2020/01/19(日) - 22:58
雨に濡れたコースで落車が発生する中、カレブ・ユアン(ロット・スーダル)が圧倒的な加速を披露。過去に3勝しているユアンがツアー・ダウンアンダー初日のシュワルベクラシックを制した。落車を回避した新城幸也(バーレーン・マクラーレン)は62位で初戦を終えている。
歴代優勝者やナショナルチャンピオンが最前列に並ぶ photo:Kei Tsuji
世界チャンピオンのマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が登場 photo:Kei Tsuji
最前列で笑顔を見せるローハン・デニス(オーストラリア、チームイネオス) photo:Kei Tsuji
シーズン初戦の出走サインを終えた新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji
降り始めた雨を見ながらスタートを待つ新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji
ツアー・ダウンアンダー2020シュワルベクラシック photo:Santos Tour Down Under1月21日から開催されるUCIワールドツアーレースのツアー・ダウンアンダーに先立って、本戦と同じメンバーが走るダウンアンダー・クラシック。UCIレースではないものの、「最終調整」や「足慣らし」とは言えないほどの本格的なクリテリウムで、2020年はシュワルベが大会のタイトルスポンサーについている。
フィニッシュ地点は前日のチームプレゼンテーションの舞台となったヴィクトリア広場横のフリンダース通りで、同通りにはダウンアンダーのメインスポンサーであるサントス社の本社がある。選手たちは市街路の直線路と直角コーナーで構成された全長1.7kmの周回コースを30周。周回コースの全長は昨年までのライミルパーク周回コースと同じだが、直角コーナーが6箇所あるためよりスピードの強弱が多い。
年末にかけてオーストラリアを覆った熱波によってブッシュファイヤー(山火事)が多発し、南オーストラリア州も例外なく大きな被害が受けた。しかしツアー・ダウンアンダー開催が近づくにつれて「ヨーロッパからやってきた選手たちが長袖ジャージでトレーニングに出かける」ほどまで気温が低下。連日最高気温は20度ほどまでしか上がらず、しかもクリテリウム当日はほぼ1ヶ月ぶりとなる雨雲がアデレード近郊を包んだ。
ヴィクトリア広場前を通過する逃げグループ photo:Kei Tsuji
ハラーとともに前半は集団後方で走る新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji
メイン集団を牽引するアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
中間スプリントを2回獲得したニック・ホワイト(オーストラリア、UniSAオーストラリア) photo:Kei Tsuji
午後6時45分に始まった全長51kmのレースはマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ)らのアタックで動き出した。オーストラリア出身の母親をもつことからヘルメットにコアラのぬいぐるみを付けるボアーロの動きに反応したのは、ニック・ホワイト(オーストラリア、UniSAオーストラリア)とヨセフ・チェルニー(チェコ、CCCチーム)で、遅れてドメン・ノヴァク(スロベニア、バーレーン・マクラーレン)とステファン・デボッド(南アフリカ、NTTプロサイクリング)も合流。こうして形成された5名が5周ごとに4回設定された中間スプリントを争うことに。
2019年のU23オーストラリアチャンピオンで、10日前に開催されたオーストラリア選手権クリテリウムで3位に入っているホワイトが5周目と15周目の中間スプリントで先着。ボアーロが10周目の中間スプリントで500ユーロの賞金を手にしている。
合計6つのコーナーが連続する周回コースを走る photo:Kei Tsuji
後半にかけてポジションを上げる新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji
独走に持ち込んだヨセフ・チェルニー(チェコ、CCCチーム)が後方を振り返る photo:Kei Tsuji
今年もヘルメットにコアラをつけて走るマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji
ボーラ・ハンスグローエから移籍したサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
ポジションを上げるアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション) photo:Kei Tsuji
常に集団後方で安全に過ごしたリッチー・ポート(オーストラリア、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsuji
独走に持ち込んで最大30秒のリードを得たチェルニーが20周目の中間スプリントを獲得すると、その後チームイネオスやロット・スーダルが牽引するメイン集団によって逃げグループは吸収される。地元アデレード出身で、チームイネオスに移籍したタイムトライアル世界王者ローハン・デニス(オーストラリア)らが強力なペースを作る中、小雨によって徐々に濡れたコーナーで落車が発生した。
ブッシュファイヤーの被害地域にとっては恵みとなるが、シーズン初戦を迎えたばかりの選手たちにとっては厄介な雨。落車の餌食になったのはマックス・カンター(ドイツ、サンウェブ)とマルク・サロー(フランス、グルパマFDJ)の2人で、この落車の影響で先頭集団が60名ほどに絞られた状態で残り3周回へ。
チームイネオス、ボーラ・ハンスグローエ、コフィディス、ロット・スーダルがそれぞれエーススプリンターのために集団先頭で競り合い、最終的にEFプロサイクリングが主導権を握って最終周回へと突入していく。
5名を揃えて残り1kmを切ったEFプロサイクリングを先頭にコーナーが続くテクニカル区間を抜けて最終ストレートに入る。イェンス・クークレール(ベルギー、EFプロサイクリング)のスリップストリームの中でタイミングを伺う元U23世界王者クリストファー・ハルヴォルセン(ノルウェー)の後ろから、残り250mで突如ユアンが加速した。
