2015/12/31(木) - 09:27
タックスより、同社初となるダイレクトドライブ式トレーナー「Neo Smart」が登場した。自然な負荷の増減を実現し、最大2,200Wというハイパワーに対応しながらも静寂性に優れ、オリジナルアプリと共に使用することでより充実したトレーニングを可能とする近未来的デザインの1台を紹介しよう。
サクソバンクやロットNLユンボを筆頭に、数多くのプロチームが使用するタックスのローラー台。その新たなハイエンドモデルとして登場したのが、ブランド初となるダイレクトドライブ方式採用の「Neo Smart」だ。優れた機能性はもちろんのこと、アプリケーションとの多彩な連携機能や、近未来感のあるルックスとあわせて、権威あるユーロバイクアワードを獲得している。
その最たる特徴は、ダイレクトドライブ式のメリットである静寂性を更に高めたこと。負荷機構はタックスが得意とし、BushidoやSatoriなどのタイヤドライブ式で実績のあるマグネット方式を採用。負荷ユニットは発電用のモーター、負荷を司るスチール製ディスク、カセットスプロケットの3つで構成されており、これらは直結されている。
スチール製ディスクは32個のマグネットから成り、30個のコイルの周りを回転させることで負荷を調整。コイルに流れる電気が大きくなるほどに、負荷が大きくなり、これにより勾配抵抗や制動力を再現している。同時に下り坂も再現されており、アプリケーションとの連携時には、ローラー台に乗りながらも実世界で走っているかのようなバーチャル体験をすることができる。
仮想斜度は-5%~25%で変動させることができる。自家発電機能も備えることでスタンドアローン状態でも登坂抵抗が変化する(無給電時は、下り坂の再現はできない)。
負荷を調整するソフトウェア内では毎秒1,000回もの高速演算を行うことで、ライダーの出力変化を予測。実走時と同様に空気抵抗や転がり抵抗、斜度、体重、タイヤの空気圧、風速、温度、標高、慣性、ブレーキ挙動などあらゆる外的要因を考慮したシミュレーションとあわせて、自然な走行抵抗の変化や転がりを実現。ライダーの体重が125kgまでであれば、正確に負荷をコントロールさせることができるという。
スピード、ケイデンス、パワーは負荷ユニットより計測される。ケイデンスは出力の変化より算出され、更には左右のペダリングバランスをモニタリングすることも可能だ。また、負荷ユニットにはパワーに合わせて光るLEDランプが備えられており、出力が高いと赤く、低いと青く光る。なお電子機器と連携しない場合には、フルード式負荷ユニットを搭載したローラー台として使用できる。
そして、「Tacx Cycling app」や「Zwift」「Bkool」に対応することも大きなトピックス。ANT+及びBluetoothに対応するタブレットやスマートフォンと連携することでモーターを制御し、多種多様なトレーニングを可能としている。また、ガーミンEdge520からの負荷コントロールにも対応する。
本記事では「Tacx Cycling app」について紹介しよう。このアプリはiOSとアンドロイドの両OSに対応し、日本語表記も可能だ。App StoreとPlay Storeから無料でダウンロードできる。このアプリ内にはSlope、Power、Heartrate、Films、Workoutsと5つのモードが設定されており、目的にあったトレーニング方法を選択できる。下記に各モードづつ説明していこう。
Tacx Cycling appの5つのトレーニングモード
Slope:傾斜を操作しながらトレーニングできるモードで、-5%~20%の傾斜を0.1%刻みで再現可能。
Power:目標とするパワーを50W~990Wまで5W刻みで設定しながらトレーニングができるモード。
Heartrate:目標心拍を指定しながらトレーニングができるモード。40bpm~240bpmで調整可能。
Films:
ツール・ド・フランスをはじめとした有名レースで実際に使用されるコースをムービーと共にバーチャルで走れるモード。実際のコースから測定した坂の距離や勾配を予め設定したプログラムが配信されている。無料で配信されているコースは現在は2種類のみで、それ以外は有償となっている(1コースあたり600MB~1GBで1,100円)。
Workouts:
電気モーターを採用したモデルならではの機能で、自身で作成したコースや、タックスが配信している無料のトレーニングプログラムを基にトレーニングができるモード。コースの作成はCreate機能より行うことができ、目標とするヒルクライムレースのプロファイルをそのまま再現したり、目標のレースに合わせたインターバルメニューを組むことができる。またWorkoutsで行ったトレーニングの測定データはAnalyserより閲覧可能だ。
