2019/06/30(日) - 23:03
富士スピードウェイにて6月30日(日)に開催された全日本選手権ロードレース男子エリートは、残り3周で先行した3名での勝負となり、入部正太朗(シマノレーシング)が新城幸也(バーレーン・メリダ)を下して悲願の初タイトルを手にした。
4日間に渡る全日本選手権の最終日は男子エリートのロードレース。富士スピードウェイに設定された1周10.8kmのコースを21周する227kmで争われる。
世界トップレベルで戦う新城幸也(バーレーン・メリダ)と別府史之(トレック・セガフレード)の2人が8年ぶりに揃って出場するとあって、時折雨が落ちてくる悪天候にもかかわらず、多くの観客が集まった。スタート後もその数は増え、年に一度の日本一決定戦を見守った。
午前9時、予定通りスタートしたレースは、直後から新城や別府らが前方でペースアップを図り、集団を長く伸ばす。ファーストアタックは安原大貴(マトリックスパワータグ)。2周目に単独で飛び出し、一時30秒以上の差をつけて先行するも3周目に吸収される。
4周目、9人の逃げ集団が形成され、メイン集団に30秒差をつける。メンバーは、山本元喜(キナンサイクリングチーム)、堀孝明、岡篤志(以上宇都宮ブリッツェン)、徳田優(チームブリヂストンサイクリング)、小石祐馬(チーム右京)、柴田雅之(那須ブラーゼン)、荒井佑太(キナンサイクリングチーム)、岩島啓太(MIVRO)、中井唯晶(シマノレーシング)、安原。
5周目、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、石橋学(チームブリヂストンサイクリング)、早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)、湊諒(シマノレーシング)、紺野元汰( SBC Vertex Racing Team)ら9人が追走集団を形成。6周目に先頭9人に合流する。
そこに新城らがブリッジをかけて合流していき、先頭集団の人数は30人まで増える。30秒前後あった後続集団との差はその後縮まり、7周目には60人ほどの1つの集団にまとまる。
8周目、徳田が単独で飛び出し、1分の差をつけて先行する。メイン集団はシマノレーシングが前方に集まってコントロールを開始。その後ろにチームブリヂストンサイクリング、宇都宮ブリッツェン、キナンサイクリングチームの順で整列して周回を重ねる。単独で逃げる徳田と集団のタイム差は10周目に約3分まで開き、レースはしばし落ち着く。
12周目に入ると宇都宮ブリッツェンが集団前方に上がって集団コントロールに加勢。差は一気に縮まり始め、15周目に徳田を吸収する。
1つになった集団は動きが活発になり、30人ほどまで絞られる。17周目、新城のペースアップで集団が割れかけた状態で18周目に突入していく。登り区間で新城、小石、小林海(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)の3人が抜け出すも、追走した後続が吸収。この動きでついに序盤から前で動き続けてきた別府が遅れ始める。
残り3周となる19周目、新城、入部正太朗(シマノレーシング)、横塚浩平(チーム右京)、早川朋宏(愛三工業レーシング)の4人が新たに先行。きっかけをつくった早川が脱落し、3人に。
小林と草場啓吾(愛三工業レーシング)の2人が追走するも、差は1分以上に開く。勝負は先行する3人に絞られた。
迎えた最終周回、残り6kmから始まる登りで新城が加速。横塚が遅れ、入部が追従していく。入部にスプリント力があることを嫌い、新城は何度もアタックして独走を試みるが、決まらない。
新城は残り1kmからの登りでスパートして入部を振り切りにかかるが離すことができず、2人は急激に霧が立ちこめた長いホームストレートへ。
新城の後ろに入部が続く形で残り200mを通過し、両者共に最後のスプリント勝負へ。先行する新城をかわして前に出た入部は、10mほど残して後ろを振り返って勝利を確信。両手人差し指を天に向けてフィニッシュラインを超えた。
シマノレーシングとしては、2008年に現チーム監督の野寺秀徳が優勝して以来、11年ぶりの全日本選手権タイトル獲得となった。
優勝 入部正太朗(シマノレーシング)コメント
「正直まだ実感が沸かない部分もあるんですけど、本当に目標にしていたレースなので最高の気分です。
