チームイネオスがツール・ド・ポローニュ連覇を達成。マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)が独走勝利を飾ったポローニュ最終日に、総合首位ヴィンゲゴーをふるい落とした22歳のパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)が総合優勝に輝いた。


山岳賞ジャージのトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・スーダル)が逃げに乗る山岳賞ジャージのトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・スーダル)が逃げに乗る photo:CorVos
総合タイム差1分以内に17名がひしめくという混戦のまま迎えたツール・ド・ポローニュ第7ステージ。最終日はポーランド南部の避暑地ブコヴィナを発着する複雑な周回コースで争われるのが通例となっている。5つの1級山岳を含め、標高1,000m級の登りが断続的に11カ所登場する153kmコースの獲得標高差は3,300m。ノコギリの歯のようなアップダウンコースが第76代総合優勝者を導き出した。

総合で2分16秒しか遅れていないカールフレドリク・ハーゲン(ノルウェー、ロット・スーダル)を含む14名がこの日の逃げメンバー。山岳ポイント量産が可能なこのステージで、山岳賞首位のトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・スーダル)の他、逃げグループの中には逆転を狙う同賞3位のサイモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)の姿も。前半からマルチンスキーとゲシュケが激しい山岳ポイント争いを繰り広げ、結果的に終盤まで逃げグループに残ったゲシュケが3ポイント差で逆転に成功している。

逃げグループとメイン集団のタイム差が3分を超えたためイエロージャージは暫定的にハーゲンの手に。ユンボ・ヴィズマの集団コントロールによってタイム差が縮小を開始すると、逃げ切りを狙うモホリッチがフィニッシュまで57kmという距離を残してアタックする。ステージ優勝に向けてモホリッチが勇敢な独走に持ち込む中、後方のメイン集団では総合争いが加熱した。

ステージ前半はユンボ・ヴィズマがメイン集団を牽引ステージ前半はユンボ・ヴィズマがメイン集団を牽引 photo:CorVos
山岳賞を狙って逃げたサイモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム)山岳賞を狙って逃げたサイモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム) photo:CorVos
イニシアティブを取ったのはチームイネオス。総合2位パヴェル・シヴァコフ(ロシア)や総合11位タオ・ゲオゲガンハート(イギリス)、総合15位ベン・スウィフト(イギリス)という3選手を総合タイム差1分以内に揃えたイギリスチームがメイン集団のペースを上げると、残り40km地点でイエロージャージのヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィズマ)がたまらず脱落した。

チームイネオスはその後もペースを上げ続け、総合7位ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)やミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)のカウンターアタックを封じ込める。対して、チームイネオスはジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)やニールソン・ポーレス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ)といった総合争いに関係しない選手のアタックを容認した。

メイン集団を飛び立ったブランビッラやポーレスは逃げメンバーを追い抜きながらハイペースで走り続けたが、先頭モホリッチの背中は見えてこなかった。モホリッチは最終的に追走者に55秒差をつけて逃げ切り勝利。総合上位陣を含む(ヴィンゲゴーを除く)メイン集団は2分15秒遅れでフィニッシュし、ライバルたちのアタックを封じ込めたチームイネオスのシヴァコフが逆転で総合優勝に輝いた。チームイネオスは2018年の大会覇者であるミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)を欠きながらも大会連覇を達成した。

独走勝利を飾ったマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ)独走勝利を飾ったマテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) photo:CorVos
実に57kmに及ぶ独走で、実に1年ぶりとなる勝利を飾ったモホリッチは「チームは総合優勝を狙っていたものの、昨日のステージで体調が崩れずにタイムを失ってしまった。気持ちを切り替えて、今日ステージ優勝を狙っていたんだ。ツール・ド・フランスの疲れが残っていたけど、逃げに乗ることができればチャンスがあると思っていた。早めに仕掛けることでこの美しい勝利を達成。この勝利をビョルグ(ランブレヒト)に捧げたい」とコメントする。

「この勝利を他の誰でもなく彼に捧げたい」と、同じく第3ステージで亡くなったビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、ロット・スーダル)への気持ちを語ったのは総合優勝に輝いたシヴァコフ。ランブレヒトと同年代のシヴァコフは「彼と一緒に走ったレースを思い浮かべながら走った。彼はいつも厳しいレースを作り出した。この勝利を彼に捧げる」。

ツール・ド・フランスを制したエガン・ベルナル(コロンビア)と同じ22歳のシヴァコフが自身初のUCIワールドツアーレース総合優勝。シヴァコフは4月のツアー・オブ・アルプスで総合優勝を飾り、5月のジロ・デ・イタリアを総合9位で終えていた。シーズン後半に向けて好調ぶりを見せたシヴァコフだが、8月24日開幕のブエルタ・ア・エスパーニャには出場しない予定だ。シヴァコフは「まだ22歳なので成長を急ぐ必要はない。キャリアを長い目で見ると、少しずつの成長を目指すほうがいい」と語っている。

22歳シヴァコフだけでなく、23歳ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ)が総合2位、23歳セルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーションファースト)が総合4位、24歳タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス)が総合5位と、若手オールラウンダーの活躍が目立ったポーランドの7日間。次戦UCIワールドツアーレースは8月12日開幕のビンクバンク・ツアー。ベルギーとオランダを舞台にした7日間のレースには別府史之(トレック・セガフレード)が連戦出場予定だ。

総合優勝に輝いたパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)総合優勝に輝いたパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) photo:CorVos

ツール・ド・ポローニュ2019第7ステージ結果
1位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 4:04:42
2位 ニールソン・ポーレス(アメリカ、ユンボ・ヴィズマ) 0:00:55
3位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード) 0:01:07
4位 スガブ・グルマイ(エチオピア、ミッチェルトン・スコット) 0:01:19
5位 パウェル・ポリャンスキー(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 0:01:32
6位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、カチューシャ・アルペシン) 0:01:57
7位 キリアン・フランキーニー(スイス、グルパマFDJ)
8位 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール) 0:02:15
9位 セルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーションファースト)
10位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
個人総合成績
1位 パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) 26:20:58
2位 ジェイ・ヒンドレー(オーストラリア、サンウェブ) 0:00:02
3位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) 0:00:12
4位 セルジオ・イギータ(コロンビア、EFエデュケーションファースト) 0:00:14
5位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス)
6位 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール) 0:00:15
7位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:16
8位 クリス・ハミルトン(オーストラリア、サンウェブ)
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)
10位 ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
スプリント賞
1位 マルク・サロー(フランス、グルパマFDJ) 53pts
2位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) 50pts
3位 ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール) 44pts
山岳賞
1位 シモン・ゲシュケ(ドイツ、CCCチーム) 60pts
2位 トマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・スーダル) 57pts
3位 マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・メリダ) 35pts
チーム総合成績
1位 チームイネオス 79:07:11
2位 サンウェブ 0:00:11
3位 ミッチェルトン・スコット 0:04:09
text:Kei Tsuji

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