2月19日に宇都宮ブリッツェンの今季体制発表会とシーズンスタートパーティが開催された。新ジャージに身を包んだメンバーが勢揃いしてファンの前に並んだほか、新たなジュニア育成システムが発表された。



宇都宮ブリッツェン2017チームメンバー宇都宮ブリッツェン2017チームメンバー photo:Makoto.AYANO
目標と抱負を語る清水裕輔監督目標と抱負を語る清水裕輔監督 photo:Makoto.AYANOジャパンカップのHQが置かれるホテルニューイタヤで、新体制のチーム発表会とファンとの交流を目的としたシーズン開始のパーティが開催された。

2016年は北と南のUCIレースを制した増田成幸2016年は北と南のUCIレースを制した増田成幸 photo:Makoto.AYANO今年でチーム創設9年目を迎える宇都宮ブリッツェンの2016年は快進撃の年だった。国内レースで13勝を挙げ、増田成幸は北と南のUCIレース、ツール・ド・北海道とツール・ド・おきなわを制した。その結果国内レースだけの活動でありながらUCIアジアツアーランキングでも12位につけた。最大の目標とした全日本選手権ロード制覇はならなかったものの、ブリッツェンにとって良い一年だったと言えるだろう。

今年のスローガンはライバルたちを「ぶっちぎれ!」今年のスローガンはライバルたちを「ぶっちぎれ!」 2017年は新たなステージレースのツール・ド・とちぎが誕生するほか、新たなレースが5つ開催されるなど、ブリッツェンの地元・栃木県は非常に熱い一年になりそうだ。2017年の新ジャージに身を包んだ10人の選手が勢揃いした。

すでに発表済みの2017年チーム体制。堀、大久保が抜けたが、岡篤志と馬渡伸弥が新加入。若手からベテランまでバランスの良いラインアップで、今年もオール日本人で闘う。ブリッツェンの9人の選手のなかで、増田、小野寺、雨澤、鈴木譲、阿部の5人がJCF強化指定選手に選ばれている。昨年は「Go for it」だったシーズンスローガン。今年は「ライバルたちをぶっちぎれ!」だ。

鹿屋体育大学から新加入の馬渡伸弥鹿屋体育大学から新加入の馬渡伸弥 photo:Makoto.AYANO清水裕輔監督は「チーム目標は昨年と変わらないが、UCIレースと全日本選手権に主眼を置きつつある。とくに全日本はチーム一丸となって取りに行く。U23についても、TTを含めて全日本のタイトルを狙う。またツアー・オブ・ジャパンのステージ優勝と、地元でのジャパンカップの表彰台に乗れるようにしたい。Jプロツアーについてはヒルクライムやクリテリウムが減り、ロードレースが増えたことでより良いレースを見せていきたい」と話す。

宇都宮の上りフィニッシュが自分向きだと自信をもつ岡篤志宇都宮の上りフィニッシュが自分向きだと自信をもつ岡篤志 photo:Makoto.AYANOまずルクセンブルクでのシクロクロス世界選に参戦した小坂光からそれぞれの抱負を語った。
「今年は12レースで6勝、しかし最大の目標だった全日本を逃してしまった。海外遠征で得たものは大きかったので、それを活かして活動したい」。次回の野辺山でのシクロクロス全日本選手権は生まれ故郷の長野での開催。また夏季についてはマウンテンバイクでの活動も行い、ミヤタメリダバイキングチームとしてCJカップを中心に活動するという。

バーレーンでのアジア選手権ロードに出場が内定している増田成幸は「強化合宿を終えて調子を上げている。日本のメダル獲得を目指していきたい」と意気込む。

スプリンターとしての活躍が期待される小野寺玲スプリンターとしての活躍が期待される小野寺玲 photo:Makoto.AYANO同じくU23日本代表に内定している雨澤毅明は「まずはアジア選手権で優勝を目指し、代表選手で協力しあって戦いたい」と話す。

小野寺玲はU23のロードレースと個人TTに出場予定だ。「バーレーンは得意な平坦なので、ロード、TTともに狙いたい。例年に比べて仕上がりが良いのでアジアタイトルを取りに行きたい。UCIポイントの獲得と、世界の同年代に通用するように頑張りたい」と話す。

アジア選手権U23代表にも選ばれている雨澤毅明アジア選手権U23代表にも選ばれている雨澤毅明 photo:Makoto.AYANO鈴木譲は「昨年はベテラン選手のチームワークで勝った面があるので、若手含めたチームプレーが機能するようにしたい。宇都宮ロードは増田選手に有利なので、勝てるようにサポートしていきたい」と話す。

