2024/05/16(木) - 08:17
世界トップスプリンターの競演となったジロ・デ・イタリア第11ステージ。マリアチクラミーノのジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が力強いスプリントでライバルを退け、念願の区間2勝目を手に入れた。
山頂フィニッシュの翌日は、集団スプリントが濃厚と見られた207kmの平坦ステージ。それも序盤に設定された3級山岳を除きフィニッシュまでは平坦路が続くため、大集団によるスピードバトルが大方の予想となった。
第107回ジロ・デ・イタリア11日目はアペニン山脈を越え、内陸のフォイアーノ・ディ・ヴァル・フォルトレから北へ進み今大会初めてのアドリア海に出る。注意しなければならないのはそこから吹きつける浜風と、残り4km地点から現れる2つの直角コーナー。そしてラスト3.5kmはスプリントチームに加え、総合系のチームによる位置取り争いから混沌のスプリント勝負が予想された。
この日はキアン・アイデブルックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)の棄権が驚きと共に報じられた。総合5位とマリアビアンカ(ヤングライダー賞)を着用していたアイデブルックスは前日のステージ中に体調を崩し、不出場を選択。そのため昨年総合優勝に輝いたヴィスマは、リタイア者続出により僅か4名でのレースを強いられることとなった。
逃げ形成にスタート後80kmを要した前日から一転、この日は僅か5kmで決まった。193cmと長身のトマ・シャンピオン(フランス、コフィディス)が飛び出し、そこにヴィスマのティム・ファンダイケ(オランダ)とエドアルド・アッフィニ(イタリア)の2人が追従。そのためファンダイケが189cm、アッフィニが190cmと高身長の3名による逃げが出来上がり、この日唯一のカテゴリー山岳である3級ピエトラカテッラに至った。
3名は争うことなくファンダイケが山頂をトップ通過し、この時点でメイン集団との差は1分51秒。そのプロトンは総合首位タデイ・ポガチャル(スロベニア)を擁するUAEチームエミレーツではなく、スプリントに持ち込みたいリドル・トレックのアマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア)やピーテル・セリー(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が牽引。逃げが僅か3名ということもあり、メイン集団がタイム差の主導権を握る典型的なスプリントステージとなった。
残り132.5kmに設定された一つ目の中間スプリントではシャンピオンが先頭通過し、プロトンではスプリントバトルの一回戦が開幕する。ここではマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)を着るジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が本気踏みでカーデン・グローブス(オーストリア、アルペシン・ドゥクーニンク)を退けて4位通過(5ポイント獲得)。その後はほぼ追い風を受けながら先頭の3名は順調に距離を消化していったものの、3分差を超えることは一時もなかった。
続くインテルジロ(残り69.1km)でも先頭はシャンピオンが取り、40秒までタイム差を詰めたメイン集団ではグローブスが4位で通過。そして残り35.5km地点で逃げていた3名はプロトンに引き戻され、直後の中間スプリント(ボーナスタイムのみが付与される)では、総合3位のゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が踏み込んで2位通過。「総合勢はティベーリ以外、積極性に欠ける」と揶揄したポガチャルとのタイム差を2秒縮める(2分56秒遅れ)ことに成功した。
集団スプリントに向け緊張感が徐々に高まっていく集団からは、残り20km地点でアンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)がアタックする。それにより一気に選手たちの動きが慌ただしくなったためか、フェリックス・グロスシャートナー(オーストリア、UAEチームエミレーツ)とケヴィン・ヴェルマーク(アメリカ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が落車。しかし両者に深刻な怪我はなく、レース終盤に入ってもなお集団牽引を続けるナウゲブレイグザビエルによってピッコロは引き戻された。
ピンク色に染められ、総合優勝者に与えられるトロフェオ・センツァフィーネが描かれた列車と集団が並走するシーンもありながら、選手たちはフィニッシュラインが引かれたフランカヴィッラ・アル・マーレの街に突入。各チームが中央分離帯や幅の細いコーナーなどに苦戦する中でも、トーマスの安全確保が目的のイネオス・グレナディアーズが先頭に立つ。そして救済措置が取られる残り3km地点を過ぎると、総合チームと入れ替わるように鼻息荒いスプリンターチームが前へ前へと隊列を押し上げた。
フラムルージュ(残り1km)を前に先頭に立ったのは、ここまで勝負に絡めていないカレブ・ユアン(オーストラリア)擁するジェイコ・アルウラー。しかしアルペシンのトレインが一気にペースを上げるとジェイコは集団に埋もれ、リドルとスーダル・クイックステップも先頭付近に人数を固める。
進行方向の左斜め前から向かい風が吹きつけたため、集団は右のフェンス際に縦長に伸びる。そして優勝候補の一人であるファビオ・ヤコブセン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が落車で脱落したスプリントは、ベルト・ファンレルベルへに導かれたティム・メルリール(共にベルギー、スーダル・クイックステップ)のスプリントからスタート。コース中央から右側を絞りながら踏み込んだメルリールに対し、その左側でミランがもがく。
