2018/04/22(日) - 12:54
4月22日(日)、「春のクラシック」を締めくくる第104回リエージュ〜バストーニュ〜リエージュが開催される。獲得標高差4,500mの難コースでバルベルデはメルクスの5勝記録に並ぶことができるか?アラフィリップやニバリ、クウィアトコウスキーをはじめ、注目選手をチェックしておこう。
116年の歴史を有するアルデンヌクラシック最終戦
歴史あるクラシックレースは数あれど、このリエージュほど長い歴史のあるロードレースは他に無い。リエージュの第1回大会が開催されたのは今から116年前の1892年。ツール・ド・フランス(1903年〜)はもちろんのこと近代オリンピック(1896年〜)や日本の箱根駅伝(1920年〜)よりも歴史が長く、「La Doyenne(ラ・ドワイエンヌ=最古参)」という愛称で呼ばれることも多い。
2018年は開催104回目。「モニュメント」と呼ばれる世界5大クラシック(サンレモ、ロンド、パリ〜ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)の1つに数えられており、格式の点ではアルデンヌ3連戦の中で際立って高い。
ベルギー西部のフランデレン地域を代表するのがロンド・ファン・フラーンデレンであれば、東部ワロン地域を代表するのがリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。レースの舞台となるのは、リエージュの南方に広がる丘陵地帯だ。コースはレース名の通りリエージュとバストーニュの往復。丘陵地帯を逆回りに8の字を描き、リエージュ近郊の街アンスでフィニッシュを迎える。
「アップダウンを繰り返し、最後は短い坂を駆け上がってフィニッシュ」というコースの特性は、他のアルデンヌ2戦(アムステルとフレーシュ)と共通だが、登り一つ一つの距離が長いのがリエージュの特徴だ。アムステルとフレーシュが「丘のレース」なら、リエージュは「山のレース」であると言える。ほとんどの登りは全長が2km以上であり、1日の獲得標高差は4,500mに達する。コース全長も258.5kmと長く、難易度、距離、格式においてアルデンヌナンバーワンと呼ばれるのも頷ける。
細かい上りを数え始めるとキリが無いようなアップダウンコース。そのうち、カテゴリーが付けられた登り坂は11カ所ある。選手たちが壁をよじ上っているような光景が見られる急勾配の「コート・ド・サンロシュ(平均勾配11.1%)」を経て、ラスト100kmを切ってからは断続的に登り坂が襲いかかる。
エディ・メルクスの記念碑が建てられた最大勾配17%の名物坂「コート・ド・ストック(平均勾配12.4%)」と、その前後の「コート・ド・ワンヌ(平均7.2%)」と「コート・ド・ラ・オートルヴェ(平均5.6%)」は道路工事の影響で今年もコースに組み込まれていない。レース主催者は代わりに「コート・ド・ポン(平均10.5%)」「コート・ド・ベルヴォー(平均6.8%)」「コート・ド・ラ・フェルムリベール(平均12.1%/最大19%)」という3つの連続する登り坂を導入している。かつての3連続坂よりも登坂距離は減ったが、勾配のある坂が増えている印象だ。
本格的な闘いのゴングが鳴らされるのが、フィニッシュ36km手前の「コート・ド・ラ・ルドゥット(平均8.9%)」から。フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)の出身地に近く、PHILのペイントが施されたこのラ・ルドゥットは最大勾配が17%に達する上りで、頂上通過後の吹きっさらし区間も要注意。
ラ・ルドゥット通過後は「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(平均9.3%)」と「コート・ド・サンニコラ(平均8.6%)」を立て続けにクリアし、リエージュの街中を抜けてアンスに至る登りに入る。2016年に導入された石畳坂「コート・ド・ラ・リューナニオ(平均10.5%)」は今年も通過しない。
フィニッシュ地点アンスに向かう登りは勾配4%前後。勾配の緩さから決定的なアタックは生まれにくいが、この高低差80mの上りこそ「永遠に終わらない」と形容されるほど、すでに上りに上った選手たちの脚を苦しめる。
厳しい登坂セレクションで生き残った数名もしくは小集団によるスプリントか、それともライバルを振り切った勇者による単独逃げ切りか。今週は最高気温が25度を超える暑さが続いており、日曜日の最高気温も24度ほど。夕方にかけて雷を伴う雨が降る予報も出ている。南風のため、概ね往路が向かい風で復路が追い風だ。
text:Kei.Tsuji
116年の歴史を有するアルデンヌクラシック最終戦
歴史あるクラシックレースは数あれど、このリエージュほど長い歴史のあるロードレースは他に無い。リエージュの第1回大会が開催されたのは今から116年前の1892年。ツール・ド・フランス(1903年〜)はもちろんのこと近代オリンピック(1896年〜)や日本の箱根駅伝(1920年〜)よりも歴史が長く、「La Doyenne(ラ・ドワイエンヌ=最古参)」という愛称で呼ばれることも多い。
