2017/04/15(土) - 14:16
これまで勝負を決める重要な役割を担ってきたカウベルグがフィニッシュ手前から姿を消した。スプリンター向きになったと言われるアムステルゴールドレース(UCIワールドツアー)には新城幸也と別府史之が出場予定だ。
カウベルグ省略がレース展開に大きく影響?「1000のカーブ」を含む261km
石畳系のクラシックが終了したのも束の間、アルデンヌ・クラシック3連戦が動き出す。アムステルゴールドレースを皮切りに、3日後の水曜日にフレーシュ・ワロンヌ、1週間後の日曜日にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが開催。いずれも起伏に富んだコースレイアウトであり、活躍する選手は石畳系クラシックとは異なる。
オランダと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、やはり、チューリップが咲き、風車が穏やかに回る風景だ。確かに国土の大半は標高0メートルもしくはそれ以下。実際に国名Nederland(英語でNetherlands)が「低地の国」を意味しているように、国土の大部分は起伏に乏しい。
しかしそんなオランダ最大のロードレースであるアムステルゴールドレースは、登りが勝負の鍵を握る起伏に富んだレースだ。オランダはオランダでも、レース開催地は同国南部に広がる丘陵地帯。ベルギーとドイツに隣接したリンブルフ州を駆け巡る複雑な周回コースが設定されている。登場する短い登りの数は35カ所。261kmのコースはまさにアップダウンの連続で、獲得標高差は3,600mを超える。
コースは全体的に道幅が狭く、「1000のカーブ」と呼ばれるほどコーナーが連続して登場する。アップダウンとワインディングを繰り返すため、コースは時に「ジェットコースター」に形容される。ナーバスな下りは次なる登りへの位置取りの場であり、集団が一列棒状に伸びる終盤に後方に下がってしまうと勝負に絡むのは難しい。
アムステルの名物と言えば、フィニッシュ近くに登場するカウベルグの上りだ。登坂距離1200m/高低差68m/平均勾配5.8%/最大勾配12%の上りを2017年は合計3回通過する。しかし、2013年から4年間は2012年ロード世界選手権と同様にカウベルグ頂上の1.8km先にフィニッシュラインが引かれてきたが、2017年は周回コースのレイアウトを変更した。
合計32カ所の登りをこなした後、選手たちはカウベルグを起点にした最後の周回コースに突入する。カウベルグとグールヘンメルベルグ、ベメレルベルグの3つの坂を通過後、これまではカウベルグを経てフィニッシュに向かったが、2017年はベメレルベルグ通過後に左折して直接フィニッシュへ。ベメレルベルグの6km先にフィニッシュラインが引かれてる。
つまり最大の勝負どころであるカウベルグがフィニッシュ手前から姿を消した。ベメレルベルグは登坂距離800m/高低差39m/平均勾配4.7%であり、カウベルグほどの破壊力はなく、しかもフィニッシュまでの平坦区間が長いため決定的な先行は生まれにくい。これはパンチャー&クライマー系選手ではなくスプリンター系の選手に有利なコース変更だと言える。例年よりも大きな集団がフィニッシュにたどり着くことになりそうだ。
ちなみに、レース名がオランダの首都アムステルダムに由来すると勘違いされがちだが、その名前はメインスポンサーであるオランダのビール会社からきている。アムステルがメーカー名で、ゴールドはビールの銘柄。レース公式サイトがビール会社のサイト内に設置されているため、サイトを閲覧するためには年齢を記さなければならない。
ジルベールやヴァンアーヴェルマート、クウィアト、バルベルデらが激突
ロンド・ファン・フラーンデレンで初優勝を飾ったフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)は元来アルデンヌ・クラシックを得意とするパンチャーだ。2011年にはアルデンヌでハットトリック(アムステル、フレーシュ、リエージュ3連勝)を達成してきた。
アムステルでは毎年のようにカウベルグでアタックを仕掛けてきたジルベール。2012年のUCIロード世界選手権でもカウベルグのアタックがアルカンシェル獲得につながった。アルデンヌに集中するためパリ〜ルーベをパスした好調なジルベールはダニエル・マーティン(アイルランド)やボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)とともにスタートラインに並ぶ。
