2023/07/15(土) - 17:00
距離160km、獲得標高3,500m、国内グランフォンドの最高峰。7/9に長野県大町市で開催された「北アルプス山麓グランフォンド」のスペシャルクラスを実走レポート。大会史上最多エントリーを集めた、国内最難関クラスを誇る山岳ロングライドを紹介しよう。
ヒルクライムは富士山。ロードレースはおきなわ。では、グランフォンドは?
日本のアイコニックなサイクルイベントを語る時、ことグランフォンド(=山岳多めのワンデーロングライド)については、すんなりと頭に浮かんでこないでいた。日本一のグランフォンドとは、一体何だろうかと。
その答えを探しに某イベントサイトを覗くと、グランフォンドを冠する大会の多くが長野県にあると気づく。木曽、小諸、嬬恋、軽井沢などを筆頭に数々のサイクルイベント開催実績があり、山岳王国長野の地位を確固たるものとしている。この北アルプス山麓グランフォンド(以下NAGF、Northern Alps Granfondoの略)は、そんな歴史を重ねる長野グランフォンドシリーズの頂点にして、全国のロングライドファンを唸らせる到達点ではないか。取材を通してそう思うに至った。
そう感じた理由は文字通り、頭ひとつ抜けたスペックを誇るスペシャルクラスの存在。大小合わせて7つのピークを走破するコースは距離、標高ともにAACRやGF軽井沢を上回る難度。一方で、レベルに応じた5つのカテゴリーが用意される裾野の広い大会であり、初心者に優しいこともポイント。各カテゴリーの概要は以下の通り。
最難関のスペシャルクラスの高低差図は、グランツールの1ステージに見立てても違和感が無いほど。一方グルメフォンド75kmは特設エイドが3箇所加わり、ご当地の味をひたすら堪能できるビギナー向けのレイアウト。北アルプス山麓に広がる絶好のロケーションで、思い思いのライドタイムを満喫できるのがNAGFの魅力である。
筆者は取材に託けて、スペシャルクラスの一団に入れていただくことに。メイン会場の鹿島槍スポーツヴィレッジに前泊し、ビッグライドに向けてストレスなく朝を迎えることができた。スペシャルともなると全員イベント慣れした様子で、雨予報を意に介さない余裕感が見て取れる。最高気温28度、雨時々曇天の下、取材(兼トレーニングライド)が幕をあける。
まずは大会の最高地点、標高1,302mの小熊山頂上へ車輪を向ける。山頂のビューポイントから仁科三湖の1つ「木崎湖」を眺める事が出来るが、この日はあいにくの濃霧で絶景はおあずけ。暖まった身体をテクニカルな林道ダウンヒルで冷やしつつ、木崎湖から青木湖に連なる緩やかな丘陵区間を経て、白馬へと北上していく。
この区間はあまりにも景色が開放的で、かつアウターギアで突破できる緩いアップダウンが続くため、つい踏みたくなってしまう。まるで巨壁のように迫り出した鹿島槍ヶ岳がダイナミックな景観を演出し、何とも言えない荘厳な空気に満ちている。信号、交通量共に少ないノンストレスな道が続き、中盤まで10%以上の激坂はほとんど登場しない。
また、NAGFのコースは長野県の制定した「ジャパンアルプスサイクリングルート」の一部であることもトピックだ。路面にはお馴染みの青い矢羽が走り、長野県一周ルートの北信エリアとぴたりと重なる。この長大なサイクリングルートは東信、中信、南信を合わせると全長900km / 獲得標高15,000m以上もあり、その全景はぜひ公式HPをチェックしてほしい(いつか筆者も実走レポートしたいと密かに思っている)。
49km地点の絶景ポイント「白沢洞門」も濃霧に阻まれたが、戸隠エイドから先の「大望峠」でようやく後立山連峰の山並みを拝むことができた。その光景はまるで、グランツールの中継映像に飛び込んだかのような高揚感だ(もっとも、沿道に熱烈なファンの姿は無いが)。雨の山岳ライドは気後れするかもしれないが、霧に包まれた幻想的光景に巡り会えた上、終日涼しく走れた事はポジティブに捉えたい。
