ピレネーの峠をつなぐ65kmのショートステージでナイロ・キンタナが5年ぶりのステージ優勝を達成。ライバルたちのアタックに総合2位クリストファー・フルームが失速し、総合首位ゲラント・トーマスがマイヨジョーヌのリードを広げることに成功した。
グリッドスタート方式についたマイヨジョーヌのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)ら photo:CorVos
ツール・ド・フランス2018第17ステージ photo:A.S.O.
ツール・ド・フランス2018第17ステージ photo:A.S.O.
65kmという過去30年間のロードステージで最も短い異例のショートコースにピレネーの3つの峠が詰め込まれ、コースの59%が登りで、獲得標高差が3,100mに達し、「グリットスタート」という特殊なスタート方式を採用した第17ステージ。第11ステージと第12ステージに続く3つ目の山頂フィニッシュは、出場する全ての選手にとって最大の試練となった。
距離の短さはレースの簡単さを意味するものではなくむしろ逆。大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏の言葉を借りれば「ダイナマイトステージ」。バニェール=ド=ルションをスタートしてすぐに1級山岳ペイラギュード峠(全長14.9km/平均6.7%)の登りが始まり、休む間もなく1級山岳ヴァル・ルーロン・アゼ峠(全長7.4km/平均8.3%)を越え、ツール初登場となる超級山岳サンラリ=スラン/ポルテ峠(全長16km/平均8.7%)を駆け上がる。トゥールマレー峠よりも高い標高2,215mのポルテ峠は今大会最高地点だ。
前日までの総合成績に応じてグループに分けられ、総合上位陣を先頭にスタートするグリッドスタート方式がロードレース史上初めて採用された。先頭に並ぶマイヨジョーヌのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)と総合順位に沿って同じグループでスタートするのは総合上位20名。その後方で総合21〜40位、総合41〜60位、総合61〜80位、総合81〜100位、総合101〜120位、総合121〜146位のグループが同時にスタートする。ニュートラル区間が無く、スタートが切られた瞬間から全開走行が始まるため、どの選手もスタートの4〜5時間前からアップを開始した。
総合順位で区切られたスタート位置 photo:CorVos
序盤の1級山岳ペイラギュード峠でチームスカイがメイン集団を牽引 photo:CorVos
下りをこなすマイヨジョーヌのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos
この日もポイント獲得のために動いたマイヨアポワのジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) photo:CorVos
開幕前から話題に上っていたほどの刺激的なスタートにはならず、ゆったりとクリートをはめる総合上位陣を追い抜いてリリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)がファーストアタック。瞬時にラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)やバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)といった多くの選手が飛び出し、そこからタネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)が独走に持ち込んだ。
一時的に追い付いたニコラ・エデ(フランス、コフィディス)を振り切ったカンゲルトは1級山岳ペイラギュード峠を単独登頂。後方では追走グループが組織され、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、クリスチャン・デュラセック(クロアチア、バーレーン・メリダ)、ヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター)がカンゲルトを追いかける。1級山岳ペイラギュード峠を2番手通過したアラフィリップはデュラセックとともに下り区間で先頭カンゲルトに追い付いた。
追走10名(イェーツやバルベルデ)から1分、チームスカイ率いるメイン集団から最大3分45秒のリードを得た先頭3名(アラフィリップ、デュラセック、カンゲルト)が続く1級山岳ヴァル・ルーロン・アゼ峠にアタック。キャンピングカーが連なる1級山岳ヴァル・ルーロン・アゼ峠を先頭で登りきったアラフィリップはこの日合計18ポイントを獲得し、最終的なマイヨアポワ獲得に向けて大きく前進した。
1級山岳ヴァル・ルーロン・アゼ峠でチームスカイに対して攻撃を仕掛けたのはアージェードゥーゼールとモビスター。ともにアシストを動員してメイン集団のペースを上げ、先頭グループから2分遅れで頂上を通過していく。危険と見られた下り区間ではマイヨヴェールのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が落車。右半身にダメージを負ったサガンはグルペット内でフィニッシュに辿り着いている。
右半身にダメージを負ったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)がフィニッシュを目指す photo:Kei Tsuji
ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)がひくメイン集団が超級山岳サンラリ=スラン/ポルテ峠を登る photo:CorVos
精鋭グループの中からアタックするトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:CorVos
エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)の牽引でクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)がポジションを下げる photo:CorVos
