2020/02/04(火) - 07:11
ツアー・ダウンアンダーをアデレードで現地観戦したスポーツライターの池野茜さんが観戦術を公開。電車やバス、徒歩でレースを観戦する方法を研究してレクチャーします。これを参考にすれば来年はあなたも現地観戦にチャレンジできる?
スタート直前のマクラーレンヴェールにて
海外でロードレースを観戦する場合、車を利用するのが一般的なようです。しかし観戦プランを立てているときに「ひとつの宿泊先を起点に観戦できるツアー・ダウンアンダーなら公共交通機関を利用したレース観戦も可能なのでは?」と思いつきました。決して不可能ではなく、むしろ十分に楽しめる方法かもしれません。なかでも長年同じコースレイアウトを採用している第6ステージなら、今後現地観戦をする方の観戦方法の参考になるかと思い、電車とバスで第6ステージを観戦。その模様を詳細にレポートします。
ウィメンズ・ツアー・ダウンアンダーの開幕地でドイツ人街のハーンドルフはバスで80分ほど
公共交通機関を使ってレースを4回観るプランのはずが...
最初に前日就寝前に計画した観戦予定プランを共有しておきます。マクラーレンヴェールでスタートする選手を見届けてすぐにスナッパーポイントへ行き、3周するうちの2周目(スプリント地点1周目)を観戦。その後ウィランガヒルに向かって行けるところまで行く、というもの。ウィランガヒルは1周目から観戦し、計4回プロトンを見られる計算でした。オーガナイザー発表の予想レース通過時刻から30分以上の余裕を持たせたスケジュールです。
スナッパーポイントの北にあるポートウィランガビーチはとても綺麗で楽しみにしていたのだが...
特に楽しみにしていたのはスナッパーポイントでの観戦。じつはスナッパーポイントの北にあるポートウィランガというビーチに行ったことがあり、非常にきれいでアデレード周辺で一番のお気に入りスポットになっていました。ポートウィランガもコースに組み込まれているのでかなり迷いましたが、今回はスプリント地点になっているスナッパーポイントで観戦することに。
アデレード中心部からマクラーレンヴェールへ
まずはアデレード中心部から、マクラーレンヴェールに程近いところにあるシーフォード駅へ電車で移動します。街の電車のハブ駅であるアデレード駅からシーフォード駅までは乗換無しで、所要時間はおよそ50分。シーフォード駅は終点なので、乗り過ごしの心配は不要です。
アデレード中心部とシーフォード駅を往復する電車
自転車はそのまま持ち込みOKです
アデレードではそのまま自転車を電車に持ち込めるので、駅の構内で輪行袋にロードバイクを入れる必要はありません。駅のホームにも既にサイクリストが何人かいて、みんなで第6ステージを観に行くと思うとわくわくしてきます。ちなみに車窓から見える海がきれいなので、電車内では右側の座席がおすすめです!
シーフォード駅で下車するサイクリストたち
シーフォード駅に到着すると、電車から合わせて10人くらいのサイクリストが出てきました。各観戦ポイントは、ロードバイクでも十分行ける距離です。所要時間はシーフォード駅からマクラーレンヴェールまで約30分、スナッパーポイントまで約45分、ウィランガヒルの麓まで約1時間。
このバスに乗ってマクラーレンヴェールへ向かう
前に座っていた夫婦もマクラーレンヴェールで下車
バスに揺られて約30分、マクラーレンヴェールへ到着しました。毎年大会のホストタウンになっていることもあり、前日までのスタート地点に比べるとデコレーションが華やか。見ていて楽しくなってきます。
出走サインに現れる選手を待つ観客たち
まだ出走サインはない
到着時点で9時を過ぎたくらいで、選手はまだ来ていません。しかし、既にサイクリストや地元の人がいて、コース脇のカフェの駐輪場には多くの自転車が停まっていました。出走サイン台が見える場所には、すでに場所取りをしているファンがいます。レースが始まる10時40分まで時間に余裕があるので、周辺をぶらぶらすることに。しかし、のちにこの判断がトラブルの引き金になるとは思ってもいませんでした…。
スタート2時間前から多くのサイクリストで賑わうカフェ
マクラーレンヴェールの消防署
貯金箱(写真右下)にわずかながら寄付しました
スタート地点の近くにあるマクラーレンヴェールの消防署前では、消防士たちがバーベキューを販売していました。ベーコンエッグやカプチーノなどが振る舞われ、多くの人で賑わっていました。12月中旬のアデレードでは最高気温40℃超えの日が続き、今大会のコースを含む地域でブッシュファイヤー(山火事)が発生した日の最高気温は46℃。そのなかで消火活動にあたった消防士たちはレース前の選手たちを訪問し、この日はアスタナの選手やスタッフと記念撮影をしていました。
アスタナの選手を訪問し、談笑する消防士たち
トラブル発生!当初の観戦プランからどんどん外れていきます
マクラーレンヴェールで選手のスタートを見届け、スナッパーポイントへ移動しようとしたところでトラブルが発生。臨時のバス停が見つかりません。アデレード・メトロのウェブサイトを見てもわかりにくく、近くの人に尋ねてもわからないと言われ、バス停の位置を把握できずにいました。
他のステージでは、臨時バス停の案内がありましたが...
