2021/03/20(土) - 17:13
昨年覇者ファンアールト、世界王者アラフィリップ、そしてファンデルプールの三強か、あるいはその戦いをかいくぐった他選手か。抜け出しでも、スプリントで決まる可能性のあるスリリングなミラノ〜サンレモがスタートする。第112回ミラノ〜サンレモの見どころをプレビューします。
3月の第3土曜日はイタリアに春の訪れを告げる伝統の一戦ミラノ〜サンレモ(UCIワールドツアー)の開催日。1907年(明治40年)に初開催され、今年112回目を迎える「ラ・プリマヴェーラ(春)」はミラノからサンレモまでの299kmコースを駆け抜ける。
シーズン最初のモニュメント(五大クラシック:サンレモ、ロンド、ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)であり、であり、「クラッシチッシマ(クラシックの最上級)」とも呼ばれる極めて格式の高いクラシックレースだ。
昨年はコロナ禍におけるレースカレンダー再編により8月開催となったミラノ〜サンレモだが、各国のロックダウンを踏まえながら「通常」に戻りつつある今年は本来の春開催に。バカンスシーズンと重なるため外されたリグーリア海岸沿いのコースも復活しており、ほぼ例年通りの形態に戻ることとなった。
コースはレース名の通りミラノからサンレモまで。正真正銘ミラノの中心地をスタートし、リグーリア海岸のサンレモまで約7時間かけて走りきる。299kmというレース距離は現存するロードレースの中で最長だ。
内陸部の大都市ミラノをスタート後、ロンバルディア平原を突っ切る前半部はひたすら平坦。2019年まで毎年通過していたトゥルキーノ峠(標高532m)は地滑りのため取り除かれ、代わりにジョーヴォ峠(標高516m)が組み込まれた。
レースが慌ただしさを増すのが、残り60kmを切ってから2年ぶりに登場するトレ・カーピ(3つの岬)と呼ばれるカーポ・メーレ、カーポ・チェルヴォ、カーポ・ベルタに差し掛かってから。さらにフィニッシュ27km手前からチプレッサ(距離5.65km/平均4.1%/最大9%)とポッジオ(距離3.7km/平均3.7%/最大8%)を連続してクリアする。
ミラノ〜サンレモの勝負どころがこのチプレッサとポッジオだ。いずれも勾配や難易度はそれほど高くないものの、毎年アタッカーによる攻撃と、食らいついてゴール勝負に持ち込みたいスプリンターチームが必死の追走を繰り広げる。ポッジオ頂上からは3.2kmのテクニカルダウンヒルが待ち受け、下りきった場所からフィニッシュまでは2.2km。クライマーやパンチャーの逃げ切りか、それともスプリンターの追い上げ&スプリントバトルか。密集を避けるため14時半から全ての店舗が店じまいした、静かなローマ通りで熱く激しい戦いが決着する。
独走、少数、あるいは集団スプリント。様々な可能性を秘める絶妙なコースレイアウトがミラノ〜サンレモ最大の魅力だ。
熾烈を極める後半勝負。ローマ通りのフィニッシュを先頭で駆け抜けるのは誰?
2019年大会覇者であり、2020年2位のジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)はアルカンシエルと共にミラノの地に降り立つ。
そして昨年覇者であり、ティレーノ〜アドリアティコでステージ2勝+並み居るオールラウンダーを抑え総合2位に入ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)と、やはりティレーノでステージ2勝を挙げたオランダ王者マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)の3名が絶対的な優勝候補と言えるだろう。
アラフィリップ、ファンアールト、ファンデルプールの3人ですでに7勝。ご存知の通りストラーデビアンケではファンデルプールがアラフィリップを突き放し、そのアラフィリップはティレーノ2日目に2人を打ち負かしてスプリント勝利(2位ファンデルプール、3位ファンアールト)、翌日にはファンデルプールがファンアールトを破った。ポッジオでのアタック、スプリント。誰がどんな展開でも勝ちを狙えるだけに、各チームの戦略が重要度を増している。
2017年にそのアラフィリップとペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を下し勝利したミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)は、これまた注目のトーマス・ピドコック(イギリス)を従えて2勝目を狙う。2018年に鮮やかな独走勝利を挙げたヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)は今季まだ調子を上げきれていない。場合によってはクィン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)が鍵を握ることも考えられる。
過去17回参加し、3位を2度獲得しているフィリップ・ジルベール(ベルギー)は、ティム・ウェレンス(ベルギー)と共にリーチが掛かったモニュメント全制覇を見据える。ロット・スーダルはカレブ・ユアン(オーストラリア)とジョン・デゲンコルプ(ドイツ)を揃え、2パターンで勝ちを狙う構えだ。
過去9回出場し、2015年と昨年3位に入ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)は様々な展開から勝利を狙える選手。グレッグ・ファンアーヴェルマートとオリヴェル・ナーセン(共にベルギー)のAG2Rシトロエンコンビや、アルベルト・ベッティオル(イタリア)、イバン・ガルシア(スペイン、モビスター)、マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)も虎視眈々とアタックのチャンスを狙っている。
また、新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は7年ぶりのサンレモ出場に。パリ~ニースを終え3日間リカバリーに務めたという新城は、エースを担うソンニ・コルブレッリ(イタリア)とマテイ・モホリッチ(スロベニア)をサポートする。ダウンヒルを得意にするモホリッチのアタックも可能性がある。
アタッカーによる攻撃を耐え、フィニッシュラインでの加速勝負を目論むスプリンターも超豪華。UAEとパリ〜ニースで2勝ずつ挙げ、頭一つ抜けているサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)はアラフィリップとの連携にも注目したいところ。アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)、パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス)、ユアン、クリストフ・ラポルト(フランス、アルケア・サムシック)といった面々にとっては、いかに最後の丘を生き残るか、そして脚を貯めることができるかが鍵となる。
