2019/12/28(土) - 18:09
4回にわたって2019年の海外ロードレースシーズンを振り返るシリーズ第2弾。ベルギーやオランダでのクラシックレーサーの力走に沸いた4月から、ジロやカリフォルニアの熾烈なリーダージャージ争いに息を飲んだ5月までをプレーバック!
4月
3月から続いたクラシックシーズンの熱狂はベルギー・フランドル地方を舞台にしたクラシックの王様「ロンド・ファン・フラーンデレン」(=ツール・デ・フランドル)で熱狂の大きなピークを迎える。
名だたるスターたちが狙うモニュメントレースで、フィニッシュまで17kmを残したオウデ・クワレモントでアタックしたのがアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーションファースト)。独走に持ち込んだ無名のイタリア人は石畳のスペシャリストたちの追走からまんまと逃げ切り、オウデナールデの大通りに独走でフィニッシュした。ミラノ〜サンレモではポッジオの登りで真っ先にアタックを仕掛けたが、この日は誰もマークしなかった25歳のベッティオル。しかし4度目のロンド出場で勝利を掴んだその脚は本物だった。
フランドルから舞台を隣の北フランスに移し、続けて開催されるもう一つの石畳のモニュメントレースが「北の地獄」「クラシックの女王」の異名を取るパリ〜ルーベ。残り45kmでジルベール、ランパールト、サガン、ファンアールト、ファンマルク、ポリッツの6人によるグループの逃げが1分の差をメイン集団につける。王者サガンが失速する中、フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)とニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)の二人が先行。ルーベのベロドロームでのスプリントマッチを制したのはジルベール。36歳のベテランは3度めのパリ〜ルーベ挑戦で自身4つ目/通算5つ目のモニュメント(世界五大クラシック)タイトルを手にし、5大モニュメント優勝のタイトルで欠けるのはミラノ〜サンレモのみとなった。
翌週から舞台は「北のクラシック」から「アルデンヌクラシック」に移行。初戦アムステルゴールドレースではマチュー・ファンデルプール(オランダ、コレンドン・サーカス)が劇的な勝利を挙げる。先頭を逃げるアラフィリップとフルサング、合流したクウィアトコウスキーらを追走していたグループから単独で抜け出し、残り400mで先頭を射程圏内に捉えたファンデルプールがスプリントを開始。ゴールまで残り100mを切ってから全員を抜き去ったのだ。このシーンは24歳の若き怪物のポテンシャルを改めて夜に知らしめることに。
アルデンヌ第2戦、「ユイの壁」の上りフィニッシュで決する フレーシュ・ワロンヌではジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)を下して勝利。ミラノ〜サンレモとフレーシュ・ワロンヌの同年制覇はエディ・メルクス(ベルギー)らに続く史上4人目の記録となった。
コースの変更を受けた最古参のクラシック、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでは最後の勝負所コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンでライバルたちを振り切ったヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)がリエージュ街中のフィニッシュラインまで独走し、勝利。フレーシュで2位に甘んじたリベンジに成功。自身10回目のリエージュ挑戦で手にしたモニュメント初勝利となった。
4月16日にはヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロット・スーダル)がメキシコのアグアスカリエンテスでアワーレコードに挑戦。2015年にブラドレー・ウィギンズ(イギリス)が残した54.526kmを上回る55.089kmを1時間で走り切り、ついに55kmの壁を破る新記録を樹立した。
スイスの5日間レース、ツール・ド・ロマンディはクイーンステージの第4ステージを制し、最終日の個人タイムトライアルでも最速タイムを叩き出したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)が大会連覇を達成。
9月の世界選手権が開催されることでも注目されたツール・ド・ヨークシャーではクリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス)が総合優勝。このレースから新チーム名&新ジャージとなったチームスカイ改めチームイネオスは、初戦で総合優勝を果たし、これから始まるグランツールシーズンに向けて好発進となった。
5月
5月に入るといよいよグランツール初戦のジロ・デ・イタリアが開幕。聖地のサンルーカ教会へと登る山岳TTでの開幕ステージを制したのは優勝候補最右翼とされたプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)。そしてNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネから出場の西村大輝は体調の急な悪化によりタイムオーバーでリタイアに。
