2020/09/13(日) - 14:14
カナディアンブランド・アルゴン18のオールラウンドモデル"GALLIUM"シリーズをインプレッション。シリーズの15周年を記念した特別な軽量モデルと、手の届きやすい価格ながらハイバリューな"CS DISC"という2つの新作を一気乗り。
カナダはモントリオールを拠点とするバイクブランド、アルゴン18。オリンピックに出場した経験を持つ元プロサイクリストのジェルベー・リューが興したブランドだ。その出自からも想像できるように、多くの実績を残してきたレーシングブランドでもある。
ブランドコンセプトに掲げるのは"Optimal Balance(最適化されたバランス)"。特にトラック競技の分野においては、非常に大きな存在感を放つブランドであり、各国のトラックナショナルチームやトップアスリートたちとともにコンマ1秒を削るためのレーシングバイクを開発してきた。
そんなアルゴン18だが、ここ数年ではロードレースの世界においてもプレゼンスを高めてきた。2015年にはプロコンチネンタルチームのボーラ・アルゴン18と共にツール・ド・フランスへ初出場。2017年からは3シーズンに渡りワールドチームであるアスタナの走りを支えてきた実績を持つ。
常にレースの世界に身を置き続けてきたアルゴン18のロードバイクラインアップにおいて、軽量オールラウンダーの座を担い続けてきたのが"GALLIUM"シリーズだ。デビュー当時から幾度かのモデルチェンジを挟みつつ、ついに15周年の節目を迎えることとなったシリーズを記念して用意されるのが、今回のインプレッションバイクの一つである"GALLIUM PRO DISC 15th ANNIVERSARY EDITION"だ。
ベースとなったのは、シリーズのトップモデルであるGALLIUM PRO DISC。昨年までアスタナがメインバイクとしていた生粋のレースマシンであり、奇をてらわないシンプルなチュービングから来る素直なライディングフィール、険しい山岳を軽々とこなす登坂性能、スプリンターの爆発力を受け止める高い剛性を兼ね備え、ピュアに走りを求めるレーサーを中心に高い評価を受けてきた1台だ。
15周年記念モデルでは、カーボンレイアップに改良を加えており、通常モデルよりも軽量に仕上げられている。フレームと同時にフロントフォークもシェイプアップされ、フレームセットとして42g(約10%)の軽量化に成功。更にレーシング性能に磨きを掛けたスペシャルモデルとなっている。
グラフィックもまた15周年に相応しいもの。現在、アルゴン18がメインカラーに採用しているシルバーと、初代GALLIUMが採用していたブラックの2色をグラデーションとすることで、シリーズの歴史を表現。トップチューブには15周年モデルを表すレターが入るほか、BB上部にはGALLIUM誕生当時のブランドロゴが、シートステーには創業者ジェルベー・リュー氏のサインがあしらわれる特別なデザインが与えられた。
アルゴン18のコアテクノロジーである、可変ヘッドチューブ機構「3Dヘッドチューブ」ももちろん搭載。アップライトなポジションでもアッパーベアリング位置を高くすることで、ヘッドチューブ剛性の低下を防ぎ、理想的なライディングフィールを維持するシステムだ。
リアディレイラーのダイレクトマウントにも対応しているのも細かいながらユニークなポイント。また、タイヤクリアランスは最大30mmまで確保されており、コースに合わせてタイヤを交換することで様々なシチュエーションに対応するキャパシティーも備えている。
そしてもう一台、2021モデルとしてGALLIUMシリーズに新たに加わったのが"GALLIUM CS DISC"。ハイエンドモデルであるPROと同じモールドを使用しつつ、カーボングレードを変更することでリーズナブルな価格を実現したエントリーモデルとなっている。
エントリーモデルに位置付けられてはいるものの、そこに詰め込まれたテクノロジーはトップレースを経験した上位モデルと何一つ変わらない。レーシングバイクのDNAを受け継ぐGALLIUM CSには"3Dヘッドチューブ"をはじめ、アルゴン18の誇る技術が凝縮されている。
GALLIUM CSと上位モデルとの大きな違いは重量となり、Mサイズのフレーム重量は1,200gと大きくマージンを持った安心感のある数値となる。初心者にも扱いやすく、ファンライドからレースまで幅広く使用できる一台となっているはずだ。
今回のインプレッションではカンパニョーロ SUPER RECORD EPSとスコープ R3Cを組み合わせた15周年記念モデルと、シマノ 105にWH-RS171 DISCをアセンブルしたCS DISCのテストバイクを用意。それでは、2021モデルとしてラインアップに加わったトップエンドとエントリー、その真価に迫っていこう。