2015年大会の優勝者で、ストラーデビアンケとミラノ〜サンレモを制したミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)はエナオ兄弟(コロンビア)らとともに上りで仕掛けてくるだろう。これまで3度表彰台に上りながらまだアムステルで勝っていないアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)も、集団スプリントを避けるため早め早めに動くはず。今シーズン9勝を飾っているバルベルデは勝利の波に乗っている。
もちろんミヒャエル・アルバジーニ(スイス)やサイモン・ゲランス(オーストラリア)、ロマン・クロイツィゲル(チェコ)を揃えるオリカ・スコット、ルイ・コスタ(ポルトガル)とディエゴ・ウリッシ(イタリア)擁するUAEチームエミレーツ、ティム・ウェレンス(ベルギー)とイエール・ヴァネンデル(ベルギー)擁するロット・ソウダルも戦略的に動いてくるはずだ。
集団スプリントの展開を望んでいるのはマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)やブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)ら。もちろんパリ〜ルーベを制したグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)の名前も挙がる。アルデンヌよりも石畳系のクラシック向きの選手だが、カウベルグの省略は比較的体重のあるヴァンアーヴェルマートらに味方するはずだ。
新城幸也にとってアムステルは2014年にトップ10位入りしている相性の良いレース。バーレーン・メリダには2度の優勝者でディフェンディングチャンピオンのエンリーコ・ガスパロット(イタリア)がいる。スプリンター寄りにコース変更されたことで、小集団スプリントの場合はソニー・コルブレッリ(イタリア)にもチャンスが出てくるだろう。直前のブエルタ・アル・パイスバスコ総合3位のホン・イサギレ(スペイン)ら、バーレーン・メリダは1軍を揃えての出場だ。
5回目のアムステル出場となる別府史之は20代前半選手や初出場選手も多いトレック・セガフレードの中で経験豊かな存在。トロフェオ・ライグエリアを制したスプリンター系オールラウンダーのファビオ・フェリーネ(イタリア)がアメリカチームのエースを担うことになるだろう。
text:Kei Tsuji
カウベルグ省略がレース展開に大きく影響?「1000のカーブ」を含む261km
石畳系のクラシックが終了したのも束の間、アルデンヌ・クラシック3連戦が動き出す。アムステルゴールドレースを皮切りに、3日後の水曜日にフレーシュ・ワロンヌ、1週間後の日曜日にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが開催。いずれも起伏に富んだコースレイアウトであり、活躍する選手は石畳系クラシックとは異なる。
オランダと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、やはり、チューリップが咲き、風車が穏やかに回る風景だ。確かに国土の大半は標高0メートルもしくはそれ以下。実際に国名Nederland(英語でNetherlands)が「低地の国」を意味しているように、国土の大部分は起伏に乏しい。
しかしそんなオランダ最大のロードレースであるアムステルゴールドレースは、登りが勝負の鍵を握る起伏に富んだレースだ。オランダはオランダでも、レース開催地は同国南部に広がる丘陵地帯。ベルギーとドイツに隣接したリンブルフ州を駆け巡る複雑な周回コースが設定されている。登場する短い登りの数は35カ所。261kmのコースはまさにアップダウンの連続で、獲得標高差は3,600mを超える。
コースは全体的に道幅が狭く、「1000のカーブ」と呼ばれるほどコーナーが連続して登場する。アップダウンとワインディングを繰り返すため、コースは時に「ジェットコースター」に形容される。ナーバスな下りは次なる登りへの位置取りの場であり、集団が一列棒状に伸びる終盤に後方に下がってしまうと勝負に絡むのは難しい。
アムステルの名物と言えば、フィニッシュ近くに登場するカウベルグの上りだ。登坂距離1200m/高低差68m/平均勾配5.8%/最大勾配12%の上りを2017年は合計3回通過する。しかし、2013年から4年間は2012年ロード世界選手権と同様にカウベルグ頂上の1.8km先にフィニッシュラインが引かれてきたが、2017年は周回コースのレイアウトを変更した。