他のステージにあった交通規制エリア内のバス停では『ここに行けば臨時のバス停があります』という掲示を見かけましたが、この日見かけたのは『夜7時までバスは停車しません』というものばかり。他のステージと同じように案内が出ているだろうと過信し、マクラーレンヴェール到着後の確認を怠っていました。ぶらぶらしてないで、まずバス停の位置を確認するべきだった…と後悔してやみません。
2周目に突入する逃げ集団
そうこうしているうちに、1周目を終えた選手たちがマクラーレンヴェールに戻ってくる時間になりました。「一回余計に見られてラッキー」と、いったん気を持ち直し、予定を変更して2周目に入る選手たちを応援します。メイン集団が1周目を通過した時刻を確認すると、オーガナイザー発表の予想通過時刻とほぼ同じ11時41分(カメラの撮影時間より)。逃げ集団はメイン集団より約4分前(同上)を走っています。
0km地点を通過する逃げ集団
メイン集団の後方でボトルを受け取るジョナサン・ディッベン(イギリス、ロット・スーダル)
一番早いバスでスナッパーポイントに向かっても、予定していた2周目に間に合うか微妙な時間帯。海辺での観戦には思い入れがあり、3周目の観戦に変更する選択肢もありましたが、せっかく現地にいるのに、最大のハイライトであるウィランガヒルを諦める選択肢はありません。泣く泣くスナッパーポイントを諦め、ウィランガヒルに直行することに。
0km地点とオーストラリア国旗 見つからないバス停、そして奥の手を発動
ウィランガヒルへ向かうバスが出ていそうな場所を探しますが、なかなか見つかりません。もう一度アデレード・メトロのウェブサイトを見たところ、交通規制エリアの外ならバスが出ているので、わずかな希望に賭けて交通規制エリア外を目指して歩くことにしました。
しかし、どれだけ歩いても交通規制エリアの外に出られません。遠くにバスが見えたのを追いかけ、ウィランガ行きのバスが普段発着するバス停で待っても、目当てのバスはわたしがいるバス停をスルー。スルーされたときはさすがにショックで、「もうウィランガヒルにも行けない、この日の観戦は終わった」という絶望感が自分のなかで漂い始めました。「マクラーレンヴェールに着いてから時間に余裕があったのに、なんでバス停を確認しなかったんだろう」と、再び数時間前の自分を責めます。
このペイントが施されたお店の前でUberを利用 非常に焦っていたのでレース状況を追う余裕はありませんでしたが、バス停でうなだれているところに3周目に入った選手たちが来たので、バス停前で観戦。メイン集団の通過を見届けたあと、ウィランガヒルへ行く方法をもう一度考えます。このままではバスが出ているバス停に着けないだろうし、着いたところでレースに間に合う保証はありません。
「公共交通機関を使う」というコンセプトに反するので葛藤はありましたが、奥の手で配車アプリUberを使うことに。ウィランガヒルの麓を降車位置に指定し、5分ほどで到着した車に乗ります。ツール・ド・フランスに比べてツアー・ダウンアンダーは交通規制が厳しくなく、あまり近くに選手がいなければ、一般サイクリストもコース上を走れます。コース上を車で走り、関係車両以外が近づけるギリギリのところで降ろしてもらいました。
コース上を走行する一般サイクリストたち
ママチャリと人形でミッチェルトン・スコットを応援
ミッチェルトン・スコットの応援コーナー
降ろしてもらったメインロードという道は、選手が5回通過するのでとてもお得な観戦ポイントでした。バーベキューを楽しみながらワイン片手に選手たちの到着を待つ観客もいます。「Uberを使ってスナッパーポイントに行けばよかったのでは…?」という考えが頭をよぎりましたが、過ぎたことなので気持ちを切り替え、ウィランガヒルへ向かいました。
横に広がって走るメイン集団
補給地点の入口手前を歩いていたとき、1周目のウィランガヒルに向かう選手たちがやってきます。メインロードは直線が5km以上にわたって続く道なので、逃げグループの後方にも集団が小さく見えました。麓の前で選手に遭遇してしまったので、フィニッシュ地点までは間に合わない可能性が高いものの、行けるところまで行くべく、メイン集団の通過を待って急いで麓へ向かいます。