阿部嵩之は「開幕2連戦、昨年は序盤に逃げる役だったが、今年は最後まで優勝争いに加わり、優勝できるように頑張りたい。2日目は上りゴールに向けて可能な限り死力を尽くして貢献したい」と話す。

新加入の岡篤志は「移籍して今までにないほどよい環境と強いチームに恵まれて、今までで一番いい練習が積め、仕上がってきている。開幕戦は頂上ゴールで自分向き」。また、宇都宮に居を移し「住みやすい。練習環境にも恵まれていて満足」と話した。

チームにとっても大きな目標となる4月の新ステージレース「ツール・ド・とちぎ」について、増田は次のように語る。
「12月のチームトレーニングキャンプで試走済みで、コースはツール・ド・北海道などに比べると難易度が低いので、6人のチームプレーがカギになる。スプリントになるのか逃げになるかはわからないが、予行演習を重ねて作戦を練りたい。3月は僕達にとっていちばん重要な月と言っても過言ではない」と意気込む。

昨年が復帰の年となり、調子を出しきれなかった飯野智行は、「今の体調は昨年の同時期に比べて非常にいいのでいいスタートが切れそうだ」と話す。

新加入の馬渡伸弥は大学生からプロレーサーになったばかり。「プロになって日が浅いので、チームに貢献できるようにこれから経験を積んでいくところです。レベルの高いレースで、自分なりにできることをしたい。将来につながるレースがしたい」とフレッシュな気持ちを言い表した。

昨年来、大腿部の血栓でレースを走れていない鈴木真理は、未だレースへの復帰のメドはたっていないと言う。「怪我というより病気に近く、自転車で走っても大丈夫な状態ではあるがレースの復帰にはほど遠い状態。昨年からブラウブリッツェンの指導に当たるなど、選手として走れないぶんチームに貢献できることをしていく。若手のコーチングをしっかりと行い、ブラウブリッツェンにセンスと意欲がある選手が入ってくれるような仕組みを確立したい」とコメントした。

27社もの企業が協賛するのがブリッツェンの強みだ27社もの企業が協賛するのがブリッツェンの強みだ photo:Makoto.AYANO宇都宮ブリッツェン2017チーム体制
GM:廣瀬佳正 (ひろせよしまさ/39)
監督:清水裕輔 (しみずゆうすけ/35)
選手:
鈴木真理 (すずきしんり/41/キャプテン)
増田成幸 (ますだなりゆき/33)
鈴木譲 (すずきゆずる/31)
阿部嵩之 (あべたかゆき/30)
飯野智行 (いいのともゆき/27)
馬渡伸弥 (まわたりしんや/22) ※新加入
雨澤毅明 (あめざわたけあき/21/U23)
小野寺玲 (おのでられい/21/U23)
岡篤志 (おかあつし/21/U23) ※新加入

■小学生対象のジュニア育成システム Up B-ling Systemを発表

ブラウ、ブリッツェンの下部に位置するジュニア対象のUp B-ling Systemブラウ、ブリッツェンの下部に位置するジュニア対象のUp B-ling System photo:Makoto.AYANOブリッツェンの下部組織「ブラウブリッツェン」も8年目の活動となり、今までに小野寺、雨澤、堀がブリッツェン入りを果たしたことで日本のトップにつながる育成チームとしては機能していることが証明された。そして今回発表されたのが、小学生対象の育成システムだ。

Up B-ling Systemを説明する廣瀬佳正GMUp B-ling Systemを説明する廣瀬佳正GM photo:Makoto.AYANO「将来ブリッツェンに入り、ツール・ド・フランスやオリンピックに出るような人材を育成したい」と話す廣瀬佳正GMが紹介するのはサイクルロードレース地域型総合育成プログラム「Up B-ling System(アップビーリングシステム)」だ。

今年度の4月から、小学4・5・6年生になるジュニア世代限定で、セレクションで選出した子どもたちでチームを結成。トレーニングの機会を与えるというもの。「安全、安心、安定したジュニア育成システム」ということで、栃木県に眠っている若い人材を発掘していきたいとする。ロードだけでなく、トラック、シクロクロス、マウンテンバイクなどの種目も選択できるようにするという、将来活躍できる選手を育てるジュニアのための育成システムだ。