前日までのレースで落車が多く、コースが危険と聞いていたので、慎重にレースをしました。やはり最初から落車を数回見ましたし、スリッピーな状態で集団の後ろが伸びたりと落ち着かない状況が続いましたが、徳田優選手の逃げが決まってから少し落ち着きました。チームはそこで僕を守るために先頭に集まってコントロールしてくれて、すごく温存させてもらいました。
それでも新城選手や別府選手のように単独で参加されている選手がどんどんアタックしていて、僕もああいう風になりたいなと思ってましたし、その中でさらに勝ちたいと言う意欲が湧いてきました。
僕のスタイルは飛び出すことで、今まで失敗もしてきましたけど、うまくいったこともあるので、後半はそこに賭けました。レース終盤に集団に疲れが見えていたところで抜け出すことに成功して、新城選手と一緒に行くことができたんですけど、8割方新城選手が引いてくれていたような状態で、僕と横塚選手はかなりきつい状態でした。登りで新城選手が普通に引いてるだけでちぎれるかと思った時もあったんですけど、なんとか食らいついて、最後はクレバーに勝ちを狙っていきました。本当に狙った通りの展開になったので、チャレンジ出来たことは良かったです。まずはチームに帰って喜び称え合いたいと思います」
2位 新城幸也(バーレーン・メリダ)コメント
本当に悔しい気持ちだけですね。序盤からみんな前に行きたがっていて9人の逃げが決まって、その追走で一時大きなグループが行ったので「これは行かなきゃいけない」と思って脚を使って前に追いつきました。チームで出場しているところは人数がいる中、前が行ってしまったら後ろは止まってしまって、単騎で挑んでいる僕らにとっては難しいレースになってくるので、脚を使いながらも「これは大丈夫」というのを選別しながら、無理して脚を使ったりもして、前半は過ごしました。
最後70kmくらいから自分からもう動こうと思っていました。誰も動かなかったので自分から行くことにして、何度かトライして小石(祐馬)と小林(海)の3人で行った時が一番勢いが良く、集団にダメージを与えられたかなと思います。その後集団のメンバーの顔見ても大変そうでした。
その次はホームストレートで仕掛けました。直前のTGRコーナー(周回最後のコーナー)で捕まった直後だったから動きたくなかったんですけど、集団の人数が少なかったので動きました。やっぱり全日本と言うのはチャンピオンらしく脚を使って勝ちたかったので、集団スプリントのことは考えず、とことん行きました。
でもやっぱり(入部選手を)ちぎれなかったのは自分の甘さです。この悔しさをこれからのシーズンに(活かしたい)。ただ、僕は3月に転んでしまってまだ復帰したばかりで、この全日本を復帰戦と考えてずっと走ってきたので、今日は走りきれたことに、復帰までの3ヶ月間の思いをぶつけられたかなと思います。
3位 横塚浩平(チーム右京)コメント
チーム右京は他チームに比べて少ない5人出走だったので、無理に自分達でレースを作りに行かないという方針でした。その結果終盤に4人残すことが出来たので、有力な動きに誰かが乗って行くという展開が出来たので、上手くいったと思います。
終盤に小石さんと新城選手、小林選手の3人が行って、みんながマークしていたので追走したのですが、僕は小石さんが前にいたおかげでローテーションに入らずに済んだので足を残すことができました。最後を自分が任されるという予定ではなかったと思うのですが、チームとして良い動きは出来たと思います。
入部さんがかなり自信を持って踏んでいって、自分がマークしていた選手でもあるので思い切って飛び出したら新城選手もついてきてくれたので、これは行くしかないと思い、ここはもう腹をくくって踏んでいきました。
普段からお世話になっている2人と逃げきれたのは自分としても嬉しかったのですが、走っていても力の差を感じました。今回ラスト一周の上りで新城選手にペース上げられてそのまま千切れてしまいましたけど、これが今の自分の精一杯だったので、それに関して悔いはないです。
こんな大舞台で表彰台に乗れるとは思っていなかったし、自分はチームのために動ければと思ってこのレースを走っていたので、信じられないという思いです。
4日間に渡る全日本選手権の最終日は男子エリートのロードレース。富士スピードウェイに設定された1周10.8kmのコースを21周する227kmで争われる。
世界トップレベルで戦う新城幸也(バーレーン・メリダ)と別府史之(トレック・セガフレード)の2人が8年ぶりに揃って出場するとあって、時折雨が落ちてくる悪天候にもかかわらず、多くの観客が集まった。スタート後もその数は増え、年に一度の日本一決定戦を見守った。
