ウィリエールの日本国内担当者"キット北村"さんから、日本酒"獺祭"で知られる旭酒造へとサイクリング&酒造見学をしたレポートが届きました。ラボの見学と試飲も楽しんだという大人な夏休みの一日を楽しんだようです。



Ride to 獺祭

イタリアの老舗バイクブランドと日本の酒造がコラボした豪華なライドが実現 photo:Kitto Kitamura

“ウィリエールの営業であるキット北村と旭酒造の桜井社長が同級生である事実”を知った川越のウィリエールディーラーさんの一声で、中年のおっちゃん達の真夏の小規模アドベンチャーが決まった。異業種のハイクオリティーな物作りの現場を知る事は、きっとウィリエールの製品作りにも生きるはず!

数年前から海外では日本食ブームと共に日本酒ブームが起こっているらしい。最近、イタリアのウィリエールの社長の奥さんも高級な日本酒に興味を持っていて、獺祭の酒蔵に興味津々。『今度来日した時に獺祭の酒蔵見学に行きたい!』と言っていたので下見も兼ねて、中年のおっちゃん達の夏の思い出作りが始まった!

プロローグ

川越の焼き鳥屋さんで、キット北村(左)と下さん(右)が獺祭について話したことがきっかけでした photo:Kitto Kitamura
シクロワイアード読者の皆様、久しぶりにシクロワイアードに寄稿いたします。今回のお話は広島学院中学校・高等学校時代の同級生・桜井君の酒蔵:旭酒造へサイクリングした時のお話しです。事の発端は川越のウィリエールディーラー:サイクルセンターしもの下店長と焼き鳥屋さん(不思議な事に焼き鳥屋さんとありますがお肉は豚肉でした。)に今年の1月に話をした事がきっかけでした。ちなみに私・キット北村は下戸です。アルコールを飲むと手や足の指の間に湿疹が出来て痒くなるので、自分からお酒を好んで飲むことは一切ありません。

そんな私に下さんが『どうしても獺祭の蔵を見たいから、獺祭に連れて行け!』と1次会の焼き鳥屋、2次会のビールパブで熱く日本酒愛を語られた。その熱い思いに根負けし、渋々“旭酒造の酒蔵見学が出来るかどうか?同級生に聞いてみますけど、期待しないで下さいね。”と返答した。(酒蔵見学に応じるまで、なかなか帰らせてもらえなかったのはここだけの話。)この時、後にまさか酒蔵見学の許可が出るとは思いもよらなかった。

3種類の獺祭を飲み比べ photo:Kitto Kitamura

旭酒造の酒蔵見学の許可が下りたものの、“日程”と“試飲場所”をどうするのか?という問題があった。日程に関しては、わざわざ下さんが川越から来るので、少々の雨が降っても走ることが出来る時期に!ざっくりと7~8月にしようと考えた。また下さんと北村の2人旅行ではなく、同年代の仲間を集めて大人数で!せっかくならアラフォー・アラフィフの日本酒大好きなウィリエール乗りのメンバーを呼びたかったので、メンバー皆が一斉に休みが取れるお盆休み直前に日程の調整を行った。

試飲場所の問題は、サイクリングツアーの道中で試飲をしてしまうと、旭酒造からの復路で飲酒運転サイクリングになってしまう。そこで、岩国国際観光ホテルのご協力で、獺祭試飲会はホテルの夕食時に行う事になった。

まさかの台風6号来襲!

台風6号によって当初の予定が変更に photo:Kitto Kitamura
週間天気予報では台風6号は中国大陸を目指し、サイクリング予定の8月9日と予備日の8月10日にはほぼ影響が無いと思われていたが、台風6号はまさかの進路変更!沖縄辺りでUターンの後、九州方向へと北上し、ちょうどサイクリング予定した日に岩国を直撃する予報に変わってしまった。こんなにも迷走具合が激しい台風は人生で一度も見たことが無い。半年前から準備していたのに、まさかの台風襲来に今年は運が悪いと思った。

当初、アラフォー・アラフィフのウィリエール乗りのメンバー10人グループでの旅行予定であったが、8月5日にはメンバー6名が参加辞退となった。私を含む残る4名は、言い出しっぺの下さんのイベント超晴れ男の強運を信じ諦めずにいた。小人数となりフットワークが軽くなった事で、8月6日に急遽スケジュールを1日早めて8月8日にサイクリングを行う事に!イベント2日前でしたが、旭酒造さんも岩国国際観光ホテルさんもスケジュールを変更してくれました。感謝、感謝です!