しかし西村の無念を晴らすかのように第3ステージでは初山翔が144kmのソロエスケープを敢行。世界の放送枠を独占した走りから、徐々に人気が上昇することに。
ヴィヴィアーニ、ガヴィリア、ユアン、デマール、アッカーマンらによって争われた平坦ステージのスプリンターたちのバトルは第2、第5ステージに勝利したパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) が最終的にはシクラメン色のジャージ、マリアチクラミーノを獲得した。
山岳で激化した総合争い。5つのカテゴリー山岳が詰め込まれた第14ステージではリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)がステージ2勝目を挙げてヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)からマリアローザを奪った。
総合争いはライバルたちが拮抗するまま最終週へもつれ込んだ。クイーンステージとなった第16ステージではマリアアッズーラを切る山岳王ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)が気を吐く中、ログリッチェが遅れを喫し陥落。リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)が第14ステージから袖を通すマリアローザを守った。
チームメイトのミケル・ランダ(スペイン、モビスター) が総合3位に浮上し、カラパスを協力にアシスト。ランダとカラパスの協調体制は難関第20ステージでも崩れず、むしろ攻撃を仕掛けてマリアローザを守る。個人TTでの最終ステージを乗り切ったカラパスがエクアドル人による初めてのグランツール制覇の偉業を成し遂げる。総合2位ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、3位はログリッチェ 。
イタリアの人気者となった初山翔は個人総合成績で最下位(142位)となりながらも完走を果たす。初山には黒いジャージ「マリアネーラ」が贈呈された。そしてNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネはダミアーノ・チーマ(イタリア)が第18ステージでステージ優勝を挙げる快挙。今季限りで解散するチームに嬉しいグランツールの勝利をプレゼントした。
アメリカで開催の7日間ステージレース、ツアー・オブ・カリフォルニアでは20歳のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がクイーンステージの難関山岳を制し、総合優勝。ワールドツアー最年少総合優勝を記録し、大物の片鱗を見せつけた。
text:Makoto.AYANO
4月
3月から続いたクラシックシーズンの熱狂はベルギー・フランドル地方を舞台にしたクラシックの王様「ロンド・ファン・フラーンデレン」(=ツール・デ・フランドル)で熱狂の大きなピークを迎える。
名だたるスターたちが狙うモニュメントレースで、フィニッシュまで17kmを残したオウデ・クワレモントでアタックしたのがアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーションファースト)。独走に持ち込んだ無名のイタリア人は石畳のスペシャリストたちの追走からまんまと逃げ切り、オウデナールデの大通りに独走でフィニッシュした。ミラノ〜サンレモではポッジオの登りで真っ先にアタックを仕掛けたが、この日は誰もマークしなかった25歳のベッティオル。しかし4度目のロンド出場で勝利を掴んだその脚は本物だった。
フランドルから舞台を隣の北フランスに移し、続けて開催されるもう一つの石畳のモニュメントレースが「北の地獄」「クラシックの女王」の異名を取るパリ〜ルーベ。残り45kmでジルベール、ランパールト、サガン、ファンアールト、ファンマルク、ポリッツの6人によるグループの逃げが1分の差をメイン集団につける。王者サガンが失速する中、フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)とニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)の二人が先行。ルーベのベロドロームでのスプリントマッチを制したのはジルベール。36歳のベテランは3度めのパリ〜ルーベ挑戦で自身4つ目/通算5つ目のモニュメント(世界五大クラシック)タイトルを手にし、5大モニュメント優勝のタイトルで欠けるのはミラノ〜サンレモのみとなった。
翌週から舞台は「北のクラシック」から「アルデンヌクラシック」に移行。初戦アムステルゴールドレースではマチュー・ファンデルプール(オランダ、コレンドン・サーカス)が劇的な勝利を挙げる。先頭を逃げるアラフィリップとフルサング、合流したクウィアトコウスキーらを追走していたグループから単独で抜け出し、残り400mで先頭を射程圏内に捉えたファンデルプールがスプリントを開始。ゴールまで残り100mを切ってから全員を抜き去ったのだ。このシーンは24歳の若き怪物のポテンシャルを改めて夜に知らしめることに。
アルデンヌ第2戦、「ユイの壁」の上りフィニッシュで決する フレーシュ・ワロンヌではジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)を下して勝利。ミラノ〜サンレモとフレーシュ・ワロンヌの同年制覇はエディ・メルクス(ベルギー)らに続く史上4人目の記録となった。