下り区間でデュラセックが遅れたため、先頭はアラフィリップとカンゲルトの2人に絞られた状態で超級山岳ポルテ峠の登坂に取り掛かる。全長16km、平均勾配が8.7%に達する超級山岳ポルテ峠は主催者曰く「モンヴァントゥーに次いでツール史上2番目に厳しい登り」。連日逃げているアラフィリップは10%を超える区間も登場する登りで脱落し、先頭ではカンゲルトの独走が始まった。
後方ではバルベルデがマイカとダニエル・マルティネス(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)を引き連れて追走を続け、その後方にモビスター率いるメイン集団という位置関係。総合上位陣の中で最初に仕掛けたのは総合10位ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)と総合8位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)。総合で4分以上遅れている2人の動きにチームスカイは反応しなかった。
やがてマーティンを引き離したキンタナは前を走るバルベルデやマイカに追いつく。頂上まで10kmを残して先頭カンゲルトから50秒で追走3名(キンタナ、バルベルデ、マイカ)、1分で追走1名マーティン、1分30秒遅れでメイン集団。ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)がペースを作るメイン集団から、頂上まで13.5kmを残して総合4位プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)がアタックした。
ログリッチェの動きには瞬発的に総合3位クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)が反応する。フルームはトーマスを待つ必要があるためログリッチェには協力しない。この動きを封じにかかったのは総合2位トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)で、マイヨジョーヌのトーマスはその後ろでライバルたちの動きを監視した。
独走でフィニッシュに向かうナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji
コロンビアファンの声援を受けるナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji
キンタナを追いかけるダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ) photo:Kei Tsuji
プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)の加速に対応するマイヨジョーヌのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
トーマスやデュムランから遅れたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
マイヨブランを守るために追い込むピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール) photo:Kei Tsuji
超級山岳サンラリ=スラン/ポルテ峠で繰り広げられたマイヨジョーヌ争い photo:Kei Tsuji
デュムランの牽引によってログリッチェとフルームは引き戻され、10名弱(トーマス、フルーム、デュムラン、ログリッチェ、バルデ、ランダ、クライスヴァイク)に絞られた精鋭グループをプールスとエガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)が献身的に牽引。ハイペースで進む精鋭グループの中でロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)は苦しい表情を浮かべて脱落する。
残り8.5km地点でキンタナとマイカ(バルベルデは脱落)の2人が先頭カンゲルトを追い抜いていく。コロンビアンライダーの登坂力は冴え渡り、残り6.5km地点でマイカを引き離した。先頭独走状態となったキンタナは、追いすがるマーティンとのタイム差25秒を維持したまま霧に包まれた超級山岳ポルテ峠の頂上を目指した。
メイン集団から続いてアタックしたステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)を、ベルナルがトーマスとフルーム、デュムラン、ログリッチェ、ランダを引き連れて吸収。その後もロットNLユンボは攻撃の手を緩めなかった。続いて残り3km地点でログリッチェがアタック。この動きもベルナルによって吸収されたが、ここで4度のツール総合優勝者フルームがついに遅れた。
フルームの脱落に色めき立つデュムランとログリッチェがアタックを繰り返し、いずれの動きにもトーマスが対処する。フルームはベルナルのペーシングを受けたものの、ライバルたちとのタイム差は広がっていった。
先頭キンタナは追走マーティンにタイム差を詰められながらも、最終的に28秒差をつけて超級山岳ポルテ峠の山頂にフィニッシュ。2013年第20ステージ以来となる、実に5年ぶりのステージ優勝を飾った。
デュムランとログリッチェのアタックを全て封じたマイヨジョーヌのトーマスはフィニッシュ手前でライバルたちをふるい落とすことに成功。ログリッチェとデュムランに5秒差をつけるとともに、ステージ3位に入ってボーナスタイム4秒を獲得している。総合3位にダウンしたフルームに代わってデュムランが総合2位に浮上したものの、首位トーマスとのタイム差は1分59秒に広がった。キンタナとマーティンはそれぞれ総合ジャンプアップに成功している。
マーティンを振り切ってフィニッシュするナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Luca Bettini
ライバルたちを振り切ってフィニッシュするゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Luca Bettini