その2人の後ろで行き場を失ったフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)が片手を挙げ憤りを顕にするなか、トップスピードでメルリールを上回ったミランが勝利。マリアチクラミーノがその強さを見せつけた。
「僕が喜んでいるのは最後20秒のスプリントだけではなく、チームがレースを通して僕をサポートして、最高の位置まで僕を導いてくれたから。だから彼らには心の底からの感謝を伝えたい。昨年は(マリアチクラミーノを着て臨んだステージで)失敗をし続け、結果を残すことができなかった。だからこの勝利が嬉しいんだ」と、第4ステージに続く区間2勝目をミランは喜んだ。
また先んじてスプリントを開始したメルリールは、コース右側に寄った行為が斜行(進路妨害)とみなされ集団最後尾の89位に降格。そのため区間2位にはグローブスが繰り上がっている。
山頂フィニッシュの翌日は、集団スプリントが濃厚と見られた207kmの平坦ステージ。それも序盤に設定された3級山岳を除きフィニッシュまでは平坦路が続くため、大集団によるスピードバトルが大方の予想となった。
第107回ジロ・デ・イタリア11日目はアペニン山脈を越え、内陸のフォイアーノ・ディ・ヴァル・フォルトレから北へ進み今大会初めてのアドリア海に出る。注意しなければならないのはそこから吹きつける浜風と、残り4km地点から現れる2つの直角コーナー。そしてラスト3.5kmはスプリントチームに加え、総合系のチームによる位置取り争いから混沌のスプリント勝負が予想された。
この日はキアン・アイデブルックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)の棄権が驚きと共に報じられた。総合5位とマリアビアンカ(ヤングライダー賞)を着用していたアイデブルックスは前日のステージ中に体調を崩し、不出場を選択。そのため昨年総合優勝に輝いたヴィスマは、リタイア者続出により僅か4名でのレースを強いられることとなった。
逃げ形成にスタート後80kmを要した前日から一転、この日は僅か5kmで決まった。193cmと長身のトマ・シャンピオン(フランス、コフィディス)が飛び出し、そこにヴィスマのティム・ファンダイケ(オランダ)とエドアルド・アッフィニ(イタリア)の2人が追従。そのためファンダイケが189cm、アッフィニが190cmと高身長の3名による逃げが出来上がり、この日唯一のカテゴリー山岳である3級ピエトラカテッラに至った。
3名は争うことなくファンダイケが山頂をトップ通過し、この時点でメイン集団との差は1分51秒。そのプロトンは総合首位タデイ・ポガチャル(スロベニア)を擁するUAEチームエミレーツではなく、スプリントに持ち込みたいリドル・トレックのアマヌエル・ゲブレイグザビエル(エリトリア)やピーテル・セリー(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が牽引。逃げが僅か3名ということもあり、メイン集団がタイム差の主導権を握る典型的なスプリントステージとなった。
残り132.5kmに設定された一つ目の中間スプリントではシャンピオンが先頭通過し、プロトンではスプリントバトルの一回戦が開幕する。ここではマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)を着るジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)が本気踏みでカーデン・グローブス(オーストリア、アルペシン・ドゥクーニンク)を退けて4位通過(5ポイント獲得)。その後はほぼ追い風を受けながら先頭の3名は順調に距離を消化していったものの、3分差を超えることは一時もなかった。
続くインテルジロ(残り69.1km)でも先頭はシャンピオンが取り、40秒までタイム差を詰めたメイン集団ではグローブスが4位で通過。そして残り35.5km地点で逃げていた3名はプロトンに引き戻され、直後の中間スプリント(ボーナスタイムのみが付与される)では、総合3位のゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が踏み込んで2位通過。「総合勢はティベーリ以外、積極性に欠ける」と揶揄したポガチャルとのタイム差を2秒縮める(2分56秒遅れ)ことに成功した。
集団スプリントに向け緊張感が徐々に高まっていく集団からは、残り20km地点でアンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)がアタックする。それにより一気に選手たちの動きが慌ただしくなったためか、フェリックス・グロスシャートナー(オーストリア、UAEチームエミレーツ)とケヴィン・ヴェルマーク(アメリカ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が落車。しかし両者に深刻な怪我はなく、レース終盤に入ってもなお集団牽引を続けるナウゲブレイグザビエルによってピッコロは引き戻された。
ピンク色に染められ、総合優勝者に与えられるトロフェオ・センツァフィーネが描かれた列車と集団が並走するシーンもありながら、選手たちはフィニッシュラインが引かれたフランカヴィッラ・アル・マーレの街に突入。各チームが中央分離帯や幅の細いコーナーなどに苦戦する中でも、トーマスの安全確保が目的のイネオス・グレナディアーズが先頭に立つ。そして救済措置が取られる残り3km地点を過ぎると、総合チームと入れ替わるように鼻息荒いスプリンターチームが前へ前へと隊列を押し上げた。
フラムルージュ(残り1km)を前に先頭に立ったのは、ここまで勝負に絡めていないカレブ・ユアン(オーストラリア)擁するジェイコ・アルウラー。しかしアルペシンのトレインが一気にペースを上げるとジェイコは集団に埋もれ、リドルとスーダル・クイックステップも先頭付近に人数を固める。