コースの変更を受けた最古参のクラシック、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでは最後の勝負所コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンでライバルたちを振り切ったヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ)がリエージュ街中のフィニッシュラインまで独走し、勝利。フレーシュで2位に甘んじたリベンジに成功。自身10回目のリエージュ挑戦で手にしたモニュメント初勝利となった。
4月16日にはヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロット・スーダル)がメキシコのアグアスカリエンテスでアワーレコードに挑戦。2015年にブラドレー・ウィギンズ(イギリス)が残した54.526kmを上回る55.089kmを1時間で走り切り、ついに55kmの壁を破る新記録を樹立した。
スイスの5日間レース、ツール・ド・ロマンディはクイーンステージの第4ステージを制し、最終日の個人タイムトライアルでも最速タイムを叩き出したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)が大会連覇を達成。
9月の世界選手権が開催されることでも注目されたツール・ド・ヨークシャーではクリストファー・ローレス(イギリス、チームイネオス)が総合優勝。このレースから新チーム名&新ジャージとなったチームスカイ改めチームイネオスは、初戦で総合優勝を果たし、これから始まるグランツールシーズンに向けて好発進となった。
5月
5月に入るといよいよグランツール初戦のジロ・デ・イタリアが開幕。聖地のサンルーカ教会へと登る山岳TTでの開幕ステージを制したのは優勝候補最右翼とされたプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)。そしてNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネから出場の西村大輝は体調の急な悪化によりタイムオーバーでリタイアに。
しかし西村の無念を晴らすかのように第3ステージでは初山翔が144kmのソロエスケープを敢行。世界の放送枠を独占した走りから、徐々に人気が上昇することに。
ヴィヴィアーニ、ガヴィリア、ユアン、デマール、アッカーマンらによって争われた平坦ステージのスプリンターたちのバトルは第2、第5ステージに勝利したパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) が最終的にはシクラメン色のジャージ、マリアチクラミーノを獲得した。
山岳で激化した総合争い。5つのカテゴリー山岳が詰め込まれた第14ステージではリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)がステージ2勝目を挙げてヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)からマリアローザを奪った。
総合争いはライバルたちが拮抗するまま最終週へもつれ込んだ。クイーンステージとなった第16ステージではマリアアッズーラを切る山岳王ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)が気を吐く中、ログリッチェが遅れを喫し陥落。リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)が第14ステージから袖を通すマリアローザを守った。
チームメイトのミケル・ランダ(スペイン、モビスター) が総合3位に浮上し、カラパスを協力にアシスト。ランダとカラパスの協調体制は難関第20ステージでも崩れず、むしろ攻撃を仕掛けてマリアローザを守る。個人TTでの最終ステージを乗り切ったカラパスがエクアドル人による初めてのグランツール制覇の偉業を成し遂げる。総合2位ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、3位はログリッチェ 。
イタリアの人気者となった初山翔は個人総合成績で最下位(142位)となりながらも完走を果たす。初山には黒いジャージ「マリアネーラ」が贈呈された。そしてNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネはダミアーノ・チーマ(イタリア)が第18ステージでステージ優勝を挙げる快挙。今季限りで解散するチームに嬉しいグランツールの勝利をプレゼントした。
アメリカで開催の7日間ステージレース、ツアー・オブ・カリフォルニアでは20歳のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)がクイーンステージの難関山岳を制し、総合優勝。ワールドツアー最年少総合優勝を記録し、大物の片鱗を見せつけた。
text:Makoto.AYANO
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