2019/09/08(日) - 03:46
残り1km地点で発生した落車により割れた集団によるスプリントで決したブエルタ・ア・エスパーニャ第14ステージ。フィニッシュ手前の登りでアタックした選手に飛びつき、そのままロングスプリントに持ち込んだサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)がステージ2勝目を手にした。
第4ステージ以来、実に11日ぶりにスプリンターたちにチャンスが回ってきた。カンタブリア州からアストゥリアス州に向かって大西洋の海岸線を西に向かう第14ステージは平坦基調(とはいえ獲得標高差は2,400mある)。スプリントポイントが置かれたヒホンの街を通過してから内陸に向かい、3級山岳ラ・マデーラ峠(全長8km/平均3.5%)を越えてオビエドでフィニッシュを迎える。
この日がブエルタ第2週の唯一の平坦ステージ。残り1kmを切ってから勾配6%ほどの登りが登場するが、この貴重なチャンスを逃すまいとスプリンターチームがレースを支配した。
海沿いのサンビセンテ・デラ・バルケラをスタートしてしばらくすると、総合で1時間半以上遅れている選手たち6名による逃げが決まる。ユンボ・ヴィズマのGOサインを得た6名が最初の1時間を平均スピード42km/hで駆け抜けたが、すぐさまドゥクーニンク・クイックステップとボーラ・ハンスグローエがメイン集団の牽引を始めたためタイム差は広がらない。スプリンターチームの集団牽引によって逃げ6名のリードは2分前後に抑え込まれた。
逃げグループを形成した6名
シルヴァン・ディリエ(スイス、アージェードゥーゼール)
ルカ・ピベルニク(スロベニア、バーレーン・メリダ)
ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル)
サルヴァトーレ・プッチョ(イタリア、チームイネオス)
ディエゴ・ルビオ(スペイン、ブルゴスBH)
ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)
タイム差が1分30秒〜2分を推移しながらレースは後半へと向かい、逃げグループからはロセットが脱落。残り62km地点で1分まで縮まったタイム差は残り40km地点で2分に。そこから逃げグループは粘りの走りを見せた。
新城幸也(バーレーン・メリダ)が「登りのスピードがめちゃくちゃ速かった」と振り返る通り、3級山岳ラ・マデーラ峠(全長8km/平均3.5%)を平均スピード37.3km/hという猛烈な勢いで駆け上がったメイン集団。前日に地元エチオピアで娘が誕生したスガブ・グルマイ(エチオピア、ミッチェルトン・スコット)らが献身的に集団先頭でペースを作り、逃げグループとの間合いを詰めていく。
ルビオの脱落によって4名に絞られた先頭グループは27秒のリードで残り10kmアーチを通過する。ハイペースを維持し続けたディリエ、ピベルニク、ファンフック、プッチョの4名だったが、ボーラ・ハンスグローエやドゥクーニンク・クイックステップ、トレック・セガフレードが率いるメイン集団に残り4km地点を前に吸収。大集団がアストゥリアス州の州都オビエドに突進した。
激しく位置どり合戦が繰り広げられる集団先頭では残り1kmアーチ通過と同時に落車が発生し、道幅いっぱいに選手が地面に倒れこむ大落車へと発展する。マイヨロホのプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)もこの落車に巻き込まれたが怪我には繋がらず。スプリントを狙う位置につけていたディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)は落車により膝を痛めてフィニッシュしている。
先頭ではドゥクーニンク・クイックステップが主導権を握り、ゼネク・スティバル(チェコ)がマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)とファビオ・ヤコブセン(オランダ)を引き連れてリードアウト。完璧な形でスプリントに持ち込むと思われた矢先、残り500mから始まる勾配6%ほどの登りでトッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)がアタックした。
短い登りを利用したこのアタックにリケーゼとサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が反応したが、ヤコブセンをはじめとするスプリンターたちは失速。こうして3名が完全に抜け出した形となる。先行するファンデルサンドと、追走するリケーゼ、そして加速するタイミングを伺うベネット。リケーゼのスリップストリームから抜け出したベネットが先頭ファンデルサンドを勢いよく抜き去った。
最後は後方を振り返ってリケーゼやファンデルサンドの様子を伺う余裕を持ちながらのフィニッシュ。集団スプリントとは呼べない特殊なフィニッシュで、ベネットが2勝目をマークした。
今シーズン世界最多13勝目を飾ったベネットは「後ろで落車の音が聞こえたけど巻き込まれず。今日はドゥクーニンク・クイックステップとUAEチームエミレーツが組織的に動いていたので、彼らについていった。逃げを吸収していたか確証がなかったので、もしかしたらステージ2位なんじゃないかと思いながらフィニッシュラインを切ったんだ。フィニッシュ後にメカニックに勝利を告げられてホッとしたよ」と第3ステージに続く今大会2勝目を振り返る。
「(第4ステージ以降)スプリンターの出番がなかなか回ってこなかった。ここまで11日間全く役立たずだったけど、出番が回ってきたので全力で勝利を狙った。貴重なチャンスだったのでプレッシャーは大きかったけど、同時にそれだけ喜びも大きい」と語るベネットはポイント賞5位に浮上。しかし同賞トップのログリッチェとは39ポイント差が付いている。スプリンターに残されたチャンスは第17ステージと第18ステージ、第21ステージの3日間。ボーラ・ハンスグローエは三大グランツールでの全ポイント賞獲得に王手をかけているが、山岳ステージでも同ポイントが与えられるブエルタでのポイント賞は難易度が高い。
