2024/05/13(月) - 08:15
奇襲を仕掛けたナルバエスが、残り10mで捉まったジロ・デ・イタリア第9ステージ。休息日前日は集団スプリントで決着し、22歳オラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)が念願のグランツール初勝利を手に入れた。
トリノを出発して9日が経った第107回ジロ・デ・イタリア。第1週目最終日の舞台となったのは、総合勢にとって”移動日”とも呼べるフラットなステージ。内陸のアヴェッツァーノをスタートし、3日振りにティレニア海を臨むナポリにフィニッシュする。
コースの分類が「平坦」ではなく「丘陵」なのは、残り39.8kmから4級山岳が待ち受けるため。距離4.1km/平均3.8%の登りは最大勾配9%もあるためピュアスプリンターを退けるには十分かつ、その後も2つのカテゴリーなき丘が設定されている。
この日は総合11位につけていたアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・カザクスタン)が副鼻腔炎と急性喉頭炎のため未出走となった。そして前日勝者で全身をマリアローザのピンクに染めたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)を先頭にレースはスタート。その直後からポルティ・コメタのイタリア人2名(ミルコ・マエストリとアンドレア・ピエトロボン)が飛び出し、僅か10kmほどで50秒のリードを得た。
今大会2番目に長い214kmに加え、終盤は丘が連続するため”逃げ向き”とも言えるレイアウト。そのため一度落ち着いたメイン集団では、ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、アスタナ・カザクスタン)やヤシャ・ズッタリン(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)などが逃げを目指す動きを見せる。しかし、これらはカーデン・グローブス(オーストリア)のスプリント勝利を目指すアルペシン・ドゥクーニンクが許さなかった。
結局レースはポルティ・コメタの2名が先頭のまま、この日一つ目の中間スプリント(残り81.8km)を通過する。一方のプロトンではスプリンターによる激しいスピードバトルが繰り広げられ、ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)がマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)を着るジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)やオラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)を退け、3位通過し6ポイントを得ている。
また続くインテルジロの手前ではゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)とマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が落車するシーンも。しかしトーマスに大きな怪我はなく、無事にプロトンに復帰。そしてインテルジロではグローブスがメイン集団の先頭を取り、選手たちはいよいよ4級山岳(距離4.1km/平均3.8%/最大9%)に入った。
この時点で逃げの2人とプロトンの差は1分。序盤こそ穏やかに進んだメイン集団だったが、後半に入るとアルペシンがペースアップを敢行する。登りに耐性があるグローブスやミランが集団前方で駆け上がる一方で、ファビオ・ヤコブセン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が脱落。また大会3日目を制したメルリールも遅れ、アルペシンの思惑通りピュアスプリンターを退けることに成功した。
そしてステージ唯一のカテゴリー山岳を越え、続く丘ではスプリント勝利の可能性が無くなったスーダルからジュリアン・アラフィリップ(フランス)が仕掛ける。その動きをニコラ・コンチ(イタリア、アルペシン・ドゥクーニンク)がマークし、13秒差の先頭2名にジョイン。更に遅れてルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)とケヴィン・ヴェルマーク(アメリカ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)、エウェン・コステュー(フランス、アルケアB&Bホテルズ)が追いつき、残り22kmで先頭は7名となった。
スプリントに持ち込みたいプロトンが先頭を猛追するなか、アラフィリップが逃げ集団からも飛び出す。それに今度はコステューが追従し、この日最後の丘でアラフィリップが3度目の加速。それを追うメイン集団からは、残り8km地点でジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)が飛び出した。
大会初日を制したエクアドル王者は、アラフィリップを追い抜くとそのまま単独で先頭に立つ。それをジャンマルコ・ガロフォリ(イタリア、アスタナ・カザクスタン)やオレリアン・パレパントル(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル)などが合流を目指したものの、猛スピードでフィニッシュを目指すナルバエスには届かない。
そして最大12秒差を得たナルバエスは最終ストレートに突入。一方、プロトンはミランを擁するリドル・トレックが主導権を握り、フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)を引き連れマリアローザのポガチャルが先頭に立つシーンも。そしてシモーネ・コンソンニ(イタリア、リドル・トレック)のリードアウトから、フィニッシュ手前100mでミランがスプリントを開始した。
ミランは残り10mでナルバエスを抜き、その右側からコーイが上がる。そして両者がフィニッシュラインに向かってハンドルを投げた結果、勝利したコーイが雄叫びを上げた。