設立の意図について、廣瀬氏は「サッカー、野球などアリーナ型スポーツは野球場やグラウンドなどで安全管理がしやすい。しかし自転車競技は一般道を使うことで事故の心配があったり、高価な機材を購入する必要があったりと、ハードルが高いのが事実。プロチームであるブリッツェンのような組織が普及や育成をやっていく時期だろうと思うに至った」と話す。

活動場所はジャパンカップのコースである宇都宮森林公園、宇都宮競輪場、道場宿緑地(鬼怒川)など、クルマの往来が無く安全が確保できる場所で活動を行いたいと言う。

スポンサーの協力により貸出用のバイクも用意し、上部にはブラウブリッツェン(中学生以上)、作新学園自転車競技部というつながりがあることで、世界と戦える「Made in UTSUNOMIYA」の選手を育てることを目指す安定的なシステムだという。

Up B-ling Systemと名付けた理由について、「向上」を意味するUpは、「宇都宮のプライド」ともかけられている。Upbringingとは「育成」という意味そのものだが、B-lingにはブリッツェンが繋げた輪(Ring)という意味合いも込められている。

スタッフとしては廣瀬佳正がゼネラルマネージャー、トラックのGMとして元競輪選手の黒子英明、ロードのヘッドコーチに鈴木真理、トラックのヘッドコーチに小坂敏之、そしてブリッツェンの選手や元選手らも指導に当たる。スポンサーには坂田新聞店、カンセキ、そして弱虫ペダルがつき、黄色いウェアが用意される。

この育成プログラムをブリッツェン発足当初からイメージしていたと言う廣瀬GMは「ブリッツェンが背伸びをしてUCIプロコンチネンタルチームにランクを上げるより、底辺層を底上げしてロードレースの価値を高めていく方向が望ましいと思った。子どもたちにも自転車レースを理解してもらい、自転車レース文化を広めていくことを選択しました」と話す。小学生高学年からトップ選手まで、宇都宮ブリッツェンの運営体制のもとで選手たちがランクアップしていけるシステムがスタートすることになる。トレーニングだけでなく、走る場の提供についても視野に入れて活動していきたいと話す。

ファンを交えてのスターティングパーティ

選手たちが毛筆で書いた今年の目標選手たちが毛筆で書いた今年の目標 photo:Makoto.AYANO
記者発表会の後、同じイタヤホテルの宴会場においてファンを交えたパーティが開催された。地元ファン&サポーターが大勢詰めかけ、広いパーティ会場は満員御礼となり熱気に包まれた。ブリッツェンの9選手だけでなく、ブラウブリッツェン、ライブガーデン・ビチステンレの女子選手やブリッツェンフェアリーも勢揃い。パーティには地元のチーム支援企業の振る舞いで豪華で美味しい食事の数々が用意された。

ファンと交流するパーティで選手たちは応援されていることを実感するファンと交流するパーティで選手たちは応援されていることを実感する photo:Makoto.AYANOホテルの広大な宴会場を貸し切ってのパーティとなったホテルの広大な宴会場を貸し切ってのパーティとなった photo:Makoto.AYANO


さっそく人気者の岡篤志さっそく人気者の岡篤志 photo:Makoto.AYANO女子チーム、ライブガーデン・ビチステンレも宇都宮拠点のチームだ女子チーム、ライブガーデン・ビチステンレも宇都宮拠点のチームだ photo:Makoto.AYANO


佐藤栄一宇都宮市長や、かつて監督をつとめた栗村修さんも駆けつけてステージに立ち、大いに盛り上がった。出し物としては今年の抱負を選手たち自身が書き初めよろしく毛筆でしたためたものを披露したのもユニーク。会場全体が選手たちを応援する暖かな雰囲気に包まれた。

選手のサインが入ったカップでふるまわれた宇都宮名物のカクテル選手のサインが入ったカップでふるまわれた宇都宮名物のカクテル photo:Makoto.AYANOファンたちの人垣ハイタッチで選手たちが2017シーズンに送り出されるファンたちの人垣ハイタッチで選手たちが2017シーズンに送り出される photo:Makoto.AYANO


大勢のファンたちに支えられて宇都宮ブリッツェンの2017年シーズンがスタートする大勢のファンたちに支えられて宇都宮ブリッツェンの2017年シーズンがスタートする photo:Tatsuya Sakamoto/STUDIO NOTIS


photo&text:Makoto.AYANO