そんなNAGFについて、機材面でのアドバイスを記しておきたい。まずギア比は繰り返しのヒルクライムに備えてロー30T以上、タイヤは荒れた舗装がしばしば登場するので28C以上が安心できるライン。ワンタッチ脱着できる泥除けもあるとスマートだ。まだ梅雨明け前、かつ標高1,000m近い高地であることを考慮し、レインウェアと防寒対策はマスト。見落としがちだが、下りが多いためブレーキパッド残量はしっかりとダブルチェックしておくこと。
万が一のトラブル時にはマビックカーが駆けつけてくれ、スペアホイールとバイク交換といったメカニカルサポートを受けられる。とはいえ、パンクを筆頭に最低限の修理は自身で行えるよう備えておくべし。この日は雨の影響でパンクと落車が多発し、稼働率は高めだったようだ。
グランフォンドの華といえばエイド食。スペシャルクラスは合計8箇所もあるエイドのおかげで、自前のエナジーバーには手をつけずに進行できた。お蕎麦や漬物など、長野ご当地メニューは質・量ともに満足のいくもので、エイド間距離も絶妙な設定で、サイクリストのニーズをしっかりと押さえている。脚に疲労が見え始める中盤、完璧なタイミングで登場する「伝説のネギ味噌おにぎり」にはぜひ期待してほしい。終日涼しいこともあり、ボトルは750cc1本で十分カバーできた。
気がつけば雨はあがり、道はNAGF最大の山場へと伸びていく。125km地点から始まる鷹狩山ヒルクライムは距離6.5km / 最大勾配15%。その頂上には大町市市街を見下ろせる大会随一の絶景が控え、圧巻のパノラマビューが疲れを吹き飛ばしてくれる。展望台手前300mの激坂区間は、チームの垣根を越えて声援の飛び交う優しい世界であった。スペシャル、ロング、ミドルプラスの3クラスは登ることになるため、この絶景を目当てに参加しても良いと思えるほど。
スペシャルクラス全体を通して感じたことだが、手を焼く激坂は鷹狩山の後半わずかな区間のみで、獲得3,500mという数字以上にサクサクと距離を消化していった。一つ一つの登りが3~10km以内の中級山岳クラスであり、脚にくる前に下りに入れるため、走りにメリハリをつけやすいのがそう感じた理由かもしれない。5つのカテゴリーから選べるNAGFであるが、実力よりも少し背伸びしたコースに挑むくらいが丁度いいだろう。参考までに、筆者は全エイドと撮影ポイントを回って経過時間10時間半、走行時間7時間40分で完走。タイムリミットは1時間以上の余裕があった。
スペシャルなコース難度、北アルプスのダイナミックな景観、彩り豊かなエイド食、そして運営スタッフの手厚いサポート。総括すると、ニッポンの山岳ライドの醍醐味を詰め込んだ、最高峰のグランフォンドであると感じた。スペシャルクラスを完走した暁には、文字通りスペシャルな達成感を得られるはず。順位を競わないがイベントではあるが、「自分との戦い」が自らをネクストレベルに押し上げてくれるだろう。
NAGFは何千人と集うマンモスイベントではないし、食も景色も魅力的なロングライドは全国各地に数多ある。しかし、山岳主体のライドイベントとしては日本最高クラスの優良コースであり、満足度は非常に高い。その証拠に開催12回目にして史上最多866名がエントリーし、スペシャルクラスは250名の満員御礼。長く広く愛される大会だと伺え、参加者の表情も皆晴れやかであった。
事務局の木村氏曰く、参加者全体で新規が6割、リピーターが4割で、口コミとSNSでの集客が光るイベントであったようだ。道中チームメイト同士で助け合うのは本イベントでよく見る光景で、1年に1度ここNAGFで再会するリピーター仲間もいるそうだ。走り屋にとってはソロでも攻略のしがいがあるが、厳しいコースで仲間と苦楽を分かち合うのも一興だ。
上級者はグループ参加で、エイド付き山岳トレーニングとして走り、STRAVAセグメントを競う楽しみ方がオススメだ。初心者は75kmのグルメフォンドから入り、毎年カテゴリーを上げていくとレベルアップを感じられるだろうし、何度走っても飽きのこない極上のルートづくしだ。ファンライダーの目指すべき一大目標として、NAGFのステータスはますます高まっていく事を期待したい。
Report by Ryota Nakatani
ヒルクライムは富士山。ロードレースはおきなわ。では、グランフォンドは?
