1級、1級、1級、超級。獲得標高5000m超えとも言われる今ブエルタ最大の「山場」第14ステージ。逃げグループ内の争いを制したロバート・ヘーシンクが栄えあるステージ優勝を飾り、総合勢では戦略を活かしたサイモン・イェーツが総合順位で躍進した。



ハイペースで逃げ続けた40名のエスケープグループハイペースで逃げ続けた40名のエスケープグループ photo:TDWsport/Kei Tsuji


ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第14ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2016第14ステージ image:Unipublic大きな逃げグループに対して、チームスカイがメイン集団を引く大きな逃げグループに対して、チームスカイがメイン集団を引く photo:TDWsport/Kei Tsujiクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が率いるメイン集団クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が率いるメイン集団 photo:TDWsport/Kei Tsuji早々に遅れた総合3位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)早々に遅れた総合3位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:TDWsport/Kei Tsujiピレネー山脈のフランス側を舞台にした第14ステージは、距離196kmで獲得標高が5000mにも達すると言われる過酷な1日。スタートしてすぐフランス国内に入り、まずは1級山岳イナルプ峠(11.5km/平均7.1%)を越える。

そこから1級山岳スデ峠(24km/平均5.2%)と1級山岳マリーブランク峠(9.2km/平均7.5%)を立て続けにクリアする。いずれも急勾配区間を含む登りであり、特にマリーブランク峠の後半は「壁」と呼ばれる区間も登場する。

総合ジャンプアップを目指して独走するサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)総合ジャンプアップを目指して独走するサイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) photo:TDWsport/Kei Tsuji超級オービスクを駆け上がるロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)とケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)、イゴール・シリン(ロシア、カチューシャ)超級オービスクを駆け上がるロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)とケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)、イゴール・シリン(ロシア、カチューシャ) photo:TDWsport/Kei Tsujiそして最後はブエルタ初登場の超級山岳オービスク峠(16.5km/7.1%)にアタックする。3つの峠と比べると勾配は緩いが、8%前後の一定勾配が標高1,710mの頂上まで続いている。なおオービスク峠が山頂フィニッシュとして使われるのは、ミカエル・ラスムッセン(デンマーク)が勝利し、翌日にドーピング問題が巻き起こった2007年ツール・ド・フランス第16ステージ以来のことになる。

この日序盤から逃げたのは、ファーストアタックを仕掛けたオマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)を筆頭にした40名という大人数のグループ。

総合12位のダニエル・モレーノ(スペイン)を含むモビスターが3名、オリカ・バイクエクスチェンジも3名、またアイマル・スベルディア(スペイン、トレック・セガフレード)ら登りを得意とする選手が乗った一方、チームスカイはダヴィ・ロペスガルシア(スペイン)を乗せたのみであり、メイン集団を牽かざるをえない状況となった。メイン集団と逃げグループのタイム差は、ステージを通じて4〜5分ほどの差で推移していくことになる。

逃げグループ内では、最初のイナルプ峠でフライレ、アレクサンドル・ジェニエ、ケニー・エリッソンド(共にフランス、FDJ)による山岳ポイント争いが勃発し、フライレが先頭通過。直後の細く、砂の浮いたガードレール無しの危険なブライドコーナーではジェニエが危うく飛び出しそうになるシーンも。続く逃げグループでも落車が発生したものの、幸いリタイアに繋がる事故には至らなかった。

フライレとエリッソンドの山岳争いは以降も続き、スデ峠では再びフライレが、マリーブランク峠ではエリッソンドが先着し、昨日終了時に首位だったセルゲイ・ラグティン(ロシア、カチューシャ)に代わってフライレが暫定首位に浮上。大きな逃げグループの中に入りながらオービスク峠を目指した。

逃げグループを積極的に率いたのは、サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)の前待ち作戦を展開したいオリカ・バイクエクスチェンジ。マリーブランク峠前にはメイン集団からもアシスト一人を先行させ、そしていよいよ残り40kmを切った段階でメイン集団からイェーツが発進。チームスカイはこの動きを許したため、イェーツは1分ほどのリードを得た状態でマリーブランク峠を通過した。

