2019/05/25(土) - 05:52
標高2,247mの1級山岳チェレソーレ・レアーレにフィニッシュするジロ・デ・イタリア第13ステージで再び逃げ切りが決まる。逃げメンバーを振り切って独走したイルヌール・ザカリン(カチューシャ・アルペシン)が優勝するとともに総合3位に浮上。ニバリやログリッチェが動くも、ヤン・ポランツェ(UAEチームエミレーツ)がマリアローザを守っている。
出走サインを終えた初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) photo:Kei Tsuji
5月24日(金)第13ステージ ピネローロ〜チェレソーレ・レアーレ 196km ☆☆☆☆ photo:RCS Sport
5月24日(金)第13ステージ ピネローロ〜チェレソーレ・レアーレ 196km ☆☆☆☆ photo:RCS Sport
ジロ後半戦、第13ステージから第21ステージまでの9ステージのうち合計5ステージが山頂フィニッシュという濃密なレイアウト。トリノの西に広がる山岳地帯を走る196kmコースは今大会有数の難易度で、1級山岳リース峠(距離14.9km/平均6.4%)と2級山岳ピアン・デル・ルーポ(距離9.4km/平均8.7%)を越えてから、最後はフランス国境に近い標高2,247mのセッル湖まで駆け上がる。このジロ初登場の1級山岳チェレソーレ・レアーレ(距離20.3km/平均5.9%)は後半にかけて10%を刻む厳しい登りで、最大勾配は13%に達する。アルプスの山々に挑む厳しいステージは、逃げグループ形成のためのハイスピードアタック合戦で幕開けた。
一時的にメイン集団が割れて70名ほどの先行する激しいアタック合戦は約1時間にわたって続き、このハイスピードな展開によって初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)やアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)は1級山岳リース峠を前にグルペットを形成する。スタートから延々と続いたアタック合戦は43km地点で28名が先行を開始したところでようやく終了した。
逃げグループを形成した28名
バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)総合6位/6分02秒遅れ
アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)総合9位/7分30秒遅れ
イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)総合12位/7分45秒遅れ
マティア・カッタネオ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)総合24位/9分25秒遅れ
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)総合25位/9分33秒遅れ
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)山岳賞1位
ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)山岳賞2位
ニコラ・コンチ(イタリア、トレック・セガフレード)
ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)
ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ)
アンドレイ・ツェイツ(カザフスタン、アスタナ)
タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス)
エディ・ダンバー(アイルランド、チームイネオス)
ホセ・ロハス(スペイン、モビスター)
エクトル・カレテロ(スペイン、モビスター)
トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)
ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)
クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、ミッチェルトン・スコット)
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)
アントニオ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
アントワン・トールク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、EFエデュケーションファースト)
ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ルーベン・プラサ(スペイン、イスラエルサイクリングアカデミー)
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
クリスツ・ニーランズ(ラトビア、イスラエルサイクリングアカデミー)
ビクトル・デラパルテ(スペイン、CCCチーム)
逃げ集団に入ったバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) photo:CorVos
メイン集団のペースを作るユンボ・ヴィズマ photo:CorVos
落車リタイアしたタオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス) photo:CorVos
28名の逃げ集団の中で最も人数を揃えたのはトレック・セガフレードで、モレマの総合ジャンプアップを狙うとともにブランビッラ&チッコーネの山岳賞を固める作戦。他にもアスタナやモビスター、バーレーン・メリダが逃げに複数名メンバーを乗せて「前待ち作戦」に出る。ザカリンやアマドール、フォルモロ、ゲオゲガンハートというオールラウンダーを含むこの危険な逃げは、1級山岳リース峠通過時点でメイン集団に3分差をつけた。
ユンボ・ヴィズマがメイン集団の先頭にメンバーを集めて追走を開始するとタイム差は2分前後に。逃げ集団の中では66km地点でゲオゲガンハートが落車。チームイネオスの若い総合リーダーは鎖骨骨折によりレースを去っている。他にもこの日は序盤からリタイア者が続出し、ルイス・フェルファーク(ベルギー、サンウェブ)ジョヴァンニ・ロナルディ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)、イグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア、グルパマFDJ)、マーク・レンショー(オーストラリア、ディメンションデータ)がレースを去った。
続く2級山岳ピアン・デル・ルーポで逃げ集団は人数を減らすとともに、2分後方のメイン集団ではアスタナがペースアップを開始する。このペースアップの犠牲になったのはマリアローザを着るヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)やボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)、そしてユンボ・ヴィズマのアシストたち。マリアローザのいないメイン集団は1分15秒遅れで2級山岳ピアン・デル・ルーポを越えた。1級山岳リース峠に続いて2級山岳ピアン・デル・ルーポも先頭通過したチッコーネはチームメイトのブランビッラからマリアアッズーラを引き継いでいる。
2級山岳ピアン・デル・ルーポでペースアップを試みるアスタナ photo:CorVos
1級山岳チェレソーレ・レアーレを独走するイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) photo:LaPresse