その他、フリーボディ部はエドコ製で、交換せずともシマノとカンパニョーロのどちらにも対応。セット内容はNeoSmart本体、ACアダプター、フロントホイールサポート、クイックレリース、135mmエンドスペーサー、スプロケットロックナット(11T、12T)、スプロケットスペーサー(0.5mm、2mm)の全9点。重量は21kgで、大きさは使用時が75x65x55cm、折りたたみ時が25x60x43cmだ。
―インプレッション
まず、バイクがNeo Smartに取り付けられるかを確認する必要がある。というのも、負荷ユニットの張り出しが大きいことから、チェーンステーが太いバイクでは干渉してしまい取り付けられないということが考えられるからだ。実際に今回インプレッションで使用したデローザ IDOLの場合、チェーンステーと負荷ユニットのクリアランスが極わずかであった。購入する前にショップに相談するか、可能であれば実際に取り付けて確認してほしい。
さて、編集部に届いた箱から取り出してみると、ダイレクトドライブ式トレーナーの例にもれず、とてもズッシリしている。重量は21kgと、男性でも箱から取り出すのに苦労するほど。その見た目は「Neo」というモデル名に違わず、まるでスターウォーズに登場する宇宙船のようだ。
折りたたみ機構を備え、電源が無くとも使用することはできるが、レースのウォームアップ用として持ち運んだり、普段は片付けておいて使用する時のみ設置するという使い方はあまり現実的ではないだろう。1人でもできないことはないが、組み立ては2人で行ったほうが安心。ただ、その組み立て方自体は、翼のような左右の脚を広げるだけと簡単だ。
バイクのセッティングも非常にかんたんで、後輪の替りにバイクを取り付けるだけ。他の多くのダイレクトドライブ式トレーナーとは異なり、フロントホイールサポートが付属するが、タイヤのサイズによって、使用するか否かを検討する必要がある。なお、700×23Cタイヤを装着したバイクではやや前下りとなったため、フロントホイールサポートの下に雑誌を置いて調整した。
さて、実際にバイクにまたがって漕ぎだして見ると、負荷装置からは全くといって良いほど音がせず、ダイレクトドライブ式とあってホイールの偏心などによる振動も一切ない。あまりにも静かなため、脚を止めた時にフリーボディから発せられるラチェット音や、ディレーラーから発せられる変速音が大きく聞こえるほどである。真夜中に何のためらいも無く使用できるかと言われると、そこは良識と住環境次第ではあるが、「うるさい」と周りから迷惑がられることは圧倒的に少なくなることだろう。
重量の分だけ剛性が高く安心感があり、バイクがローラー台から外れたりという心配は皆無。負荷ユニットは大きな力が掛かるとわずかに左右に動くため、バイクに無理な力が掛かりにくく、その寿命を縮めてしまうこともなさそうだ。
さて、今回のインプレッションでは、トレーニングのお供として専用アプリ「Tacx Cycling app」を使用した。端末はAndroid OSのタブレット。Neo Smartとの接続はスムーズで、途中で途切れたりということはなかった。アプリ自体の動きも非常にスムーズでストレスは一切感じない。気が重いローラートレーニングを中断する言い訳を作らないところが老舗らしい(笑)。今回は、実際のコースをムービーと共にバーチャルで走ることのできる「Films」モードについてレポートしていこう。
やはり多くのサイクリストにとって、ローラー台を用いたトレーニングは「モチベーション」との戦いだ。だが、Neo SmartのFilmsモードはムービーに応じて負荷が勝手に変化してくれることに加え、電源をとっていれば下りも再現してくれるとあり、退屈しづらい。
ムービー自体も観客が沿道に詰めかけたツール・ド・フランスのコースであったり、前方にプロ選手がいたりと、こちらも飽きさせない。前走者を抜こうとして頑張っても、一緒に加速してしまうため永遠に追い抜けないのが、少し残念ではあるが(笑)。
登り区間での負荷は、タブレットに表示される勾配表示と比較するとやや大きめという印象。ただ、勾配表示の変化と負荷の変化は、とても滑らかで実走感が高いと感じた。総じて、これまでのどのローラー台よりも楽しく、これならローラー台が退屈で苦手という方でもトレーニングに集中できるだろう。
各社のローラー台と比較しても飛び抜けて高価なことから、万人にオススメできるとは言い難い。しかし、常日頃から屋内トレーニングに励んでいて、ローラーの使用頻度が高く、よりトレーニングを充実させたという方であれば検討の余地はある。もちろん、冬は雪が積もって外で強度の高いトレーニングができないという方にも。同額の自転車パーツやウェアよりも、有用という方は決して少なくないはずだ。
タックス Neo Smart
負荷機能:仮想斜度-5%~25%相当(0.1%刻み)
最大負荷:2,200W
使用時サイズ:75x65x55cm
折りたたみ時サイズ:25x60x43cm
重 量:21kg
セット内容:NeoSmart本体、ACアダプター、フロントホイールサポート、クイックレリース、135mmエンドスペーサー、スプロケットロックナット(11T、12T)、スプロケットスペーサー(0.5mm、2mm)