ナルバエスの奇襲からマリアローザの牽引、そしてミランとコーイによるスプリントバトル。これぞジロ・デ・イタリアと言える白熱のステージを制したコーイは、「夢が叶った。ステージ優勝が僕たちが掲げた一番の目標で、今日は全てがハマったスプリントとなった。(前日に棄権した)クリストフ・ラポルトがいない中、即興でリードアウトを組み立てなければならなかった。いままでいくつも嬉しい勝利を重ねてきたが、自分がレベルアップするためにはここでの勝利が必要だった」とコメント。
総合優勝を狙うチームオーダーの中、これまで勝利を重ねながらもグランツールでの機会に恵まれてこなかった22歳が、ジロ第1週目の最終日に嬉しいジロ初勝利を掴み取った。
一方、勝利に僅か10m届かなかったナルバエスは「良い結果を得られるときもあれば、そうでない時もある。だが重要なのはジロで走ることを楽しみ、トライし続けることだ」と語っている。
総合順位に変動はなく、9日間の激闘を繰り広げた選手たちは第1休息日を迎える。
トリノを出発して9日が経った第107回ジロ・デ・イタリア。第1週目最終日の舞台となったのは、総合勢にとって”移動日”とも呼べるフラットなステージ。内陸のアヴェッツァーノをスタートし、3日振りにティレニア海を臨むナポリにフィニッシュする。
コースの分類が「平坦」ではなく「丘陵」なのは、残り39.8kmから4級山岳が待ち受けるため。距離4.1km/平均3.8%の登りは最大勾配9%もあるためピュアスプリンターを退けるには十分かつ、その後も2つのカテゴリーなき丘が設定されている。
この日は総合11位につけていたアレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、アスタナ・カザクスタン)が副鼻腔炎と急性喉頭炎のため未出走となった。そして前日勝者で全身をマリアローザのピンクに染めたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)を先頭にレースはスタート。その直後からポルティ・コメタのイタリア人2名(ミルコ・マエストリとアンドレア・ピエトロボン)が飛び出し、僅か10kmほどで50秒のリードを得た。
今大会2番目に長い214kmに加え、終盤は丘が連続するため”逃げ向き”とも言えるレイアウト。そのため一度落ち着いたメイン集団では、ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、アスタナ・カザクスタン)やヤシャ・ズッタリン(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)などが逃げを目指す動きを見せる。しかし、これらはカーデン・グローブス(オーストリア)のスプリント勝利を目指すアルペシン・ドゥクーニンクが許さなかった。
結局レースはポルティ・コメタの2名が先頭のまま、この日一つ目の中間スプリント(残り81.8km)を通過する。一方のプロトンではスプリンターによる激しいスピードバトルが繰り広げられ、ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)がマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)を着るジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)やオラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)を退け、3位通過し6ポイントを得ている。
また続くインテルジロの手前ではゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)とマキシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が落車するシーンも。しかしトーマスに大きな怪我はなく、無事にプロトンに復帰。そしてインテルジロではグローブスがメイン集団の先頭を取り、選手たちはいよいよ4級山岳(距離4.1km/平均3.8%/最大9%)に入った。
この時点で逃げの2人とプロトンの差は1分。序盤こそ穏やかに進んだメイン集団だったが、後半に入るとアルペシンがペースアップを敢行する。登りに耐性があるグローブスやミランが集団前方で駆け上がる一方で、ファビオ・ヤコブセン(オランダ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)が脱落。また大会3日目を制したメルリールも遅れ、アルペシンの思惑通りピュアスプリンターを退けることに成功した。
そしてステージ唯一のカテゴリー山岳を越え、続く丘ではスプリント勝利の可能性が無くなったスーダルからジュリアン・アラフィリップ(フランス)が仕掛ける。その動きをニコラ・コンチ(イタリア、アルペシン・ドゥクーニンク)がマークし、13秒差の先頭2名にジョイン。更に遅れてルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)とケヴィン・ヴェルマーク(アメリカ、DSMフィルメニッヒ・ポストNL)、エウェン・コステュー(フランス、アルケアB&Bホテルズ)が追いつき、残り22kmで先頭は7名となった。
スプリントに持ち込みたいプロトンが先頭を猛追するなか、アラフィリップが逃げ集団からも飛び出す。それに今度はコステューが追従し、この日最後の丘でアラフィリップが3度目の加速。それを追うメイン集団からは、残り8km地点でジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)が飛び出した。
大会初日を制したエクアドル王者は、アラフィリップを追い抜くとそのまま単独で先頭に立つ。それをジャンマルコ・ガロフォリ(イタリア、アスタナ・カザクスタン)やオレリアン・パレパントル(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル)などが合流を目指したものの、猛スピードでフィニッシュを目指すナルバエスには届かない。
そして最大12秒差を得たナルバエスは最終ストレートに突入。一方、プロトンはミランを擁するリドル・トレックが主導権を握り、フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)を引き連れマリアローザのポガチャルが先頭に立つシーンも。そしてシモーネ・コンソンニ(イタリア、リドル・トレック)のリードアウトから、フィニッシュ手前100mでミランがスプリントを開始した。
