2023/10/17(火) - 18:30
秋めく9月の最終週、今年も「グル麺ライド」がやってきた。山形と宮城にまたがる一帯の歴史と文化を堪能できる100kmライドの魅力をレポートしていきます。
個人的には、秋口が一番自転車遊びにぴったりの時期だと思っている。とにもかくにも暑い夏も終わり、自転車に乗るにはうってつけ。気温だけで言えば春先だって良いけれども、花粉症だったり梅雨だったりで、意外に走りやすい時期は短いもの。
それに、秋といえば実りの季節でとにかく美味しいものの収穫時期。天高く馬肥ゆる秋とはよく言ったもので、グルメを求めて自転車に乗るご褒美大好きサイクリストにとってはたまらない。乗って楽しく、食べて美味しい、まさに完璧なシーズンである。
そんな秋にはやっぱり沢山のイベントが開催されているが、その中でもイチオシのイベントが「グル麺ライド」だ。ライバルイベントが多くなるこの時期でありながら、着実に開催回数を重ねているのはその人気の証左。その人気の秘密はこれから詳しくお伝えするけれども、一言で言えば、乗って楽しく、食べて美味しい、秋を体現したイベントだから。
グル麺ライドがスタートするのは、山形県の高畠町。お隣はブランド牛で有名な米沢で、9月の終わりともなると辺り一面は収穫を待つ田園風景に囲まれる。玄関口となる高畠駅には山形新幹線も停まるので、車を持っていないサイクリストでも参加しやすい。しかもこの高畠駅には駅直結のホテル(自転車持ち込み可!)と温泉もあり、輪行派にとってこれ以上なく恵まれたロケーションともなっている。
さて、高畠駅から自転車で約10分ほどの場所がスタート地点の高畠町文化センターまほら。今年も会場には多くのサイクリストたちが集まった。中にはなんと沖縄から参加したサイクリストもいるとのことで、この大会の注目度の高さが窺い知れよう。
今年は地元出身の元プロロードレーサーである「土井ちゃん」こと土井雪広さんがはるばるオーストラリアからゲストとして登場。過去にはグル麺ライドのプロモーションビデオに出演していたことも。ちなみにそのPVはかなり面白いので一見の価値アリ。この日は参加者と共に走りつつ、自身が所属するGCN Japanの収録も行うとのことで、皆さん一気にテンションが上がっていた様子。
10人程度のグループごとにスタートしていくと、まずは東へと向かっていく。まだ朝も早く、すこしひんやりするくらい。とはいえ走り始めればすぐに身体も温まってきて、スタート前に来ていたウインドブレーカーもすぐに脱ぎたくなる。出来れば早々に半袖になっておくのがオススメ。
というのも、走りだして30分もしないうちに、この日最大の登りとなる二井宿峠が姿を見せるから。ただ「最大の登り」なんて大げさに言ってみたけれども、そこまで激坂ということはなく6%程度の坂が淡々と続いていく。
序盤ということもあってついつい飛ばしがちになりそうだけど、そこは抑えめに入っていくのが吉。マイペースで登っていくと、高畠の街並みを見下ろせるスポットも登場。
その先には長めのトンネルが2つ登場。山形と宮城を繋ぐ幹線道路とあって、朝ではあるもののある程度の交通量がある道だけに、登りのトンネルは結構コワイ。実際、過去に参加したことのある他のイベントでは途中に登場するトンネルは押して歩いてね、という対応を取っているところもあったほど。
でも、このグル麺ライドに関して言えばトンネルの中でも非常にリラックスして走ることが出来るのだ。その秘密が、片側車線規制を掛けてくれているという点。一般車両を交互通行として、トンネル内の一車線を完全に参加者向けとしている。
ちなみにこのルートは復路としても通るのだけれど、その際は規制車線を左右で入れ替えて対応してくれれる至れり尽くせりぶり。安全第一を掲げるイベントも多いけれど、ことロングライドイベントにおいて交通規制まで敷いてくれるイベントは稀。
そんな気遣いに感謝しつつペダルを回し、トンネルを抜けた先が二井宿峠のピークに。峠から少し下った先の補給地点でドリンクや塩飴などを頂き一息つけば、今大会初となるエイドステーションまで下り基調の快走路。
七ヶ宿の魅力を発信する施設「こ・らっしぇ」に設置されたエイドステーションには、ファースト麺の「七ヶ宿蕎麦」が待っていた。
そういえばなんだか当たり前のように感じていて説明し忘れていましたが、この「グル麺ライド」最大の特徴は、その名の通り「グル麺」。通過する4エリア(七ヶ宿、白石、南陽、高畠)それぞれに根差した自慢の麺を使った料理がエイドステーションごとに振舞われるのだ。