日本のアイコニックなサイクルイベントを語る時、ことグランフォンド(=山岳多めのワンデーロングライド)については、すんなりと頭に浮かんでこないでいた。日本一のグランフォンドとは、一体何だろうかと。
その答えを探しに某イベントサイトを覗くと、グランフォンドを冠する大会の多くが長野県にあると気づく。木曽、小諸、嬬恋、軽井沢などを筆頭に数々のサイクルイベント開催実績があり、山岳王国長野の地位を確固たるものとしている。この北アルプス山麓グランフォンド(以下NAGF、Northern Alps Granfondoの略)は、そんな歴史を重ねる長野グランフォンドシリーズの頂点にして、全国のロングライドファンを唸らせる到達点ではないか。取材を通してそう思うに至った。
そう感じた理由は文字通り、頭ひとつ抜けたスペックを誇るスペシャルクラスの存在。大小合わせて7つのピークを走破するコースは距離、標高ともにAACRやGF軽井沢を上回る難度。一方で、レベルに応じた5つのカテゴリーが用意される裾野の広い大会であり、初心者に優しいこともポイント。各カテゴリーの概要は以下の通り。
最難関のスペシャルクラスの高低差図は、グランツールの1ステージに見立てても違和感が無いほど。一方グルメフォンド75kmは特設エイドが3箇所加わり、ご当地の味をひたすら堪能できるビギナー向けのレイアウト。北アルプス山麓に広がる絶好のロケーションで、思い思いのライドタイムを満喫できるのがNAGFの魅力である。
筆者は取材に託けて、スペシャルクラスの一団に入れていただくことに。メイン会場の鹿島槍スポーツヴィレッジに前泊し、ビッグライドに向けてストレスなく朝を迎えることができた。スペシャルともなると全員イベント慣れした様子で、雨予報を意に介さない余裕感が見て取れる。最高気温28度、雨時々曇天の下、取材(兼トレーニングライド)が幕をあける。
まずは大会の最高地点、標高1,302mの小熊山頂上へ車輪を向ける。山頂のビューポイントから仁科三湖の1つ「木崎湖」を眺める事が出来るが、この日はあいにくの濃霧で絶景はおあずけ。暖まった身体をテクニカルな林道ダウンヒルで冷やしつつ、木崎湖から青木湖に連なる緩やかな丘陵区間を経て、白馬へと北上していく。
この区間はあまりにも景色が開放的で、かつアウターギアで突破できる緩いアップダウンが続くため、つい踏みたくなってしまう。まるで巨壁のように迫り出した鹿島槍ヶ岳がダイナミックな景観を演出し、何とも言えない荘厳な空気に満ちている。信号、交通量共に少ないノンストレスな道が続き、中盤まで10%以上の激坂はほとんど登場しない。
また、NAGFのコースは長野県の制定した「ジャパンアルプスサイクリングルート」の一部であることもトピックだ。路面にはお馴染みの青い矢羽が走り、長野県一周ルートの北信エリアとぴたりと重なる。この長大なサイクリングルートは東信、中信、南信を合わせると全長900km / 獲得標高15,000m以上もあり、その全景はぜひ公式HPをチェックしてほしい(いつか筆者も実走レポートしたいと密かに思っている)。
49km地点の絶景ポイント「白沢洞門」も濃霧に阻まれたが、戸隠エイドから先の「大望峠」でようやく後立山連峰の山並みを拝むことができた。その光景はまるで、グランツールの中継映像に飛び込んだかのような高揚感だ(もっとも、沿道に熱烈なファンの姿は無いが)。雨の山岳ライドは気後れするかもしれないが、霧に包まれた幻想的光景に巡り会えた上、終日涼しく走れた事はポジティブに捉えたい。
そんなNAGFについて、機材面でのアドバイスを記しておきたい。まずギア比は繰り返しのヒルクライムに備えてロー30T以上、タイヤは荒れた舗装がしばしば登場するので28C以上が安心できるライン。ワンタッチ脱着できる泥除けもあるとスマートだ。まだ梅雨明け前、かつ標高1,000m近い高地であることを考慮し、レインウェアと防寒対策はマスト。見落としがちだが、下りが多いためブレーキパッド残量はしっかりとダブルチェックしておくこと。
