2019/04/06(土) - 22:41
4月7日(日)フランドルの王者が決まる。ベルギーのフランドル地方を舞台に第103回ロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)が開催。降雨が予想されている石畳&急坂のバトルの見どころと注目選手をプレビューします。
急坂が17カ所登場 オウデクワレモントとパテルベルグで決着?
「モニュメント」と呼ばれる世界五大ワンデークラシックの中でも、ひと際大きな存在感を見せるのが「クラシックの王様」ことロンド・ファン・フラーンデレン(UCIワールドツアー)。1913年に初開催され、長年ベルギー北部のフランドル地方で愛され続けてきた大会が、4月7日(日)、103回目の開催を迎える。
フランス語名の「ツール・デ・フランドル」と呼ばれることもあるが、現地フラマン語(オランダ語)に準じると「ロンド・ファン・フラーンデレン」。フランドル地方最大のロードレースであり、そのステータスは「世界一」であると言える。
自転車競技熱が高いフランドル地方で開催されるだけに、沿道には熱狂的なファンが詰めかけ、頭上にはフランドルの象徴である(ベルギー全体の象徴ではない)フレミッシュライオンが描かれたイエローフラッグが翻る。今年もフランドル地方のクラシックシーズンの熱気はこのロンドで頂点に達する。人口650万人のフランドル地方にあって、毎年70万人前後の観客が沿道に駆けつけるとも。ロードレースが国技と呼ばれるだけのことはある。
ロンド・ファン・フラーンデレンがそれだけ高いステータスを誇っている理由、それは他のクラシックレースには見られない過酷なコース設定だ。テクニカルかつ細い農道を駆け抜け、断続的に登場する石畳坂に挑む。コース全長は270.1km。最も高い場所でも標高150mほどだが、1日の獲得標高差は2,500m前後に達する。
1913年から1976年はヘント、1977年から1997年はセント・ニクラス、そして1998年から19年間ブルージュでスタートが切られてきたが、2017年から2021年までアントワープにスタート地点が置かれることが決まっている。フィニッシュ地点は例年同様レース博物館のあるオウデナールデだ。
登場するのは17カ所の急坂で、2017年に5年ぶりに復活した「ミュール・カペルミュール(正式名称ミュール・ファン・ヘラールツベルヘン)」は今年も健在。「ミュール」はフィニッシュから100km近く離れているが、2017年はここで勝利につながる大きな動きが生まれている。
勝負を決めるのは「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」を含む大小の周回コースで、2回目の「オウデ・クワレモント」からエース級選手たちによる駆け引きが始まるだろう。渋滞によってバイクを押す選手も続出する最大勾配22%の「コッペンベルグ」を皮切りに、フィニッシュまで一瞬たりとも気が抜けない約1時間の闘いが始まる。登り単体ではなく、チーム力が問われる登り手前の位置取り合戦も重要なファクターを担う。
連続する石畳の登りでのアタック合戦を経て(集団は精鋭に絞られた状態で)、本命たちが最後の「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」に突入する。この2つの名物坂はいずれも石畳に覆われており、前者が平均4%/最大11.6%/長さ2200m、後者が平均12.9%/最大20.3%/長さ360m。フィニッシュから13.5kmしか離れていない最後の「パテルベルグ」で決定的な動きが生まれるはずだ。
同日開催のUCI女子ワールドツアーレースはオウデナールデを発着する159kmで、急坂の数は10ヶ所。「クルイスベルグ」と「オウデ・クワレモント」「パテルベルグ」が終盤に登場するレイアウトは男子レースと共通だ。
天気予報によると、気温は最高17度/最低8度で例年より高め。しかし雨時々曇りの予報が出ており、雷雨になる可能性も。東風が吹く予報が出ているため、最後の「パテルベルグ」からフィニッシュ地点までは概ね向かい風となる。
急坂が17カ所登場 オウデクワレモントとパテルベルグで決着?