午前9時、予定通りスタートしたレースは、直後から新城や別府らが前方でペースアップを図り、集団を長く伸ばす。ファーストアタックは安原大貴(マトリックスパワータグ)。2周目に単独で飛び出し、一時30秒以上の差をつけて先行するも3周目に吸収される。
4周目、9人の逃げ集団が形成され、メイン集団に30秒差をつける。メンバーは、山本元喜(キナンサイクリングチーム)、堀孝明、岡篤志(以上宇都宮ブリッツェン)、徳田優(チームブリヂストンサイクリング)、小石祐馬(チーム右京)、柴田雅之(那須ブラーゼン)、荒井佑太(キナンサイクリングチーム)、岩島啓太(MIVRO)、中井唯晶(シマノレーシング)、安原。
5周目、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、石橋学(チームブリヂストンサイクリング)、早川朋宏(愛三工業レーシングチーム)、湊諒(シマノレーシング)、紺野元汰( SBC Vertex Racing Team)ら9人が追走集団を形成。6周目に先頭9人に合流する。
そこに新城らがブリッジをかけて合流していき、先頭集団の人数は30人まで増える。30秒前後あった後続集団との差はその後縮まり、7周目には60人ほどの1つの集団にまとまる。
8周目、徳田が単独で飛び出し、1分の差をつけて先行する。メイン集団はシマノレーシングが前方に集まってコントロールを開始。その後ろにチームブリヂストンサイクリング、宇都宮ブリッツェン、キナンサイクリングチームの順で整列して周回を重ねる。単独で逃げる徳田と集団のタイム差は10周目に約3分まで開き、レースはしばし落ち着く。
12周目に入ると宇都宮ブリッツェンが集団前方に上がって集団コントロールに加勢。差は一気に縮まり始め、15周目に徳田を吸収する。
1つになった集団は動きが活発になり、30人ほどまで絞られる。17周目、新城のペースアップで集団が割れかけた状態で18周目に突入していく。登り区間で新城、小石、小林海(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)の3人が抜け出すも、追走した後続が吸収。この動きでついに序盤から前で動き続けてきた別府が遅れ始める。
残り3周となる19周目、新城、入部正太朗(シマノレーシング)、横塚浩平(チーム右京)、早川朋宏(愛三工業レーシング)の4人が新たに先行。きっかけをつくった早川が脱落し、3人に。
小林と草場啓吾(愛三工業レーシング)の2人が追走するも、差は1分以上に開く。勝負は先行する3人に絞られた。
迎えた最終周回、残り6kmから始まる登りで新城が加速。横塚が遅れ、入部が追従していく。入部にスプリント力があることを嫌い、新城は何度もアタックして独走を試みるが、決まらない。
新城は残り1kmからの登りでスパートして入部を振り切りにかかるが離すことができず、2人は急激に霧が立ちこめた長いホームストレートへ。
新城の後ろに入部が続く形で残り200mを通過し、両者共に最後のスプリント勝負へ。先行する新城をかわして前に出た入部は、10mほど残して後ろを振り返って勝利を確信。両手人差し指を天に向けてフィニッシュラインを超えた。
シマノレーシングとしては、2008年に現チーム監督の野寺秀徳が優勝して以来、11年ぶりの全日本選手権タイトル獲得となった。
優勝 入部正太朗(シマノレーシング)コメント
「正直まだ実感が沸かない部分もあるんですけど、本当に目標にしていたレースなので最高の気分です。
前日までのレースで落車が多く、コースが危険と聞いていたので、慎重にレースをしました。やはり最初から落車を数回見ましたし、スリッピーな状態で集団の後ろが伸びたりと落ち着かない状況が続いましたが、徳田優選手の逃げが決まってから少し落ち着きました。チームはそこで僕を守るために先頭に集まってコントロールしてくれて、すごく温存させてもらいました。
それでも新城選手や別府選手のように単独で参加されている選手がどんどんアタックしていて、僕もああいう風になりたいなと思ってましたし、その中でさらに勝ちたいと言う意欲が湧いてきました。
僕のスタイルは飛び出すことで、今まで失敗もしてきましたけど、うまくいったこともあるので、後半はそこに賭けました。レース終盤に集団に疲れが見えていたところで抜け出すことに成功して、新城選手と一緒に行くことができたんですけど、8割方新城選手が引いてくれていたような状態で、僕と横塚選手はかなりきつい状態でした。登りで新城選手が普通に引いてるだけでちぎれるかと思った時もあったんですけど、なんとか食らいついて、最後はクレバーに勝ちを狙っていきました。本当に狙った通りの展開になったので、チャレンジ出来たことは良かったです。まずはチームに帰って喜び称え合いたいと思います」