― インプレッション
「シンプルにレーシーなPRO、穏やかで扱いやすいCS。同じ形状でも明確な違いのある2台」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
まず、PROのほうはシンプルにレーシーな一台ですね。踏んだ力に対する反応が非常に速くて、レースを目標にしている人にとっては非の打ち所がないですね。特に登りは素晴らしい。加速性能に長けているので、短い距離のスプリントや登りでのアタックなども得意でしょう。高速域での巡航よりは、加減速で光るバイクです。
3Dヘッドチューブの影響もあるのか、とにかくフロント周りの剛性感がとんでもない。かなり硬めなので、ダンシングでもヨレるなんて感覚はないですし、ハンドリングもビシッと決まる。
軽量バイクだと、重心が上にあるようなヒラヒラしたようなモデルも多いですが、このバイクに関して言えばそういった不安定な印象はほぼ無いですね。挙動自体はクイックなのですが、自分の意図をしっかりと反映した動きをしてくれるので怖さはないですね。剛性の高さが良い方向に働いているのだと思います。
とにかく、入力に対する反応のタイムラグが少ないのだと思います。ペダリングであれば鋭い加速性能として、ハンドリングであればクイックな身のこなしとして出力されてきます。そういった意味では、路面からの衝撃もかなり伝えてきそうなのですが、乗り心地自体は意外に悪くなかった。おそらく、ミシュランのチューブレスタイヤが効いているのだと思いますが、パーツアセンブルを工夫すれば十分満足できるだけの快適性は確保されているということですね。
一方で、CSはかなりゆったりとした味付けに感じられました。正直なところ、ホイールがかなり足を引っ張っているように感じましたね。重いものを回している感覚がかなり強かったです。
フレームとして見た場合、剛性自体はある程度確保されていると感じました。打てば響くような反応性があったPROと比較すると、かなり穏やかですね。ハンドリングの方向性は同じなのですが、より落ち着いた性格です。
CSが一番気持ちよく走れる速度域としては30km/h以下といったイメージですね。硬すぎず足への反発が少ないので、一定ペースで走るツーリングなどにはちょうど良さそうです。乗り心地のいいチューブレスタイヤや軽いホイールへ交換すれば、軽快感も出てくると思います。
PROとジオメトリーも同一で、小さなサイズにありがちなハンドリングの癖も無いので、フレームとしてのポテンシャルは高いと思います。特にフォーク剛性がしっかりしているので、曲がる、止まるといった基本的な動作に対して不安を感じることが無いのはエントリーモデルとして非常に重要なことだと思います。
アルゴン18は玄人好みのブランドだと思っていましたが、思っていたよりもレーシーな方向に尖っていますね。レーシングバイクを考えている人には、ぜひ選択肢に入れてみてほしいブランドです。
「PROとCS、どちらも全方向に隙の無いオールラウンドレーサー」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
PROとCSの両方に共通する性格として、全方向に隙が無い感じの性能ですね。オーソドックスなフレームデザイン通り、古き良き正統派オールラウンドレーサーとして、王道を行くような性格です。一芸に特化しているわけでなく、あらゆるシーンでしっかりライダーを支えてくれます。PROもCSも目指す方向性は似ているな、と感じましたね。
PROのほうは完全なレーシングバイクで、軽くて硬くて良く走る。登りでも軽さを活かしてダンシングで踏んでいきたくなるし、加速感が素晴らしい。選手がこれを渡されたら絶対喜ぶと思います。
とにかく加速の良さを生かして、登りでアタックを掛けていくような走り方にはピッタリでしょうね。例えば群馬CSCとか修善寺ですとか、起伏の激しいコースを得意とする人には鬼に金棒といったところでしょう。登りがキーとなるレースが主戦場でしょうね。
一方でCSは、やっぱりPROと比較すると重さは否めないですね。でも、今回のテストバイクではかなりホイールが悪さをしている感はありました。フレームの性能を純粋に評価するなら、かなり良い線には行っていると思いますよ。
登りでパワーを掛けてダンシングしてみても、フレームが力を逃してしまうようなことは無かったですし、全体的な剛性感はしっかりしています。どこかを撓らせるような癖のある設計ではなく、フレーム全体としてガッチリ骨太な踏み味ですね。
振動吸収性に関していえば、どちらのバイクもそこまで高いレベルではないですね。多少の突き上げは感じます。特にヘッド周りの硬さが目立つので、ハンドル荷重になると辛いかもしれません。ただ、それはフレーム全体の剛性感を担保している部分でもあります。