独走でフィニッシュに向かうイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) photo:Kei Tsuji
「カンニバリ」のサインを通過するヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)ら photo:Kei Tsuji
最後の1級山岳チェレソーレ・レアーレに向かう緩斜面(残り40km地点)でマリアローザはメイン集団に復帰。逃げグループ内ではステージ優勝に向けたセレクションが始まり、残り25km地点でカレテロ、マスナダ、イサギレ、ドンブロウスキー、チッコーネが先行を開始。ここにアマドールとフォルモロ、ニエベ、ザカリン、モレマが追いつき、勾配が増すとともにやがてニエベ、ザカリン、モレマ、チッコーネの4名が先頭に立った。
ペースダウンによって再びタイム差が2分台まで広がったメイン集団では、ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)が距離を残してアタックに出る。前日に続いてタイム挽回を目指したランダは、逃げ集団から下がったアマドールとカレテロのアシストを受け、総合ライバルたちを引き離しにかかる。
ポッツォヴィーヴォのペースメイクによって再びマリアローザが脱落したメイン集団は、プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)、パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)という構成に。サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)はこの精鋭グループに入ることができず、マリアローザのポランツェとともに自分のペースを刻むのがやっとだった。
モレマのために力を尽くしたチッコーネが先頭から脱落すると、残り5km地点でザカリンがアタック。メイン集団の2分前方で繰り広げられたこのステージ優勝争いからモレマは脱落し、ニエベだけがザカリンと付かず離れずの距離で食らいついて残り2km。やがてニエベをふるい落としたザカリンがそのまま標高2,247mのフィニッシュラインまで独走した。
追走を続けたランダの後方では、ロペスがメカトラによって脱落する。ロペスはスペアバイクに乗って再スタートしたものの、ライバルたちに追いつくことができない。ニバリとログリッチェがお互いを徹底マークする中、そのアタックと牽制の隙をついて抜け出すことに成功したのはマイカとカラパス。最も冴えた登坂力を披露したカラパスは、チームメイトのランダに迫る勢いで1級山岳チェレソーレ・レアーレを駆け上がった。
先頭ではザカリンがニエベに35秒差をつけてステージ優勝し、1分20秒遅れでランダ、1分38秒遅れでカラパス、1分45秒遅れでモレマ、そして2分07秒遅れでマイカがフィニッシュ。これらの選手たちは2分57秒遅れで並んでフィニッシュした「二強(ニバリとログリッチェ)」からそれぞれ総合タイムを奪うことに成功している。ライバルたちに先行を許しながらも遅れを4分39秒に抑え込んだポランツェがマリアローザを守った。
1級山岳チェレソーレ・レアーレを登るヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)とプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:Kei Tsuji
並んで1級山岳チェレソーレ・レアーレを登るヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)とプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) photo:LaPresse
マリアビアンカに向かって走るパヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) photo:Kei Tsuji
精彩を欠いたサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)と、マリアローザ死守のために走るヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ photo:Kei Tsuji
独走でフィニッシュするイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) photo:CorVos
勝ち逃げの集団に乗り、そして逃げメンバーを全員ふるい落とすとともにステージ通算2勝目を飾ったザカリンは「総合ジャンプアップのことだけを考えていたのでステージ優勝は予想していなかった。だから少し驚きの勝利であると言える。最後はとにかく力を出し切ることだけを考えて走っていた」とコメント。この日の逃げによりザカリンは総合12位から総合3位までジャンプアップすることに成功した。
「ログリッチェはとても強く、間違いなくマリアローザのナンバーワン候補。でもまた明日からのステージで挑戦して、マリアローザを着たい」。2017年ジロ総合5位の29歳ザカリンはさらに総合順位を上げたい考えだ。
「ビッグネームに最後まで付いていけるとは思っていなかった。ハードなステージになるとは思っていたけど、ここまでハードだとは思わなかった」と語るのはマリアローザを死守したポランツェ。「マリアローザを少なくともあと1日は長く着ることができる。ヴェローナまで着続けるのは非現実的なので、毎日様子を見ながら走りたい」。
リタイア者が続出したこの第13ステージのフィニッシュに辿り着いたのは151名。チームメイト5名とともに48分53秒遅れのグルペット(タイムカットは1時間00分14秒)でフィニッシュした初山は「今日は10kmちょっとしかメイン集団で走ってないです。最初の4km登り(21km地点)でメイン集団から千切れてしまい、そこから前の集団に追いついたと思ったらその集団もメイン集団から脱落した選手たちだった。デマールのいるグルペットの中で走り、結局最後までメイン集団に追いつくことはありませんでした。タイムカットの時間は知らされていたので大丈夫でした。(冗談で)辛うじて生きてますが、明日はもっと厳しいステージになりそうです」とコメント。翌日はさらに完走を目指す選手には厳しい距離131km/獲得標高差4,000m/カテゴリー山岳5つという難易度5つ星コースが登場する。
1級山岳チェレソーレ・レアーレのフィニッシュを目指すグルペット photo:Kei Tsuji
並んでフィニッシュするプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)とヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:CorVos
ステージ優勝を飾ったイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) photo:LaPresse
マリアローザを守ったヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ photo:LaPresse
マリアアッズーラは再びジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)の手に photo:LaPresse
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一時的にメイン集団が割れて70名ほどの先行する激しいアタック合戦は約1時間にわたって続き、このハイスピードな展開によって初山翔(NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)やアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)は1級山岳リース峠を前にグルペットを形成する。スタートから延々と続いたアタック合戦は43km地点で28名が先行を開始したところでようやく終了した。