新岩国駅から一路、旭酒造へ…

初めて新岩国駅に降りたが、こじんまりとした新幹線駅であった photo:Kitto Kitamura
新岩国駅で東京から来たワイズロード新宿本館の那須さんと合流 photo:Kitto Kitamura


周防高森駅でゼロ7乗りの下さんと合流 photo:Kitto Kitamura
岩国市のローカルな道路をひた走る photo:Kitto Kitamura



新岩国駅にチェント10Proディスク乗りの高知のサイクリングショップヤマネの山根さんと向かう。岩国と言えば錦帯橋だが350年もの歴史があるようだ。新岩国駅で東京から来たワイズロード新宿本館の那須さんと合流。那須さんはウィリエールのフィランテSLRやガスタルデッロも持っているが、今回はゆったりライドに最高な愛車GTR-Teamディスクを輪行してきた。手慣れたもので、新岩国駅の端っこですぐに準備を終えた。次に周防高森駅でゼロ7乗りの下さんと合流し、いよいよ4人での“Ride to 獺祭”がスタートする!

だんだんと山間部に入っていく。夏の日差しは暑いが、楽しいサイクリングである。スケジュールを1日早めて本当に良かったと思える青空である。 photo:Kitto Kitamura

山間部を登って行くと冷たいせせらぎから気持ちの良い風が吹く photo:Kitto Kitamura

さらに山間部を登って行くと冷たいせせらぎから気持ちの良い風が吹く。酒蔵見学のタイムリミットが迫っていたので、冷たいせせらぎに飛び込みたい気持ちを必死で抑え先へと進む。“こんな山の中に大きな旭酒造の酒蔵があるのか?”と少し不安になる。途中では沈下橋も!関東組には沈下橋が珍しいのか?熱心に写真を撮影していた。

東川に沿って山を登って行くと突然大きな建物が現れた。12階建ての旭酒造の酒蔵だ!目的地に到着したら、獺祭ストアで獺祭の仕込み水を使った炭酸水と獺祭ジェラートで小休憩。

山を登って行くと突然大きな建物が旭酒造の酒蔵 photo:Kitto Kitamura
目的地に到着したら、獺祭ストアで獺祭の仕込み水を使った炭酸水と獺祭ジェラートで小休憩 photo:Kitto Kitamura


安心してください飲んでいるのは炭酸水ですよ photo:Kitto Kitamura
広報の藤井女史が酒蔵見学をコーディネート photo:Kitto Kitamura



迎え酒ならぬ迎え水、安心してください飲んでいるのは炭酸水ですよ!酒蔵見学のため余計な菌を酒蔵に持ち込まないために、納豆・キムチ・ヨーグルトそしてミカン(ミカンもダメらしい)を1週間以上断っていた中年のおっちゃん達。汗が引いたらいよいよ酒蔵見学です!

同級生の桜井君が急遽アメリカ出張で都合が合わなくなったので、広報の藤井女史が酒蔵見学をコーディネート。白衣を着て、徹底的に消毒しエアーシャワーを浴びていよいよ酒蔵見学です。レーシングジャージを着て、獺祭の酒蔵見学したのはきっと我々が初めてでしょう。自転車とは全く異なる物作りの現場を学ぶことで、2025年デビューする服部オリジナルのフレームに生かしたいと思います。

白衣を着て、徹底的に消毒しエアーシャワーを浴びていよいよ酒蔵見学 photo:Kitto Kitamura
磨いた山田錦(日本酒用のお米)に水分を吸わせる作業 photo:Kitto Kitamura