※別途カンパニョーロ用のロックリング回しが必要
対応OS:iOS、Andriod
価 格:225,000円(税抜)
サクソバンクやロットNLユンボを筆頭に、数多くのプロチームが使用するタックスのローラー台。その新たなハイエンドモデルとして登場したのが、ブランド初となるダイレクトドライブ方式採用の「Neo Smart」だ。優れた機能性はもちろんのこと、アプリケーションとの多彩な連携機能や、近未来感のあるルックスとあわせて、権威あるユーロバイクアワードを獲得している。
その最たる特徴は、ダイレクトドライブ式のメリットである静寂性を更に高めたこと。負荷機構はタックスが得意とし、BushidoやSatoriなどのタイヤドライブ式で実績のあるマグネット方式を採用。負荷ユニットは発電用のモーター、負荷を司るスチール製ディスク、カセットスプロケットの3つで構成されており、これらは直結されている。
スチール製ディスクは32個のマグネットから成り、30個のコイルの周りを回転させることで負荷を調整。コイルに流れる電気が大きくなるほどに、負荷が大きくなり、これにより勾配抵抗や制動力を再現している。同時に下り坂も再現されており、アプリケーションとの連携時には、ローラー台に乗りながらも実世界で走っているかのようなバーチャル体験をすることができる。
仮想斜度は-5%~25%で変動させることができる。自家発電機能も備えることでスタンドアローン状態でも登坂抵抗が変化する(無給電時は、下り坂の再現はできない)。
負荷を調整するソフトウェア内では毎秒1,000回もの高速演算を行うことで、ライダーの出力変化を予測。実走時と同様に空気抵抗や転がり抵抗、斜度、体重、タイヤの空気圧、風速、温度、標高、慣性、ブレーキ挙動などあらゆる外的要因を考慮したシミュレーションとあわせて、自然な走行抵抗の変化や転がりを実現。ライダーの体重が125kgまでであれば、正確に負荷をコントロールさせることができるという。
スピード、ケイデンス、パワーは負荷ユニットより計測される。ケイデンスは出力の変化より算出され、更には左右のペダリングバランスをモニタリングすることも可能だ。また、負荷ユニットにはパワーに合わせて光るLEDランプが備えられており、出力が高いと赤く、低いと青く光る。なお電子機器と連携しない場合には、フルード式負荷ユニットを搭載したローラー台として使用できる。
そして、「Tacx Cycling app」や「Zwift」「Bkool」に対応することも大きなトピックス。ANT+及びBluetoothに対応するタブレットやスマートフォンと連携することでモーターを制御し、多種多様なトレーニングを可能としている。また、ガーミンEdge520からの負荷コントロールにも対応する。
本記事では「Tacx Cycling app」について紹介しよう。このアプリはiOSとアンドロイドの両OSに対応し、日本語表記も可能だ。App StoreとPlay Storeから無料でダウンロードできる。このアプリ内にはSlope、Power、Heartrate、Films、Workoutsと5つのモードが設定されており、目的にあったトレーニング方法を選択できる。下記に各モードづつ説明していこう。
Tacx Cycling appの5つのトレーニングモード
Slope:傾斜を操作しながらトレーニングできるモードで、-5%~20%の傾斜を0.1%刻みで再現可能。
Power:目標とするパワーを50W~990Wまで5W刻みで設定しながらトレーニングができるモード。
Heartrate:目標心拍を指定しながらトレーニングができるモード。40bpm~240bpmで調整可能。
Films:
ツール・ド・フランスをはじめとした有名レースで実際に使用されるコースをムービーと共にバーチャルで走れるモード。実際のコースから測定した坂の距離や勾配を予め設定したプログラムが配信されている。無料で配信されているコースは現在は2種類のみで、それ以外は有償となっている(1コースあたり600MB~1GBで1,100円)。
Workouts:
電気モーターを採用したモデルならではの機能で、自身で作成したコースや、タックスが配信している無料のトレーニングプログラムを基にトレーニングができるモード。コースの作成はCreate機能より行うことができ、目標とするヒルクライムレースのプロファイルをそのまま再現したり、目標のレースに合わせたインターバルメニューを組むことができる。またWorkoutsで行ったトレーニングの測定データはAnalyserより閲覧可能だ。
その他、フリーボディ部はエドコ製で、交換せずともシマノとカンパニョーロのどちらにも対応。セット内容はNeoSmart本体、ACアダプター、フロントホイールサポート、クイックレリース、135mmエンドスペーサー、スプロケットロックナット(11T、12T)、スプロケットスペーサー(0.5mm、2mm)の全9点。重量は21kgで、大きさは使用時が75x65x55cm、折りたたみ時が25x60x43cmだ。