チームカーからボトルを2本受け取るマッズ・ピーダスンとクーン・デコルト(トレック・セガフレード)
ウィランガヒル麓のオーロラビジョン
いよいよウィランガヒルへ
補給地点に入って少し歩くと、ついにウィランガヒルの麓に到着。麓には巨大スクリーンがあり、多くの観客で賑わっていました。毎年テスト直前期に開催されていて、学生時代は一度も行けなかったツアー・ダウンアンダー。その象徴的存在のウィランガヒルに自分がいると思うと、何とも言えない感動を覚えます。しばらく麓の巨大スクリーンでレースを見ていましたが、選手が来るのは次が最後なのを思い出し、急いでフィニッシュ地点へ向かいました。
オーストラリアデーの沿道に並ぶ多くの国旗
ウィランガヒルの麓にある店は、すでに多くの人で賑わっています。この日がオーストラリアデー(祝日)だからか、今まで以上にオーストラリアの国旗が沿道で存在感を放っていました。ウィランガヒルを登る途中では、スマホでレースをチェックしている人が多く、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)の状況を気にする声があちこちから聞こえます。
植え込みにもたくさんのオーストラリア国旗が
勾配7%の坂と、KOMとQOMの登坂タイムが記載されている
「キング・オブ・ウィランガ」のクラウン
途中で選手が来たため、残念ながらフィニッシュ地点まで約2.3kmを残して登坂終了。ヨナス・ルッチ(ドイツ、EFプロサイクリング)が単独で先頭にいるものの、このあとステージ勝利を飾ることになるマシュー・ホームズ(イギリス、ロット・スーダル)らの集団がすぐそばに。メイン集団もホームズの通過から40秒ほどで姿を見せます。
ヨナス・ルッチ(ドイツ、EFプロサイクリング)が単独で先頭通過でウィランガヒルへ向かう
集団前方のリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)と、後方のダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)
アレックス・ドーセット(イギリス、イスラエル・スタートアップネイション)とシェーン・アーチボルド(ニュージーランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)
最終グループの選手たち。マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)もゆっくり上がってきた
今年は例年に比べて涼しかったものの、暑いことには変わりなく、徒歩での登坂も楽ではありません。徒歩ですらキツい坂を軽々と駆けていく選手たちのすごさに改めて感動しました。しばらくその場で選手を待ち、今から登っても表彰式には間に合わないので、きりがいいところで下山開始。スマホで結果を確認しながら歩くと、これから山頂へ向かう選手とすれ違うので、足を止めて声援を送ります。
ウィランガヒルのダウンヒルは気持ちよさそうだ
ウィランガヒルの麓に向かうと、あとから下山を始めたサイクリストたちが一斉に下ってきました。選手と同じコースを登ったあとのダウンヒルは気持ちいいだろうな…と羨みつつ、ウィランガヒルの麓に到着。シーフォード駅へ向かうバスを探すべく、Uberで降ろしてもらったところまで2.5kmほど歩くことに。
何百人ものサイクリストに追い抜かれながら目的地に着くと、ちょうどバス停を発見しました。しかも交通規制の張り紙がなく、逆方面行きのバスが着たので、ここならバスに乗れると確信。来たバスに乗ってシーフォード駅へ戻り、帰路につきました。
下山して帰路につく選手たち
左側に帰り支度を始める観客。写真奥がウィランガヒル
公共交通機関で観戦した感想
公共交通機関(とUber)で第6ステージをまわって、改めてレンタカーのメリットを実感しました(笑)。Uberでは4.6kmを6分ほどで走ったことからも、公共交通機関のダイヤに捉われずに好きなときに好きな場所で観戦できるのは、レンタカー観戦の大きなメリットです。