原料の米を磨いて磨いて…かなり削りこんで行かねばならない事に驚愕しました photo:Kitto Kitamura

お酒が飲めないために全くと言っていいほど日本酒に対する知識が無い私。純米大吟醸と大吟醸の違いすら知らなかったが、まさか日本酒を作るのにこんなにも手間がかかるものだとは思いもよらなかった。獺祭に至っては手間暇かけて、原料の米を磨いて磨いて…かなり削りこんで行かねばならない事に驚愕しました。2割3分の米なんて、本当に米粒が小さくて心配になりましたよ。磨かれて残った米の削りカスはどうなるのかな?と思いましたが、業者が買い取って、奈良漬や味醂や米粉パンの材料等に使われるそうです。

最初に見学させてもらった部屋は、磨いた山田錦(日本酒用のお米)に水分を吸わせる作業でした。爽やかな米と水の香りがする冷室で、洗米の工程は秒単位で人の手で管理されていました。最新鋭の機械でベルトコンベアー式に獺祭を作っていると思っていましたが、それは私の大きな勘違いでした。冬場だけでなく、通年で酒を造る旭酒造は確かに温度や湿度等の環境条件を機械設備によってコントロールはしてはいますが、純米大吟醸を造る工程は機械に頼らず手間暇かけて人の手で行われていました。

大変蒸し暑い麹室は室温40度前後、蒸し暑い部屋の中で何時間も行う製麴作業 photo:Kitto Kitamura
1000㎏もの精米を1樽に、出来る醪は何と3キロリットル photo:Kitto Kitamura


ひんやりとした発酵室、発酵しているから室温が高くなるのかな?と思っていたけれど、そうではありませんでした photo:Kitto Kitamura
発酵した醪を絞る機械です。酒の出来上がりを大きく左右する重要な工程だそうです photo:Kitto Kitamura



ひんやりとした発酵室、発酵しているから室温が高くなるのかな?と思っていたけれど、そうではありませんでした。温度管理された発酵室では、室温を下げてゆっくりと発酵させることで、芳醇な香りの大吟醸ができるそうです。温度が高いと発酵が進むのは早いけれど、美味しいお酒は出来ないそうです。涼しい発酵室の中で、酷暑の夏はここで働きたいと思いました。

日本酒造りの基本は“年に1度冬場に杜氏と蔵人(杜氏さんが連れてくる社員ではない方)が酒を仕込む”のですが、旭酒造は温度管理をした酒蔵で1年を通してお酒を作り、社員全員が関わって出来るお酒だそうです。1年に1回しか作らない伝統的な作り方と違い、通年で作る旭酒造は膨大なデータが蓄積されるので、勤続年数が短い若手社員でも、ベテランの杜氏さんよりも酒の仕込み回数の経験値が多くなります。

まるで研究室のような獺祭ラボ! photo:Kitto Kitamura

酒蔵を案内してくれた副蔵長の野中さんは何と33歳! photo:Kitto Kitamura

旭酒造には杜氏がいませんが、蔵長と副蔵長はおられます。酒蔵を案内してくれた副蔵長の野中さんは何と33歳!あまりの若さに驚きました!旭酒造に入社すると、社員皆が一通りの酒作りを学ぶそうです。

酒蔵見学の後は岩国市の中心部に戻ります。今日のゴールはもちろん錦帯橋ですね。翌日の岩国山岳ルートサイクリングとホテルでの獺祭試飲会が楽しみです。

酒蔵見学の後は岩国市の中心部に戻ります。今日のゴールはもちろん錦帯橋ですね photo:Kitto Kitamura

岩国山岳ルートに行く予定でしたが、関東組の下さんと那須さんのために、瀬戸内のハワイと呼ばれる周防大島にサイクリングルートを急遽変更。残念だったのが、“道の駅サザンセトとうわ”が定休日。走った後にソフトクリームを食べる予定だったのに残念。

島を走るのは気持ち良いですね。しまなみ海道とはまた違う景色で周防大島ライドは今後の定番サイクリングルートになりそうです。

岩国山岳ルートに行く予定でしたが、瀬戸内のハワイと呼ばれる周防大島にサイクリングルートを急遽変更 photo:Kitto Kitamura
島を走るのは気持ち良いですね。しまなみ海道とはまた違う景色で周防大島ライドは今後の定番サイクリングルートになりそうです photo:Kitto Kitamura