「モニュメント」と呼ばれる世界五大ワンデークラシックの中でも、ひと際大きな存在感を見せるのが「クラシックの王様」ことロンド・ファン・フラーンデレン(UCIワールドツアー)。1913年に初開催され、長年ベルギー北部のフランドル地方で愛され続けてきた大会が、4月7日(日)、103回目の開催を迎える。
フランス語名の「ツール・デ・フランドル」と呼ばれることもあるが、現地フラマン語(オランダ語)に準じると「ロンド・ファン・フラーンデレン」。フランドル地方最大のロードレースであり、そのステータスは「世界一」であると言える。
自転車競技熱が高いフランドル地方で開催されるだけに、沿道には熱狂的なファンが詰めかけ、頭上にはフランドルの象徴である(ベルギー全体の象徴ではない)フレミッシュライオンが描かれたイエローフラッグが翻る。今年もフランドル地方のクラシックシーズンの熱気はこのロンドで頂点に達する。人口650万人のフランドル地方にあって、毎年70万人前後の観客が沿道に駆けつけるとも。ロードレースが国技と呼ばれるだけのことはある。
ロンド・ファン・フラーンデレンがそれだけ高いステータスを誇っている理由、それは他のクラシックレースには見られない過酷なコース設定だ。テクニカルかつ細い農道を駆け抜け、断続的に登場する石畳坂に挑む。コース全長は270.1km。最も高い場所でも標高150mほどだが、1日の獲得標高差は2,500m前後に達する。
1913年から1976年はヘント、1977年から1997年はセント・ニクラス、そして1998年から19年間ブルージュでスタートが切られてきたが、2017年から2021年までアントワープにスタート地点が置かれることが決まっている。フィニッシュ地点は例年同様レース博物館のあるオウデナールデだ。
登場するのは17カ所の急坂で、2017年に5年ぶりに復活した「ミュール・カペルミュール(正式名称ミュール・ファン・ヘラールツベルヘン)」は今年も健在。「ミュール」はフィニッシュから100km近く離れているが、2017年はここで勝利につながる大きな動きが生まれている。
勝負を決めるのは「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」を含む大小の周回コースで、2回目の「オウデ・クワレモント」からエース級選手たちによる駆け引きが始まるだろう。渋滞によってバイクを押す選手も続出する最大勾配22%の「コッペンベルグ」を皮切りに、フィニッシュまで一瞬たりとも気が抜けない約1時間の闘いが始まる。登り単体ではなく、チーム力が問われる登り手前の位置取り合戦も重要なファクターを担う。
連続する石畳の登りでのアタック合戦を経て(集団は精鋭に絞られた状態で)、本命たちが最後の「オウデ・クワレモント」と「パテルベルグ」に突入する。この2つの名物坂はいずれも石畳に覆われており、前者が平均4%/最大11.6%/長さ2200m、後者が平均12.9%/最大20.3%/長さ360m。フィニッシュから13.5kmしか離れていない最後の「パテルベルグ」で決定的な動きが生まれるはずだ。
同日開催のUCI女子ワールドツアーレースはオウデナールデを発着する159kmで、急坂の数は10ヶ所。「クルイスベルグ」と「オウデ・クワレモント」「パテルベルグ」が終盤に登場するレイアウトは男子レースと共通だ。
天気予報によると、気温は最高17度/最低8度で例年より高め。しかし雨時々曇りの予報が出ており、雷雨になる可能性も。東風が吹く予報が出ているため、最後の「パテルベルグ」からフィニッシュ地点までは概ね向かい風となる。
登場する17カ所の急坂
区間 | 地点 | 名称 | 路面 | 平均勾配 | 最大勾配 | 長さ |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 119km | オウデ・クワレモント | 石畳 | 4.00% | 11.60% | 2200m |
2 | 130km | コルテケール | 舗装 | 6.40% | 17.10% | 1000m |
3 | 136km | ラドゥーゼ | 舗装 | 5.80% | 12.20% | 1100m |
4 | 140km | ウォルヴェンベルグ | 舗装 | 7.90% | 17.30% | 645m |
5 | 149km | レベルグ | 舗装 | 4.20% | 13.80% | 950m |
6 | 153km | ベレンドリース | 舗装 | 7.00% | 12.30% | 940m |
7 | 160km | テンボッシュ | 舗装 | 6.90% | 8.70% | 450m |
8 | 171km | ミュール・カペルミュール | 石畳 | 9.20% | 19.80% | 1075m |
9 | 198km | カナリーベルグ | 舗装 | 7.70% | 14.00% | 1000m |
10 | 214km | オウデ・クワレモント | 石畳 | 4.00% | 11.60% | 2200m |
11 | 217km | パテルベルグ | 石畳 | 12.90% | 20.30% | 360m |
12 | 224km | コッペンベルグ | 石畳 | 11.60% | 22.00% | 600m |
13 | 230km | シュテインビークドリシュ | 舗装 | 5.30% | 6.70% | 700m |
14 | 232km | ターインベルグ | 石畳 | 6.60% | 15.80% | 530m |
15 | 243km | クルイスベルグ | 石畳 | 5.00% | 9.00% | 2500m |
16 | 253km | オウデ・クワレモント | 石畳 | 4.00% | 11.60% | 2200m |
17 | 256km | パテルベルグ | 石畳 | 12.90% | 20.30% | 360m |
ドゥクーニンクの牙城を崩すのはGVA?サガン?ファンアールト?ファンデルプール?
