2023/05/27(土) - 08:15
第106回ジロ・デ・イタリア最後の山岳ロードステージで、サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス)が逃げ切り勝利。ログリッチやアルメイダの攻撃を封じたゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がマリアローザを守った。
ドロミテ山塊での山岳決戦2日目にして、ロードレースでのマリアローザ争いはこれが最後となる。獲得標高差5,400mに達するクイーンステージには5つのカテゴリー山岳(2級、1級、1級、2級、1級)が設定され、約30kmの平坦路区間から先は登りと下りしかない過酷を極めるレイアウトだ。
まずは最初の2級山岳に向けて60km弱の距離を緩やかに登っていく。その後1級山岳ヴァルパローラから下りを経て臨む1級山岳ジャウは距離9.9kmに平均勾配9.3%と険しく、ラストは2級トレ・クローチからチーマコッピ(大会最標高)である2,304mの1級山岳トレチーメ・ディ・ラヴァレド(距離7.2km/平均7.6%)へ。登り始めから最大勾配18%の区間が現れ、一度短く下った後に平均勾配11.7%と、グランツールでもなかなかお目にかかれない破壊力抜群の登りを駆け上がる。
総合14位につけていたヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)が胃腸の不調によりレースを去ったこの日は、逃げを目指したアタックが活発に繰り返されたため、最初の1時間の平均速度が50km/h以上をマーク。この激しい仕掛け合戦の末、これが今大会7度目のエスケープとなるデレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック)ら15名が抜け出すことに成功した。
逃げを容認したメイン集団では総合2位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を擁するユンボ・ヴィスマが先頭に人数を固め、プロトンに蓋をする。しかし逃げグループとの差が5分半に拡大したところで山岳賞ランキングで2位につけるベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)がアタック。これをマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を着るティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)が潰し、見せ場を作った2人が笑顔で握手しながらプロトンへと戻っていった。
最初の2級山岳こそダヴィデ・ガッブロ(イタリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ)に譲ったものの、その後の1級山岳ヴァルパローラと1級山岳ジャウをジーが先頭通過して山岳ポイント(それぞれ40ポイント)を加算する。そのためジーはヒーリーを抜き、山岳賞ランキングで2位に浮上。1級山岳にフィニッシュする翌日の個人タイムトライアルは、麓から頂上までの登坂時間によって山岳ポイントが付与されるため、白熱のマリアアッズーラ争いは最終日前日まで持ち越されることとなった。
プロトンではベン・スウィフト(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の先導で序盤の山岳を越え、これが10回目のジロ出場となるサルヴァトーレ・プッチョ(イタリア)が牽引を引き継ぐ。その後方ではジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)らスプリンターたちがグルペットを作り、その中にはチームメイトの制限時間内フィニッシュに尽力する新城幸也の姿もあった。
逃げ集団ではカルロス・ベローナ(スペイン、モビスター)がAG2Rシトロエンのチームカーと接触して落車するトラブルもありながら、1級山岳ジャウの頂上から約18kmに及ぶダウンヒルを下っていく。そしてレースはいよいよ2級トレ・クローチと1級山岳トレチーメ・ディ・ラヴァレドが連続する最終山岳へと入っていった。
6分半のリードで2級山岳の登坂(残り21.4km地点から)に突入した逃げグループからローレンス・ワーバス(アメリカ、AG2Rシトロエン)が飛び出し、それを強い通り雨の中サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス)がマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)と共に引き戻す。直後にワーバスは遅れ、逆にジーとマイケル・ヘップバーン(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)が追いついた。
1級山岳トレチーメ・ディ・ラヴァレド(距離7.2km/平均7.6%)に先頭4名が突入し、ジーが加速して単独先頭に出る。今大会3度の2位と目前で勝利を逃しているジーはシッティングのまま一定のペースで踏み続けたものの、その後ろからコルトとヘップバーンを振り落としたブイトラゴが迫り、大観衆が詰めかける残り1.5km地点でジーを追い抜く。そして数々の名クライマーを輩出するコロンビアの首都ボゴタ出身のブイトラゴが、その後も軽快なダンシングを織り交ぜながら、標高2,304mのフィニッシュ地点に飛び込んだ。
昨年大会に続くジロ区間2勝目を挙げたブイトラゴ。「この偉大な山岳で独走勝利することができ、本当に嬉しい。ここまでグレー(不調)だったジロで掴みった勝利は特別。脚の調子はよく、自分の持っている強みを活かすことができた。また監督であるフランコ・ペッリツォッティも的確な指示と励ましのおかげでもある」と、バーレーン・ヴィクトリアスに今大会2勝目をもたらしたブイトラゴは語っている。
一方のメイン集団では、2級山岳の麓でログリッチがフロントシングルかつリアが10-44Tというマウンテンバイクのような山岳決戦仕様バイクに乗り換えて登坂をスタートさせる。集団コントロールは自らも総合10位につけるローレンス・デプルス(ベルギー、イネオス・グレナディアーズ)が行い、そのハイペースに総合3位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)の山岳アシストであるジェイ・ヴァイン(オーストラリア)が遅れていく。
最終山岳に入ってもデプルスは牽引を続け、平均勾配が12.7%に跳ね上がる残り3km地点を通過してようやくテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)にスイッチ。ライバルたちのアタックを抑制するイネオスの強力牽引に総合4位のエディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)が遅れ、ログリッチはセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)と共にマリアローザの後ろにつく。