できるだけメイン集団からタイムを稼いでオービスクに入りたいイェーツには、マリーブランク峠通過後に逃げに乗っていたサイモン・ゲランス(オーストラリア)とマグナス・コルト(デンマーク)が合流し、後の平坦区間でイェンス・ケウケレール(ベルギー)もジョイン。3名の力によってオービスクまでにおよそ1分半を得て登りへと入っていった。

オービスクに入った先頭グループではいよいよステージ優勝に向けた争いが掛かり、残り7kmでロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)がアタック。追従したヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)は付ききれず遅れ、後にエリッソンドが合流。ヘーシンクが積極的にペースをコントロールする中で、オービスク最終盤には追いかけていたイゴール・シリン(ロシア、カチューシャ)も加わり、ステージ優勝の行方は3名に絞られた。



ロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)がクイーンステージを制すロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)がクイーンステージを制す photo:TDWsport/Kei Tsuji


互いに見合うナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)互いに見合うナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport/Kei Tsujiタイム差なしでフィニッシュするナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)とクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)タイム差なしでフィニッシュするナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)とクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport/Kei Tsujiステージ優勝を挙げたロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)ステージ優勝を挙げたロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:TDWsport/Kei Tsuji3名のこう着状態から、残り300mから仕掛けたのはヘーシンクだった。苦しい表情を見せながらもダンシングで食い下がる2人を千切り、後ろを一切振り返らずにフィニッシュ。不調に悩まされていたヘーシンクにとっては復活をアピールする2013年9月以来の勝利であり、グランツアー、そしてワールドツアーカテゴリーにおいても初勝利。2位にはエリッソンドが入り、山岳ポイントをさらに追加したことで山岳賞首位に躍り出た。

一方でオービスクに入ったメイン集団はお見合い状態になったことでペースが上がらず、これによってアシストを切り離したイェーツは着実にリードを稼いでいくことになる。総合3位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が早々に遅れたことで総合ジャンプアップは確実なものとなっていく。

最終的にイェーツはヘーシンクから39秒遅れのステージ4位で入り、アタック合戦によって抜け出したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)とクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)の総合ワンツーコンビはその1分7秒後方でフィニッシュ。イェーツは最終盤にキンタナ・フルームから21秒遅れたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)とレオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)を抜き、総合7位から4位にまでジャンプアップしてみせた。

総合ワンツーは動かなかったものの、オリカ・バイクエクスチェンジはチャベスとイェーツで総合3位と4位確保と作戦大成功。序盤苦しい展開に持ち込まれたチームスカイは総合2位と5位とプラスの結果でクイーンステージを終えることになった。

各選手のコメントは続報にてお伝えします。



ブエルタ・ア・エスパーニャ2016第14ステージ結果
1位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)
2位 ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)
3位 イゴール・シリン(ロシア、カチューシャ)
4位 ジョージ・ベネット(オーストラリア、ロットNLユンボ)
5位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)
6位 アイマル・スベルディア(スペイン、トレック・セガフレード)
7位 ヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)
9位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
10位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)
5h43’24”
+07”
+09”
+31”
+39”
+49”
+1’11”
+1’14”

+1’16”


マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・バイクエクスチェンジ)
4位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)
5位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)
7位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
8位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ドラパック)
9位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)
10位 ダニエル・モレーノ(スペイン、モビスター)
58h41”40”
+54”
+2’01”
+2’17”
+2’38”
+3’59”
+4’30”
+5’37”
+5’52”


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) 
3位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ) 
92pts
66pts
65pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ケニー・エリッソンド(フランス、FDJ)
2位 オマール・フライレ(スペイン、ディメンションデータ)
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)
49pts
40pts
30pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)
10pts
15pts
34pts


チーム総合成績
1位 BMCレーシング
2位 チームスカイ
3位 アスタナ
174h49’59”
25’46”



敢闘賞
サイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)

text:So.Isobe

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