ロジャー・クルーゲ(ドイツ)との連携でポジションをキープしたユアンがハルヴォルセンを一気に抜き去り、別ラインから仕掛けたシモーネ・コンソンニとエリア・ヴィヴィアーニのコフィディス所属イタリアコンビを置き去りにする。フィニッシュライン直後にコーナーがあるため手をあげることができなかったが、ユアンの圧勝だった。
逃げグループの後ろにメイン集団が迫る photo:Kei Tsuji
地元アデレード出身のローハン・デニス(オーストラリア、チームイネオス)がメイン集団を牽引 photo:Kei Tsuji
落車したマックス・カンター(ドイツ、サンウェブ) photo:Kei Tsuji
クルーゲにリードアウトされて集団前方に上がるカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
チームイネオスやEFプロサイクリングを先頭に最終周回へ photo:Kei Tsuji
残り200mから発進したカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
完全に抜け出した状態でフィニッシュするカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
4度目のクラシック制覇を果たしたカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) photo:Kei Tsuji
「例年であれば何レースか走ってからダウンアンダーに出場するけど、今年はこれがシーズン初戦だった。(ステージ3勝を飾った)ツール・ド・フランスの後に5レースしか走ってなかったから、今日のレースに向けてナーバスになっていたんだ」と、身長165cmの弾丸スプリンターは語る。
2016年、2017年、2019年に続く4度目のクラシック勝利を飾ったユアン。「でもレースが始まってしまうととても調子が良くて、前半は集団最後尾でリラックスしながら走り、必要に合わせて前に上がった。5ヶ月レースから離れていたので自分の脚の状態がわからなかったけど、この勝利で調子が良いことを確認できたよ」。火曜日から始まるUCIワールドツアー本戦でももちろんそのスピードが発揮されるはずだ。
1時間強のレースの平均スピードは47.454km/h。18位に沈んだアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)のSTRAVAログを見ると、残り10周を切ってから平均スピードが常に50km/hを超えており、最終周回の平均スピードは56km/hに達している。
表彰台に登ったユアン、ヴィヴィアーニ、コンソンニに続いて、21歳のジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)、23歳ハルヴォルセン、21歳アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、サンウェブ)と若手が続く結果に。この日が24歳の誕生日のサム・ウェルスフォード(オーストラリア、UniSAオーストラリア)がUCIワールドチームライダーに混ざって8位に食い込んだ一方で、7位に入ったリードアウト役のミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)から逸れたサム・ベネット(アイルランド)は16位に終わっている。
「すぐ目の前で落車が起こったんです」と肝を冷やした様子の新城幸也(バーレーン・マクラーレン)は62位でフィニッシュ。残り3.5周の落車発生まではマルコ・ハラー(オーストリア)を引き上げる役目を担い、安全にシーズン初戦を終えている。
安全に初日のクリテリウムを終えた新城幸也(バーレーン・マクラーレン) photo:Kei Tsuji
2位エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)、1位カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)、3位シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス) photo:Kei Tsuji
中間スプリント賞を獲得したマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji
中間スプリント賞を獲得したニック・ホワイト(オーストラリア、UniSAオーストラリア) photo:Kei Tsuji
中間スプリント賞を獲得したヨセフ・チェルニー(チェコ、CCCチーム) photo:Kei Tsuji
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フィニッシュ地点は前日のチームプレゼンテーションの舞台となったヴィクトリア広場横のフリンダース通りで、同通りにはダウンアンダーのメインスポンサーであるサントス社の本社がある。選手たちは市街路の直線路と直角コーナーで構成された全長1.7kmの周回コースを30周。周回コースの全長は昨年までのライミルパーク周回コースと同じだが、直角コーナーが6箇所あるためよりスピードの強弱が多い。
年末にかけてオーストラリアを覆った熱波によってブッシュファイヤー(山火事)が多発し、南オーストラリア州も例外なく大きな被害が受けた。しかしツアー・ダウンアンダー開催が近づくにつれて「ヨーロッパからやってきた選手たちが長袖ジャージでトレーニングに出かける」ほどまで気温が低下。連日最高気温は20度ほどまでしか上がらず、しかもクリテリウム当日はほぼ1ヶ月ぶりとなる雨雲がアデレード近郊を包んだ。
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午後6時45分に始まった全長51kmのレースはマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ)らのアタックで動き出した。オーストラリア出身の母親をもつことからヘルメットにコアラのぬいぐるみを付けるボアーロの動きに反応したのは、ニック・ホワイト(オーストラリア、UniSAオーストラリア)とヨセフ・チェルニー(チェコ、CCCチーム)で、遅れてドメン・ノヴァク(スロベニア、バーレーン・マクラーレン)とステファン・デボッド(南アフリカ、NTTプロサイクリング)も合流。こうして形成された5名が5周ごとに4回設定された中間スプリントを争うことに。
2019年のU23オーストラリアチャンピオンで、10日前に開催されたオーストラリア選手権クリテリウムで3位に入っているホワイトが5周目と15周目の中間スプリントで先着。ボアーロが10周目の中間スプリントで500ユーロの賞金を手にしている。