周防大島中部でたまたま見つけたカンボジア料理の店オークン photo:Kitto Kitamura
カンボジア人のお父さんが作る大盛り炒飯を勢いよく食べていた息子さんと記念撮影 photo:Kitto Kitamura



周防大島中部でたまたま見つけたカンボジア料理の店オークン。まだオープンしたての新しいお店!カンボジア人の店主と日本人の奥様の2人でやっています。すぐに瀬戸内海が見える場所に店舗があるので、今後人気が出そうです。

カンボジア人のお父さんが作る大盛り炒飯を勢いよく食べていた息子さんと記念撮影!僕らがランチを食べていると『父さん、チャーハン、チャーハン!』と息子さんが叫ぶ。カンボジア人のお父さんは中華鍋を振り、米3合ぐらいのチャーハンを作っていた。僕らは家族3人で分けて食べるのだろうと思っていたら息子さん一人分だったことに驚きました。

周防大島から沖家室島に渡ると突如タイタニックスタイルになる下さん。この後、泳ぎ出す下さんに地元の漁師さんが『あんた、泳いでいるタコが獲れるけぇ、素手で獲ってみんちゃい。』と言われたが、ゴーグルが無いので目がシワシワになってしまう。

中年のおっちゃんサイクリスト達を手厚くサポートしてくれたのは岩国国際観光ホテルの川口支配人でした photo:Kitto Kitamura

地元企業である旭酒造や岩国を訪れた中年のおっちゃんサイクリスト達を手厚くサポートしてくれたのは岩国国際観光ホテルの川口支配人でした。ホテルの正面にある『岩国観光ホテル』の石碑は現在の上皇様が皇太子の時代の時に、山口国体(1963年)で来訪された際にお食事をされた記念に作られたそうです。そして、翌年の東京オリンピック(1964年)に名前が岩国観光ホテル→岩国国際観光ホテルになったそうです。ホテルとしては1952年創業で今年71年、ホテル以前の形態は料亭だったそうですが明治の頃から営業していたそうです。

周防大島からホテルに戻る。岩国国際観光ホテルのフロントでロードバイクを預かってくれました!感謝・感謝です。台風6号さえなければ、ここにずらりとウィリエールが10台並び壮観であったはずだったのに、何とも寂しい限り。

国国際観光ホテルのフロントでロードバイクを預かってくれました!感謝・感謝です photo:Kitto Kitamura

最後に皆で乾杯です! photo:Kitto Kitamura

いよいよ岩国国際観光ホテルの胡蝶の間で獺祭の試飲会です。岩国の郷土料理と獺祭のマリアージュは最高でした。本来であれば4合瓶3本は10人分なのですが、台風6号で参加者が減ったためにアルコールの飲めない私を除く3人での試飲になりました。もはや試飲と呼べる量ではありませんね。

走行距離は短かったけれど、走り始める前までの苦難が多かった今回のサイクリング旅行。台風6号さえ来なければ、JTB西日本のウィリエール乗りの小川さんがスケジュールの調整を、シクロワイアードの藤原さんがライドの撮影を、私は旭酒造の酒蔵見学の手配だけをやれば良かったのですが、幹事の私が全て受け持つことに。台風6号によるスケジュール変更のストレスは大きかったのですが、イベント超晴れ男・下さんのおかげで夏の思い出は出来ました。最後に皆で乾杯です!

台風6号接近により早々に参加辞退をしたシクロワイアードの藤原。激しく後悔をする
“イベント超晴れ男・下さんがいるから、台風は気にせずに岩国に来た方が良いよ~藤原さん…”とアドバイスをされていたにも関わらず、台風6号接近により早々に参加辞退をしたシクロワイアードの藤原さん。岩国の天気は台風の影響がほぼ皆無で、今回の旅行は無事に開催できたのだが、獺祭が飲めず編集部で記事を作りながら、激しく後悔をする藤原さんでした。合掌

Special Thanks to

旭酒造株式会社
https://www.asahishuzo.ne.jp/

岩国国際観光ホテル
https://www.iwakunikankohotel.co.jp/
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