合計32カ所の登りをこなした後、選手たちはカウベルグを起点にした最後の周回コースに突入する。カウベルグとグールヘンメルベルグ、ベメレルベルグの3つの坂を通過後、これまではカウベルグを経てフィニッシュに向かったが、2017年はベメレルベルグ通過後に左折して直接フィニッシュへ。ベメレルベルグの6km先にフィニッシュラインが引かれてる。
つまり最大の勝負どころであるカウベルグがフィニッシュ手前から姿を消した。ベメレルベルグは登坂距離800m/高低差39m/平均勾配4.7%であり、カウベルグほどの破壊力はなく、しかもフィニッシュまでの平坦区間が長いため決定的な先行は生まれにくい。これはパンチャー&クライマー系選手ではなくスプリンター系の選手に有利なコース変更だと言える。例年よりも大きな集団がフィニッシュにたどり着くことになりそうだ。
ちなみに、レース名がオランダの首都アムステルダムに由来すると勘違いされがちだが、その名前はメインスポンサーであるオランダのビール会社からきている。アムステルがメーカー名で、ゴールドはビールの銘柄。レース公式サイトがビール会社のサイト内に設置されているため、サイトを閲覧するためには年齢を記さなければならない。
ジルベールやヴァンアーヴェルマート、クウィアト、バルベルデらが激突
ロンド・ファン・フラーンデレンで初優勝を飾ったフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)は元来アルデンヌ・クラシックを得意とするパンチャーだ。2011年にはアルデンヌでハットトリック(アムステル、フレーシュ、リエージュ3連勝)を達成してきた。
アムステルでは毎年のようにカウベルグでアタックを仕掛けてきたジルベール。2012年のUCIロード世界選手権でもカウベルグのアタックがアルカンシェル獲得につながった。アルデンヌに集中するためパリ〜ルーベをパスした好調なジルベールはダニエル・マーティン(アイルランド)やボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)とともにスタートラインに並ぶ。
2015年大会の優勝者で、ストラーデビアンケとミラノ〜サンレモを制したミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)はエナオ兄弟(コロンビア)らとともに上りで仕掛けてくるだろう。これまで3度表彰台に上りながらまだアムステルで勝っていないアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)も、集団スプリントを避けるため早め早めに動くはず。今シーズン9勝を飾っているバルベルデは勝利の波に乗っている。
もちろんミヒャエル・アルバジーニ(スイス)やサイモン・ゲランス(オーストラリア)、ロマン・クロイツィゲル(チェコ)を揃えるオリカ・スコット、ルイ・コスタ(ポルトガル)とディエゴ・ウリッシ(イタリア)擁するUAEチームエミレーツ、ティム・ウェレンス(ベルギー)とイエール・ヴァネンデル(ベルギー)擁するロット・ソウダルも戦略的に動いてくるはずだ。
集団スプリントの展開を望んでいるのはマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)やブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)ら。もちろんパリ〜ルーベを制したグレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)の名前も挙がる。アルデンヌよりも石畳系のクラシック向きの選手だが、カウベルグの省略は比較的体重のあるヴァンアーヴェルマートらに味方するはずだ。
新城幸也にとってアムステルは2014年にトップ10位入りしている相性の良いレース。バーレーン・メリダには2度の優勝者でディフェンディングチャンピオンのエンリーコ・ガスパロット(イタリア)がいる。スプリンター寄りにコース変更されたことで、小集団スプリントの場合はソニー・コルブレッリ(イタリア)にもチャンスが出てくるだろう。直前のブエルタ・アル・パイスバスコ総合3位のホン・イサギレ(スペイン)ら、バーレーン・メリダは1軍を揃えての出場だ。
5回目のアムステル出場となる別府史之は20代前半選手や初出場選手も多いトレック・セガフレードの中で経験豊かな存在。トロフェオ・ライグエリアを制したスプリンター系オールラウンダーのファビオ・フェリーネ(イタリア)がアメリカチームのエースを担うことになるだろう。
text:Kei Tsuji
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