。
フィニッシュ地点であるサン・タマン・モンロンまで残り30kmを切り、アルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット・デスティニー)がパンクで遅れる。すぐにファンヒルスが引き上げたものの、ドゥリーはここで脚を使ったためか、この日は勝負に絡む事ができなかった。
その後も飛び出す選手は現れることなく、集団スプリントに向け集団では位置取り争いが激しさを増していく。そして残り3km地点の手前からマライン・ファンデンベルフ(オランダ)で勝利を狙うEFエデュケーション・イージーポストが先頭に立ち、続いてマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着るヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)に代わる。この時点で集団は40名程度に絞られた。
先頭に立ったアスタナ・カザクスタンはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)を見失うなか、アシストを3名も残すアルペシン・トレインが先頭へ。横からクリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)がワウト・ファンアールト(ベルギー)を引き上げ、残り800mの左コーナーに入る。
直後(残り700m)のタイトな右コーナーでもアルペシンは隊列を崩さず、最終左コーナーを抜けてファンデルプールが先頭に立つ。世界王者のトップスピードには各チームのエーススプリンターしかついていけず、フィリプセンがスプリント開始と共に右側をフェンスで閉める”いつもの”ラインを取る。そしてこれまでの鬱憤を晴らすかのように、猛スピードで駆けるフィリプセンにはギルマイやアッカーマンは並ぶことすらできず、フィリプセンが先頭でフィニッシュラインを通過した。
降格処分となった第6ステージを含めると3度の2位と、ここまで勝利を逃し続けていたフィリプセン。「第1週目に幸運は訪れず、ここにきてようやく勝利を掴むことができた。トリッキーなコーナーがくることもわかっており、僕を信じ続けてくれたチームのためにもこの勝利は嬉しい。ギルマイには(マイヨヴェール争いで)大差をつけられているが、ステージ毎の成功を目指すのみ」と、フィリプセンは極めて冷静に勝利を喜んだ。
ピュアスプリンターを相手にも勝負できる好調さを見せたギルマイは2位に入り、3位はパスカル・アッカーマン(ドイツ、イスラエル・プレミアテック)。この結果フィリプセンはギルマイとのマイヨヴェールのポイント差を88から74点まで縮小している。
また総合上位に変動はなく、翌日選手たちはカテゴリー山岳が6つ設定され、獲得標高差4,350mの険しい山岳ステージに臨む。
7月9日(火)第10ステージ
オルレアン〜サン・タマン・モンロン 187.3km(平坦)
フランス国土のど真ん中に位置するオルレアンで第1休息日を終えた選手たちは、ここをスタート地点に第2週目に入っていく。サン・タマン・モンロンまでの187.3kmはカテゴリー山岳のない平坦路で、中間スプリントは57.1km地点に登場。獲得標高差が1,000mに満たないステージの勝負所を挙げるとすれば、南から東に進路を変えるイスーダン(残り62km)からの横風だ。
フランスに入国してから控えめだった暑さに加え、嵐の心配もされるなか午後1時25分に172名の選手たちはスタート。その中に第9ステージの未舗装路で落車し、足首を骨折したアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)の姿はなく、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)にとって重要な山岳アシストがレースを去った。
休息日に行う回復ライドかと思えるほどスローペースでレースは始まる。マイヨジョーヌを着るタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)はもちろん、ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)も笑顔を見せながら、スプリントステージではお馴染みシルヴァン・ディリエ(スイス、アルペシン・ドゥクーニンク)が中心となり集団を牽引。そしてスタートから46kmを過ぎ、中間スプリントの手前でコーベ・ホーセンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ)が飛び出した。
第4ステージでも逃げたホーセンスのアタックには、誘いの言葉を掛けられた同じベルギー出身でロット・デスティニーのブレント・ファンムールとマキシム・ファンヒルスが付き合う。しかしファンヒルスはすぐに踏むのを止め、先頭はホーセンスとファンムールの2人に。この逃げを容認したプロトンでは、スプリントの前哨戦である中間スプリントに向けて各チームが体制を整えた。
3位通過に与えられる15ポイントを目指し、アルノー・デマール(フランス)のためにアルケアB&Bホテルズがトレインを組む。しかし世界王者のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)がヤスペル・フィリプセン(ベルギー)を引き上げ、右側をフェンスで閉めながらフィリプセンが集団トップで通過。このライン取りにビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)の進路が妨害されたようにも見られたが、問題になることなくフィリプセンが前哨戦を制した。
逃げは最大1分20秒のリードを得たものの、ファンムールが下がり、続いてホーセンスの残り122km地点でプロトンに戻る。この頃から降り始めた小雨も大勢には影響なく、ギルマイがパンクして問題なく集団に戻るシーンなどありながら、選手たちはイスーダン(残り62km)に到着。南だった進路を東に変え、横風による集団分断を警戒したUAEチームエミレーツやヴィスマ・リースアバイクが前方で人数を固めた。
コース両側に遮るものがなく、横から吹きつける風向きとエシュロン(横風分断)に申し分ない状況が整う。そのため一時集団のスピードは70km/hに達したものの風の強さだけが足りず、細長く伸びた集団は再びコース幅いっぱいに拡がる。速度も50km/hに落ち着くと選手たちに笑顔が戻った。
フィニッシュ地点であるサン・タマン・モンロンまで残り30kmを切り、アルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット・デスティニー)がパンクで遅れる。すぐにファンヒルスが引き上げたものの、ドゥリーはここで脚を使ったためか、この日は勝負に絡む事ができなかった。
