2017/05/21(日) - 12:56
積極策に打って出たラリーサイクリングが逃げ切りを成功させ、エヴァン・ホフマン(アメリカ)が2勝目を獲得。危なげなく集団内で走りきったジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)が総合優勝を射止めた。
7日間に渡り続いたツアー・オブ・カリフォルニア(UCIワールドツアー)もいよいよ最終日。前日の個人TTで総合首位に躍進したジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)や、ポイント賞首位ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)など、各賞ジャージ着用者を先頭に、冬季はスキーリゾートとして栄えるマウンテン・ハイを出発した。
ロサンゼルス北東に隣接する高級住宅街パサデナを目指すコース延長は125kmと短いものの、昨年までの平坦コースとは違い、尾根伝いに2級、3級、2級と連続してKOMが現れるため、小集団を形成してゴールまで下りきれば総合逆転も起こり得る。逃げ切りにチャンスがあるだけに、序盤から激しくレースが動いた。
しかしロットNLユンボが率いる集団がハイペースを刻んだため、レース距離1/3を消化しても抜け出しは決まらない。5.2%勾配が5km続く最初の3級山岳ではベネットとラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)がペースを上げたが、特に差が生まれないままアタッカーたちに主導権が渡る。
抜け出したのは、第4ステージで金星を挙げ、翌日も逃げたラリーサイクリングのエヴァン・ホフマン(アメリカ)&ロブ・ブリットン(カナダ)コンビ、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)、ダビ・ロペス(スペイン、チームスカイ)、そして前日の個人TTでメカトラに見舞われヤングライダー賞を手放したラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)。さらにラリーサイクリングはセップ・クス(アメリカ)を合流させることに成功し、逃げを有利に持ち込んだ。
また、この日はテイラー・フィニー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)が落車リタイアに。鎖骨骨折が心配されたものの、本人のTwitter上で「擦過傷でズル剥けだけどそれだけで済んだ。包帯だらけで回復中」と語っており、長期離脱に繋がる怪我はなかった模様。
徐々にリードを広げていく逃げグループ内では、アシストを受けたハフマンが全ての山岳を先頭通過し、山岳賞首位を走るダニエル・ハラミーリョ(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)に対して同ポイントで並ぶ。しかしルール上、ハイカテゴライズの山岳を取っている選手が優先されるため、ハラミーリョが辛くも首位を守る形となった。
メイン集団でも2級山岳通過後に総合2位アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)や同5位イアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)が動いたものの、特に抜け出しならず終了。スプリント勝負に持ち込みたいクイックステップフロアーズだったが、ハイペースにマルセル・キッテル(ドイツ)は遅れてしまう。サガンやジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)ら”登れるスプリンター”を抱えるチーム(とサガン自ら)が牽引し、45秒差程度で逃げグループを追い込んでいく。
集団の足音が聞こえ始めた逃げグループでは、2級山岳下り途中に設けられていたスプリントポイントでモートンが先頭通過。これによって3秒を稼ぎ、ヤングライダー賞首位タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)との差を5秒にまで削り取る。5秒以上で逃げ切り叶えば逆転が発生するが、守る立場のチームスカイの総合エースはボズウェルであり、加えてロペスが逃げていること、そして集団にはゲオゲガンハートとボズウェルしか残っていなかったため、モートンに対して手が出ない。ダウンヒルを終え、残り5kmを切ってもタイム差は40秒残っており、逃げと集団のシーソーゲームが続いた。
しかし逃げメンバーは強かった。ホフマンの2勝目を狙うラリーサイクリングとモートンが全力で牽引し、トレック・セガフレード率いる集団に対して30秒を保持してホームストレートへ。ほとんどローテーションに入っていなかったロペス先行でスプリント体制に入ったものの、逆サイドから踏んだホフマンが伸びた。
パワフルなスプリントで2勝目を意味するVサインが決まった22秒後、メイン集団がサガン先頭でなだれ込み、隊列後方で危なげなくフィニッシュしたベネットが総合優勝を達成。ゲオゲガンハートもこの中に入ったため、ヤングライダー賞は17秒差でモートンの手に渡った。
ワールドツアーの総合優勝を自身のキャリア初勝利とした27歳のベネットは、「残り3kmのバナーをくぐった時にようやく僕が勝つんだと理解できた。今日は苦無くゴールまでたどり着けると思っていたけれど、状況は非常に複雑だった。100kmにも渡って集団内で戦い続けた」と語る。
今回の結果はロットNLユンボにとっても2013年以来のワールドツアーステージレース総合優勝であり、チームとしては今シーズン10勝目。この日はツアー・オブ・ノルウェーでオランダ王者のディラン・フルーネウェーヘンがステージ2勝目を飾っており、最良の1日となった。
ツアー・オブ・カリフォルニアが終わると、アメリカ国内のレースカレンダーは一旦落ち着き、7月末から開幕するツアー・オブ・ユタ(UCI2.HC)で再び活性化。そのまま初開催となる4日間のコロラド・クラシック(UCI2.HC)と続いていく。
ツアー・オブ・カリフォルニア2017第7ステージ結果
1位 エヴァン・ホフマン(アメリカ、ラリーサイクリング) 2h37’28”
2位 ダビ・ロペス(スペイン、チームスカイ)
3位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)
4位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)
5位 ロブ・ブリットン(カナダ、ラリーサイクリング)
