ツール・ド・熊野第2ステージは、序盤に先行した集団が最後まで逃げ切り、登りスプリント勝負をレオネル・アレクサンダー・キンテロ・アルテアーガ(マトリックスパワータグ)が制して優勝。ネイサン・アール(チーム右京)が個人総合首位となった。



スタート前の各賞ジャージラインナップ 写真左から、ポイント賞次点のネイサン・アール(チーム右京)、山岳賞の中井唯晶(シマノレーシング)、総合首位の窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)、新人賞の香山飛龍(弱虫ペダルサイクリングチーム)スタート前の各賞ジャージラインナップ 写真左から、ポイント賞次点のネイサン・アール(チーム右京)、山岳賞の中井唯晶(シマノレーシング)、総合首位の窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)、新人賞の香山飛龍(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Satoru Kato
ツール・ド・熊野の第2ステージは、三重県熊野市に設定された104.5kmの「熊野山岳コース」。日本の棚田100選にも選ばれた「丸山千枚田」を登る2級山岳、道幅の狭い急坂が続く札立峠の1級山岳、さらに丸山千枚田をもう1回登り、今回から3級山岳となったフィニッシュへの登りと、4つの山岳賞ポイントが設定される。ツール・ド・熊野を象徴するステージであり、勝負を左右するクイーンステージでもある。

第1ステージを終えて、個人総合順位は10秒以内に53名がひしめく僅差。この第2ステージでの結果次第では、大きく順位が入れ替わることが予想された。

真夏ような陽射しの下、各賞ジャージを先頭にパレードスタート真夏ような陽射しの下、各賞ジャージを先頭にパレードスタート photo:Satoru Kato30℃に迫る暑い中でのレース、選手からボトルの要求が相次ぐ30℃に迫る暑い中でのレース、選手からボトルの要求が相次ぐ photo:Satoru Kato

悪天候が多いツール・ド・熊野には珍しく、2日目も朝から青空が広がる晴れ。熊野市では30℃に迫る最高気温を記録する暑さとなり、選手からボトルの要求が絶えない1日となった。

リアルスタート直前、チームブリヂストンサイクリングが集団前方に集まるリアルスタート直前、チームブリヂストンサイクリングが集団前方に集まる photo:Satoru Katoファーストアタックは松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)ファーストアタックは松田祥位(チームブリヂストンサイクリング) photo:Satoru Kato

モンゴルチャンピオンのエンクタイヴァン・ボロー・エルデン(レバンテフジ静岡)を先頭に進む20名の集団モンゴルチャンピオンのエンクタイヴァン・ボロー・エルデン(レバンテフジ静岡)を先頭に進む20名の集団 photo:Satoru Kato
パレードスタート直後、リーダージャージの窪木一茂を擁するチームブリヂストンサイクリングのメンバーが集団前方に集まる。リアルスタートが切られると、その中から松田祥位が飛び出していく。この動きに同調して飛び出しが相次ぎ、山本大喜(キナンレーシングチーム)、レオネル・アレクサンダー・キンテロ・アルテアガ(マトリックスパワータグ)らを含む20名の先頭集団が形成される。

1回目の丸山千枚田を登る先頭集団1回目の丸山千枚田を登る先頭集団 photo:Satoru Kato
メイン集団との差は一気に開き、1回目の千枚田への登り口で2分まで開く。その後もタイム差は開き続け、40km過ぎから始まる札立峠への登り口では3分30秒以上まで開く。ここで審判はメイン集団を先頭の20名とみなし、審判車両などの配置を変更した。その判断の通り、後方の大集団が追いつくことなくレースが進行していく。

昼間でも薄暗い札立峠を進む先頭集団昼間でも薄暗い札立峠を進む先頭集団 photo:Satoru Kato
1級山岳の札立峠に向けて人数が絞られた先頭集団1級山岳の札立峠に向けて人数が絞られた先頭集団 photo:Satoru Kato頂上は山本大喜(キナンレーシングチーム)が先頭で通過頂上は山本大喜(キナンレーシングチーム)が先頭で通過 photo:Satoru Kato

1級山岳の札立峠は山本大喜(キナンレーシングチーム)が先頭で通過。先頭集団は12名ほどまで絞られた状態で下りに入っていく。その後方では、ネイサン・アールとベンジャミン・ダイボール(共にチーム右京)が追走。さらにトマ・ルバ(キナンレーシングチーム)、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、小林海(マトリックスパワータグ)が追走集団を形成して続く。

道幅が狭く長い下りで、アールとダイボールが相次いで先頭に追いつく。さらにルバ、増田、小林の3名も追いつき、2回目の千枚田へ。

札立峠からの長い降りで先頭集団を単独追走するネイサン・アール(チーム右京)札立峠からの長い降りで先頭集団を単独追走するネイサン・アール(チーム右京) photo:Satoru Kato札立峠からの下りで前を追うベンジャミン・ダイボール(チーム右京)札立峠からの下りで前を追うベンジャミン・ダイボール(チーム右京) photo:Satoru Kato