その後も飛び出す選手は現れることなく、集団スプリントに向け集団では位置取り争いが激しさを増していく。そして残り3km地点の手前からマライン・ファンデンベルフ(オランダ)で勝利を狙うEFエデュケーション・イージーポストが先頭に立ち、続いてマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着るヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)に代わる。この時点で集団は40名程度に絞られた。
先頭に立ったアスタナ・カザクスタンはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)を見失うなか、アシストを3名も残すアルペシン・トレインが先頭へ。横からクリストフ・ラポルト(フランス、ヴィスマ・リースアバイク)がワウト・ファンアールト(ベルギー)を引き上げ、残り800mの左コーナーに入る。
直後(残り700m)のタイトな右コーナーでもアルペシンは隊列を崩さず、最終左コーナーを抜けてファンデルプールが先頭に立つ。世界王者のトップスピードには各チームのエーススプリンターしかついていけず、フィリプセンがスプリント開始と共に右側をフェンスで閉める”いつもの”ラインを取る。そしてこれまでの鬱憤を晴らすかのように、猛スピードで駆けるフィリプセンにはギルマイやアッカーマンは並ぶことすらできず、フィリプセンが先頭でフィニッシュラインを通過した。
降格処分となった第6ステージを含めると3度の2位と、ここまで勝利を逃し続けていたフィリプセン。「第1週目に幸運は訪れず、ここにきてようやく勝利を掴むことができた。トリッキーなコーナーがくることもわかっており、僕を信じ続けてくれたチームのためにもこの勝利は嬉しい。ギルマイには(マイヨヴェール争いで)大差をつけられているが、ステージ毎の成功を目指すのみ」と、フィリプセンは極めて冷静に勝利を喜んだ。
ピュアスプリンターを相手にも勝負できる好調さを見せたギルマイは2位に入り、3位はパスカル・アッカーマン(ドイツ、イスラエル・プレミアテック)。この結果フィリプセンはギルマイとのマイヨヴェールのポイント差を88から74点まで縮小している。
また総合上位に変動はなく、翌日選手たちはカテゴリー山岳が6つ設定され、獲得標高差4,350mの険しい山岳ステージに臨む。
ツール・ド・フランス2024第10ステージ
1位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 4:20:06 |
2位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | |
3位 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、イスラエル・プレミアテック) | |
4位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | |
5位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター) | |
6位 | サム・ベネット(アイルランド、デカトロンAG2Rラモンディアル) | |
7位 | ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | |
8位 | フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
9位 | ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ジェイコ・アルウラー) | |
10位 | アクセル・ジングレ(フランス、コフィディス) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 40:02:48 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +0:33 |
3位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +1:15 |
4位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +1:36 |
5位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +2:16 |
6位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +2:17 |
7位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +2:31 |
8位 | ミケル・ランダ(スペイン、スーダル・クイックステップ) | +3:35 |
9位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | +4:02 |
10位 | マッテオ・ヨルゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +4:03 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ) | 267pts |
2位 | ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) | 193pts |
3位 | ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | 107pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | 33pts |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 20pts |
3位 | ヴァランタン・マドゥアス(フランス、グルパマFDJ) | 16pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 40:03:21 |
2位 | フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) | +1:43 |
3位 | カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) | +1:58 |
チーム総合成績
1位 | UAEチームエミレーツ | 120:13:19 |
2位 | スーダル・クイックステップ | +6:04 |
3位 | イネオス・グレナディアーズ | +6:45 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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