ここまで走ってきたルートも「七ヶ宿そば街道」と名付けられているだけあり、沿道には多くの蕎麦屋さんが並んでいた。今回振舞われた蕎麦は、その中でも江戸時代末期から続くという最も歴史ある老舗「吉野家」さんの手打ち蕎麦。七ヶ宿産の地粉を使って打ち上げられた麺は、ロングライドイベントで食べられる蕎麦のクオリティを逸脱した一品だ。
絶品蕎麦をお腹に収め、再び走り出すとすぐに見えてくるのが七ヶ宿ダム。過去には七ヶ宿の中心部であったというエリアだが、今は仙台を中心とした宮城県の8市9町の水がめとして、なくてはならない存在となっているという。
静かに水を湛えるダムをぐるりと反時計周りに巡るように、一旦南岸へ。車もあまり通らない森の中の道を走っていく。タイミングが良ければ噴水が見れたりもするのだけれど、今回は残念ながら見ることは出来ず。
しばらく行くと、ダムの堤体が見えてくる。そのまま走り抜けていく方も多いけれど、やっぱりここは止まっておきたいポイントの一つ。巨大な人造建築物が広大な自然の中にそびえている景色からしか得られない栄養というものもある。
ここから第二エイドの材木岩公園までは坂を下るだけ。なのだけれど、道が細い上にブラインドコーナーから対向車がやってくることも多いのでここは細心の注意を払って。安全運転でたどり着いた先に待っているのは、白石市名物「白石温麺(うーめん)」だ。
一見、素麺に見える白くて細い麺の温麺。長さが短く、少し太いというのが素麺との外見上の違いだけれど、大きな違いは製法にあるという。温麺は油を使わずに作られるため、よりヘルシーで胃にもやさしいのだとか。
ちなみに温麺という名前なので、あったかいつゆで頂くものかと思いきや、温かくしても、冷たくしても美味しくいただけるという。このグル麺ライドでは、たっぷりネギと天かすが乗った温かい出汁と一緒にいただいた。
つるりとした食感の麺はあっさり風味。先ほどの蕎麦と比べるとボリュームはかなり増しているけれど、そんなことを気にせずにスルスルと入っていくので、補給としてもピッタリ。しっかりエネルギーを補給して、ここからの後半戦に備えるのだった。
後編は、山形の2つのグル麺へ挑みます!お楽しみに。
text&photo:Naoki Yasuoka
個人的には、秋口が一番自転車遊びにぴったりの時期だと思っている。とにもかくにも暑い夏も終わり、自転車に乗るにはうってつけ。気温だけで言えば春先だって良いけれども、花粉症だったり梅雨だったりで、意外に走りやすい時期は短いもの。
それに、秋といえば実りの季節でとにかく美味しいものの収穫時期。天高く馬肥ゆる秋とはよく言ったもので、グルメを求めて自転車に乗るご褒美大好きサイクリストにとってはたまらない。乗って楽しく、食べて美味しい、まさに完璧なシーズンである。
そんな秋にはやっぱり沢山のイベントが開催されているが、その中でもイチオシのイベントが「グル麺ライド」だ。ライバルイベントが多くなるこの時期でありながら、着実に開催回数を重ねているのはその人気の証左。その人気の秘密はこれから詳しくお伝えするけれども、一言で言えば、乗って楽しく、食べて美味しい、秋を体現したイベントだから。
グル麺ライドがスタートするのは、山形県の高畠町。お隣はブランド牛で有名な米沢で、9月の終わりともなると辺り一面は収穫を待つ田園風景に囲まれる。玄関口となる高畠駅には山形新幹線も停まるので、車を持っていないサイクリストでも参加しやすい。しかもこの高畠駅には駅直結のホテル(自転車持ち込み可!)と温泉もあり、輪行派にとってこれ以上なく恵まれたロケーションともなっている。
さて、高畠駅から自転車で約10分ほどの場所がスタート地点の高畠町文化センターまほら。今年も会場には多くのサイクリストたちが集まった。中にはなんと沖縄から参加したサイクリストもいるとのことで、この大会の注目度の高さが窺い知れよう。
今年は地元出身の元プロロードレーサーである「土井ちゃん」こと土井雪広さんがはるばるオーストラリアからゲストとして登場。過去にはグル麺ライドのプロモーションビデオに出演していたことも。ちなみにそのPVはかなり面白いので一見の価値アリ。この日は参加者と共に走りつつ、自身が所属するGCN Japanの収録も行うとのことで、皆さん一気にテンションが上がっていた様子。