「落車はしていない。辛うじて落車せずに済んだ。総合狙いの選手たちにとってスプリントステージは悩みの種で、ある程度のリスクを負いながら集団前方に位置しないといけない」と、チームメイトたちと並んでフィニッシュしたログリッチェは語る。残り3km以内で発生した落車のため、遅れた選手もトップと同タイム扱いとなっている。
翌日は1級山岳サントゥアリオ・デル・アセボの山頂フィニッシュ。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)から2分25秒のリードで首位を快走するログリッチェは「明日と明後日の山岳はどれも登ったことがない。特に明日の山岳はとても厳しい。ライバルたちが攻撃を仕掛けてくるのは間違いないし、スタートからずっと全開走行になるかもしれない」とコメントしている。
第4ステージ以来、実に11日ぶりにスプリンターたちにチャンスが回ってきた。カンタブリア州からアストゥリアス州に向かって大西洋の海岸線を西に向かう第14ステージは平坦基調(とはいえ獲得標高差は2,400mある)。スプリントポイントが置かれたヒホンの街を通過してから内陸に向かい、3級山岳ラ・マデーラ峠(全長8km/平均3.5%)を越えてオビエドでフィニッシュを迎える。
この日がブエルタ第2週の唯一の平坦ステージ。残り1kmを切ってから勾配6%ほどの登りが登場するが、この貴重なチャンスを逃すまいとスプリンターチームがレースを支配した。
海沿いのサンビセンテ・デラ・バルケラをスタートしてしばらくすると、総合で1時間半以上遅れている選手たち6名による逃げが決まる。ユンボ・ヴィズマのGOサインを得た6名が最初の1時間を平均スピード42km/hで駆け抜けたが、すぐさまドゥクーニンク・クイックステップとボーラ・ハンスグローエがメイン集団の牽引を始めたためタイム差は広がらない。スプリンターチームの集団牽引によって逃げ6名のリードは2分前後に抑え込まれた。
逃げグループを形成した6名
シルヴァン・ディリエ(スイス、アージェードゥーゼール)
ルカ・ピベルニク(スロベニア、バーレーン・メリダ)
ハーム・ファンフック(ベルギー、ロット・スーダル)
サルヴァトーレ・プッチョ(イタリア、チームイネオス)
ディエゴ・ルビオ(スペイン、ブルゴスBH)
ステファヌ・ロセット(フランス、コフィディス)
タイム差が1分30秒〜2分を推移しながらレースは後半へと向かい、逃げグループからはロセットが脱落。残り62km地点で1分まで縮まったタイム差は残り40km地点で2分に。そこから逃げグループは粘りの走りを見せた。
新城幸也(バーレーン・メリダ)が「登りのスピードがめちゃくちゃ速かった」と振り返る通り、3級山岳ラ・マデーラ峠(全長8km/平均3.5%)を平均スピード37.3km/hという猛烈な勢いで駆け上がったメイン集団。前日に地元エチオピアで娘が誕生したスガブ・グルマイ(エチオピア、ミッチェルトン・スコット)らが献身的に集団先頭でペースを作り、逃げグループとの間合いを詰めていく。
ルビオの脱落によって4名に絞られた先頭グループは27秒のリードで残り10kmアーチを通過する。ハイペースを維持し続けたディリエ、ピベルニク、ファンフック、プッチョの4名だったが、ボーラ・ハンスグローエやドゥクーニンク・クイックステップ、トレック・セガフレードが率いるメイン集団に残り4km地点を前に吸収。大集団がアストゥリアス州の州都オビエドに突進した。
激しく位置どり合戦が繰り広げられる集団先頭では残り1kmアーチ通過と同時に落車が発生し、道幅いっぱいに選手が地面に倒れこむ大落車へと発展する。マイヨロホのプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)もこの落車に巻き込まれたが怪我には繋がらず。スプリントを狙う位置につけていたディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・メリダ)は落車により膝を痛めてフィニッシュしている。
先頭ではドゥクーニンク・クイックステップが主導権を握り、ゼネク・スティバル(チェコ)がマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン)とファビオ・ヤコブセン(オランダ)を引き連れてリードアウト。完璧な形でスプリントに持ち込むと思われた矢先、残り500mから始まる勾配6%ほどの登りでトッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル)がアタックした。
短い登りを利用したこのアタックにリケーゼとサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が反応したが、ヤコブセンをはじめとするスプリンターたちは失速。こうして3名が完全に抜け出した形となる。先行するファンデルサンドと、追走するリケーゼ、そして加速するタイミングを伺うベネット。リケーゼのスリップストリームから抜け出したベネットが先頭ファンデルサンドを勢いよく抜き去った。
最後は後方を振り返ってリケーゼやファンデルサンドの様子を伺う余裕を持ちながらのフィニッシュ。集団スプリントとは呼べない特殊なフィニッシュで、ベネットが2勝目をマークした。
今シーズン世界最多13勝目を飾ったベネットは「後ろで落車の音が聞こえたけど巻き込まれず。今日はドゥクーニンク・クイックステップとUAEチームエミレーツが組織的に動いていたので、彼らについていった。逃げを吸収していたか確証がなかったので、もしかしたらステージ2位なんじゃないかと思いながらフィニッシュラインを切ったんだ。フィニッシュ後にメカニックに勝利を告げられてホッとしたよ」と第3ステージに続く今大会2勝目を振り返る。