そして牽引を終えて脚を緩めるアレンスマンと入れ替わるようにアルメイダが静かに加速する。この動きにすかさず反応したトーマスの背後から、今度はログリッチがキレ良くアタック。しかしログリッチはトーマスを引き離すことはできず、一度遅れたアルメイダが歯を食いしばりながら合流し、緩んだペースにダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)やアレンスマンも追いつく。そして残り500mでトーマスがアタックし、追従したログリッチがフィニッシュ手前で差し切り先着した。
トーマスに対し3秒、アルメイダに23秒を奪ったログリッチだったが総合逆転には至らず。トーマスとログリッチが26秒差のまま、マリアローザ争いは、1級山岳モンテ・ルッサリ(距離12.1km/平均7.3%)を駆け上がる翌日の18.6km個人タイムトライアルに持ち込まれた。
ドロミテ山塊での山岳決戦2日目にして、ロードレースでのマリアローザ争いはこれが最後となる。獲得標高差5,400mに達するクイーンステージには5つのカテゴリー山岳(2級、1級、1級、2級、1級)が設定され、約30kmの平坦路区間から先は登りと下りしかない過酷を極めるレイアウトだ。
まずは最初の2級山岳に向けて60km弱の距離を緩やかに登っていく。その後1級山岳ヴァルパローラから下りを経て臨む1級山岳ジャウは距離9.9kmに平均勾配9.3%と険しく、ラストは2級トレ・クローチからチーマコッピ(大会最標高)である2,304mの1級山岳トレチーメ・ディ・ラヴァレド(距離7.2km/平均7.6%)へ。登り始めから最大勾配18%の区間が現れ、一度短く下った後に平均勾配11.7%と、グランツールでもなかなかお目にかかれない破壊力抜群の登りを駆け上がる。
総合14位につけていたヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト)が胃腸の不調によりレースを去ったこの日は、逃げを目指したアタックが活発に繰り返されたため、最初の1時間の平均速度が50km/h以上をマーク。この激しい仕掛け合戦の末、これが今大会7度目のエスケープとなるデレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック)ら15名が抜け出すことに成功した。
逃げを容認したメイン集団では総合2位のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)を擁するユンボ・ヴィスマが先頭に人数を固め、プロトンに蓋をする。しかし逃げグループとの差が5分半に拡大したところで山岳賞ランキングで2位につけるベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)がアタック。これをマリアアッズーラ(山岳賞ジャージ)を着るティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)が潰し、見せ場を作った2人が笑顔で握手しながらプロトンへと戻っていった。
最初の2級山岳こそダヴィデ・ガッブロ(イタリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ)に譲ったものの、その後の1級山岳ヴァルパローラと1級山岳ジャウをジーが先頭通過して山岳ポイント(それぞれ40ポイント)を加算する。そのためジーはヒーリーを抜き、山岳賞ランキングで2位に浮上。1級山岳にフィニッシュする翌日の個人タイムトライアルは、麓から頂上までの登坂時間によって山岳ポイントが付与されるため、白熱のマリアアッズーラ争いは最終日前日まで持ち越されることとなった。
プロトンではベン・スウィフト(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の先導で序盤の山岳を越え、これが10回目のジロ出場となるサルヴァトーレ・プッチョ(イタリア)が牽引を引き継ぐ。その後方ではジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)らスプリンターたちがグルペットを作り、その中にはチームメイトの制限時間内フィニッシュに尽力する新城幸也の姿もあった。
逃げ集団ではカルロス・ベローナ(スペイン、モビスター)がAG2Rシトロエンのチームカーと接触して落車するトラブルもありながら、1級山岳ジャウの頂上から約18kmに及ぶダウンヒルを下っていく。そしてレースはいよいよ2級トレ・クローチと1級山岳トレチーメ・ディ・ラヴァレドが連続する最終山岳へと入っていった。
6分半のリードで2級山岳の登坂(残り21.4km地点から)に突入した逃げグループからローレンス・ワーバス(アメリカ、AG2Rシトロエン)が飛び出し、それを強い通り雨の中サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス)がマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)と共に引き戻す。直後にワーバスは遅れ、逆にジーとマイケル・ヘップバーン(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)が追いついた。
1級山岳トレチーメ・ディ・ラヴァレド(距離7.2km/平均7.6%)に先頭4名が突入し、ジーが加速して単独先頭に出る。今大会3度の2位と目前で勝利を逃しているジーはシッティングのまま一定のペースで踏み続けたものの、その後ろからコルトとヘップバーンを振り落としたブイトラゴが迫り、大観衆が詰めかける残り1.5km地点でジーを追い抜く。そして数々の名クライマーを輩出するコロンビアの首都ボゴタ出身のブイトラゴが、その後も軽快なダンシングを織り交ぜながら、標高2,304mのフィニッシュ地点に飛び込んだ。
昨年大会に続くジロ区間2勝目を挙げたブイトラゴ。「この偉大な山岳で独走勝利することができ、本当に嬉しい。ここまでグレー(不調)だったジロで掴みった勝利は特別。脚の調子はよく、自分の持っている強みを活かすことができた。また監督であるフランコ・ペッリツォッティも的確な指示と励ましのおかげでもある」と、バーレーン・ヴィクトリアスに今大会2勝目をもたらしたブイトラゴは語っている。
一方のメイン集団では、2級山岳の麓でログリッチがフロントシングルかつリアが10-44Tというマウンテンバイクのような山岳決戦仕様バイクに乗り換えて登坂をスタートさせる。集団コントロールは自らも総合10位につけるローレンス・デプルス(ベルギー、イネオス・グレナディアーズ)が行い、そのハイペースに総合3位ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)の山岳アシストであるジェイ・ヴァイン(オーストラリア)が遅れていく。