トーマスに先行を許したプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)とトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:Luca Bettini
1分35秒遅れでフィニッシュし、総合3位に順位を下げたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Luca Bettini
「これはずっと積極的に走り、働き続けたチームの勝利だ。チームの力を見せつけることができたと思う。特に今日は前で待っていてくれたアレハンドロ・バルベルデのおかげで有利にレースを進めることができた。総合優勝を狙うには分が悪いけど、これからもハードなレースに持ち込んでかき回したい。この勝利でチームは落ち着いてこれからの勝負に挑むことができる」。総合8位から総合5位に順位を上げたキンタナはそう語る。
総合リード拡大に成功したトーマスは「残り4〜5kmの時点でクリス(フルーム)が今日は調子が良くないと言ってきたんだ。最後はログリッチェとデュムランのアタックに反応して、ステージ3位のボーナスタイムを狙って加速するとタイム差までついた。総合リードを広げ、総合優勝に向けて良い位置につけていることは間違いないけど、これからもアプローチは変わらない。小さいことをコツコツと積み重ねるだけ。チームの強みを生かして、チームとして戦っていく」とコメント。第17ステージを終えて総合3位フルームは2分31秒遅れ。果敢にアタックを繰り返した総合4位ログリッチェがフルームの16秒後方にまで迫っている。
この日はタイムトライアルと同じ25%という比較的余裕のあるタイムリミットが設定された。ステージ優勝者キンタナの優勝タイムが2時間21分27秒だったので、タイムリミットは35分22秒。中盤に落車したサガンを含めて146名全員が制限時間内に完走している。サガンはレース後のX線検査で骨折は認められず、明朝の様子を見て第18ステージのスタート可否を決定する。
また、ボディーガードとともに残り5km地点のチームバス駐車場まで下山中、フルームがジャンダルマリー(国家憲兵隊)に制止されて転倒するという事故が発生。幸いフルームは怪我を免れている。
5年ぶりのステージ優勝を飾ったナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Luca Bettini
マイヨジョーヌのリード拡大に成功したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Luca Bettini



65kmという過去30年間のロードステージで最も短い異例のショートコースにピレネーの3つの峠が詰め込まれ、コースの59%が登りで、獲得標高差が3,100mに達し、「グリットスタート」という特殊なスタート方式を採用した第17ステージ。第11ステージと第12ステージに続く3つ目の山頂フィニッシュは、出場する全ての選手にとって最大の試練となった。
距離の短さはレースの簡単さを意味するものではなくむしろ逆。大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏の言葉を借りれば「ダイナマイトステージ」。バニェール=ド=ルションをスタートしてすぐに1級山岳ペイラギュード峠(全長14.9km/平均6.7%)の登りが始まり、休む間もなく1級山岳ヴァル・ルーロン・アゼ峠(全長7.4km/平均8.3%)を越え、ツール初登場となる超級山岳サンラリ=スラン/ポルテ峠(全長16km/平均8.7%)を駆け上がる。トゥールマレー峠よりも高い標高2,215mのポルテ峠は今大会最高地点だ。
前日までの総合成績に応じてグループに分けられ、総合上位陣を先頭にスタートするグリッドスタート方式がロードレース史上初めて採用された。先頭に並ぶマイヨジョーヌのゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)と総合順位に沿って同じグループでスタートするのは総合上位20名。その後方で総合21〜40位、総合41〜60位、総合61〜80位、総合81〜100位、総合101〜120位、総合121〜146位のグループが同時にスタートする。ニュートラル区間が無く、スタートが切られた瞬間から全開走行が始まるため、どの選手もスタートの4〜5時間前からアップを開始した。




開幕前から話題に上っていたほどの刺激的なスタートにはならず、ゆったりとクリートをはめる総合上位陣を追い抜いてリリアン・カルメジャーヌ(フランス、ディレクトエネルジー)がファーストアタック。瞬時にラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)やバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)といった多くの選手が飛び出し、そこからタネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)が独走に持ち込んだ。
一時的に追い付いたニコラ・エデ(フランス、コフィディス)を振り切ったカンゲルトは1級山岳ペイラギュード峠を単独登頂。後方では追走グループが組織され、ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)、クリスチャン・デュラセック(クロアチア、バーレーン・メリダ)、ヘスス・エラーダ(スペイン、モビスター)がカンゲルトを追いかける。1級山岳ペイラギュード峠を2番手通過したアラフィリップはデュラセックとともに下り区間で先頭カンゲルトに追い付いた。
追走10名(イェーツやバルベルデ)から1分、チームスカイ率いるメイン集団から最大3分45秒のリードを得た先頭3名(アラフィリップ、デュラセック、カンゲルト)が続く1級山岳ヴァル・ルーロン・アゼ峠にアタック。キャンピングカーが連なる1級山岳ヴァル・ルーロン・アゼ峠を先頭で登りきったアラフィリップはこの日合計18ポイントを獲得し、最終的なマイヨアポワ獲得に向けて大きく前進した。