6位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) +22”
7位 マッテーオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ)
8位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)
9位 ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)
10位 ホナタン・レストレポ(コロンビア、カチューシャ・アルペシン)
個人総合成績
1位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 22h54’38”
2位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +35’
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック) +36”
4位 ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング) +45”
5位 イアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ) +1’00”
6位 ヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) +1’54”
7位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ) +1’55”
8位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ) +2’12”
9位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) +2’15”
10位 アイマル・スベルディア(スペイン、トレック・セガフレード) +3’14”
ポイント賞
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 46pts
2位 エヴァン・ホフマン(アメリカ、ラリーサイクリング) 33pts
3位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 31pts
山岳賞
1位 ダニエル・ハラミーリョ(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア) 38pts
2位 エヴァン・ホフマン(アメリカ、ラリーサイクリング) 38pts
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 25pts
ヤングライダー賞
1位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ) 22h56’33”
2位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ) +17”
3位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) +20”
チーム総合成績
1位 チームスカイ 68h50’04”
2位 BMCレーシング +5’44”
3位 コフィディス・ソルシオンクレディ +12’10”
text:So.Isobe
7日間に渡り続いたツアー・オブ・カリフォルニア(UCIワールドツアー)もいよいよ最終日。前日の個人TTで総合首位に躍進したジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ)や、ポイント賞首位ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)など、各賞ジャージ着用者を先頭に、冬季はスキーリゾートとして栄えるマウンテン・ハイを出発した。
ロサンゼルス北東に隣接する高級住宅街パサデナを目指すコース延長は125kmと短いものの、昨年までの平坦コースとは違い、尾根伝いに2級、3級、2級と連続してKOMが現れるため、小集団を形成してゴールまで下りきれば総合逆転も起こり得る。逃げ切りにチャンスがあるだけに、序盤から激しくレースが動いた。
しかしロットNLユンボが率いる集団がハイペースを刻んだため、レース距離1/3を消化しても抜け出しは決まらない。5.2%勾配が5km続く最初の3級山岳ではベネットとラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)がペースを上げたが、特に差が生まれないままアタッカーたちに主導権が渡る。
抜け出したのは、第4ステージで金星を挙げ、翌日も逃げたラリーサイクリングのエヴァン・ホフマン(アメリカ)&ロブ・ブリットン(カナダ)コンビ、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)、ダビ・ロペス(スペイン、チームスカイ)、そして前日の個人TTでメカトラに見舞われヤングライダー賞を手放したラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)。さらにラリーサイクリングはセップ・クス(アメリカ)を合流させることに成功し、逃げを有利に持ち込んだ。
また、この日はテイラー・フィニー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)が落車リタイアに。鎖骨骨折が心配されたものの、本人のTwitter上で「擦過傷でズル剥けだけどそれだけで済んだ。包帯だらけで回復中」と語っており、長期離脱に繋がる怪我はなかった模様。
徐々にリードを広げていく逃げグループ内では、アシストを受けたハフマンが全ての山岳を先頭通過し、山岳賞首位を走るダニエル・ハラミーリョ(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)に対して同ポイントで並ぶ。しかしルール上、ハイカテゴライズの山岳を取っている選手が優先されるため、ハラミーリョが辛くも首位を守る形となった。
メイン集団でも2級山岳通過後に総合2位アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)や同5位イアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)が動いたものの、特に抜け出しならず終了。スプリント勝負に持ち込みたいクイックステップフロアーズだったが、ハイペースにマルセル・キッテル(ドイツ)は遅れてしまう。サガンやジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)ら”登れるスプリンター”を抱えるチーム(とサガン自ら)が牽引し、45秒差程度で逃げグループを追い込んでいく。