2018年は開催104回目。「モニュメント」と呼ばれる世界5大クラシック(サンレモ、ロンド、パリ〜ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)の1つに数えられており、格式の点ではアルデンヌ3連戦の中で際立って高い。
ベルギー西部のフランデレン地域を代表するのがロンド・ファン・フラーンデレンであれば、東部ワロン地域を代表するのがリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。レースの舞台となるのは、リエージュの南方に広がる丘陵地帯だ。コースはレース名の通りリエージュとバストーニュの往復。丘陵地帯を逆回りに8の字を描き、リエージュ近郊の街アンスでフィニッシュを迎える。
「アップダウンを繰り返し、最後は短い坂を駆け上がってフィニッシュ」というコースの特性は、他のアルデンヌ2戦(アムステルとフレーシュ)と共通だが、登り一つ一つの距離が長いのがリエージュの特徴だ。アムステルとフレーシュが「丘のレース」なら、リエージュは「山のレース」であると言える。ほとんどの登りは全長が2km以上であり、1日の獲得標高差は4,500mに達する。コース全長も258.5kmと長く、難易度、距離、格式においてアルデンヌナンバーワンと呼ばれるのも頷ける。
細かい上りを数え始めるとキリが無いようなアップダウンコース。そのうち、カテゴリーが付けられた登り坂は11カ所ある。選手たちが壁をよじ上っているような光景が見られる急勾配の「コート・ド・サンロシュ(平均勾配11.1%)」を経て、ラスト100kmを切ってからは断続的に登り坂が襲いかかる。
エディ・メルクスの記念碑が建てられた最大勾配17%の名物坂「コート・ド・ストック(平均勾配12.4%)」と、その前後の「コート・ド・ワンヌ(平均7.2%)」と「コート・ド・ラ・オートルヴェ(平均5.6%)」は道路工事の影響で今年もコースに組み込まれていない。レース主催者は代わりに「コート・ド・ポン(平均10.5%)」「コート・ド・ベルヴォー(平均6.8%)」「コート・ド・ラ・フェルムリベール(平均12.1%/最大19%)」という3つの連続する登り坂を導入している。かつての3連続坂よりも登坂距離は減ったが、勾配のある坂が増えている印象だ。
本格的な闘いのゴングが鳴らされるのが、フィニッシュ36km手前の「コート・ド・ラ・ルドゥット(平均8.9%)」から。フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)の出身地に近く、PHILのペイントが施されたこのラ・ルドゥットは最大勾配が17%に達する上りで、頂上通過後の吹きっさらし区間も要注意。
ラ・ルドゥット通過後は「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(平均9.3%)」と「コート・ド・サンニコラ(平均8.6%)」を立て続けにクリアし、リエージュの街中を抜けてアンスに至る登りに入る。2016年に導入された石畳坂「コート・ド・ラ・リューナニオ(平均10.5%)」は今年も通過しない。
フィニッシュ地点アンスに向かう登りは勾配4%前後。勾配の緩さから決定的なアタックは生まれにくいが、この高低差80mの上りこそ「永遠に終わらない」と形容されるほど、すでに上りに上った選手たちの脚を苦しめる。
厳しい登坂セレクションで生き残った数名もしくは小集団によるスプリントか、それともライバルを振り切った勇者による単独逃げ切りか。今週は最高気温が25度を超える暑さが続いており、日曜日の最高気温も24度ほど。夕方にかけて雷を伴う雨が降る予報も出ている。南風のため、概ね往路が向かい風で復路が追い風だ。
text:Kei.Tsuji
登場する11カ所の登り
No. | 距離 | 残り距離 | 名称 | 登坂距離 | 平均勾配 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 72.0km | 186.5km | コート・ド・ボンヌル | 2.4km | 5.8% |
2 | 109.0km | 149.5km | コート・ド・サンロシュ | 1.0km | 11.2% |
3 | 152.0km | 106.5km | コート・ド・モンルソア | 4.0km | 6.1% |
4 | 168.0km | 90.5km | コート・ド・ポン | 1.0km | 10.5% |
5 | 172.0km | 86.5km | コート・ド・ベルヴォー | 1.1km | 6.8% |
6 | 180.0km | 78.5km | コート・ド・ラ・フェルメリベール | 1.2km | 12.1% |
7 | 198.0km | 60.5km | コル・ドゥ・ロジエ | 4.4km | 5.9% |
8 | 211.0km | 47.5km | コル・ドゥ・マキサール | 2.5km | 5% |
9 | 222.5km | 36km | コート・ド・ラ・ルドゥット | 2.0km | 8.9% |