text:So Isobe
3月の第3土曜日はイタリアに春の訪れを告げる伝統の一戦ミラノ〜サンレモ(UCIワールドツアー)の開催日。1907年(明治40年)に初開催され、今年112回目を迎える「ラ・プリマヴェーラ(春)」はミラノからサンレモまでの299kmコースを駆け抜ける。
シーズン最初のモニュメント(五大クラシック:サンレモ、ロンド、ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)であり、であり、「クラッシチッシマ(クラシックの最上級)」とも呼ばれる極めて格式の高いクラシックレースだ。
昨年はコロナ禍におけるレースカレンダー再編により8月開催となったミラノ〜サンレモだが、各国のロックダウンを踏まえながら「通常」に戻りつつある今年は本来の春開催に。バカンスシーズンと重なるため外されたリグーリア海岸沿いのコースも復活しており、ほぼ例年通りの形態に戻ることとなった。
コースはレース名の通りミラノからサンレモまで。正真正銘ミラノの中心地をスタートし、リグーリア海岸のサンレモまで約7時間かけて走りきる。299kmというレース距離は現存するロードレースの中で最長だ。
内陸部の大都市ミラノをスタート後、ロンバルディア平原を突っ切る前半部はひたすら平坦。2019年まで毎年通過していたトゥルキーノ峠(標高532m)は地滑りのため取り除かれ、代わりにジョーヴォ峠(標高516m)が組み込まれた。
レースが慌ただしさを増すのが、残り60kmを切ってから2年ぶりに登場するトレ・カーピ(3つの岬)と呼ばれるカーポ・メーレ、カーポ・チェルヴォ、カーポ・ベルタに差し掛かってから。さらにフィニッシュ27km手前からチプレッサ(距離5.65km/平均4.1%/最大9%)とポッジオ(距離3.7km/平均3.7%/最大8%)を連続してクリアする。
ミラノ〜サンレモの勝負どころがこのチプレッサとポッジオだ。いずれも勾配や難易度はそれほど高くないものの、毎年アタッカーによる攻撃と、食らいついてゴール勝負に持ち込みたいスプリンターチームが必死の追走を繰り広げる。ポッジオ頂上からは3.2kmのテクニカルダウンヒルが待ち受け、下りきった場所からフィニッシュまでは2.2km。クライマーやパンチャーの逃げ切りか、それともスプリンターの追い上げ&スプリントバトルか。密集を避けるため14時半から全ての店舗が店じまいした、静かなローマ通りで熱く激しい戦いが決着する。
独走、少数、あるいは集団スプリント。様々な可能性を秘める絶妙なコースレイアウトがミラノ〜サンレモ最大の魅力だ。
熾烈を極める後半勝負。ローマ通りのフィニッシュを先頭で駆け抜けるのは誰?
2019年大会覇者であり、2020年2位のジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)はアルカンシエルと共にミラノの地に降り立つ。
そして昨年覇者であり、ティレーノ〜アドリアティコでステージ2勝+並み居るオールラウンダーを抑え総合2位に入ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)と、やはりティレーノでステージ2勝を挙げたオランダ王者マチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)の3名が絶対的な優勝候補と言えるだろう。
アラフィリップ、ファンアールト、ファンデルプールの3人ですでに7勝。ご存知の通りストラーデビアンケではファンデルプールがアラフィリップを突き放し、そのアラフィリップはティレーノ2日目に2人を打ち負かしてスプリント勝利(2位ファンデルプール、3位ファンアールト)、翌日にはファンデルプールがファンアールトを破った。ポッジオでのアタック、スプリント。誰がどんな展開でも勝ちを狙えるだけに、各チームの戦略が重要度を増している。
2017年にそのアラフィリップとペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)を下し勝利したミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、イネオス・グレナディアーズ)は、これまた注目のトーマス・ピドコック(イギリス)を従えて2勝目を狙う。2018年に鮮やかな独走勝利を挙げたヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)は今季まだ調子を上げきれていない。場合によってはクィン・シモンズ(アメリカ、トレック・セガフレード)が鍵を握ることも考えられる。
過去17回参加し、3位を2度獲得しているフィリップ・ジルベール(ベルギー)は、ティム・ウェレンス(ベルギー)と共にリーチが掛かったモニュメント全制覇を見据える。ロット・スーダルはカレブ・ユアン(オーストラリア)とジョン・デゲンコルプ(ドイツ)を揃え、2パターンで勝ちを狙う構えだ。
過去9回出場し、2015年と昨年3位に入ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)は様々な展開から勝利を狙える選手。グレッグ・ファンアーヴェルマートとオリヴェル・ナーセン(共にベルギー)のAG2Rシトロエンコンビや、アルベルト・ベッティオル(イタリア)、イバン・ガルシア(スペイン、モビスター)、マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)も虎視眈々とアタックのチャンスを狙っている。
また、新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)は7年ぶりのサンレモ出場に。パリ~ニースを終え3日間リカバリーに務めたという新城は、エースを担うソンニ・コルブレッリ(イタリア)とマテイ・モホリッチ(スロベニア)をサポートする。ダウンヒルを得意にするモホリッチのアタックも可能性がある。
アタッカーによる攻撃を耐え、フィニッシュラインでの加速勝負を目論むスプリンターも超豪華。UAEとパリ〜ニースで2勝ずつ挙げ、頭一つ抜けているサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)はアラフィリップとの連携にも注目したいところ。アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)、パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス)、ユアン、クリストフ・ラポルト(フランス、アルケア・サムシック)といった面々にとっては、いかに最後の丘を生き残るか、そして脚を貯めることができるかが鍵となる。
text:So Isobe
Amazon.co.jp