とはいえ、輪行していて自転車で観戦したい方には、電車の利用もおすすめ。レンタカーはロードバイクを積める車種が限られるし、借り物である以上自車と同様に扱えないので、ロードバイクを載せる場合は車内に油汚れや傷がつかないか気を遣います。
ここからバスに乗ってシーフォード駅へ戻る。広大な風景にひるんでしまいそうです
ほかにも、公共交通機関を利用してアデレードで暮らす人たちの日常を感じたい方や、ひとり観戦でレンタカー代を節約したい方にもいいかもしれません。複数人で一緒に観戦すればレンタカー代を割り勘できますが、ひとりで観戦するとどうしても割高になってしまいます。
アデレードの公共交通機関は2時間定額なので、乗車距離が長いほど割安になります。電車代とバス代は片道約40kmで2.07豪ドル、Uberを含めたこの日の交通費は15.19ドル(当日のレートで約1,124円)。レンタカーに比べると非常にお得です。
自業自得のトラブルはあったものの、予定より1回多い5回選手を応援できたので、満足度は高め。途中でかなり焦りましたが、その分今年のツアー・ダウンアンダー観戦で一番濃い一日を過ごせました。いつかウィランガヒルのフィニッシュ地点にリベンジしたいと思います。
photo&text:Akane.Ikeno in Adelaide, Australia
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海外でロードレースを観戦する場合、車を利用するのが一般的なようです。しかし観戦プランを立てているときに「ひとつの宿泊先を起点に観戦できるツアー・ダウンアンダーなら公共交通機関を利用したレース観戦も可能なのでは?」と思いつきました。決して不可能ではなく、むしろ十分に楽しめる方法かもしれません。なかでも長年同じコースレイアウトを採用している第6ステージなら、今後現地観戦をする方の観戦方法の参考になるかと思い、電車とバスで第6ステージを観戦。その模様を詳細にレポートします。
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公共交通機関を使ってレースを4回観るプランのはずが...
最初に前日就寝前に計画した観戦予定プランを共有しておきます。マクラーレンヴェールでスタートする選手を見届けてすぐにスナッパーポイントへ行き、3周するうちの2周目(スプリント地点1周目)を観戦。その後ウィランガヒルに向かって行けるところまで行く、というもの。ウィランガヒルは1周目から観戦し、計4回プロトンを見られる計算でした。オーガナイザー発表の予想レース通過時刻から30分以上の余裕を持たせたスケジュールです。
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特に楽しみにしていたのはスナッパーポイントでの観戦。じつはスナッパーポイントの北にあるポートウィランガというビーチに行ったことがあり、非常にきれいでアデレード周辺で一番のお気に入りスポットになっていました。ポートウィランガもコースに組み込まれているのでかなり迷いましたが、今回はスプリント地点になっているスナッパーポイントで観戦することに。
アデレード中心部からマクラーレンヴェールへ
まずはアデレード中心部から、マクラーレンヴェールに程近いところにあるシーフォード駅へ電車で移動します。街の電車のハブ駅であるアデレード駅からシーフォード駅までは乗換無しで、所要時間はおよそ50分。シーフォード駅は終点なので、乗り過ごしの心配は不要です。
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アデレードではそのまま自転車を電車に持ち込めるので、駅の構内で輪行袋にロードバイクを入れる必要はありません。駅のホームにも既にサイクリストが何人かいて、みんなで第6ステージを観に行くと思うとわくわくしてきます。ちなみに車窓から見える海がきれいなので、電車内では右側の座席がおすすめです!