「(第4ステージ以降)スプリンターの出番がなかなか回ってこなかった。ここまで11日間全く役立たずだったけど、出番が回ってきたので全力で勝利を狙った。貴重なチャンスだったのでプレッシャーは大きかったけど、同時にそれだけ喜びも大きい」と語るベネットはポイント賞5位に浮上。しかし同賞トップのログリッチェとは39ポイント差が付いている。スプリンターに残されたチャンスは第17ステージと第18ステージ、第21ステージの3日間。ボーラ・ハンスグローエは三大グランツールでの全ポイント賞獲得に王手をかけているが、山岳ステージでも同ポイントが与えられるブエルタでのポイント賞は難易度が高い。
「落車はしていない。辛うじて落車せずに済んだ。総合狙いの選手たちにとってスプリントステージは悩みの種で、ある程度のリスクを負いながら集団前方に位置しないといけない」と、チームメイトたちと並んでフィニッシュしたログリッチェは語る。残り3km以内で発生した落車のため、遅れた選手もトップと同タイム扱いとなっている。
翌日は1級山岳サントゥアリオ・デル・アセボの山頂フィニッシュ。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)から2分25秒のリードで首位を快走するログリッチェは「明日と明後日の山岳はどれも登ったことがない。特に明日の山岳はとても厳しい。ライバルたちが攻撃を仕掛けてくるのは間違いないし、スタートからずっと全開走行になるかもしれない」とコメントしている。
ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第14ステージ結果
1位 | サム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 4:28:46 |
2位 | マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
3位 | トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、ロット・スーダル) | 0:00:02 |
4位 | マルク・サロー(フランス、グルパマFDJ) | 0:00:05 |
5位 | クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス、アージェードゥーゼール) | |
6位 | マルク・ソレル(スペイン、モビスター) | |
7位 | ヨナス・コッホ(ドイツ、CCCチーム) | |
8位 | ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード) | |
9位 | マックス・ヴァルシャイド(ドイツ、サンウェブ) | |
10位 | シュモン・サイノク(ポーランド、CCCチーム) | |
109位 | 新城幸也(日本、バーレーン・メリダ) | |
DNS | ドミンゴス・ゴンサルベス(ポルトガル、カハルラル・セグロスRGA) |
個人総合成績
1位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) | 53:49:19 |
2位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:02:25 |
3位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:03:01 |
4位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:03:18 |
5位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:03:33 |
6位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:06:15 |
7位 | ニコラ・エデ(フランス、コフィディス) | 0:07:18 |
8位 | カールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、ロット・スーダル) | 0:07:33 |
9位 | ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) | 0:07:39 |
10位 | ハーマン・ペーンシュタイナー(オーストリア、バーレーン・メリダ) | 0:10:03 |
ポイント賞
1位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) | 109pts |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 86pts |
3位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 82pts |
山岳賞
1位 | アンヘル・マドラソ(スペイン、ブルゴスBH) | 32pts |
2位 | ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール) | 30pts |
3位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 25pts |
ヤングライダー賞
1位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 53:52:20 |
2位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:00:17 |
3位 | セルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーションファースト) | 0:08:51 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 160:36:36 |
2位 | アスタナ | 0:25:51 |
3位 | ユンボ・ヴィズマ | 0:45:36 |
text&photo:Kei Tsuji in Oviedo, Spain