―インプレッション
まず、バイクがNeo Smartに取り付けられるかを確認する必要がある。というのも、負荷ユニットの張り出しが大きいことから、チェーンステーが太いバイクでは干渉してしまい取り付けられないということが考えられるからだ。実際に今回インプレッションで使用したデローザ IDOLの場合、チェーンステーと負荷ユニットのクリアランスが極わずかであった。購入する前にショップに相談するか、可能であれば実際に取り付けて確認してほしい。
さて、編集部に届いた箱から取り出してみると、ダイレクトドライブ式トレーナーの例にもれず、とてもズッシリしている。重量は21kgと、男性でも箱から取り出すのに苦労するほど。その見た目は「Neo」というモデル名に違わず、まるでスターウォーズに登場する宇宙船のようだ。
折りたたみ機構を備え、電源が無くとも使用することはできるが、レースのウォームアップ用として持ち運んだり、普段は片付けておいて使用する時のみ設置するという使い方はあまり現実的ではないだろう。1人でもできないことはないが、組み立ては2人で行ったほうが安心。ただ、その組み立て方自体は、翼のような左右の脚を広げるだけと簡単だ。
バイクのセッティングも非常にかんたんで、後輪の替りにバイクを取り付けるだけ。他の多くのダイレクトドライブ式トレーナーとは異なり、フロントホイールサポートが付属するが、タイヤのサイズによって、使用するか否かを検討する必要がある。なお、700×23Cタイヤを装着したバイクではやや前下りとなったため、フロントホイールサポートの下に雑誌を置いて調整した。
さて、実際にバイクにまたがって漕ぎだして見ると、負荷装置からは全くといって良いほど音がせず、ダイレクトドライブ式とあってホイールの偏心などによる振動も一切ない。あまりにも静かなため、脚を止めた時にフリーボディから発せられるラチェット音や、ディレーラーから発せられる変速音が大きく聞こえるほどである。真夜中に何のためらいも無く使用できるかと言われると、そこは良識と住環境次第ではあるが、「うるさい」と周りから迷惑がられることは圧倒的に少なくなることだろう。
重量の分だけ剛性が高く安心感があり、バイクがローラー台から外れたりという心配は皆無。負荷ユニットは大きな力が掛かるとわずかに左右に動くため、バイクに無理な力が掛かりにくく、その寿命を縮めてしまうこともなさそうだ。
さて、今回のインプレッションでは、トレーニングのお供として専用アプリ「Tacx Cycling app」を使用した。端末はAndroid OSのタブレット。Neo Smartとの接続はスムーズで、途中で途切れたりということはなかった。アプリ自体の動きも非常にスムーズでストレスは一切感じない。気が重いローラートレーニングを中断する言い訳を作らないところが老舗らしい(笑)。今回は、実際のコースをムービーと共にバーチャルで走ることのできる「Films」モードについてレポートしていこう。
やはり多くのサイクリストにとって、ローラー台を用いたトレーニングは「モチベーション」との戦いだ。だが、Neo SmartのFilmsモードはムービーに応じて負荷が勝手に変化してくれることに加え、電源をとっていれば下りも再現してくれるとあり、退屈しづらい。
ムービー自体も観客が沿道に詰めかけたツール・ド・フランスのコースであったり、前方にプロ選手がいたりと、こちらも飽きさせない。前走者を抜こうとして頑張っても、一緒に加速してしまうため永遠に追い抜けないのが、少し残念ではあるが(笑)。
登り区間での負荷は、タブレットに表示される勾配表示と比較するとやや大きめという印象。ただ、勾配表示の変化と負荷の変化は、とても滑らかで実走感が高いと感じた。総じて、これまでのどのローラー台よりも楽しく、これならローラー台が退屈で苦手という方でもトレーニングに集中できるだろう。
各社のローラー台と比較しても飛び抜けて高価なことから、万人にオススメできるとは言い難い。しかし、常日頃から屋内トレーニングに励んでいて、ローラーの使用頻度が高く、よりトレーニングを充実させたという方であれば検討の余地はある。もちろん、冬は雪が積もって外で強度の高いトレーニングができないという方にも。同額の自転車パーツやウェアよりも、有用という方は決して少なくないはずだ。
タックス Neo Smart
負荷機能:仮想斜度-5%~25%相当(0.1%刻み)
最大負荷:2,200W
使用時サイズ:75x65x55cm
折りたたみ時サイズ:25x60x43cm
重 量:21kg
セット内容:NeoSmart本体、ACアダプター、フロントホイールサポート、クイックレリース、135mmエンドスペーサー、スプロケットロックナット(11T、12T)、スプロケットスペーサー(0.5mm、2mm)
※別途カンパニョーロ用のロックリング回しが必要
対応OS:iOS、Andriod
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