ミランは残り10mでナルバエスを抜き、その右側からコーイが上がる。そして両者がフィニッシュラインに向かってハンドルを投げた結果、勝利したコーイが雄叫びを上げた。
ナルバエスの奇襲からマリアローザの牽引、そしてミランとコーイによるスプリントバトル。これぞジロ・デ・イタリアと言える白熱のステージを制したコーイは、「夢が叶った。ステージ優勝が僕たちが掲げた一番の目標で、今日は全てがハマったスプリントとなった。(前日に棄権した)クリストフ・ラポルトがいない中、即興でリードアウトを組み立てなければならなかった。いままでいくつも嬉しい勝利を重ねてきたが、自分がレベルアップするためにはここでの勝利が必要だった」とコメント。
総合優勝を狙うチームオーダーの中、これまで勝利を重ねながらもグランツールでの機会に恵まれてこなかった22歳が、ジロ第1週目の最終日に嬉しいジロ初勝利を掴み取った。
一方、勝利に僅か10m届かなかったナルバエスは「良い結果を得られるときもあれば、そうでない時もある。だが重要なのはジロで走ることを楽しみ、トライし続けることだ」と語っている。
総合順位に変動はなく、9日間の激闘を繰り広げた選手たちは第1休息日を迎える。
ジロ・デ・イタリア2024第9ステージ結果
1位 | オラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) | 4:44:22 |
2位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | |
3位 | フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
4位 | アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、チューダー・プロサイクリング) | |
5位 | ダニー・ファンポッペル(オランダ、ボーラ・ハンスグローエ) | |
6位 | マディス・ミケルス(エストニア、アンテルマルシェ・ワンティ) | |
7位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
8位 | アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) | |
9位 | ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、アスタナ・カザクスタン) | |
10位 | マックス・カンター(ドイツ、アスタナ・カザクスタン) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 32:59:04 |
2位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) | +2:40 |
3位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +2:58 |
4位 | ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル) | +3:39 |
5位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | +4:02 |
6位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +4:23 |
7位 | ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、アスタナ・カザクスタン) | +5:15 |
8位 | エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア、モビスター) | +5:28 |
9位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | +5:30 |
10位 | ヤン・ヒルト(チェコ、スーダル・クイックステップ) | +5:53 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | 174pts |
2位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 116pts |
3位 | オラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク) | 115pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 104pts |
2位 | ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) | 52pts |
3位 | シモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス) | 36pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | キアン・アイデブルックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | 33:03:06 |
2位 | アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:21 |
3位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | +1:28 |
チーム総合成績
1位 | デカトロンAG2Rラモンディアル | 99:16:18 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | +1:20 |
3位 | アスタナ・カザクスタン | +9:23 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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