10人程度のグループごとにスタートしていくと、まずは東へと向かっていく。まだ朝も早く、すこしひんやりするくらい。とはいえ走り始めればすぐに身体も温まってきて、スタート前に来ていたウインドブレーカーもすぐに脱ぎたくなる。出来れば早々に半袖になっておくのがオススメ。
というのも、走りだして30分もしないうちに、この日最大の登りとなる二井宿峠が姿を見せるから。ただ「最大の登り」なんて大げさに言ってみたけれども、そこまで激坂ということはなく6%程度の坂が淡々と続いていく。
序盤ということもあってついつい飛ばしがちになりそうだけど、そこは抑えめに入っていくのが吉。マイペースで登っていくと、高畠の街並みを見下ろせるスポットも登場。
その先には長めのトンネルが2つ登場。山形と宮城を繋ぐ幹線道路とあって、朝ではあるもののある程度の交通量がある道だけに、登りのトンネルは結構コワイ。実際、過去に参加したことのある他のイベントでは途中に登場するトンネルは押して歩いてね、という対応を取っているところもあったほど。
でも、このグル麺ライドに関して言えばトンネルの中でも非常にリラックスして走ることが出来るのだ。その秘密が、片側車線規制を掛けてくれているという点。一般車両を交互通行として、トンネル内の一車線を完全に参加者向けとしている。
ちなみにこのルートは復路としても通るのだけれど、その際は規制車線を左右で入れ替えて対応してくれれる至れり尽くせりぶり。安全第一を掲げるイベントも多いけれど、ことロングライドイベントにおいて交通規制まで敷いてくれるイベントは稀。
そんな気遣いに感謝しつつペダルを回し、トンネルを抜けた先が二井宿峠のピークに。峠から少し下った先の補給地点でドリンクや塩飴などを頂き一息つけば、今大会初となるエイドステーションまで下り基調の快走路。
七ヶ宿の魅力を発信する施設「こ・らっしぇ」に設置されたエイドステーションには、ファースト麺の「七ヶ宿蕎麦」が待っていた。
そういえばなんだか当たり前のように感じていて説明し忘れていましたが、この「グル麺ライド」最大の特徴は、その名の通り「グル麺」。通過する4エリア(七ヶ宿、白石、南陽、高畠)それぞれに根差した自慢の麺を使った料理がエイドステーションごとに振舞われるのだ。
ここまで走ってきたルートも「七ヶ宿そば街道」と名付けられているだけあり、沿道には多くの蕎麦屋さんが並んでいた。今回振舞われた蕎麦は、その中でも江戸時代末期から続くという最も歴史ある老舗「吉野家」さんの手打ち蕎麦。七ヶ宿産の地粉を使って打ち上げられた麺は、ロングライドイベントで食べられる蕎麦のクオリティを逸脱した一品だ。
絶品蕎麦をお腹に収め、再び走り出すとすぐに見えてくるのが七ヶ宿ダム。過去には七ヶ宿の中心部であったというエリアだが、今は仙台を中心とした宮城県の8市9町の水がめとして、なくてはならない存在となっているという。
静かに水を湛えるダムをぐるりと反時計周りに巡るように、一旦南岸へ。車もあまり通らない森の中の道を走っていく。タイミングが良ければ噴水が見れたりもするのだけれど、今回は残念ながら見ることは出来ず。
しばらく行くと、ダムの堤体が見えてくる。そのまま走り抜けていく方も多いけれど、やっぱりここは止まっておきたいポイントの一つ。巨大な人造建築物が広大な自然の中にそびえている景色からしか得られない栄養というものもある。
ここから第二エイドの材木岩公園までは坂を下るだけ。なのだけれど、道が細い上にブラインドコーナーから対向車がやってくることも多いのでここは細心の注意を払って。安全運転でたどり着いた先に待っているのは、白石市名物「白石温麺(うーめん)」だ。
一見、素麺に見える白くて細い麺の温麺。長さが短く、少し太いというのが素麺との外見上の違いだけれど、大きな違いは製法にあるという。温麺は油を使わずに作られるため、よりヘルシーで胃にもやさしいのだとか。
ちなみに温麺という名前なので、あったかいつゆで頂くものかと思いきや、温かくしても、冷たくしても美味しくいただけるという。このグル麺ライドでは、たっぷりネギと天かすが乗った温かい出汁と一緒にいただいた。
つるりとした食感の麺はあっさり風味。先ほどの蕎麦と比べるとボリュームはかなり増しているけれど、そんなことを気にせずにスルスルと入っていくので、補給としてもピッタリ。しっかりエネルギーを補給して、ここからの後半戦に備えるのだった。
後編は、山形の2つのグル麺へ挑みます!お楽しみに。
text&photo:Naoki Yasuoka
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