2016/05/07(土) - 14:52
狙って勝つことは簡単なことではない。コース発表時からずっと照準を合わせてきたというジロ・デ・イタリアの開幕タイムトライアルでドゥムランが勝った。ドゥムランのトップタイム更新が告げられた時、スタート台が置かれたヴェロドロームの中は大いに沸いた。
ベルギーと比較すると、トッププロ選手の多さの割にトップレースが少ないオランダ。UCIワールドツアーレースはアムステルゴールドレースだけ。それだけに、普段なかなかお目にかかれないトップチームを一目見ようと多くの観客がアペルドールンに集まった。午前中、アペルドールン市内に向かう幹線道路は観客達によってどこも酷く渋滞していた。
ハイネケンやアムステルといったオランダビールと、マヨネーズ系ソースがたっぷりかかったフリッツ(フライドポテト)の組み合わせが王道観戦スタイル。どこかお祭り好きのオランダの人々はレースの楽しみ方を心得ている。
ピンクのカーペットが敷かれたスタート台にドゥムランが上がると同時に、観客は総立ちになった。少なく見積もっても、カンチェラーラやニーバリといったビッグネームが登場した時の盛り上がりを3〜4倍したような音量で、拍手と歓声が混じり合うスタンディングオベーションが始まる。
カメラをISO2500なんて普段あまり使わない感度に設定しなければならない暗さのヴェロドローム内。ピンクにライトアップされたバンクに、観客たちによるオランダ語のカウントダウンが響いた。
なお、バンク内のVIPゾーンは招待客限定だが、バンク外の観客席は一般客に解放。最上部を除いてほぼ満席の状態で、ヴェロドローム内は6日間レースのような雰囲気に。オランダのウィレム=アレクサンダー国王が来場したためセキュリティレベルは高く、大会関係者であっても会場の出入りは厳しく制限された。
どれだけ観客が盛り上がろうとも、ドゥムランの表情は変わらない。ハンドルから手を離して観客に振ることもない。ただトンネルの先を真っ直ぐ見つめ、カウントがゼロになったところでドゥムランは軽く下唇を噛んで力一杯漕ぎ出した。
ドゥムランはオランダ南部のリンブルフ州のマーストリヒト出身。距離にして200kmほど離れているが、コース沿道には白青黄色に赤い獅子が描かれたリンブルフ州の州旗が多く見られた。オランダ国王も見守る中でのレースは大きなプレッシャーだったに違いない。決して独壇場とは言えない短距離タイムトライアルで、しかも体調が万全とは言えない中、マリアローザを掴み取った。
この日、スプリンターの走りは完全に二手に分かれた。第2ステージと第3ステージはスプリンターのためのステージであり、仮に個人TTでステージ優勝に手が届かなくてもボーナスタイム(10秒、6秒、4秒)によるマリアローザ獲得のチャンスがあるからだ。
今大会最速スプリンターと見られるマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)は強烈なダッシュでスタート台を駆け下り、後半にかけてペースを上げる走りで11秒遅れのステージ5位。つまり総合5位・11秒遅れで初日を終えている。仮に第2ステージで勝利すれば総合タイム差は1秒に。もちろんジャイアント・アルペシンが全力で阻止するとみられるが、中間スプリント(3秒、2秒、1秒)も加えれば逆転する。
昨年マリアロッサ(ポイント賞)を獲得したジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)は27秒遅れのステージ27位、そしてアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)は34秒遅れのステージ47位、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)は36秒遅れのステージ53位。
逆にヤコブ・マレツコ(イタリア、ウィリエール・サウスイースト)やカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は翌日からのスプリントチャンスを見据えてペースを抑え、1分30秒以上遅れでフィニッシュしている。個人TTで出し切ったスプリンターと出しきらなかったスプリンター。マリアローザの存在が大会最初のスプリントに影響を及ぼすかもしれない。
text&photo:Kei Tsuji in Apeldoorn, Netherlands
ベルギーと比較すると、トッププロ選手の多さの割にトップレースが少ないオランダ。UCIワールドツアーレースはアムステルゴールドレースだけ。それだけに、普段なかなかお目にかかれないトップチームを一目見ようと多くの観客がアペルドールンに集まった。午前中、アペルドールン市内に向かう幹線道路は観客達によってどこも酷く渋滞していた。
ハイネケンやアムステルといったオランダビールと、マヨネーズ系ソースがたっぷりかかったフリッツ(フライドポテト)の組み合わせが王道観戦スタイル。どこかお祭り好きのオランダの人々はレースの楽しみ方を心得ている。
ピンクのカーペットが敷かれたスタート台にドゥムランが上がると同時に、観客は総立ちになった。少なく見積もっても、カンチェラーラやニーバリといったビッグネームが登場した時の盛り上がりを3〜4倍したような音量で、拍手と歓声が混じり合うスタンディングオベーションが始まる。
カメラをISO2500なんて普段あまり使わない感度に設定しなければならない暗さのヴェロドローム内。ピンクにライトアップされたバンクに、観客たちによるオランダ語のカウントダウンが響いた。
なお、バンク内のVIPゾーンは招待客限定だが、バンク外の観客席は一般客に解放。最上部を除いてほぼ満席の状態で、ヴェロドローム内は6日間レースのような雰囲気に。オランダのウィレム=アレクサンダー国王が来場したためセキュリティレベルは高く、大会関係者であっても会場の出入りは厳しく制限された。
どれだけ観客が盛り上がろうとも、ドゥムランの表情は変わらない。ハンドルから手を離して観客に振ることもない。ただトンネルの先を真っ直ぐ見つめ、カウントがゼロになったところでドゥムランは軽く下唇を噛んで力一杯漕ぎ出した。
ドゥムランはオランダ南部のリンブルフ州のマーストリヒト出身。距離にして200kmほど離れているが、コース沿道には白青黄色に赤い獅子が描かれたリンブルフ州の州旗が多く見られた。オランダ国王も見守る中でのレースは大きなプレッシャーだったに違いない。決して独壇場とは言えない短距離タイムトライアルで、しかも体調が万全とは言えない中、マリアローザを掴み取った。
この日、スプリンターの走りは完全に二手に分かれた。第2ステージと第3ステージはスプリンターのためのステージであり、仮に個人TTでステージ優勝に手が届かなくてもボーナスタイム(10秒、6秒、4秒)によるマリアローザ獲得のチャンスがあるからだ。
今大会最速スプリンターと見られるマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)は強烈なダッシュでスタート台を駆け下り、後半にかけてペースを上げる走りで11秒遅れのステージ5位。つまり総合5位・11秒遅れで初日を終えている。仮に第2ステージで勝利すれば総合タイム差は1秒に。もちろんジャイアント・アルペシンが全力で阻止するとみられるが、中間スプリント(3秒、2秒、1秒)も加えれば逆転する。
昨年マリアロッサ(ポイント賞)を獲得したジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレック・セガフレード)は27秒遅れのステージ27位、そしてアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)は34秒遅れのステージ47位、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)は36秒遅れのステージ53位。
逆にヤコブ・マレツコ(イタリア、ウィリエール・サウスイースト)やカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)は翌日からのスプリントチャンスを見据えてペースを抑え、1分30秒以上遅れでフィニッシュしている。個人TTで出し切ったスプリンターと出しきらなかったスプリンター。マリアローザの存在が大会最初のスプリントに影響を及ぼすかもしれない。
text&photo:Kei Tsuji in Apeldoorn, Netherlands
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