2位 新城幸也(バーレーン・メリダ)コメント
本当に悔しい気持ちだけですね。序盤からみんな前に行きたがっていて9人の逃げが決まって、その追走で一時大きなグループが行ったので「これは行かなきゃいけない」と思って脚を使って前に追いつきました。チームで出場しているところは人数がいる中、前が行ってしまったら後ろは止まってしまって、単騎で挑んでいる僕らにとっては難しいレースになってくるので、脚を使いながらも「これは大丈夫」というのを選別しながら、無理して脚を使ったりもして、前半は過ごしました。
最後70kmくらいから自分からもう動こうと思っていました。誰も動かなかったので自分から行くことにして、何度かトライして小石(祐馬)と小林(海)の3人で行った時が一番勢いが良く、集団にダメージを与えられたかなと思います。その後集団のメンバーの顔見ても大変そうでした。
その次はホームストレートで仕掛けました。直前のTGRコーナー(周回最後のコーナー)で捕まった直後だったから動きたくなかったんですけど、集団の人数が少なかったので動きました。やっぱり全日本と言うのはチャンピオンらしく脚を使って勝ちたかったので、集団スプリントのことは考えず、とことん行きました。
でもやっぱり(入部選手を)ちぎれなかったのは自分の甘さです。この悔しさをこれからのシーズンに(活かしたい)。ただ、僕は3月に転んでしまってまだ復帰したばかりで、この全日本を復帰戦と考えてずっと走ってきたので、今日は走りきれたことに、復帰までの3ヶ月間の思いをぶつけられたかなと思います。
3位 横塚浩平(チーム右京)コメント
チーム右京は他チームに比べて少ない5人出走だったので、無理に自分達でレースを作りに行かないという方針でした。その結果終盤に4人残すことが出来たので、有力な動きに誰かが乗って行くという展開が出来たので、上手くいったと思います。
終盤に小石さんと新城選手、小林選手の3人が行って、みんながマークしていたので追走したのですが、僕は小石さんが前にいたおかげでローテーションに入らずに済んだので足を残すことができました。最後を自分が任されるという予定ではなかったと思うのですが、チームとして良い動きは出来たと思います。
入部さんがかなり自信を持って踏んでいって、自分がマークしていた選手でもあるので思い切って飛び出したら新城選手もついてきてくれたので、これは行くしかないと思い、ここはもう腹をくくって踏んでいきました。
普段からお世話になっている2人と逃げきれたのは自分としても嬉しかったのですが、走っていても力の差を感じました。今回ラスト一周の上りで新城選手にペース上げられてそのまま千切れてしまいましたけど、これが今の自分の精一杯だったので、それに関して悔いはないです。
こんな大舞台で表彰台に乗れるとは思っていなかったし、自分はチームのために動ければと思ってこのレースを走っていたので、信じられないという思いです。
男子エリート 結果(10.8kmx21周=227km)
1位 | 入部正太朗(シマノレーシング) | 6時間12分27秒 |
2位 | 新城幸也(バーレーン・メリダ) | |
3位 | 横塚浩平(チーム右京) | +8秒 |
4位 | 湊諒(シマノレーシング) | +1分41秒 |
5位 | 伊藤雅和(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) | +1分49秒 |
6位 | 草場啓吾(愛三工業レーシング) | |
7位 | 小林海(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー) | |
8位 | 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) | +2分30秒 |
9位 | 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン) | +2分34秒 |
10位 | 西村大輝(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) | +2分50秒 |
text&photo:Satoru Kato, Makoto AYANO, Yuichiro Hosoda
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