1級山岳ヴァル・ルーロン・アゼ峠でチームスカイに対して攻撃を仕掛けたのはアージェードゥーゼールとモビスター。ともにアシストを動員してメイン集団のペースを上げ、先頭グループから2分遅れで頂上を通過していく。危険と見られた下り区間ではマイヨヴェールのペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が落車。右半身にダメージを負ったサガンはグルペット内でフィニッシュに辿り着いている。




下り区間でデュラセックが遅れたため、先頭はアラフィリップとカンゲルトの2人に絞られた状態で超級山岳ポルテ峠の登坂に取り掛かる。全長16km、平均勾配が8.7%に達する超級山岳ポルテ峠は主催者曰く「モンヴァントゥーに次いでツール史上2番目に厳しい登り」。連日逃げているアラフィリップは10%を超える区間も登場する登りで脱落し、先頭ではカンゲルトの独走が始まった。
後方ではバルベルデがマイカとダニエル・マルティネス(コロンビア、EFエデュケーションファースト・ドラパック)を引き連れて追走を続け、その後方にモビスター率いるメイン集団という位置関係。総合上位陣の中で最初に仕掛けたのは総合10位ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ)と総合8位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)。総合で4分以上遅れている2人の動きにチームスカイは反応しなかった。
やがてマーティンを引き離したキンタナは前を走るバルベルデやマイカに追いつく。頂上まで10kmを残して先頭カンゲルトから50秒で追走3名(キンタナ、バルベルデ、マイカ)、1分で追走1名マーティン、1分30秒遅れでメイン集団。ワウト・プールス(オランダ、チームスカイ)がペースを作るメイン集団から、頂上まで13.5kmを残して総合4位プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ)がアタックした。
ログリッチェの動きには瞬発的に総合3位クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)が反応する。フルームはトーマスを待つ必要があるためログリッチェには協力しない。この動きを封じにかかったのは総合2位トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)で、マイヨジョーヌのトーマスはその後ろでライバルたちの動きを監視した。







デュムランの牽引によってログリッチェとフルームは引き戻され、10名弱(トーマス、フルーム、デュムラン、ログリッチェ、バルデ、ランダ、クライスヴァイク)に絞られた精鋭グループをプールスとエガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ)が献身的に牽引。ハイペースで進む精鋭グループの中でロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)は苦しい表情を浮かべて脱落する。
残り8.5km地点でキンタナとマイカ(バルベルデは脱落)の2人が先頭カンゲルトを追い抜いていく。コロンビアンライダーの登坂力は冴え渡り、残り6.5km地点でマイカを引き離した。先頭独走状態となったキンタナは、追いすがるマーティンとのタイム差25秒を維持したまま霧に包まれた超級山岳ポルテ峠の頂上を目指した。
メイン集団から続いてアタックしたステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ)を、ベルナルがトーマスとフルーム、デュムラン、ログリッチェ、ランダを引き連れて吸収。その後もロットNLユンボは攻撃の手を緩めなかった。続いて残り3km地点でログリッチェがアタック。この動きもベルナルによって吸収されたが、ここで4度のツール総合優勝者フルームがついに遅れた。
フルームの脱落に色めき立つデュムランとログリッチェがアタックを繰り返し、いずれの動きにもトーマスが対処する。フルームはベルナルのペーシングを受けたものの、ライバルたちとのタイム差は広がっていった。
先頭キンタナは追走マーティンにタイム差を詰められながらも、最終的に28秒差をつけて超級山岳ポルテ峠の山頂にフィニッシュ。2013年第20ステージ以来となる、実に5年ぶりのステージ優勝を飾った。
デュムランとログリッチェのアタックを全て封じたマイヨジョーヌのトーマスはフィニッシュ手前でライバルたちをふるい落とすことに成功。ログリッチェとデュムランに5秒差をつけるとともに、ステージ3位に入ってボーナスタイム4秒を獲得している。総合3位にダウンしたフルームに代わってデュムランが総合2位に浮上したものの、首位トーマスとのタイム差は1分59秒に広がった。キンタナとマーティンはそれぞれ総合ジャンプアップに成功している。




「これはずっと積極的に走り、働き続けたチームの勝利だ。チームの力を見せつけることができたと思う。特に今日は前で待っていてくれたアレハンドロ・バルベルデのおかげで有利にレースを進めることができた。総合優勝を狙うには分が悪いけど、これからもハードなレースに持ち込んでかき回したい。この勝利でチームは落ち着いてこれからの勝負に挑むことができる」。総合8位から総合5位に順位を上げたキンタナはそう語る。
総合リード拡大に成功したトーマスは「残り4〜5kmの時点でクリス(フルーム)が今日は調子が良くないと言ってきたんだ。最後はログリッチェとデュムランのアタックに反応して、ステージ3位のボーナスタイムを狙って加速するとタイム差までついた。総合リードを広げ、総合優勝に向けて良い位置につけていることは間違いないけど、これからもアプローチは変わらない。小さいことをコツコツと積み重ねるだけ。チームの強みを生かして、チームとして戦っていく」とコメント。第17ステージを終えて総合3位フルームは2分31秒遅れ。果敢にアタックを繰り返した総合4位ログリッチェがフルームの16秒後方にまで迫っている。