最終山岳に入ってもデプルスは牽引を続け、平均勾配が12.7%に跳ね上がる残り3km地点を通過してようやくテイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)にスイッチ。ライバルたちのアタックを抑制するイネオスの強力牽引に総合4位のエディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)が遅れ、ログリッチはセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)と共にマリアローザの後ろにつく。
そして牽引を終えて脚を緩めるアレンスマンと入れ替わるようにアルメイダが静かに加速する。この動きにすかさず反応したトーマスの背後から、今度はログリッチがキレ良くアタック。しかしログリッチはトーマスを引き離すことはできず、一度遅れたアルメイダが歯を食いしばりながら合流し、緩んだペースにダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)やアレンスマンも追いつく。そして残り500mでトーマスがアタックし、追従したログリッチがフィニッシュ手前で差し切り先着した。
トーマスに対し3秒、アルメイダに23秒を奪ったログリッチだったが総合逆転には至らず。トーマスとログリッチが26秒差のまま、マリアローザ争いは、1級山岳モンテ・ルッサリ(距離12.1km/平均7.3%)を駆け上がる翌日の18.6km個人タイムトライアルに持ち込まれた。
ジロ・デ・イタリア2023第19ステージ結果
1位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 5:28:07 |
2位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | +0:51 |
3位 | マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) | +1:46 |
4位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | |
5位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +1:49 |
6位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +2:09 |
7位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
8位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | |
9位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | +2:16 |
10位 | エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア、モビスター) | +2:26 |
13位 | エディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー) | |
119位 | 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) | +43:20 |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | 76:25:51 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +0:29 |
3位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +0:39 |
4位 | エディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー) | +3:39 |
5位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +3:51 |
6位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +4:27 |
7位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | +4:43 |
8位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM) | +4:47 |
9位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | +4:53 |
10位 | ローレンス・デプルス(ベルギー、イネオス・グレナディアーズ) | +5:52 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 215pts |
2位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | 160pts |
3位 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ) | 95pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 228pts |
2位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | 200pts |
3位 | ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) | 164pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | 81:56:46 |
2位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | +4:14 |
3位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM) | +5:09 |
チーム総合成績
1位 | バーレーン・ヴィクトリアス | 245:35:12 |
2位 | イネオス・グレナディアーズ | +19:59 |
3位 | ユンボ・ヴィスマ | +33:47 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
photo:CorVos
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