北上を続けるジロ・デ・イタリアはカラブリア州からバジリカータ州、そしてカンパニア州に入る。難易度2つ星のスプリンター向きステージと思いきや獲得標高差は3000m。マリアローザが「ジロが厳しいレースだと言われている理由が今日分かった」と振り返るステージの現地レポート。



第5ステージの動きについて話す山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)第5ステージの動きについて話す山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsuji
チームバスのフロントガラスにミッチーくんチームバスのフロントガラスにミッチーくん photo:Kei TsujiUCIスタッフが手際よくタブレットを使用してバイクを検査UCIスタッフが手際よくタブレットを使用してバイクを検査 photo:Kei Tsuji
バースデーケーキの火を消すマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)バースデーケーキの火を消すマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji


イタリア半島のつま先カラブリア州からジロはカンパニア州(州都はナポリ)に入った。モッツァレッラチーズや、水牛のミルクで作られたブッファラがたまらなく美味しく、しかも他の地域よりも安価で食べることができる。ピッツァやカッフェ(エスプレッソ)の美味しさにも情熱を注いでいる。

賛否両論あると思うが、カンパニア州がイタリアの中で最も豊かな食文化をもっていると感じる。同時に人々は暖かくてお喋り好き。撮影スポットで観客に捕まって話し込んでいると話に終わりが見えず、撮影チャンスを逃してしまいそうになる。

スタート地点では今日もUCIのスタッフがタブレットを持ってバイクチェックに勤しんでいた。最初にバイクを撮影し、選手のナンバーを打ち込み、それからホイール、ダウンチューブ、BB周り、シートチューブにタブレットを這わせて信号を読み取る。詳しくは教えてもらえなかったが、ジロ開幕からここまで500台以上をチェック済み。すべてのバイクチェックを終えてからも期間中は継続していくという。



グレガ・ボーレ(スロベニア、NIPPOヴィーニファンティーニ)のタトゥーグレガ・ボーレ(スロベニア、NIPPOヴィーニファンティーニ)のタトゥー photo:Kei Tsuji
レースはカラブリア州からバジリカータ州、そしてカンパニア州に入るレースはカラブリア州からバジリカータ州、そしてカンパニア州に入る photo:Kei Tsuji


3級山岳が1つだけ登場するだけなのに獲得標高差が3000mに達してしまうところがジロ・デ・イタリア。しかも距離は233kmと長く、いわゆる「トランスファーステージ(中継ぎステージ)」と呼ぶには厳しいコースだ。スタート地点で誕生日を盛大に祝福され、バースデーケーキの火を消したマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)には厳しすぎた。

その筋肉隆々の身体からは想像できないほど登りを軽くこなせてしまうアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)は、待ってましたとばかりにチャンスを掴んだ。

グライペルはグランツール出場12回目でステージ通算18勝目。これまでステージ通算44勝しているマーク・カヴェンディッシュや53勝しているアレッサンドロ・ペタッキ、57勝しているマリオ・チポッリーニと比べると見劣りするものの、驚くことにグライペルは過去に出場したグランツール10回全てで少なくとも1勝している。14連続グランツール出場のアダム・ハンセン(オーストラリア)とともにロット・ソウダルは安定感抜群だ。

なお、グランツールでの連続ステージ優勝回数(1グランツール出場で少なくとも1勝している回数、全グランツール出場とは限らない)では上には上がいるもので、エディ・メルクスは14連続、ファウスト・コッピは13連続、ベルナール・イノーは13連続という記録をもっている。



ジロ・ディタリアジロ・ディタリア photo:Kei Tsuji
ドクターに救出されるジャック・ボブリッジ(オーストラリア、トレック・セガフレード)ドクターに救出されるジャック・ボブリッジ(オーストラリア、トレック・セガフレード) photo:Kei Tsujiベネヴェントの街に差し掛かるプロトンベネヴェントの街に差し掛かるプロトン photo:Kei Tsuji
ベネヴェントの周回コースに入ったプロトンベネヴェントの周回コースに入ったプロトン photo:Kei Tsuji


トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)はマリアローザ着用日数を4日間に伸ばし、ピーター・ウェーニング(ルームポット・オラニエ)の記録に並んだ。なお、オランダ人選手の中でマリアローザ着用日数が最も長いのはエリック・ブロイキンクで8日間。1998年ジロの雪に見舞われたガヴィア峠でステージ優勝した52歳は今大会オランダ・ヘルダーラント州での開幕で大会アンバサダーを担っている。

ブエルタ・ア・エスパーニャで総合争いに絡み、オールラウンダーの仲間入りを果たしたドゥムラン。マリアローザを着る喜びを述べながらも、ジャージキープに執着していないことを明らかにしている。マリアローザよりも優先しているのは第9ステージの個人タイムトライアルでの勝利だと繰り返している。

「ブエルタには山岳に特化したトレーニングを行って挑んだけど、リオ五輪タイムトライアルを見据えてこのジロの前に山岳トレーニングは行っていないんだ」。とは言いながらも第4ステージではクライマーを凌駕するような安定した登坂力を発揮し、ボーナスタイムを狙う走りを見せた。

ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)をはじめとするTTスペシャリストが体力を温存しながら無理せず毎日をこなしている一方で、オールラウンダーとしてライバルたちの動きに警戒しているドゥムラン。個人タイムトライアルを優先するか、マリアローザを優先するか悩ましいところだ。

ドゥムランは「第6ステージの厳しすぎない山頂フィニッシュは自分向き」と語っている。このままマリアローザを着て個人TTを走り、さらにリードを広げるようなことがあれば、ブエルタの再現、つまり最終的な総合争いにおいて再び危険な存在になるかもしれない。



ウィリーでフィニッシュするユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル)ウィリーでフィニッシュするユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsuji
マリアローザのトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)がプロセッコを開けるマリアローザのトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)がプロセッコを開ける photo:Kei Tsuji


text&photo:Kei Tsuji in Benevento, Italy

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