2018年に優勝を飾ったニキ・テルプストラ(オランダ、ディレクトエネルジー)は強豪ベルギーチームからフランスのUCIプロコンチームに移籍した。今シーズン、ディフェンディングチャンピオンのテルプストラはクールネ〜ブリュッセル〜クールネとル・サミンで3位表彰台。チーム力が半減したことは否めないが、2014年のパリ〜ルーベ覇者は「北のクラシック」の勝ち方を知っている。
これまでの102回大会のうち、ベルギー人選手による優勝は69回に上る。地元ベルギーの期待を背負う常勝チームと言えばドゥクーニンク・クイックステップだ。2003年のチーム設立以降、パトリック・ルフェーブルGM率いるチームは7回ロンド制覇を達成。2017年の優勝者フィリップ・ジルベール(ベルギー)はこの大一番を前に体調を崩してしまったが、オンループ・ヘットニュースブラッドとE3ビンクバンククラシックを制したゼネク・スティバル(チェコ)や、E3ビンクバンククラシック5位とドワーズ・ドール・フラーンデレン3位の成績を残して「アルデンヌクラシック」から「北のクラシック」へのシフトチェンジを宣言しているボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)、イヴ・ランパールト(ベルギー)といった勝てる役者揃い。チーム力を生かして「ウルフパック(狼の群れ)」総攻撃を仕掛けてくるだろう。
毎年優勝候補に挙げられ、2014年と2017年に2位を経験しているグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム)はまだこのロンドで勝てていない。同じくベルギーのオリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)はミラノ〜サンレモ2位、ヘント〜ウェヴェルヘム3位という安定感を発揮していたが、今週体調を崩したためそのコンディションは未知数。セップ・ファンマルク(ベルギー、EFエデュケーションファースト)はE3ビンクバンククラシックの落車で膝を痛めており、トップコンディションとは言えない状況だ。
ベルギーの新世代を象徴するのが、2015年に5位に入った25歳ティシュ・ベノート (ベルギー、ロット・スーダル)や、2018年9位の24歳ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)ら。特に今シーズンからUCIワールドチームの一員としてロードレースに本格参戦しているファンアールトはストラーデビアンケ3位、ミラノ〜サンレモ6位、E3ビンクバンククラシック2位と、シクロクロスシーズンを終えてもなお好調子をキープしている。
シクロクロスと言えば、もちろん世界チャンピオンのマチュー・ファンデルプール(オランダ、コレンドン・サーカス)も忘れてはならない。ロードのオランダチャンピオンジャージを着る24歳ファンデルプールは今大会最大の注目選手と言っても良い。ヘント〜ウェヴェルヘムで4位に入ると、ドワーズ・ドール・フラーンデレンでついにUCIワールドツアーレース初優勝を飾った。出場選手の中で最年長(39歳)で、唯一ロンドで2度の優勝を経験しているステイン・デヴォルデル(ベルギー)がファンデルプールのチームメイトとして走る。
2016年に優勝したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)はシーズン序盤の体調不良で調整が遅れていたが、ミラノ〜サンレモで4位に入り、ヘント〜ウェヴェルヘムでは攻撃を仕掛けてレースをかき回した。2018年にパリ〜ルーベを制したサガンは、このロンドに集中するためドワーズ・ドール・フラーンデレンを欠場している。
ミラノ〜サンレモ7位、ドワーズ・ドール・フラーンデレン31位という成績を残している世界チャンピオンのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)はロンド初出場。「石畳を恐れていない」と語るバルベルデはロンドへの挑戦を経て「アルデンヌクラシック」に移行する。同様に「アルデンヌ」狙いのマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)もロンド初出場だ。
過酷なロンドでは大集団スプリントに持ち込まれる可能性はゼロに等しい。しかしアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ)が2015年に勝っているように、持ち前の爆発力をうまく発揮することができればスプリンターも上位を狙うことができる。ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、トレック・セガフレード)やアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)、マッテオ・トレンティン(イタリア、ミッチェルトン・スコット)といった選手も展開によっては十分に勝負に絡んでくるだろう。
text:Kei Tsuji
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