逃げグループを形成した28名
バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)総合6位/6分02秒遅れ
アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)総合9位/7分30秒遅れ
イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)総合12位/7分45秒遅れ
マティア・カッタネオ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)総合24位/9分25秒遅れ
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)総合25位/9分33秒遅れ
ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード)山岳賞1位
ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)山岳賞2位
ニコラ・コンチ(イタリア、トレック・セガフレード)
ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)
ヨン・イサギレ(スペイン、アスタナ)
アンドレイ・ツェイツ(カザフスタン、アスタナ)
タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス)
エディ・ダンバー(アイルランド、チームイネオス)
ホセ・ロハス(スペイン、モビスター)
エクトル・カレテロ(スペイン、モビスター)
トニー・ガロパン(フランス、アージェードゥーゼール)
ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット)
クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、ミッチェルトン・スコット)
ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)
アントニオ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)
アントワン・トールク(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
ジョセフロイド・ドンブロウスキー(アメリカ、EFエデュケーションファースト)
ファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)
ルーベン・プラサ(スペイン、イスラエルサイクリングアカデミー)
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・スーダル)
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ユンボ・ヴィズマがメイン集団の先頭にメンバーを集めて追走を開始するとタイム差は2分前後に。逃げ集団の中では66km地点でゲオゲガンハートが落車。チームイネオスの若い総合リーダーは鎖骨骨折によりレースを去っている。他にもこの日は序盤からリタイア者が続出し、ルイス・フェルファーク(ベルギー、サンウェブ)ジョヴァンニ・ロナルディ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ)、イグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア、グルパマFDJ)、マーク・レンショー(オーストラリア、ディメンションデータ)がレースを去った。
続く2級山岳ピアン・デル・ルーポで逃げ集団は人数を減らすとともに、2分後方のメイン集団ではアスタナがペースアップを開始する。このペースアップの犠牲になったのはマリアローザを着るヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ)やボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、ドゥクーニンク・クイックステップ)、そしてユンボ・ヴィズマのアシストたち。マリアローザのいないメイン集団は1分15秒遅れで2級山岳ピアン・デル・ルーポを越えた。1級山岳リース峠に続いて2級山岳ピアン・デル・ルーポも先頭通過したチッコーネはチームメイトのブランビッラからマリアアッズーラを引き継いでいる。
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ペースダウンによって再びタイム差が2分台まで広がったメイン集団では、ミケル・ランダ(スペイン、モビスター)が距離を残してアタックに出る。前日に続いてタイム挽回を目指したランダは、逃げ集団から下がったアマドールとカレテロのアシストを受け、総合ライバルたちを引き離しにかかる。
ポッツォヴィーヴォのペースメイクによって再びマリアローザが脱落したメイン集団は、プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ)、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)、リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター)、パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス)という構成に。サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)はこの精鋭グループに入ることができず、マリアローザのポランツェとともに自分のペースを刻むのがやっとだった。
モレマのために力を尽くしたチッコーネが先頭から脱落すると、残り5km地点でザカリンがアタック。メイン集団の2分前方で繰り広げられたこのステージ優勝争いからモレマは脱落し、ニエベだけがザカリンと付かず離れずの距離で食らいついて残り2km。やがてニエベをふるい落としたザカリンがそのまま標高2,247mのフィニッシュラインまで独走した。
追走を続けたランダの後方では、ロペスがメカトラによって脱落する。ロペスはスペアバイクに乗って再スタートしたものの、ライバルたちに追いつくことができない。ニバリとログリッチェがお互いを徹底マークする中、そのアタックと牽制の隙をついて抜け出すことに成功したのはマイカとカラパス。最も冴えた登坂力を披露したカラパスは、チームメイトのランダに迫る勢いで1級山岳チェレソーレ・レアーレを駆け上がった。
先頭ではザカリンがニエベに35秒差をつけてステージ優勝し、1分20秒遅れでランダ、1分38秒遅れでカラパス、1分45秒遅れでモレマ、そして2分07秒遅れでマイカがフィニッシュ。これらの選手たちは2分57秒遅れで並んでフィニッシュした「二強(ニバリとログリッチェ)」からそれぞれ総合タイムを奪うことに成功している。ライバルたちに先行を許しながらも遅れを4分39秒に抑え込んだポランツェがマリアローザを守った。
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勝ち逃げの集団に乗り、そして逃げメンバーを全員ふるい落とすとともにステージ通算2勝目を飾ったザカリンは「総合ジャンプアップのことだけを考えていたのでステージ優勝は予想していなかった。だから少し驚きの勝利であると言える。最後はとにかく力を出し切ることだけを考えて走っていた」とコメント。この日の逃げによりザカリンは総合12位から総合3位までジャンプアップすることに成功した。
「ログリッチェはとても強く、間違いなくマリアローザのナンバーワン候補。でもまた明日からのステージで挑戦して、マリアローザを着たい」。2017年ジロ総合5位の29歳ザカリンはさらに総合順位を上げたい考えだ。
