2023/05/17(水) - 08:45
未出走や雨による落車で13名がリタイアしたジロ・デ・イタリア第10ステージ。逃げ切った3名によるスプリントをマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)が制し、ジロ初勝利と共に全グランツール区間優勝を叶えた。
大会最初の休息日を経て、迎えた第10ステージはアドリア海から再びティレニア海に戻っていくフラットステージ。平坦ステージと言えどコースには獲得標高差3,000mオーバーの登りが詰め込まれており、スカンディアーノを出発直後からカテゴリーなき山岳を登り、コース中盤に訪れる2級山岳と4級山岳を越えてヴィアレッジョに至る196kmで争われた。
総合首位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が新型コロナウイルス感染により棄権という2日前のニュースに続き、この日はスヴェンエリック・ビーストルム(ノルウェー、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)や総合上位を目指していたドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、イスラエル・プレミアテック)か陽性によりリタイア。またシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)は8月の世界選手権の準備のためレースを去り、その他5名は体調不良などを理由にリタイアした。
前日の予報通り第2週目の初日は雨。レース前に「雨のため山岳を越えず、ラスト70kmの平坦路だけで行う」可能性が一部報道により伝えられたが、予定通り12時20分にスカンディアーノでスタートが切られた。
スタート直後からアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)が積極的に逃げを目指し、その動きにデレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック)がつく。出入りの激しいプロトンからはマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)が合流し、タイミングよく飛び出したマリアアッズーラ(山岳賞)ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ)を含む4名による逃げ集団が形成された。
第10ステージで逃げた4名
マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ)
デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)
一方のプロトンでは、総合7位のアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)が体調不良を訴えバイクを降りた。その後シモーネ・ペティッリ(イタリア)も同様の理由でリタイアしたため、レイン・タラマエ(エストニア)とスヴェンエリック・ビーストルム(ノルウェー)が未出走だったアンテルマルシェ・サーカス・ワンティはこの日だけで3名を失うことになった。
逃げの4名が最初の中間ポイント(48.1km地点)を通過後、3分遅れでやってきたプロトンではジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)が先頭で通過(+4ポイント)。前日のインタビューでチームメイトの新城幸也が「チームとして是が非でもというわけではない」と語るマリアチクラミーノ(ポイント賞)の保持に向け、ライバルのマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)やマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)に対しリードを拡げた。
2級山岳ラディーチ峠をバイスが先頭通過して山岳ポイントを加算(+12ポイント)。その後の目標を達成したバイスが戻っていたプロトンでは、雨で濡れた下りにもかかわらずバーレーン・ヴィクトリアスが仕掛ける。総合首位から1分13秒遅れ(総合7位)のダミアーノ・カルーゾが同じイタリア人のアンドレア・パスクアロンとミランと共に飛び出し、エヴェネプールの棄権でリーダーチームとなったイネオス・グレナディアーズはパヴェル・シヴァコフ(フランス)を抑え役に送る。そして第2集団となった4名はプロトンに対しすぐさま1分差のリードを奪った。
スタートから降り続ける雨と10度を下回る気温により、濡れたレインウェアを頻繁に交換する選手たち。特に寒さで手が思うように動かないフェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター)は2級山岳の頂上手前で監督2人の手を借りて着替えを行う。これによりプロトンから遅れたガビリアは、集団復帰するために飛ばした下りでカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)と共に落車。この日の優勝候補でもあった2人はレースに復帰したものの、最後までメイン集団に合流することはできなかった。
また、同じ2級山岳ラディーチ峠の下りでは総合10位のジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)がウィリアム・バルタ(アメリカ、モビスター)と共に落車し、ヴァインは総合争いから脱落(11分19秒遅れでフィニッシュ)。落車の連鎖はその後も止まらず、コースに倒れ込むルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ジェイコ・アルウラー)を介抱しようと駆け寄ったレース関係者とアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)が接触して転倒するシーンも。
イネオスが中心となりカルーゾたちを捉えたメイン集団には、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン)が長い追走の末に合流を果たす。残り25kmで逃げとプロトンとの差は1分26秒。一度止んだ雨が再び降りはじめた残り15kmで48秒差と、エーススプリンターを擁するトレック・セガフレードやアスタナ・カザフスタン、バーレーン・ヴィクトリアスが追走に本腰を入れた。
レース経験の豊富なデマルキとコルトに加え、第8ステージで2位の悔しさ晴らしたいジーの3名によるローテーションはスムーズかつ速かった。そしてプロトンの追走も届かず、残り3km地点で47秒差と勝負が逃げ集団の3名に絞られた。
スプリント力で2人に劣るジーがアーリーアタックを仕掛けるもののこれをコルトが捉え、遅れて追いついたデマルキが残り300mでスプリントを開始。しかし、時にスプリンターさえ退けるコルトのスピードに2人が敵うことはなく、コルトが先頭でフィニッシュラインを通過した。
ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャに続き、ジロで念願の区間優勝を飾ったコルト。「人生で最も厳しいレースとなった。雨のせいで無線機が壊れ、タイム差など情報がほとんどない中での逃げだった。だからひたすらハイペースで踏み続けるしかなく、こんなにパワーを出し続けたのは初めてだったよ。でもそれがこの勝利に繋がった。嬉しいよ」と、相変わらずの控えめな笑顔でコルトはレースを振り返った。
そして51秒遅れでやってきたプロトンはパスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ)らを退けたピーダスンが先着。同じデンマーク人であるコルトの勝利についてピーダスンは「前の3人は本当に強く、勝利を逃したものの心からマグナスを祝福したい」とコメントしている。
ウラソフの棄権とヴァインの脱落以外総合順位に変動はなく、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がマリアローザの保持に成功。未出走を含め13名がレースを去る、大荒れとなった第2週目の初日が幕を閉じた。
大会最初の休息日を経て、迎えた第10ステージはアドリア海から再びティレニア海に戻っていくフラットステージ。平坦ステージと言えどコースには獲得標高差3,000mオーバーの登りが詰め込まれており、スカンディアーノを出発直後からカテゴリーなき山岳を登り、コース中盤に訪れる2級山岳と4級山岳を越えてヴィアレッジョに至る196kmで争われた。
総合首位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が新型コロナウイルス感染により棄権という2日前のニュースに続き、この日はスヴェンエリック・ビーストルム(ノルウェー、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)や総合上位を目指していたドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、イスラエル・プレミアテック)か陽性によりリタイア。またシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)は8月の世界選手権の準備のためレースを去り、その他5名は体調不良などを理由にリタイアした。
前日の予報通り第2週目の初日は雨。レース前に「雨のため山岳を越えず、ラスト70kmの平坦路だけで行う」可能性が一部報道により伝えられたが、予定通り12時20分にスカンディアーノでスタートが切られた。
スタート直後からアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)が積極的に逃げを目指し、その動きにデレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック)がつく。出入りの激しいプロトンからはマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)が合流し、タイミングよく飛び出したマリアアッズーラ(山岳賞)ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ)を含む4名による逃げ集団が形成された。
第10ステージで逃げた4名
マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)
ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ)
デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)
一方のプロトンでは、総合7位のアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)が体調不良を訴えバイクを降りた。その後シモーネ・ペティッリ(イタリア)も同様の理由でリタイアしたため、レイン・タラマエ(エストニア)とスヴェンエリック・ビーストルム(ノルウェー)が未出走だったアンテルマルシェ・サーカス・ワンティはこの日だけで3名を失うことになった。
逃げの4名が最初の中間ポイント(48.1km地点)を通過後、3分遅れでやってきたプロトンではジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)が先頭で通過(+4ポイント)。前日のインタビューでチームメイトの新城幸也が「チームとして是が非でもというわけではない」と語るマリアチクラミーノ(ポイント賞)の保持に向け、ライバルのマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)やマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)に対しリードを拡げた。
2級山岳ラディーチ峠をバイスが先頭通過して山岳ポイントを加算(+12ポイント)。その後の目標を達成したバイスが戻っていたプロトンでは、雨で濡れた下りにもかかわらずバーレーン・ヴィクトリアスが仕掛ける。総合首位から1分13秒遅れ(総合7位)のダミアーノ・カルーゾが同じイタリア人のアンドレア・パスクアロンとミランと共に飛び出し、エヴェネプールの棄権でリーダーチームとなったイネオス・グレナディアーズはパヴェル・シヴァコフ(フランス)を抑え役に送る。そして第2集団となった4名はプロトンに対しすぐさま1分差のリードを奪った。
スタートから降り続ける雨と10度を下回る気温により、濡れたレインウェアを頻繁に交換する選手たち。特に寒さで手が思うように動かないフェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター)は2級山岳の頂上手前で監督2人の手を借りて着替えを行う。これによりプロトンから遅れたガビリアは、集団復帰するために飛ばした下りでカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)と共に落車。この日の優勝候補でもあった2人はレースに復帰したものの、最後までメイン集団に合流することはできなかった。
また、同じ2級山岳ラディーチ峠の下りでは総合10位のジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ)がウィリアム・バルタ(アメリカ、モビスター)と共に落車し、ヴァインは総合争いから脱落(11分19秒遅れでフィニッシュ)。落車の連鎖はその後も止まらず、コースに倒れ込むルーカス・ペストルベルガー(オーストリア、ジェイコ・アルウラー)を介抱しようと駆け寄ったレース関係者とアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)が接触して転倒するシーンも。