しっかりとしたフロント周りはハンドリングにも良い影響を与えていると思います。PROもCSも、ニュートラルなハンドリングでラインを守った走りが出来るので、レーススピードのコーナーリングでも安心して対応できるでしょう。
PROのほうが、既にハイレベルな脚があって、目標とするレースが思い浮かぶようなシリアスレーサーをターゲットとしているとすれば、CSはビギナーレーサーにこそピッタリな一台だと思います。
将来的にレースも出てみたいけど、まだ体が出来ていない。そういった入門レーサーにはかなりオススメできますね。3Dヘッドチューブのおかげで、ハンドル高さを調整しても剛性感の変化も少ないですし。フレームのポテンシャルは十分なので、完成車スペックからの伸びしろが大きいのも良いですよね。乗り手と自転車が一緒に成長していけるようなバイクだと思いますよ。
アルゴン18 GALLIUM PRO DISC 15th ANNIVERSARY EDITION
サイズ:XXS、XS、S、M
重量:フレーム820g、フォーク360g
付属品:シートポスト、3Dヘッドパーツ、DT SWISSスルーアクスル
価格:410,000円(税抜、フレームセット)
アルゴン18 GALLIUM CS DISC
サイズ:XXS、XS、S、M
重量:フレーム1,200g、フォーク490g
コンポーネント:シマノ105
カラー:SILVER RABBIT BLACK GLOSS、VIBRANT BLUE METALLIC GLOSS
価格:318,000円(税抜、完成車)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
埼玉県内に3店舗を構えるスポーツバイクファクトリースズキの代表を務める。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考える。
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ
CWレコメンドショップページ
成毛千尋(アルディナサイクラリー)
東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
ウェア協力:アソス
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
カナダはモントリオールを拠点とするバイクブランド、アルゴン18。オリンピックに出場した経験を持つ元プロサイクリストのジェルベー・リューが興したブランドだ。その出自からも想像できるように、多くの実績を残してきたレーシングブランドでもある。
ブランドコンセプトに掲げるのは"Optimal Balance(最適化されたバランス)"。特にトラック競技の分野においては、非常に大きな存在感を放つブランドであり、各国のトラックナショナルチームやトップアスリートたちとともにコンマ1秒を削るためのレーシングバイクを開発してきた。
そんなアルゴン18だが、ここ数年ではロードレースの世界においてもプレゼンスを高めてきた。2015年にはプロコンチネンタルチームのボーラ・アルゴン18と共にツール・ド・フランスへ初出場。2017年からは3シーズンに渡りワールドチームであるアスタナの走りを支えてきた実績を持つ。
常にレースの世界に身を置き続けてきたアルゴン18のロードバイクラインアップにおいて、軽量オールラウンダーの座を担い続けてきたのが"GALLIUM"シリーズだ。デビュー当時から幾度かのモデルチェンジを挟みつつ、ついに15周年の節目を迎えることとなったシリーズを記念して用意されるのが、今回のインプレッションバイクの一つである"GALLIUM PRO DISC 15th ANNIVERSARY EDITION"だ。
ベースとなったのは、シリーズのトップモデルであるGALLIUM PRO DISC。昨年までアスタナがメインバイクとしていた生粋のレースマシンであり、奇をてらわないシンプルなチュービングから来る素直なライディングフィール、険しい山岳を軽々とこなす登坂性能、スプリンターの爆発力を受け止める高い剛性を兼ね備え、ピュアに走りを求めるレーサーを中心に高い評価を受けてきた1台だ。
15周年記念モデルでは、カーボンレイアップに改良を加えており、通常モデルよりも軽量に仕上げられている。フレームと同時にフロントフォークもシェイプアップされ、フレームセットとして42g(約10%)の軽量化に成功。更にレーシング性能に磨きを掛けたスペシャルモデルとなっている。