10 | 239.0km | 19.5km | コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン | 1.3km | 11% |
11 | 253.5km | 5km | コート・ド・サンニコラ | 1.2km | 8.6% |
バルベルデはメルクスの5勝に並べるか アラフィリップやニバリが立ち向かう
獲得標高差が4,500mに達する山岳レースだけに、グランツールでリーダージャージを争うようにオールラウンダー&クライマーたちが毎年アンスに向けた上りで勝負を繰り広げる。
アムステルとフレーシュを調整レースとして捉え、リエージュに向けて牙を隠している選手もいると思われるが、やはり優勝候補を考える上で直前レースの活躍選手は外せない。フレーシュの「ユイの壁」で初勝利を飾ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップフロアーズ)は初出場した2015年に2位という成績を残している。フレーシュで終盤まで人数を残していたのがクイックステップフロアーズであり、リエージュでも2011年の優勝者フィリップ・ジルベール(ベルギー)やボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)、エンリク・マス(スペイン)ら、強力な布陣がレースを動かすだろう。
「ユイの壁」でポジションを挽回できずにフレーシュ5連覇を逃したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)は、38歳の誕生日(4月25日)が3日後に迫ったリエージュで大会連覇を狙う。バルベルデは2006年、2008年、2015年、2017年に優勝。その好調さはアムステル5位、フレーシュ2位という結果が何よりもの証拠で、ミケル・ランダ(スペイン)やマルク・ソレル(スペイン)はバルベルデを5勝目に導くことができるか。なお、リエージュ5勝という記録はこれまでエディ・メルクス(ベルギー)しか達成していない。
フレーシュでは終盤にアタックを仕掛けるなど、どこか不気味な動きを見せたヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)は2012年の2位を最後にリエージュの表彰台に上っていない。ミラノ〜サンレモに続くモニュメント制覇がかかっており、ツール・ド・フランスに向けて一時休養期間に入るニバリは気持ち良く春のクラシックを締めくくりたいところだ。
まだ春のクラシックで大きな成果を残せていないチームスカイは2017年3位のミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド)を中心に、ゲラント・トーマス(イギリス)やセルジオルイス・エナオ(コロンビア)を揃えての出場。2016年の優勝者ワウト・プールス(オランダ)はパリ〜ニースでの鎖骨骨折から復活したばかりであり、まだ完調とは言えない状態だ。
UAEチームエミレーツに移籍した2013年の優勝者ダニエル・マーティン(アイルランド)は、エースとして2016年3位のルイ・コスタ(ポルトガル)やディエゴ・ウリッシ(イタリア)を引き連れての出場。しかしマーティンはアムステルを途中リタイアし、フレーシュでは2回目の「ユイの壁」で脱落して61位に沈んでいる。
ロット・スーダルはティム・ウェレンス(ベルギー)をエースに据えるが、フレーシュの「ユイの壁」で麓から集団をリードしながら、そのまま3位に入ったイエール・ヴァネンデル(ベルギー)の登坂力は侮れない。ベルギー勢としては、2014年の優勝者サイモン・ゲランス(オーストラリア、BMCレーシング)とタッグを組むディラン・トゥーンス(ベルギー)にも注目したい。
ミラノ〜サンレモ以降、1ヶ月レースから離れ、ジロに向けて高地トレーニングを行っていたトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)の仕上がり具合も気になるところ。1年前のリエージュで4位に入ったマイケル・マシューズ(オーストラリア)は直前のフレーシュで5位。集団内に残ることができれば十分にチャンスがある。
リエージュでこれまで4回トップ10フィニッシュしているロマン・クロイツィゲル(チェコ、ミッチェルトン・スコット)はアムステル2位、フレーシュ4位と安定感抜群。フレーシュ6位のバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)や、同9位のロマン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼール)はより登坂力を必要とするリエージュでその力を発揮するはず。アスタナのミカエル・ヴァルグレン(デンマーク)とヤコブ・フルサング(デンマーク)も展開に絡んでくるだろう。
text:Kei Tsuji
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