「ビッグネームに最後まで付いていけるとは思っていなかった。ハードなステージになるとは思っていたけど、ここまでハードだとは思わなかった」と語るのはマリアローザを死守したポランツェ。「マリアローザを少なくともあと1日は長く着ることができる。ヴェローナまで着続けるのは非現実的なので、毎日様子を見ながら走りたい」。
リタイア者が続出したこの第13ステージのフィニッシュに辿り着いたのは151名。チームメイト5名とともに48分53秒遅れのグルペット(タイムカットは1時間00分14秒)でフィニッシュした初山は「今日は10kmちょっとしかメイン集団で走ってないです。最初の4km登り(21km地点)でメイン集団から千切れてしまい、そこから前の集団に追いついたと思ったらその集団もメイン集団から脱落した選手たちだった。デマールのいるグルペットの中で走り、結局最後までメイン集団に追いつくことはありませんでした。タイムカットの時間は知らされていたので大丈夫でした。(冗談で)辛うじて生きてますが、明日はもっと厳しいステージになりそうです」とコメント。翌日はさらに完走を目指す選手には厳しい距離131km/獲得標高差4,000m/カテゴリー山岳5つという難易度5つ星コースが登場する。
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ジロ・デ・イタリア2019第13ステージ結果
1位 | イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) | 5:34:40 |
2位 | ミケル・ニエベ(スペイン、ミッチェルトン・スコット) | 0:00:35 |
3位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | 0:01:20 |
4位 | リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) | 0:01:38 |
5位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | 0:01:45 |
6位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:02:07 |
7位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) | 0:02:57 |
8位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | |
9位 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) | 0:03:34 |
10位 | ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:03:50 |
11位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:04:19 |
15位 | ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 0:04:39 |
17位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) | 0:05:00 |
21位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーションファースト) | 0:10:16 |
140位 | 初山翔(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) | 0:48:53 |
DNF | ルイス・フェルファーク(ベルギー、サンウェブ) | |
DNF | ジョヴァンニ・ロナルディ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ) | |
DNF | イグナタス・コノヴァロヴァス(リトアニア、グルパマFDJ) | |
DNF | マーク・レンショー(オーストラリア、ディメンションデータ) | |
DNF | タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームイネオス) | |
DNS | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、ディメンションデータ) | |
DNS | ジェームス・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) | |
DNS | ロジャー・クルーゲ(ドイツ、ロット・スーダル) |
マリアローザ 個人総合成績
1位 | ヤン・ポランツェ(スロベニア、UAEチームエミレーツ) | 54:28:59 |
2位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィズマ) | 0:02:25 |
3位 | イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) | 0:02:56 |
4位 | バウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード) | 0:03:06 |
5位 | ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) | 0:04:09 |
6位 | リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) | 0:04:22 |
7位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:04:28 |
8位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | 0:05:08 |
9位 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) | 0:07:13 |
10位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:07:48 |
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) | 194pts |
2位 | パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | 183pts |
3位 | リチャル・カラパス(エクアドル、モビスター) | 57pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) | 90pts |
2位 | イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) | 42pts |
3位 | ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード) | 40pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 | パヴェル・シヴァコフ(ロシア、チームイネオス) | 54:36:12 |
2位 | ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) | 0:00:35 |
3位 | ヴァランタン・マデュアス(フランス、グルパマFDJ) | 0:04:11 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 163:41:07 |
2位 | ミッチェルトン・スコット | 0:15:48 |
3位 | EFエデュケーションファースト | 0:19:56 |
text&photo:Kei Tsuji in Ceresole Reale, Italy