イネオスが中心となりカルーゾたちを捉えたメイン集団には、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン)が長い追走の末に合流を果たす。残り25kmで逃げとプロトンとの差は1分26秒。一度止んだ雨が再び降りはじめた残り15kmで48秒差と、エーススプリンターを擁するトレック・セガフレードやアスタナ・カザフスタン、バーレーン・ヴィクトリアスが追走に本腰を入れた。
レース経験の豊富なデマルキとコルトに加え、第8ステージで2位の悔しさ晴らしたいジーの3名によるローテーションはスムーズかつ速かった。そしてプロトンの追走も届かず、残り3km地点で47秒差と勝負が逃げ集団の3名に絞られた。
スプリント力で2人に劣るジーがアーリーアタックを仕掛けるもののこれをコルトが捉え、遅れて追いついたデマルキが残り300mでスプリントを開始。しかし、時にスプリンターさえ退けるコルトのスピードに2人が敵うことはなく、コルトが先頭でフィニッシュラインを通過した。
ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャに続き、ジロで念願の区間優勝を飾ったコルト。「人生で最も厳しいレースとなった。雨のせいで無線機が壊れ、タイム差など情報がほとんどない中での逃げだった。だからひたすらハイペースで踏み続けるしかなく、こんなにパワーを出し続けたのは初めてだったよ。でもそれがこの勝利に繋がった。嬉しいよ」と、相変わらずの控えめな笑顔でコルトはレースを振り返った。
そして51秒遅れでやってきたプロトンはパスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ)らを退けたピーダスンが先着。同じデンマーク人であるコルトの勝利についてピーダスンは「前の3人は本当に強く、勝利を逃したものの心からマグナスを祝福したい」とコメントしている。
ウラソフの棄権とヴァインの脱落以外総合順位に変動はなく、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がマリアローザの保持に成功。未出走を含め13名がレースを去る、大荒れとなった第2週目の初日が幕を閉じた。
ジロ・デ・イタリア2023第10ステージ結果
1位 | マグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) | 4:51:15 |
2位 | デレク・ジー(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | |
3位 | アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、ジェイコ・アルウラー) | +0:02 |
4位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | +0:51 |
5位 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、UAEチームエミレーツ) | |
6位 | ステファノ・オルダーニ(イタリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | |
7位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
8位 | マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、アスタナ・カザフスタン) | |
9位 | ミルコ・マエストリ(イタリア、エオーロ・コメタ) | |
10位 | フィリッポ・フィオレッリ(イタリア、グリーンプロジェクト・バルディアーニCSF・ファイザネ) | |
147位 | 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) | +23:02 |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | 39:26:33 |
2位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) | +0:02 |
3位 | テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) | +0:05 |
4位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | +0:22 |
5位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM) | +0:35 |
6位 | ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:28 |
7位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +1:52 |
8位 | パヴェル・シヴァコフ(フランス、イネオス・グレナディアーズ) | +2:15 |
9位 | エディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー) | +2:32 |
10位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ジョナサン・ミラン(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) | 127pts |
2位 | マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) | 109pts |
3位 | カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) | 100pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ダヴィデ・バイス(イタリア、エオーロ・コメタ) | 104pts |
2位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 50pts |
3位 | カレル・ヴァチェク(チェコ、チーム・コラテック) | 36pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) | 39:26:55 |
2位 | アンドレアス・レックネスン(ノルウェー、チームDSM) | +0:13 |
3位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、イネオス・グレナディアーズ) | +2:10 |
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 103:43:30 |
2位 | バーレーン・ヴィクトリアス | +6:19 |
3位 | EFエデュケーション・イージーポスト | +7:08 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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