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シーフォード駅に到着すると、電車から合わせて10人くらいのサイクリストが出てきました。各観戦ポイントは、ロードバイクでも十分行ける距離です。所要時間はシーフォード駅からマクラーレンヴェールまで約30分、スナッパーポイントまで約45分、ウィランガヒルの麓まで約1時間。
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スタート地点の近くにあるマクラーレンヴェールの消防署前では、消防士たちがバーベキューを販売していました。ベーコンエッグやカプチーノなどが振る舞われ、多くの人で賑わっていました。12月中旬のアデレードでは最高気温40℃超えの日が続き、今大会のコースを含む地域でブッシュファイヤー(山火事)が発生した日の最高気温は46℃。そのなかで消火活動にあたった消防士たちはレース前の選手たちを訪問し、この日はアスタナの選手やスタッフと記念撮影をしていました。
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トラブル発生!当初の観戦プランからどんどん外れていきます
マクラーレンヴェールで選手のスタートを見届け、スナッパーポイントへ移動しようとしたところでトラブルが発生。臨時のバス停が見つかりません。アデレード・メトロのウェブサイトを見てもわかりにくく、近くの人に尋ねてもわからないと言われ、バス停の位置を把握できずにいました。
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他のステージにあった交通規制エリア内のバス停では『ここに行けば臨時のバス停があります』という掲示を見かけましたが、この日見かけたのは『夜7時までバスは停車しません』というものばかり。他のステージと同じように案内が出ているだろうと過信し、マクラーレンヴェール到着後の確認を怠っていました。ぶらぶらしてないで、まずバス停の位置を確認するべきだった…と後悔してやみません。
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そうこうしているうちに、1周目を終えた選手たちがマクラーレンヴェールに戻ってくる時間になりました。「一回余計に見られてラッキー」と、いったん気を持ち直し、予定を変更して2周目に入る選手たちを応援します。メイン集団が1周目を通過した時刻を確認すると、オーガナイザー発表の予想通過時刻とほぼ同じ11時41分(カメラの撮影時間より)。逃げ集団はメイン集団より約4分前(同上)を走っています。
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一番早いバスでスナッパーポイントに向かっても、予定していた2周目に間に合うか微妙な時間帯。海辺での観戦には思い入れがあり、3周目の観戦に変更する選択肢もありましたが、せっかく現地にいるのに、最大のハイライトであるウィランガヒルを諦める選択肢はありません。泣く泣くスナッパーポイントを諦め、ウィランガヒルに直行することに。
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ウィランガヒルへ向かうバスが出ていそうな場所を探しますが、なかなか見つかりません。もう一度アデレード・メトロのウェブサイトを見たところ、交通規制エリアの外ならバスが出ているので、わずかな希望に賭けて交通規制エリア外を目指して歩くことにしました。
しかし、どれだけ歩いても交通規制エリアの外に出られません。遠くにバスが見えたのを追いかけ、ウィランガ行きのバスが普段発着するバス停で待っても、目当てのバスはわたしがいるバス停をスルー。スルーされたときはさすがにショックで、「もうウィランガヒルにも行けない、この日の観戦は終わった」という絶望感が自分のなかで漂い始めました。「マクラーレンヴェールに着いてから時間に余裕があったのに、なんでバス停を確認しなかったんだろう」と、再び数時間前の自分を責めます。
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「公共交通機関を使う」というコンセプトに反するので葛藤はありましたが、奥の手で配車アプリUberを使うことに。ウィランガヒルの麓を降車位置に指定し、5分ほどで到着した車に乗ります。ツール・ド・フランスに比べてツアー・ダウンアンダーは交通規制が厳しくなく、あまり近くに選手がいなければ、一般サイクリストもコース上を走れます。コース上を車で走り、関係車両以外が近づけるギリギリのところで降ろしてもらいました。
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降ろしてもらったメインロードという道は、選手が5回通過するのでとてもお得な観戦ポイントでした。バーベキューを楽しみながらワイン片手に選手たちの到着を待つ観客もいます。「Uberを使ってスナッパーポイントに行けばよかったのでは…?」という考えが頭をよぎりましたが、過ぎたことなので気持ちを切り替え、ウィランガヒルへ向かいました。