2回目の千枚田KOMはネイサン・アール(チーム右京)が先頭、山本大喜(キナンレーシングチーム)が2位で通過2回目の千枚田KOMはネイサン・アール(チーム右京)が先頭、山本大喜(キナンレーシングチーム)が2位で通過 photo:Satoru Kato
千枚田の中腹でアール、山本大喜、ルバ、キンテロ、増田の5名が先行。山本大喜が山岳賞ポイントを2位通過し、山岳賞を確実なものとする。下りに入ると遅れていたダイボールと小林が追いつき、先頭集団は7名となる。

残り10kmを前に牽制とアタックが繰り返される先頭集団残り10kmを前に牽制とアタックが繰り返される先頭集団 photo:Satoru Kato残り4km ベンジャミン・ダイボール(チーム右京)がアタック残り4km ベンジャミン・ダイボール(チーム右京)がアタック photo:Satoru Kato

残り10kmを過ぎてアタックが繰り返されるも決定打が出ずに牽制が入る中、後方から横山航太(シマノレーシング)、松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)の3名がフィニッシュ直前に追いつく。勝負は登りスプリントへ。

フィニッシュへの登りに先頭で現れたのはレオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)フィニッシュへの登りに先頭で現れたのはレオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ) photo:Satoru Kato
レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)が第2ステージ優勝レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)が第2ステージ優勝 photo:Satoru Kato
残り50m、先頭で登ってきたのはキンテロ。2位のアールを引き離してガッツポーズと共にフィニッシュ。チームメイトの小林も後方でガッツポーズを見せて喜んだ。

表彰式でチームメイトやスタッフ、ベネズエラの家族や友人への感謝を語ったキンテロ。来日直後は歯車が噛み合わない時期もあったが、今シーズンは好調のチームメイト・小林の影響も受けて結果に結びつけてきている。安原監督は「札立峠の登りで飛び出したとしても、その後の長い下りがあるから追いつける。最後の千枚田も、下った後が長いから登りであせる必要はないと前夜のミーティングで話した。その狙い通りになった」と満足げに語った。

第2ステージ表彰式第2ステージ表彰式 photo:Satoru Kato個人総合首位 ネイサン・アール(チーム右京)個人総合首位 ネイサン・アール(チーム右京) photo:Satoru Kato

リーダージャージは、第1ステージに続き2位となったアールが獲得した。例年であれば個人総合順位のタイム差は第2ステージ終了後に大きく開くものだが、今回は上位7名が6秒差以内に並ぶ異例の展開となった。第3ステージは2回の中間スプリントポイントとフィニッシュでトップを獲れば、最大で16秒のボーナスタイムを獲得できるため、十分逆転が可能だ。総合優勝をめぐる争いは最後までヒートアップしそうだ。

ツール・ド・熊野2022 第2ステージ・熊野山岳コース 結果(104.5km)
1位 レオネル・アレクサンダー・キンテロ・アルテアーガ(マトリックスパワータグ、ベネズエラ) 2時間38分50秒
2位 ネイサン・アール(チーム右京、オーストラリア) +0秒
3位 小林 海(マトリックスパワータグ、日本)
4位 松田祥位(チームブリヂストンサイクリング、日本)
5位 山本大喜(キナンレーシングチーム、日本)
6位 トマ・ルバ(キナンレーシングチーム、フランス)
7位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン、日本)
8位 ホセヴィセンテ・トリビオ・アルコレア(マトリックスパワータグ、スペイン)
9位 ベンジャミン・ダイボール(チーム右京、オーストラリア) +4秒
10位 横山航太(シマノレーシング、日本) +9秒
個人総合順位(第2ステージ終了時)
1位 ネイサン・アール(チーム右京、オーストラリア) 5時間10分1秒
2位 小林 海(マトリックスパワータグ、日本) +5秒
3位 レオネル・アレクサンダー・キンテロ・アルテアーガ(マトリックスパワータグ、ベネズエラ) +6
4位 山本大喜(キナンレーシングチーム、日本)
5位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン、日本)
6位 トマ・ルバ(キナンレーシングチーム、フランス)
ポイント賞・山岳賞・チーム順位(第2ステージ終了時)
ポイント賞
1位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング、日本) 25p
2位 ネイサン・アール(チーム右京、オーストラリア) 20p
3位 織田 聖(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム) 16p
山岳賞
1位 山本大貴(キナンレーシングチーム、日本) 20p
2位 レオネル・アレクサンダー・キンテロ・アルテアーガ(マトリックスパワータグ、ベネズエラ) 12p
3位 ネイサン・アール(チーム右京、オーストラリア) 10p
チーム順位
1位 マトリックスパワータグ 7時間56分34秒
2位 キナンレーシングチーム +1分10秒
3位 チーム右京 +1分14秒
text&photo:Satoru Kato

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