この日はタイムトライアルと同じ25%という比較的余裕のあるタイムリミットが設定された。ステージ優勝者キンタナの優勝タイムが2時間21分27秒だったので、タイムリミットは35分22秒。中盤に落車したサガンを含めて146名全員が制限時間内に完走している。サガンはレース後のX線検査で骨折は認められず、明朝の様子を見て第18ステージのスタート可否を決定する。
また、ボディーガードとともに残り5km地点のチームバス駐車場まで下山中、フルームがジャンダルマリー(国家憲兵隊)に制止されて転倒するという事故が発生。幸いフルームは怪我を免れている。


ツール・ド・フランス2018第16ステージ結果
1位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 2:21:27 |
2位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ) | 0:00:28 |
3位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) | 0:00:47 |
4位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) | 0:00:52 |
5位 | トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) | |
6位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) | 0:01:05 |
7位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) | 0:01:33 |
8位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 0:01:35 |
9位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | |
10位 | イルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン) | 0:02:01 |
11位 | ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) | 0:02:20 |
12位 | アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) | 0:02:32 |
13位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:02:35 |
14位 | ダヴィ・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ) | 0:03:23 |
15位 | ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) | 0:04:00 |
DNS | フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) | 70:34:11 |
2位 | トム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) | 0:01:59 |
3位 | クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) | 0:02:31 |
4位 | プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ロットNLユンボ) | 0:02:47 |
5位 | ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) | 0:03:30 |
6位 | ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、ロットNLユンボ) | 0:04:19 |
7位 | ミケル・ランダ(スペイン、モビスター) | 0:04:34 |
8位 | ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール) | 0:05:13 |
9位 | ダニエル・マーティン(アイルランド、UAEチームエミレーツ) | 0:06:33 |
10位 | ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ) | 0:09:31 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 452pts |
2位 | アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) | 170pts |
3位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) | 134pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ) | 140pts |
2位 | ワレン・バルギル(フランス、フォルトゥネオ・サムシック) | 73pts |
3位 | ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) | 54pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | ピエール・ラトゥール(フランス、アージェードゥーゼール) | 70:50:14 |
2位 | ギヨーム・マルタン(フランス、ワンティ・グループゴベール) | 0:06:27 |
3位 | エガン・ベルナル(コロンビア、チームスカイ) | 0:08:31 |
チーム総合成績
1位 | モビスター | 211:48:39 |
2位 | バーレーン・メリダ | 0:24:20 |
3位 | チームスカイ | 0:56:13 |
text&photo:Kei Tsuji in Saint-Lary Soulan, France