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独走に持ち込んで最大30秒のリードを得たチェルニーが20周目の中間スプリントを獲得すると、その後チームイネオスやロット・スーダルが牽引するメイン集団によって逃げグループは吸収される。地元アデレード出身で、チームイネオスに移籍したタイムトライアル世界王者ローハン・デニス(オーストラリア)らが強力なペースを作る中、小雨によって徐々に濡れたコーナーで落車が発生した。
ブッシュファイヤーの被害地域にとっては恵みとなるが、シーズン初戦を迎えたばかりの選手たちにとっては厄介な雨。落車の餌食になったのはマックス・カンター(ドイツ、サンウェブ)とマルク・サロー(フランス、グルパマFDJ)の2人で、この落車の影響で先頭集団が60名ほどに絞られた状態で残り3周回へ。
チームイネオス、ボーラ・ハンスグローエ、コフィディス、ロット・スーダルがそれぞれエーススプリンターのために集団先頭で競り合い、最終的にEFプロサイクリングが主導権を握って最終周回へと突入していく。
5名を揃えて残り1kmを切ったEFプロサイクリングを先頭にコーナーが続くテクニカル区間を抜けて最終ストレートに入る。イェンス・クークレール(ベルギー、EFプロサイクリング)のスリップストリームの中でタイミングを伺う元U23世界王者クリストファー・ハルヴォルセン(ノルウェー)の後ろから、残り250mで突如ユアンが加速した。
ロジャー・クルーゲ(ドイツ)との連携でポジションをキープしたユアンがハルヴォルセンを一気に抜き去り、別ラインから仕掛けたシモーネ・コンソンニとエリア・ヴィヴィアーニのコフィディス所属イタリアコンビを置き去りにする。フィニッシュライン直後にコーナーがあるため手をあげることができなかったが、ユアンの圧勝だった。
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「例年であれば何レースか走ってからダウンアンダーに出場するけど、今年はこれがシーズン初戦だった。(ステージ3勝を飾った)ツール・ド・フランスの後に5レースしか走ってなかったから、今日のレースに向けてナーバスになっていたんだ」と、身長165cmの弾丸スプリンターは語る。
2016年、2017年、2019年に続く4度目のクラシック勝利を飾ったユアン。「でもレースが始まってしまうととても調子が良くて、前半は集団最後尾でリラックスしながら走り、必要に合わせて前に上がった。5ヶ月レースから離れていたので自分の脚の状態がわからなかったけど、この勝利で調子が良いことを確認できたよ」。火曜日から始まるUCIワールドツアー本戦でももちろんそのスピードが発揮されるはずだ。
1時間強のレースの平均スピードは47.454km/h。18位に沈んだアンドレ・グライペル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)のSTRAVAログを見ると、残り10周を切ってから平均スピードが常に50km/hを超えており、最終周回の平均スピードは56km/hに達している。
表彰台に登ったユアン、ヴィヴィアーニ、コンソンニに続いて、21歳のジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)、23歳ハルヴォルセン、21歳アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、サンウェブ)と若手が続く結果に。この日が24歳の誕生日のサム・ウェルスフォード(オーストラリア、UniSAオーストラリア)がUCIワールドチームライダーに混ざって8位に食い込んだ一方で、7位に入ったリードアウト役のミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)から逸れたサム・ベネット(アイルランド)は16位に終わっている。
「すぐ目の前で落車が起こったんです」と肝を冷やした様子の新城幸也(バーレーン・マクラーレン)は62位でフィニッシュ。残り3.5周の落車発生まではマルコ・ハラー(オーストリア)を引き上げる役目を担い、安全にシーズン初戦を終えている。
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ツアー・ダウンアンダー2020シュワルベクラシック結果
1位 | カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル) | 1:04:29 |
2位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス) | |
3位 | シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス) | |
4位 | ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) | |
5位 | クリストファー・ハルヴォルセン(ノルウェー、EFプロサイクリング) | |
6位 | アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、サンウェブ) | |
7位 | ミケル・モルコフ(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
8位 | サム・ウェルスフォード(オーストラリア、UniSAオーストラリア) | |
9位 | クリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス) | |
10位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、NTTプロサイクリング) | |
62位 | 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン) | 0:01:20 |
中間スプリント賞
第1スプリント | ニック・ホワイト(オーストラリア、UniSAオーストラリア) |
第2スプリント | マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、アスタナ) |
第3スプリント | ニック・ホワイト(オーストラリア、UniSAオーストラリア) |
第4スプリント | ヨセフ・チェルニー(チェコ、CCCチーム) |
text:Kei Tsuji
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