万が一のトラブル時にはマビックカーが駆けつけてくれ、スペアホイールとバイク交換といったメカニカルサポートを受けられる。とはいえ、パンクを筆頭に最低限の修理は自身で行えるよう備えておくべし。この日は雨の影響でパンクと落車が多発し、稼働率は高めだったようだ。
グランフォンドの華といえばエイド食。スペシャルクラスは合計8箇所もあるエイドのおかげで、自前のエナジーバーには手をつけずに進行できた。お蕎麦や漬物など、長野ご当地メニューは質・量ともに満足のいくもので、エイド間距離も絶妙な設定で、サイクリストのニーズをしっかりと押さえている。脚に疲労が見え始める中盤、完璧なタイミングで登場する「伝説のネギ味噌おにぎり」にはぜひ期待してほしい。終日涼しいこともあり、ボトルは750cc1本で十分カバーできた。
気がつけば雨はあがり、道はNAGF最大の山場へと伸びていく。125km地点から始まる鷹狩山ヒルクライムは距離6.5km / 最大勾配15%。その頂上には大町市市街を見下ろせる大会随一の絶景が控え、圧巻のパノラマビューが疲れを吹き飛ばしてくれる。展望台手前300mの激坂区間は、チームの垣根を越えて声援の飛び交う優しい世界であった。スペシャル、ロング、ミドルプラスの3クラスは登ることになるため、この絶景を目当てに参加しても良いと思えるほど。
スペシャルクラス全体を通して感じたことだが、手を焼く激坂は鷹狩山の後半わずかな区間のみで、獲得3,500mという数字以上にサクサクと距離を消化していった。一つ一つの登りが3~10km以内の中級山岳クラスであり、脚にくる前に下りに入れるため、走りにメリハリをつけやすいのがそう感じた理由かもしれない。5つのカテゴリーから選べるNAGFであるが、実力よりも少し背伸びしたコースに挑むくらいが丁度いいだろう。参考までに、筆者は全エイドと撮影ポイントを回って経過時間10時間半、走行時間7時間40分で完走。タイムリミットは1時間以上の余裕があった。
スペシャルなコース難度、北アルプスのダイナミックな景観、彩り豊かなエイド食、そして運営スタッフの手厚いサポート。総括すると、ニッポンの山岳ライドの醍醐味を詰め込んだ、最高峰のグランフォンドであると感じた。スペシャルクラスを完走した暁には、文字通りスペシャルな達成感を得られるはず。順位を競わないがイベントではあるが、「自分との戦い」が自らをネクストレベルに押し上げてくれるだろう。
NAGFは何千人と集うマンモスイベントではないし、食も景色も魅力的なロングライドは全国各地に数多ある。しかし、山岳主体のライドイベントとしては日本最高クラスの優良コースであり、満足度は非常に高い。その証拠に開催12回目にして史上最多866名がエントリーし、スペシャルクラスは250名の満員御礼。長く広く愛される大会だと伺え、参加者の表情も皆晴れやかであった。
事務局の木村氏曰く、参加者全体で新規が6割、リピーターが4割で、口コミとSNSでの集客が光るイベントであったようだ。道中チームメイト同士で助け合うのは本イベントでよく見る光景で、1年に1度ここNAGFで再会するリピーター仲間もいるそうだ。走り屋にとってはソロでも攻略のしがいがあるが、厳しいコースで仲間と苦楽を分かち合うのも一興だ。
上級者はグループ参加で、エイド付き山岳トレーニングとして走り、STRAVAセグメントを競う楽しみ方がオススメだ。初心者は75kmのグルメフォンドから入り、毎年カテゴリーを上げていくとレベルアップを感じられるだろうし、何度走っても飽きのこない極上のルートづくしだ。ファンライダーの目指すべき一大目標として、NAGFのステータスはますます高まっていく事を期待したい。
Report by Ryota Nakatani
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