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補給地点の入口手前を歩いていたとき、1周目のウィランガヒルに向かう選手たちがやってきます。メインロードは直線が5km以上にわたって続く道なので、逃げグループの後方にも集団が小さく見えました。麓の前で選手に遭遇してしまったので、フィニッシュ地点までは間に合わない可能性が高いものの、行けるところまで行くべく、メイン集団の通過を待って急いで麓へ向かいます。
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いよいよウィランガヒルへ
補給地点に入って少し歩くと、ついにウィランガヒルの麓に到着。麓には巨大スクリーンがあり、多くの観客で賑わっていました。毎年テスト直前期に開催されていて、学生時代は一度も行けなかったツアー・ダウンアンダー。その象徴的存在のウィランガヒルに自分がいると思うと、何とも言えない感動を覚えます。しばらく麓の巨大スクリーンでレースを見ていましたが、選手が来るのは次が最後なのを思い出し、急いでフィニッシュ地点へ向かいました。
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ウィランガヒルの麓にある店は、すでに多くの人で賑わっています。この日がオーストラリアデー(祝日)だからか、今まで以上にオーストラリアの国旗が沿道で存在感を放っていました。ウィランガヒルを登る途中では、スマホでレースをチェックしている人が多く、リッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード)の状況を気にする声があちこちから聞こえます。
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途中で選手が来たため、残念ながらフィニッシュ地点まで約2.3kmを残して登坂終了。ヨナス・ルッチ(ドイツ、EFプロサイクリング)が単独で先頭にいるものの、このあとステージ勝利を飾ることになるマシュー・ホームズ(イギリス、ロット・スーダル)らの集団がすぐそばに。メイン集団もホームズの通過から40秒ほどで姿を見せます。




今年は例年に比べて涼しかったものの、暑いことには変わりなく、徒歩での登坂も楽ではありません。徒歩ですらキツい坂を軽々と駆けていく選手たちのすごさに改めて感動しました。しばらくその場で選手を待ち、今から登っても表彰式には間に合わないので、きりがいいところで下山開始。スマホで結果を確認しながら歩くと、これから山頂へ向かう選手とすれ違うので、足を止めて声援を送ります。

ウィランガヒルの麓に向かうと、あとから下山を始めたサイクリストたちが一斉に下ってきました。選手と同じコースを登ったあとのダウンヒルは気持ちいいだろうな…と羨みつつ、ウィランガヒルの麓に到着。シーフォード駅へ向かうバスを探すべく、Uberで降ろしてもらったところまで2.5kmほど歩くことに。
何百人ものサイクリストに追い抜かれながら目的地に着くと、ちょうどバス停を発見しました。しかも交通規制の張り紙がなく、逆方面行きのバスが着たので、ここならバスに乗れると確信。来たバスに乗ってシーフォード駅へ戻り、帰路につきました。


公共交通機関で観戦した感想
公共交通機関(とUber)で第6ステージをまわって、改めてレンタカーのメリットを実感しました(笑)。Uberでは4.6kmを6分ほどで走ったことからも、公共交通機関のダイヤに捉われずに好きなときに好きな場所で観戦できるのは、レンタカー観戦の大きなメリットです。
とはいえ、輪行していて自転車で観戦したい方には、電車の利用もおすすめ。レンタカーはロードバイクを積める車種が限られるし、借り物である以上自車と同様に扱えないので、ロードバイクを載せる場合は車内に油汚れや傷がつかないか気を遣います。

ほかにも、公共交通機関を利用してアデレードで暮らす人たちの日常を感じたい方や、ひとり観戦でレンタカー代を節約したい方にもいいかもしれません。複数人で一緒に観戦すればレンタカー代を割り勘できますが、ひとりで観戦するとどうしても割高になってしまいます。
アデレードの公共交通機関は2時間定額なので、乗車距離が長いほど割安になります。電車代とバス代は片道約40kmで2.07豪ドル、Uberを含めたこの日の交通費は15.19ドル(当日のレートで約1,124円)。レンタカーに比べると非常にお得です。
自業自得のトラブルはあったものの、予定より1回多い5回選手を応援できたので、満足度は高め。途中でかなり焦りましたが、その分今年のツアー・ダウンアンダー観戦で一番濃い一日を過ごせました。いつかウィランガヒルのフィニッシュ地点にリベンジしたいと思います。
photo&text:Akane.Ikeno in Adelaide, Australia
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