進行方向の左斜め前から向かい風が吹きつけたため、集団は右のフェンス際に縦長に伸びる。そして優勝候補の一人であるファビオ・ヤコブセン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が落車で脱落したスプリントは、ベルト・ファンレルベルへに導かれたティム・メルリール(共にベルギー、スーダル・クイックステップ)のスプリントからスタート。コース中央から右側を絞りながら踏み込んだメルリールに対し、その左側でミランがもがく。
その2人の後ろで行き場を失ったフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)が片手を挙げ憤りを顕にするなか、トップスピードでメルリールを上回ったミランが勝利。マリアチクラミーノがその強さを見せつけた。
「僕が喜んでいるのは最後20秒のスプリントだけではなく、チームがレースを通して僕をサポートして、最高の位置まで僕を導いてくれたから。だから彼らには心の底からの感謝を伝えたい。昨年は(マリアチクラミーノを着て臨んだステージで)失敗をし続け、結果を残すことができなかった。だからこの勝利が嬉しいんだ」と、第4ステージに続く区間2勝目をミランは喜んだ。
また先んじてスプリントを開始したメルリールは、コース右側に寄った行為が斜行(進路妨害)とみなされ集団最後尾の89位に降格。そのため区間2位にはグローブスが繰り上がっている。
ジロ・デ・イタリア2024第11ステージ結果
1位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | 4:23:18 |
2位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
3位 | ジョヴァンニ・ロナルディ(イタリア、ポルティ・コメタ) | |
4位 | ローレンス・ピシー(ニュージーランド、グルパマFDJ) | |
5位 | フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
6位 | ダニー・ファンポッペル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
7位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター) | |
8位 | フィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
9位 | スタニスワフ・アニオコウスキ(ポーランド、コフィディス) | |
10位 | エンリーコ・ザノンチェッロ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ) | |
89位 | ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 41:09:26 |
2位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) | +2:40 |
3位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +2:56 |
4位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +3:39 |
5位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +4:27 |
6位 | ロマン・バルデ(フランス、DSMフィルメニッヒ・ポストNL) | +4:57 |
7位 | ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、アスタナ・カザクスタン) | +5:19 |
8位 | フィリッポ・ザナ(イタリア、ジェイコ・アルウラー) | +5:23 |
9位 | エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア、モビスター) | +5:28 |
10位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | +5:52 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | 229pts |
2位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 166pts |
3位 | ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 92pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 104pts |
2位 | シモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス) | 59pts |
3位 | ヴァランタン・パレパントル(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) | 55pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 41:13:53 |
2位 | フィリッポ・ザナ(イタリア、ジェイコ・アルウラー) | +0:56 |
3位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | +1:25 |
チーム総合成績
1位 | デカトロンAG2Rラモンディアル | 123:42:21 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | +7:07 |
3位 | ボーラ・ハンスグローエ | +20:31 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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