集団の足音が聞こえ始めた逃げグループでは、2級山岳下り途中に設けられていたスプリントポイントでモートンが先頭通過。これによって3秒を稼ぎ、ヤングライダー賞首位タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ)との差を5秒にまで削り取る。5秒以上で逃げ切り叶えば逆転が発生するが、守る立場のチームスカイの総合エースはボズウェルであり、加えてロペスが逃げていること、そして集団にはゲオゲガンハートとボズウェルしか残っていなかったため、モートンに対して手が出ない。ダウンヒルを終え、残り5kmを切ってもタイム差は40秒残っており、逃げと集団のシーソーゲームが続いた。
しかし逃げメンバーは強かった。ホフマンの2勝目を狙うラリーサイクリングとモートンが全力で牽引し、トレック・セガフレード率いる集団に対して30秒を保持してホームストレートへ。ほとんどローテーションに入っていなかったロペス先行でスプリント体制に入ったものの、逆サイドから踏んだホフマンが伸びた。
パワフルなスプリントで2勝目を意味するVサインが決まった22秒後、メイン集団がサガン先頭でなだれ込み、隊列後方で危なげなくフィニッシュしたベネットが総合優勝を達成。ゲオゲガンハートもこの中に入ったため、ヤングライダー賞は17秒差でモートンの手に渡った。
ワールドツアーの総合優勝を自身のキャリア初勝利とした27歳のベネットは、「残り3kmのバナーをくぐった時にようやく僕が勝つんだと理解できた。今日は苦無くゴールまでたどり着けると思っていたけれど、状況は非常に複雑だった。100kmにも渡って集団内で戦い続けた」と語る。
今回の結果はロットNLユンボにとっても2013年以来のワールドツアーステージレース総合優勝であり、チームとしては今シーズン10勝目。この日はツアー・オブ・ノルウェーでオランダ王者のディラン・フルーネウェーヘンがステージ2勝目を飾っており、最良の1日となった。
ツアー・オブ・カリフォルニアが終わると、アメリカ国内のレースカレンダーは一旦落ち着き、7月末から開幕するツアー・オブ・ユタ(UCI2.HC)で再び活性化。そのまま初開催となる4日間のコロラド・クラシック(UCI2.HC)と続いていく。
ツアー・オブ・カリフォルニア2017第7ステージ結果
1位 エヴァン・ホフマン(アメリカ、ラリーサイクリング) 2h37’28”
2位 ダビ・ロペス(スペイン、チームスカイ)
3位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス・ソルシオンクレディ)
4位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ)
5位 ロブ・ブリットン(カナダ、ラリーサイクリング)
6位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) +22”
7位 マッテーオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ)
8位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、トレック・セガフレード)
9位 ベンジャミン・キング(アメリカ、ディメンションデータ)
10位 ホナタン・レストレポ(コロンビア、カチューシャ・アルペシン)
個人総合成績
1位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 22h54’38”
2位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) +35’
3位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック) +36”
4位 ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング) +45”
5位 イアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ) +1’00”
6位 ヴェガールステイク・ラエンゲン(ノルウェー、UAEチームエミレーツ) +1’54”
7位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ) +1’55”
8位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ) +2’12”
9位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) +2’15”
10位 アイマル・スベルディア(スペイン、トレック・セガフレード) +3’14”
ポイント賞
1位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 46pts
2位 エヴァン・ホフマン(アメリカ、ラリーサイクリング) 33pts
3位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、ロットNLユンボ) 31pts
山岳賞
1位 ダニエル・ハラミーリョ(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア) 38pts
2位 エヴァン・ホフマン(アメリカ、ラリーサイクリング) 38pts
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 25pts
ヤングライダー賞
1位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ディメンションデータ) 22h56’33”
2位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、チームスカイ) +17”
3位 サム・オーメン(オランダ、サンウェブ) +20”
チーム総合成績
1位 チームスカイ 68h50’04”
2位 BMCレーシング +5’44”
3位 コフィディス・ソルシオンクレディ +12’10”
text:So.Isobe
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