グラフィックもまた15周年に相応しいもの。現在、アルゴン18がメインカラーに採用しているシルバーと、初代GALLIUMが採用していたブラックの2色をグラデーションとすることで、シリーズの歴史を表現。トップチューブには15周年モデルを表すレターが入るほか、BB上部にはGALLIUM誕生当時のブランドロゴが、シートステーには創業者ジェルベー・リュー氏のサインがあしらわれる特別なデザインが与えられた。
アルゴン18のコアテクノロジーである、可変ヘッドチューブ機構「3Dヘッドチューブ」ももちろん搭載。アップライトなポジションでもアッパーベアリング位置を高くすることで、ヘッドチューブ剛性の低下を防ぎ、理想的なライディングフィールを維持するシステムだ。
リアディレイラーのダイレクトマウントにも対応しているのも細かいながらユニークなポイント。また、タイヤクリアランスは最大30mmまで確保されており、コースに合わせてタイヤを交換することで様々なシチュエーションに対応するキャパシティーも備えている。
そしてもう一台、2021モデルとしてGALLIUMシリーズに新たに加わったのが"GALLIUM CS DISC"。ハイエンドモデルであるPROと同じモールドを使用しつつ、カーボングレードを変更することでリーズナブルな価格を実現したエントリーモデルとなっている。
エントリーモデルに位置付けられてはいるものの、そこに詰め込まれたテクノロジーはトップレースを経験した上位モデルと何一つ変わらない。レーシングバイクのDNAを受け継ぐGALLIUM CSには"3Dヘッドチューブ"をはじめ、アルゴン18の誇る技術が凝縮されている。
GALLIUM CSと上位モデルとの大きな違いは重量となり、Mサイズのフレーム重量は1,200gと大きくマージンを持った安心感のある数値となる。初心者にも扱いやすく、ファンライドからレースまで幅広く使用できる一台となっているはずだ。
今回のインプレッションではカンパニョーロ SUPER RECORD EPSとスコープ R3Cを組み合わせた15周年記念モデルと、シマノ 105にWH-RS171 DISCをアセンブルしたCS DISCのテストバイクを用意。それでは、2021モデルとしてラインアップに加わったトップエンドとエントリー、その真価に迫っていこう。
― インプレッション
「シンプルにレーシーなPRO、穏やかで扱いやすいCS。同じ形状でも明確な違いのある2台」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
まず、PROのほうはシンプルにレーシーな一台ですね。踏んだ力に対する反応が非常に速くて、レースを目標にしている人にとっては非の打ち所がないですね。特に登りは素晴らしい。加速性能に長けているので、短い距離のスプリントや登りでのアタックなども得意でしょう。高速域での巡航よりは、加減速で光るバイクです。
3Dヘッドチューブの影響もあるのか、とにかくフロント周りの剛性感がとんでもない。かなり硬めなので、ダンシングでもヨレるなんて感覚はないですし、ハンドリングもビシッと決まる。
軽量バイクだと、重心が上にあるようなヒラヒラしたようなモデルも多いですが、このバイクに関して言えばそういった不安定な印象はほぼ無いですね。挙動自体はクイックなのですが、自分の意図をしっかりと反映した動きをしてくれるので怖さはないですね。剛性の高さが良い方向に働いているのだと思います。
とにかく、入力に対する反応のタイムラグが少ないのだと思います。ペダリングであれば鋭い加速性能として、ハンドリングであればクイックな身のこなしとして出力されてきます。そういった意味では、路面からの衝撃もかなり伝えてきそうなのですが、乗り心地自体は意外に悪くなかった。おそらく、ミシュランのチューブレスタイヤが効いているのだと思いますが、パーツアセンブルを工夫すれば十分満足できるだけの快適性は確保されているということですね。
一方で、CSはかなりゆったりとした味付けに感じられました。正直なところ、ホイールがかなり足を引っ張っているように感じましたね。重いものを回している感覚がかなり強かったです。
フレームとして見た場合、剛性自体はある程度確保されていると感じました。打てば響くような反応性があったPROと比較すると、かなり穏やかですね。ハンドリングの方向性は同じなのですが、より落ち着いた性格です。
CSが一番気持ちよく走れる速度域としては30km/h以下といったイメージですね。硬すぎず足への反発が少ないので、一定ペースで走るツーリングなどにはちょうど良さそうです。乗り心地のいいチューブレスタイヤや軽いホイールへ交換すれば、軽快感も出てくると思います。
PROとジオメトリーも同一で、小さなサイズにありがちなハンドリングの癖も無いので、フレームとしてのポテンシャルは高いと思います。特にフォーク剛性がしっかりしているので、曲がる、止まるといった基本的な動作に対して不安を感じることが無いのはエントリーモデルとして非常に重要なことだと思います。
アルゴン18は玄人好みのブランドだと思っていましたが、思っていたよりもレーシーな方向に尖っていますね。レーシングバイクを考えている人には、ぜひ選択肢に入れてみてほしいブランドです。
「PROとCS、どちらも全方向に隙の無いオールラウンドレーサー」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ)
PROとCSの両方に共通する性格として、全方向に隙が無い感じの性能ですね。オーソドックスなフレームデザイン通り、古き良き正統派オールラウンドレーサーとして、王道を行くような性格です。一芸に特化しているわけでなく、あらゆるシーンでしっかりライダーを支えてくれます。PROもCSも目指す方向性は似ているな、と感じましたね。
PROのほうは完全なレーシングバイクで、軽くて硬くて良く走る。登りでも軽さを活かしてダンシングで踏んでいきたくなるし、加速感が素晴らしい。選手がこれを渡されたら絶対喜ぶと思います。
とにかく加速の良さを生かして、登りでアタックを掛けていくような走り方にはピッタリでしょうね。例えば群馬CSCとか修善寺ですとか、起伏の激しいコースを得意とする人には鬼に金棒といったところでしょう。登りがキーとなるレースが主戦場でしょうね。
一方でCSは、やっぱりPROと比較すると重さは否めないですね。でも、今回のテストバイクではかなりホイールが悪さをしている感はありました。フレームの性能を純粋に評価するなら、かなり良い線には行っていると思いますよ。
登りでパワーを掛けてダンシングしてみても、フレームが力を逃してしまうようなことは無かったですし、全体的な剛性感はしっかりしています。どこかを撓らせるような癖のある設計ではなく、フレーム全体としてガッチリ骨太な踏み味ですね。
振動吸収性に関していえば、どちらのバイクもそこまで高いレベルではないですね。多少の突き上げは感じます。特にヘッド周りの硬さが目立つので、ハンドル荷重になると辛いかもしれません。ただ、それはフレーム全体の剛性感を担保している部分でもあります。
しっかりとしたフロント周りはハンドリングにも良い影響を与えていると思います。PROもCSも、ニュートラルなハンドリングでラインを守った走りが出来るので、レーススピードのコーナーリングでも安心して対応できるでしょう。
PROのほうが、既にハイレベルな脚があって、目標とするレースが思い浮かぶようなシリアスレーサーをターゲットとしているとすれば、CSはビギナーレーサーにこそピッタリな一台だと思います。
将来的にレースも出てみたいけど、まだ体が出来ていない。そういった入門レーサーにはかなりオススメできますね。3Dヘッドチューブのおかげで、ハンドル高さを調整しても剛性感の変化も少ないですし。フレームのポテンシャルは十分なので、完成車スペックからの伸びしろが大きいのも良いですよね。乗り手と自転車が一緒に成長していけるようなバイクだと思いますよ。
アルゴン18 GALLIUM PRO DISC 15th ANNIVERSARY EDITION
サイズ:XXS、XS、S、M
重量:フレーム820g、フォーク360g
付属品:シートポスト、3Dヘッドパーツ、DT SWISSスルーアクスル
価格:410,000円(税抜、フレームセット)
アルゴン18 GALLIUM CS DISC
サイズ:XXS、XS、S、M
重量:フレーム1,200g、フォーク490g
コンポーネント:シマノ105
カラー:SILVER RABBIT BLACK GLOSS、VIBRANT BLUE METALLIC GLOSS
価格:318,000円(税抜、完成車)
インプレッションライダーのプロフィール
鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
埼玉県内に3店舗を構えるスポーツバイクファクトリースズキの代表を務める。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考える。
スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ
CWレコメンドショップページ
成毛千尋(アルディナサイクラリー)
東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。
アルディナサイクラリー
ウェア協力:アソス
text:Naoki.Yasuoka
photo:Makoto.AYANO
リンク
Amazon.co.jp
This item is no longer valid on Amazon.